2021年12月14日 (火)

真珠湾攻撃から80年

80年前の12月8日午前7時に「大本営陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。」とNHKの臨時ニュースが伝えた。

米英軍と日本軍の衝突が偶発的に発生したとのニュアンスが読み取れてしまうが、実際にはだまし討ちと非難されても、反論できない軍事行動であった。

1)真珠湾攻撃の時間

第一次攻撃隊の真珠湾到着時間は現地時間12月7日午前7時55分であった。日本時間では12月8日午前3時25分であり、米国東部時間(首都ワシントン時間)では12月7日午後1時25分である。

2)日本政府の文書(覚書)交付時間

文書に書かれている内容については、3)で述べるので、日本(大使館)から米国(国務長官)への文書交付時間について記載する。外務省から在首都ワシントン大使館に文書を伝達したのは12月6日の電報901号、902号であった。長文のため、電報を打ち終わったのは7日午後4時(米国東部7日午前2時)であった。

外務省から更に要求としてタイピスト等は使わず、機密保持に慎重を期すようにと要求(電報904号、7日午後5時30分発)があった。更には、外務省より電報907号で12月7日午後1時に国務長官宛てに大使から直接手渡しをするようにと指示があった。

Yake Law School Lillian Goldmad Law Libraryのこの資料 によれば、12月7日午後1時に国務長官への面会アポイントを申し入れた。調整結果と思うが、時間は1時45分となった。野村大使と来栖大使が到着したのは、2時5分。会談の開始は2時20分であった。

1時25分に真珠湾攻撃が始まったのであるから、文書の交付は、約1時間の後であった。外交交渉継続中に軍事攻撃を開始したのであるから、だまし討ちである。

3)交付した文書

日本政府は対米覚書と呼んでおり、外務省が12月6日に電報902号で英文を送っているのであるが、そのタイトルは”MEMORANDUM”である。

そして文書の中身に宣戦を布告するなんてことも書いていない。日米交渉を打ち切ると述べているだけである。当時日本で権力を持っていた連中は非常識きわまりない連中だったようである。文書もだまし文書である。

なお、この覚書(MEMORANDUM)は、Yale Schoolの資料にもあるが、ここ にも置いておいた。文書中に長々と説明が続くが、交渉打ち切りの宣言は最終節であり、参考に次に記す。

仍テ帝国政府ハ茲ニ合衆国政府ノ態度ニ鑑ミ今後交渉ヲ継続スルモ妥結ニ達スルヲ得スト認ムルノ外ナキ旨ヲ合衆国政府ニ通告スルヲ遺憾トスルモノナリ
<参考>よって日本政府は合衆国政府の態度を鑑みるに、今後も交渉を継続し妥結に達すると考えることはできないと遺憾ながら通告する。

The Japanese Government regrets to have to notify hereby the American Government that in view of the attitude of the American Government it cannot but consider that it is impossible to reach an agreement through further negotiations.

史料は、特に記載ないのは、すべて外務省 日本外交文書デジタルコレクション からである。

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2021年12月13日 (月)

立憲民主党、日本維新の会、国民民主党がガソリン価格値下げバラマキ法案を提出

恐ろしいものであります。減税による年間1兆円を越えるバラマキをする法案を提出したというのです。

立憲民主党 12月7日発表   日本維新の会 法案提出のお知らせ 12月6日

日本維新の会の発表に国民民主党共同でとあるので、2党の内容は同一です。3党同一かというと、立憲民主党案は「別に法律で決める日までの間、適用を停止」としており、維新と国民は完全に削除としている点が違いである。

1)何を適用停止し、削除するのか

次の「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」の44条です。

第四十四条 租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。

そこで、租税特別措置法第89条を読む必要が出てくる。

第89条 前条の規定の適用がある場合において、平成22年1月以後の連続する3月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき160円を超えることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同条の規定の適用を停止する。

前条の規定とは、
2 前項の規定により前条の規定の適用が停止されている場合において、平成二十二年四月以後の連続する三月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき百三十円を下回ることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同項の規定にかかわらず、同条の規定を適用する。

極めて読み辛いのですが、トリガー条項と呼ばれており、ガソリンの平均小売り価格が3カ月連続で 160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税を 53.8円/ℓ から 25.1 円/ℓを下げ、そして、停止後に3カ月連続でガソリンの平均価格が130円/ℓを下回った場合には、この措置を解除するというもの。

揮発油税の税収は年間2兆円強であり、3党は減収見込み1兆690億円と述べている。

2)税金を使ってガソリン価格を引き下げる意味があるのか

ガソリン価格が上がっているのは、原油価格が上がっているからです。下にある上のチャートは2017年1月以降の原油価格で、その下のチャートは11月10日以降の原油価格です。ニューヨークWTI Crudeですが、80ドルを超えていた価格も、70ドル強になっている。将来のことは、よく分からないが、マーケットに対してLong-Shortのビジネスをするのは、政府としてはしてはならないことである。まして、国民の税金でばくちをするのは、許されないことです。

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さて、国内のガソリン価格はというと、次の通り。2019年1月からのレギュラーガソリンの小売価格全国平均です。

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車に関しては、政策として取り組むべき課題が多い。例えば、道路や橋、トンネル等の老朽化対策がある。災害強靱化と言う取り組みも重要である。或いは、過疎化地域、地方においても一定のインフラ整備は必要である。例えば、地方においてガソリンスタンドが減少しており、車の給油に苦労する。或いは、暖房用の燃料確保も苦労するようになってきている。また、CO2排出削減を達成するには、ガソリンの消費削減が重要である。これに対する全く逆の政策であり、本来ならEVの為の急速充電ステーション整備のための調査や計画そして補助金が検討されるべきと思うが、逆行も甚だしい。

日本にはバカ政党がいるのだと思った。なお、OECD諸国のガソリン税の比較がこの財務省のサイト にあるが、日本のガソリン税は安いのである。

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2021年12月12日 (日)

小型モジュール式原子炉(SMR-Small Modular Reactor)

日立GEニュークリア・エナジーは、小型モジュール式原子力発電プロジェクトのテクノロジーパートナーに決定したと12月2日に発表した。会社による発表は次です。

日本語の発表

英語の発表

日本語の発表は日本法人である日立GEニュークリア・エナジーである。英文は米GEであり、日立GEニュークリア・エナジーをallianceと表現しており、法人格は持たない企業連合の意味でしょうか。なお、カナダではGEH SMR Technologies Canada, Ltd.というオンタリオ法人が存在する。

1)日本の報道

比べると結構おもしろい。

日経新聞は、ここ にあり、有料記事であるが、小型モジュール炉(SMR)に関するまとまった記事と思う。

読売新聞は、ここ にある。NHKはここ にある。朝日新聞はここにあるが、私は支離滅裂の感ありと思ってしまう。 記事には「放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。」なんて記述があるが、プルトニウム問題も含め原発の本質は変わっていないにも拘わらず、これでは混乱を引き起こすだけと思える。なお、日立GEニュークリア・エナジー による発表は、 テクノロジーパートナーに決定したという表現であるが、報道各社は受注したと発表している。私は、電力会社Ontario Powerからの単純なプラント請負工事の受注ではないと思っている。

2)オンタリオハイドロの小型モジュール炉(SMR) BWRX-300

BWRX-300という小型モジュール炉(SMR)についての契約であるが、この記事(Power Engineering) からBWRX-300は電気出力300MWで熱出力1,500MWのBWR(沸騰水型原子炉)と理解する。原子力百科事典(ATOMICA)に掲載されている沸騰水型原子炉(BWR)の基本仕様(02-03-01-02) によれば電気出力460MWの熱出力は1,356MWで、800MWが2,381MWとなっている。即ち、同じ電力を得るための熱出力は従来型のBWRより大きい。熱効率で考えれば、燃料を多く消費する効率の悪い発電所である。また、そうなるとプルトニウムや使用済み核燃料も多く出るように思える。但し、電気出力を抑えることにより、安全性を高めている設計を採用しているのかも知れない。核兵器原料であるプルトニウムが生産されることに変わりはない。

建設されるのはOntario Powerの Darlington原子力発電所であり、4基が稼働中。合計出力3,512MW。原子炉はCANDUである。その位置は、次の地図の地点である。 トロントの東方約55km。直線距離で米国ニューヨークまで520km。首都ワシントンまでは570km。東京から青森または熊本までの距離である。

3)日本での小型モジュール式原子炉(SMR)の建設

私は、慌てふためく必要はないと思う。30年後の2050年ゼロエミッションを目指して、と言うより、この標語=かけ声を利用して、各社は競争を繰り広げており、この競争は益々激しくなる。トランプさんのような人が現れて巻き返しがあることもあり得る。まっすぐな直線の道とは余り思えない。そんな中で、SMRがどうなるか、所詮原発である。使用済み核燃料を含め高レベル廃棄物は発生する。

使用済み核燃料には1%程度の燃え残りウラン235が1%含まれ、さらにウラン238が変化したプルトニウムが1%程度存在すると言われている。日本原子力文化財団のこのページの説明 によれば、高レベル放射性廃棄物は数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があるととのこと。年間1.4トン発生しているとある。

じっくりと考える必要があると思います。

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2021年11月30日 (火)

ペシャワール会の中村哲さん殺害の理由

中村哲氏は1946年福岡県生まれで九州大学医学部卒業の医師。国内の病院勤務を経て、1984年パキスタンのペシャワールでのミッション病院ハンセン病棟に赴任し、パキスタン人やアフガン難民のハンセン病治療、また難民キャンプでのアフガン難民の一般診療に携わり、1989年よりアフガニスタンにも活動を拡げ、さらには水の重要性から飲料水・灌漑用井戸事業を始められ、2003年から農村復興のための農業用水利事業も手がけられた。途上国支援の援助活動家として絶賛されるべき活動をされていた。そんな中村哲氏が2019年12月4日に殺害されて2年近くとなる。

朝日新聞が次の記事を掲載していた。

朝日 11月29日 中村哲さん殺害、1カ月前に察知 首謀者や襲撃方法、警察は態勢不備 元州知事が証言

有料記事部分であると思うが、紙の記事で続く部分を読むと次の文章がある。

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中村氏の灌漑事業がパキスタンに流れ込む川の上流での事業であることから下流では減水の懸念があり、そのことが殺害の原因となっている可能性がある複雑さを述べている。

Jalalabad

上の地図で中央の赤丸が中村氏が殺害されたアフガニスタンのナンガルハル州ジャララーバードである。そのすぐ右上の青点が灌漑事業のプロジェクト地点である。地図の下中央で南に流れるのがインダス川である。また、ジャララーバードはアフガニスタンであるが、パキスタンとの国境に極めて近いことも分かる。

中村氏が携わった灌漑事業において取水をしているのはクナール川であり、ジャララーバードを流れるカブール川にジャララーバード から約8km下流で合流し、パキスタンに流れる。そしてインダス川となる。但し、中村氏の灌漑事業が、どれほどパキスタンでの河川水減少につながったかは調査しないと分からない。ほとんど影響はないと思う。なお、 降水量の少ない地域である。アフガニスタンのカブールで年間300mm程度。パキスタンのペシャワールで500mm程度である。例え、一滴でも水が少なくなれば、盗まれたとの感覚になってしまうことはあり得る。

水は貴重である。上流で取水しても、下流への配慮は必要である。下流での水害を防止するために上流でダムを建設することもある。ダムを含め河川関係の土木その他の設備は多くの配慮を必要とする。中村氏はクナール川の取水設備として、 福岡県朝倉市の山田堰を参考として、山田堰のような取水堰を建設された。環境に優しい、すばらしい農業取水堰である。参考世界が注目、水を治める江戸の知恵 福岡・山田堰(日経電子版)

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2021年11月11日 (木)

夫婦別姓

11月10日に特別国会が召集され岸田氏が総理大臣に指名され、衆議院自民絶対安定多数と言う国会がはじまった。夫婦別姓に関する立法がどうなるかも、この岸田政権の一つの注目点と思う。

1) 選択的夫婦別姓へと法改正に進むのか

岸田内閣の期間中の立法となるかは、不明であるが、立法の方向に進んで行くと思う。理由は、10月18日の日本記者クラブでの9党首討論会で、司会者からの「来年の通常国会に選択的夫婦別姓法案を提出することについて賛成者は挙手を御願いします。」との要請に対して、与野党の9党首の中で岸田氏以外の8党首は手を上げたのである。(これに関するHuffpostの記事はここ また日本記者クラブの9党党首討論会 会見リポート にあるYouTube会見動画では開始から1時間55分経過したあたり )

9党首のうちN党以外の党は10月31日の衆議院選挙で議席を獲得したのであり、また自民党内においても河野太郎氏や野田聖子氏のように夫婦別姓導入賛成者もいる。党有志議員連盟に岸田氏自身名前を連ねたことがある。来年の通常国会での立法は不明であるが、来年の参議院選の動きによっては、選択的夫婦別姓の立法が進むと思う。まさか、参議院選で10月18日の9党首討論会から違った方向に各党は転換しないだろうから、参議院選での各党間の論争にも興味がわく。

2) 2021年6月23日最高裁大法廷の判断

最高裁の判断はここ にあり、全49ページの最高裁の判決としては非常に長い。もっとも、2ページの後半以降は補足意見、意見、反対意見が述べられているのであり、興味深い内容である。以下は、私の拙い纏めであり、最高裁の文書を読んで頂きたいと思う。

多数意見
民法750条の「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」が憲法24条に違反して無効であるといえないとした。夫婦の氏についてどのような制度を採るのかは立法の政策課題として相当であり国会で論ぜられ,判断されるべき事柄であり、夫婦同氏制を定める現行法の規定が憲法24条に違反して無効であるか否かという問題は次元が異なる。

深山卓也,岡村和美,長嶺安政裁判官の補足意見
選択的夫婦別氏制の採否を含む夫婦の氏に関する法制度については,子の氏や戸籍の編製等を規律する関連制度を含め,これを国民的議論,すなわち民主主義的なプロセスに委ねることによって合理的な仕組みの在り方を幅広く検討して決めるようにすることこそ,事の性格にふさわしい解決というべきであり国会において,この問題をめぐる国民の様々な意見や社会の状況の変化等を十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待するものである。

三浦守裁判官 の意見
法が夫婦別氏の選択肢を設けていないことは,憲法24条に違反すると考える。違憲の問題があるとしても,夫婦別氏の選択肢を設けるには,子の氏に関する規律をも踏まえ,戸籍編製の在り方という制度の基本を見直す必要がある。
その上で,夫婦の氏に関する当事者の選択を確認して戸籍事務を行うため,届書の記載事項を定めるとともに,その届出に基づいて行うべき戸籍事務(同法13条,14条,16条等参照)等について定める必要がある。国会においては,速やかに,これらを含む法制度全体について必要な立法措置が講じられなければならない。こうした措置が講じられていない以上,民法上等の関連規定の内容及び性質という点からみても,法制度全体としてみても,法の定めがないまま,解釈によって,夫婦別氏の選択肢に関する規範が存在するということはできない。従い、抗告人らの申立てを却下すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。

夫婦別氏の選択肢を設けていないことは,憲法24条に違反すると考える理由は、

1. 氏名は,社会的にみれば,個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される基礎であり,婚姻の際に氏を改めることは,個人の特定,識別の阻害により,その前後を通じた信用や評価を著しく損なうだけでなく,個人の人格の象徴を喪失する感情をもたらすなど,重大な不利益を生じさせ得ることは明らかである。したがって,婚姻の際に婚姻前の氏を維持することに係る利益は,それが憲法上の権利として保障されるか否かの点は措くとしても,個人の重要な人格的利益ということができる。
2. 憲法24条2項の「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」は立法に当たり,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきものとして,その裁量の限界を画しており,憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害する立法措置等を講ずることは許されない。
3. 民法750条の「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」とする規定は婚姻の際にその氏を定めることを前提とし、他に選択肢を設けていない。婚姻の際に氏の変更を望まない当事者にとって,その氏の維持に係る人格的利益を放棄しなければ婚姻をすることができないことは,法制度の内容に意に沿わないところがあるか否かの問題ではなく,重要な法的利益を失うか否かの問題である。これは,婚姻をするかどうかについての自由な意思決定を制約するといわざるを得ない。
4 夫婦同氏制についての趣旨,目的には,疑問がある。
* 婚姻及び家族に関する法制度は,多様化する現実社会から離れ,およそ例外を許さないことの合理的な根拠を説明することが難しくなっているといわざるを得ない。
* 同一の氏を称することにより家族の一員であることを実感する意義や家族の一体性を考慮するにしても,このような実感等は,何よりも,種々の困難を伴う日常生活の中で,相互の信頼とそれぞれの努力の積み重ねによって獲得されるところが大きいと考えられ,各家族の実情に応じ,その構成員の意思に委ねることができ,むしろそれがふさわしい性質のものであって,家族の在り方の多様化を前提に,夫婦同氏制の例外をおよそ許さないことの合理性を説明し得るものではない。
* 婚姻という個人の幸福追求に関し重要な意義を有する意思決定について,二人のうち一人が,重要な人格的利益を放棄することを要件として,その例外を許さないことは,個人の尊厳の要請に照らし,自由な意思決定に対し実質的な制約を課すものといわざるを得ない。
夫婦同氏制は,現実の問題として,明らかに女性に不利益を与える効果を伴っており,両性の実質的平等という点で著しい不均衡が生じている。婚姻の際に氏の変更を望まない女性にとって,婚姻の自由の制約は,より強制に近い負担となっているといわざるを得ない。
国際的な動向をみると,昭和60年に我が国も批准した「女子差別撤廃条約」は,締約国に対し,いわゆる間接差別を含め,女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃を義務付け,自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利並びに姓を選択する権利を含む夫及び妻の同一の個人的権利について,女性に対する差別の撤廃を義務付けている(16条1項(b),(g))。そして,女子差別撤廃委員会は,我が国の定期報告に関する最終見解において,繰り返し,女性が婚姻前の姓を使用し続けられるように法律の規定を改正することを勧告している。現民法制定の昭和22年当時は,夫婦が同一の姓を称する制度を定める国も少なくなかったが,現在,同条約に加盟する国で,夫婦に同一の姓を義務付ける制度を採っている国は,我が国のほかには見当たらない。(ブログ主による注:外務省によれば、締約国数189。)

宮崎裕子、宇賀克也裁判官 の反対意見

憲法24条1項の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」に違反する民法や戸籍法の規定は憲法適合性を欠くのであり、「夫は夫の氏,妻は妻の氏を称する」旨を記載し届けられた婚姻届も受理されるべきである。

1 民法によって定められた婚姻制度上の婚姻は,憲法適合性を欠く制約を除外した内容でなければならないと考える。夫婦同氏を婚姻届の受理要件とすることは、この制約に該当する。
2 氏を構成要素の一つとする氏名(名前)が有する高度の個人識別機能の一側面として,当該個人自身においても,その者の人間としての人格的,自律的な営みによって確立される人格の同定機能を果たす結果,アイデンティティの象徴となり人格の一部になっていることを指すものであり、人格権に含まれるもの個人の尊重,個人の尊厳の基盤を成す個人の人格の一内容に関わる権利であるから,憲法13条により保障されるものと考えられる。この権利を本人の自由な意思による同意なく法律によって喪失させることは,公共の福祉による制限として正当性があるといえない限り,この権利に対する不当な侵害に当たる。
3 夫婦同氏制を定める民法750条を含む本件各規定を,当事者双方が生来の氏を変更しないことを希望する場合に適用して単一の氏の記載(夫婦同氏)があることを婚姻届の受理要件とし,もって夫婦同氏を婚姻成立の要件とすることは,当事者の婚姻をするについての意思決定に対する不当な国家介入に当たる。個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した法律とはいえず,立法裁量を逸脱しており,違憲といわざるを得ない。
4 国会においては,全ての国民が婚姻をするについて自由かつ平等な意思決定をすることができるよう確保し,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した法律の規定とすべく,本件各規定を改正するとともに,別氏を希望する夫婦についても,子の利益を確保し,適切な公証機能を確保するために,関連規定の改正を速やかに行うことが求められる。

草野耕一裁判官の反対意見

夫婦同氏制を定めた民法や戸籍法の規定は憲法24条に違反するといわざるを得ないがゆえに,婚姻届の受理を命ずるべきであると考える。その理由は,以下のとおりである。
1 選択的夫婦別氏制の導入によって向上する福利が同制度の導入によって減少する福利よりもはるかに大きいことが明白であれば,当該制度を導入しないことは余りにも個人の尊厳をないがしろにする所為であり,立法裁量の範囲を超え合理性を欠いているといわざるを得ず,憲法24条に違反すると断ずべきである。
2 選択的夫婦別氏制の導入によって向上する国民の福利と,それによって減少する国民の福利とを分析し,衡量すると;
* 慣れ親しんできた氏に対して強い愛着を抱く者は社会に多数いるものと思われる。これらの者にとっては,たとえ婚姻のためといえども氏の変更を強制されることは少なからぬ福利の減少となるであろう。氏の継続的使用を阻まれることが社会生活を営む上で福利の減少をもたらすことは明白であり,共働き化や晩婚化が進む今日において一層深刻な問題となっている。
* 夫婦で同一の氏を称することにより家族の一体感を共有することは福利の向上をもたらす可能性が高い。しかし、選択的夫婦別氏制を導入したとしても夫婦同氏を選択する夫婦も少なからず輩出されるはずであり,夫婦別氏を選択するのは,氏を同じくすることで得られる福利の向上よりも減少の方が大きいと考える夫婦だけであろう。選択的夫婦別氏制を採用することによって婚姻両当事者の福利の総和が増大することはあっても減少することはあり得ないはずである
* 夫婦別氏を選択した夫婦の間に生まれる子の福利に関して,子は,親とは別の人格を有する法主体であるにもかかわらず,親が別氏とすることを選択したことによって生ずる帰結を自らの同意なく受け入れなければならなくなる。親の一方が氏を異にすることが,子にとって家族の一体感の減少など一定の福利の減少をもたらすことは否定し難い事実であろう。しかしながら,夫婦別氏とすることが子にもたらす福利の減少の多くは,夫婦同氏が社会のスタンダード(標準)となっていることを前提とするものである。選択的夫婦別氏制が導入され氏を異にする夫婦が世に多数輩出されるようになれば,夫婦別氏とすることが子の福利に及ぼす影響はかなりの程度減少するに違いない。
* 夫婦が同氏となれば,氏を変えない婚姻当事者の親族は,相手方婚姻当事者と新たに氏を共有することによって同人との間の一体感を強化することができる。しかしながら,夫婦同氏とすることは,氏を変更する婚姻当事者がその者の親族との間に育んできた一体感を減少させる機能もあり,そうである以上,選択的夫婦別氏制の導入が婚姻両当事者の親族の福利の総和を減少させるとは到底いえない。
* 夫婦同氏制が長きにわたって維持されてきた制度であることから,夫婦同氏を我が国の「麗しき慣習」として残したいと感じている人々は存在する。しかしながら,選択的夫婦別氏制を導入したからといって夫婦を同氏とする伝統が廃れるとは限らない。もし多くの国民が夫婦を同氏とすることが我が国の麗しき慣習であると考えるのであれば,今後ともその伝統は存続する可能性が高い。伝統的文化が今後どのような消長を来すのかは最終的には社会のダイナミズムがもたらす帰結に委ねられるべきであり,その存続を法の力で強制することは,我が国の憲法秩序にかなう営みとはいい難い。
* 選択的夫婦別氏制の実施を円滑に行うためには戸籍法の規定に改正を加えることが必要であり,その内容については法技術的に詰めるべき部分が残されている。しかしながら,選択的夫婦別氏制の導入に伴い改正がされたとしても,戸籍制度が国民の福利のために果たしている諸機能に支障が生ずることはないであろう。
3 選択的夫婦別氏制を導入することによって向上する国民の福利は,同制度を導入することによって減少する国民の福利よりもはるかに大きいことが明白であり,かつ,減少するいかなる福利も人権又はこれに準ずる利益とはいえない。そうである以上,選択的夫婦別氏制を導入しないことは,余りにも個人の尊厳をないがしろにする所為であり,もはや国会の立法裁量の範囲を超えるほどに合理性を欠いているといわざるを得ない。

3) 歴史

江戸時代において武士や公家以外の農民や町民(工・商)は、名字を持つことを公式には許されなかった。人口割合では90%が農・工・商であったので、90%の人は名字がなかった。では、名字があった武士はどうであったかというと、女性は結婚しても実家の姓を名乗っていた。

明治になり、1870(明治3)年9月19日に太政官布告第608号「平民苗字許可令」が公布され、名字(氏)の使用が許可されることとなった(参考 )。そして、1875(明治8)年2月13日に苗字の使用を義務づける「苗字必称義務令」という太政官布告を出し、すべての国民に苗字を名乗ることを義務づけました。(参考 )そして、明治8年11月9日の内務省の伺いに対して明治9年3月17日に太政官指令として婚姻後も出生時の使うようと次の様に 回答している。

「伺いの件につき、婦女は嫁しても、なお出生時の氏を用いるべきである。」(これ  国会図書館デジタルコレクション 法令全書. 明治9年 1453ページ

1898年(明治31年)の法律第9号により民法(第四編)が交付され、これが旧民法と呼ばれている民法である。(国立公文書館のWebはここ )家という考え方を基礎としており、家と家長という概念を用いている。

732条 戸主の親族にして其の家にある者及び其の配偶者はこれを家族とす。
746条 戸主及び家族は其の家の氏を称す。

婚姻の結果、夫の家に入り、その家の氏を名乗ることが法律で決められたのである。

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しかし、考えれば、今でも、そんな風習が残っている雰囲気はある。結婚式の看板に〇〇家 ✕✕家結婚式場と書いてあったり、結婚式の式辞で来賓より「〇〇家✕✕家のご親族の皆様に心よりお慶び申し上げます」なんてのが、あったりする。憲法24条は、どうなっているのかと思ってしまう。

1947年に新民法が成立した。旧民法の時代は49年しかなかった。新民法成立から74年経過している。ところが、たった49年しか施行されなかった旧民法の考え方を、日本の伝統であると考えてしまう人がいるが、それは誤解である。

4)  旧姓の使用

現在は、国の行政機関、地方公共団体、民間企業等ほとんどの団体で、職員等から申し出があった場合、旧姓の使用を認めている。しかし、職場での呼称等幾つかのケースについてである。正式文書は、本名でなければならない。源泉徴収票は新姓となり、印鑑証明が必要な書類も当然で、戸籍名=住民票名(新姓)である。銀行口座の名義もこの全国銀行協会 の説明のように、旧姓のままで放置しておくと不都合なことが生じる恐れもある。

マイナンバーカードや住民票、運転免許証は旧姓併記が可能であるが、併記であり、新姓が記載されるのであり、手続きは必要である。医師免許に関しては、免許証の書換義務がないので、旧姓のままでも良いが、保育士、介護福祉士は名義変更が必要。

基本的には、契約に関すること、銀行預金・証券に関すること、税金に関することは、戸籍名と一致していないとならない。マネーロンダリングや脱税そして不正取引のチェックにおいて抜け穴を生じさせる恐れがあれば、そのための配慮は必要である。悪事をする行為者は、思いつかないこともする。取り締まる仕組みが複雑化し社会的な負担が増加する場合は、その負担と便益の比較での判断が重要である。

法に基づかない旧姓の使用は解決に結びつく事項は少ない。根本的な解決にはならないと考える。

5) 私の考え

夫婦別姓に考えを巡らせると、愛、結婚、自由、基本的人権について思考を展開さざるを得なくなった。旧民法で謳われた家制度にノスタルジーを感じ、家制度による家長支配での家族が正しい姿と思い、選択的夫婦別姓に反対する人も存在する。思えば、戦後の高度成長の基盤には旧民法の家制度が少し変形された新民法の新家制度があったのかも知れない。

しかし、今や新民法の新家制度も維持することには無理がある。 祖父母との同居はまれであり、老人夫婦・老人単身世帯、共働き、家庭外保育が一般化している。旧家制度の観点では悪い現象なのかも知れない。しかし、悪いことではない。自らの意思とは限らないが、幸福追求のためには変化し、対応していかないとならない。そこに旧家制度の価値観で話をされると、バカと言いたくなる。

日本の社会をよりよくするためには、選択的夫婦別姓はどうしても必要であり、早期に法改正がなされることを望む。

(時間があれば、2で掲げた最高裁の決定文書を読まれることをお勧めします。)

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2021年10月19日 (火)

柳原病院の医師わいせつ行為事件で最高裁無罪判決が期待できる

まずは、ニュースを

朝日 10月17日 女性患者へのわいせつ事件、最高裁で弁論へ 二審は懲役2年の実刑

全身麻酔により乳腺腫瘍を摘出する手術を執刀した外科医師が、その女性患者から左胸を舐めるなどのわいせつ行為をされたとして逮捕され、一審東京地裁では無罪となったが、2020年7月13日に東京高裁で懲役2年の有罪となった裁判の最高裁での裁判です。最高裁の場合、通常は弁論は開かれず、原判決(第二審判決)を見直す必要がある場合です。従い、東京高裁で懲役2年の判決の破棄・差し戻しとなる可能性が高いのです。

医師が逮捕されたときに私が書いたブログがこのブログ です。 冒頭の朝日の記事にもあるが、個室での話ではなく、カーテンで仕切られた4人部屋で、私の当時のブログには4人満床と書いています。高裁判決があった当時、医療専門サイトm3.comはこの中川日医会長「身体が震えるほどの怒り」、乳腺外科医控訴審判決 という記事を掲げていた。

来年となるが、最高裁判決を待ちたいと思います。

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2021年10月17日 (日)

低賃金を打ち破って将来の日本を開拓しよう

日経が次の記事を掲げていた。

日経 10月16日 日本の年収、30年横ばい 新政権は分配へまず成長を データが問う衆院選の争点

有料会員限定となっており、次の日米英ドイツの4カ国比較のグラフが有料部分にある。なお、私はOECD統計データからグラフを作成したが、日経記事にあるOECD平均という数字を見つけることができなかったので、次のグラフでは省略した。

Wage202110

1990年以後まったく上昇がない日本の賃金であります。情けなくなるわけですが、賃金に分配する前の各国の利益(付加価値)に相当するGDPを見てみる必要があります。今度は、IMFのWorld Economic Outlook 2021年10月版から比較をしている4カ国について同じ期間である1990年から2020年までの米ドル換算したGDPの推移グラフを作成しました。国としてのGDPではなく、人口で割算をした一人あたりのGDPとしています。

Gdpcapita202110a

グラフの形が賃金とGDPでまるで異なるのです。日本の賃金は今の倍であってもおかしくないと思えるような感じです。最低賃金は2000円であってもおかしくないと思える。減税とかバラマキなんて言わずに、賃金倍増を図るとの政策を今からでも掲げてくれないかと思います。応分の税金を当然払うので、目こぼしが出てしまう人々には政策的な配慮・支援を行って欲しいと思います。

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2021年10月16日 (土)

衆院選候補者調整一本化の不合理

国民としては、情けない気持ちになる。次の東京新聞の記事によれば、220選挙区で野党は候補調整がなりたち、候補者が一本化されるようである。

東京新聞 10月13日 野党が衆院選220選挙区で一本化 共産・立民が候補調整

衆議院小選挙区は289なので、そのうち220が一本化されれば、76%が一本化されることとなる。自民・公明の支持者に影響はないが、野党支持者の中では小選挙区では自らが支持する人または政党に投票できず選挙に不満を持つ人が多く生じるように思う。それが、選挙を通じての国民の政治参加という日本の民主主義の後退につながる気がする。

比例代表は176議席を11ブロックで選出するが、最小ブロックの四国で6名。最大ブロックの近畿が28名。従い、自らが支持する人や政党への投票は可能と思う。しかし、289:176ということは、62%:38%なので、比例選出議員数は少ない。人によっては、不満が残ると思う。

選挙制度は妥協の結果と言える面はある。一方、法を制定する立法機関の議員を選出する選挙制度に関する法を自らが制定するという自己矛盾も同時にはらんでいる。従い、国民は理想とする選挙制度について厳しく要求を立法機関に要請すべきと考える。例えば、小選挙区と比例代表の選出議員数の割合。小選挙区、中選挙区、大選挙区、比例代表制等もこの方式という単純な選択ではなく組み合わせもあるはず。

候補者調整一本化は、政党としては、それなりの合理的な判断なのだろうが、投票する方にとっては、違和感を感じる人もおられずはず。

また、与党支持だが、圧勝させたくはなく、批判票を投じたいと考えておられる方もいるはず。10年少し前の選挙で、多数を得た人達は選挙で支持されたのだからと当時マニフェストと称していた政策を反対者の意見を聞いたりせずに、単に実行することのみに注力した人たちがいた。普天間は最悪でも県外移設なんて。時間を掛け、関係者と問題を掘り下げることをしなかった。補者調整一本化では、批判票はどうすれば良いのかな?

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2021年10月15日 (金)

衆議院解散 19日公示・31日投開票となったが

衆議院が解散され、選挙は19日公示―31日投開票の予定となった。衆議院解散を宣言する天皇の詔書(官報号外)はここ にある。日本国憲法第7条によりというのは、 憲法第7条3項による天皇の国事行為解散である。法律には記載なく、天皇が内閣の助言と承認により、国民のために行う行為である。法律に条文があっても良さそうだが、法律はなく、またこの部分の憲法改正も話題にはなっていないと思う。

政党の選挙公約を読み比べてみたいところであるが、今回の選挙はよく分からない。とりあえず眼についたものについて。

1) 消費税率引き下げ

そんなことをすれば、大混乱になると思うだが、しかも民主党政権政策2021には「時限的」なんて言葉も入っている。事業者によっては、5%の税率で仕入れたとしても10%で仕入れたとして、納税額を誤魔化す会社も出てくるように思ってしまう。しかし、それ以上にやはり問題なのは今や税収で一番大きく20兆円の収入が見込まれているのが消費税である。10兆円の国債を発行してやりくりするという案なのだろうか。なお、共産党も同じような政策と思ったが、Webを見ると「税制(準備中)」となっており、分からなかった。

2) え・・・年収1000万円程度までの所得税ゼロと給付金

民主党の政策2021に書いてある。結構な政策だけど、実現可能なのだろうか?そうであるなら、当該政策による税収減の数字とそれを埋め合わせる収入確保手段と金額を示して欲しい。ここ に厚生労働省の平成21年国民生活基礎調査における所得の分布状況がある。これでは1000万円以上は12%である。 所得税の歳入予算額は19兆円弱である。給与所得者だと250万人程度が1000万円を越えるようである。この国税庁の統計 からすると、1000万円以下の所得者が払った給与所得に対する税額は538億円。一方、1000万円超の給与所得者が支払った所得税額は379億円。1000万円を越える人達からは所得税を今の2.5倍徴収することとなるが、そんなのできるのだろうか? 日本を捨てる人が大勢出てきやしないだろうか?その中には、優秀な頭脳を持ち、将来の日本の救世主がいるかも知れないのに。適度な税制が良いと思います。

3) 現預金に課税する?

こんなこと(この毎日新聞の記事 )を言い出す人が出てきたようです。アホの税制としか思えないのです。企業が保有する現金と預金を対象にしているが、そんなことをしたら、現金と預金は極限まで少額の保有とし、国債とか外国証券を含め当然のこととして課税対象外の資産に保有を切り替える。そんなことをしたら経済全体の動きが悪くなるはずだが、バカには分からない。経済・金融・市場とかを理解して正常な社会をつくり出すようにしたい。

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2021年10月11日 (月)

世界の原子力発電

次の様なニュースがあるが、「中国を含めて再生可能エネルギーが急拡大して発電量が増える中、原子力の役割は低下している」とまで指摘するのは、言い過ぎとも思える。

中日新聞 9月28日 中国、第2位の原発大国に 仏の発電量抜き、米に次ぐ

世界全体を正しく把握するためには、各国の原発に関する統計データをチェックすべきである。次の表は、2020年末における各国の原子力発電所であり、国際原子力機関(IAEA)の統計からである。

Nuclearworld202110a

日本において原発2基合計2,653MWが建設中になっているが、この2基とは電源開発大間原発と中国電力島根原発3号機である。

上の表は、2020年の原発発電量であり、前年との比較が次の表である。国毎のばらつきがあり、個々の状況を調べないと変動要因まで言及することは難しいと考える。

Nuclearworld202110b

原発の発電量を1990年の発電量からグラフで表したのが次である。このグラフからは、中国の近年に於ける発電量の増加は大きいと言える。また、原発発電量が減少傾向とまでは言えないと考える。また、一番上の表に建設中の原発も記載したが、バングラデシュでも原発を建設中であり、中国では建設中の原発が13基で12,565MWある。このうちには642MWの高速増殖炉もある。

Nuclearworld202110c

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2021年9月30日 (木)

核燃サイクルはまずは議論を開始せよ

自民党総裁選は終了し、岸田文雄氏が総裁に選出された。9月10日のエコノミストOnlineに次の記事があった。

「核燃サイクルはやめるべきだ」「青森県に保管料を払え」河野太郎氏が示した首相の決断

破綻している核燃料サイクルを維持する意味は、どう考えてもない。河野氏が言うとおりである。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置は2018年3月に認可され、プルトニウムを燃料とする原発建設の計画はない。MOX燃料を既存の原発で使用するとしても、どれだけのプルトニウムを消費するか、少ない量と思う。

しかし、問題はそれだけではない。プルトニウムこそ原爆の原料であり、長崎原爆のプルトニウム量は10-15kgで核分裂を起こしたのは、そのうちの1.2kg程度であった(このIAEAのINIS )。100万kWの原発が1年間の運転で生み出すプルトニウムの量は200kg 程度である。多いと思えるが、交換する量が35-40トンであるので、プルトニウムは0.5%程度。MOX燃料だと4-9%と言うわけで、原発でどれだけ使用するか不明であるのにプルトニウムの濃度を上げれば、核兵器転用のリスクをあげるだけと思える。

方針の転換は大変である。まずは、研究をすべきである。研究とは、技術課題のみに限らず、政府内部、地方自治体、住民・国民、関係する企業、国際的な関係も含めて方針転換について議論をすべきである。どう考えても非合理と思える核燃料サイクルが維持されてきたのは何故か?誰も猫にスズを付けたがらなかったからなのか。スズを付けることは、それほど大変なのか。研究・議論しないと分からない。

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2021年9月21日 (火)

放射性廃棄物を海外処分なんて、良いんですか?

恐ろしいニュースだと考える。

Yahooニュース朝日 9月19日 放射性廃棄物、海外処分に道筋 規制緩和で大型機器の「輸出」可能に

「廃炉が相次ぐなか、低レベル廃棄物である一部の大型機器について、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和する」と述べられているが、低レベル廃棄物とは、実はこの原子力科学研究所の放射性廃棄物のレベル区分についての表 を見ると、 再処理施設で発生するガラス固化体のみが高レベル放射性廃棄物であり、これ以外は全て低レベル放射性廃棄物となっている。日本の原発廃炉工程で出てくる廃棄物は、高レベルに該当せず、全て低レベル放射性廃棄物の扱いである。

低レベル廃棄物とは原発の廃棄物だから、一般的感覚からすれば、高レベルの放射線廃棄物が含まれる。表においては、低レベル廃棄物と呼んでいるものの中でも、放射線レベルの高い廃棄物は余裕深度処分となっている。朝日の記事にある「蒸気発生器」や「給水加熱器」の放射線レベルがどれくらいか不明だが、双方とも熱交換器であり、結構放射線レベルは高いかも知れない。

いずれにせよ原発の廃棄物を簡単に輸出なんて考えて良いはずがない。使用済み燃料を含め、原発の運転から生じた廃棄物は、その原発が存在する国の中で処分すべきである。朝日新聞は、原発賛成の意見、いやそうではない国家対立扇情方向という報道機関として恥ずべき論を出し始めたと思った。

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2021年9月20日 (月)

自民党総裁の知的レベル

9月18日に自民党総裁選立候補者討論会が日本記者クラブの主催であり、NHKも中継をしていた。この討論会の全2時間の動画がYouTubeで保存されており、次の日本記者クラブのWebから見ることができる。

2021年09月18日  自民党総裁選立候補者討論会

私のようなコンサルタントからすれば、発言内容には、十分に検討されておらず、問題含みと思える部分も多かったと感じる。有能な政策秘書、アドバイザー、調査・研究員を抱えて、政策の研究・立案をすべきと考えるのだが。

私が思った、自分自身が多少の知識を有しているエネルギー分野のことについて書いてみる。

1)地熱発電

日本には世界第3位の地熱発電ポテンシャルがあり、力を入れて開発すべきとの発言があった。第3位の根拠は、活火山の数は日本には119存在し、活火山の数が米国、インドネシアに次いで第3位だから地熱発電も第3位であるべきとの乱暴な議論のようだ。地熱発電とは地下資源開発と似ている。地下1000m以上の深さ(5000m以上の場合もあるようである)にある地下の熱水(高温高圧で水と蒸気が混ざったH2O)を掘り当てるのである。従い、油田やガス田開発をする人達のビジネスである。そのような場所が日本にどれだけあるのか?下手をすると、環境破壊である。

世界の地熱発電の表を掲げておく。身の丈に合った開発が良いのである。

Geothermal20219_20210920011801

2) 小型原発

小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)という原子炉の開発が米国等でなされている。小型にすれば、大型より冷やしやすいので、安全性が高まるという発想である。米国NuScale社のSMRは1モジュールが60MWで、6モジュールで1発電所とすれば360MWになる。

しかし、1,200MWというような大型原発が建設されたのは、安全性の追求からであった。全く逆の発想をしようというのだが、そもそもウランを燃料とする原子力発電所である。危険性がなくなるわけではない。リスク評価ができないものをエネルギー供給計画に組み入れることは間違いである。研究開発を適切に見守るのが、現段階では妥当なことである。

3) プルトニウム政策

ウラン原発を運転すると、プルトニウムが生成され、使用済み核燃料に含まれる。プルトニウム(239Pu )は、ウラン(235 )と同じように核分裂を起こす。従い、プルトニウムも原爆の原料となるが、使用済み核燃料のままだと兵器転用は困難と言われている。日本は、プルトニウム を原子燃料として再処理するとして核不拡散条約(NPT)による承認を受けている。しかし、現実には、再処理したプルトニウムを燃料として消費できる見込みは、どれだけあるか?相当少ないはず。

「日本は使用済み核燃料は再処理するので、使用済み核燃料の問題はない。」としてきた。しかし、この政策が破綻してる。問題先送りは、問題の解決をますます困難とし、解決の代償を大きくすることとなっている。低レベル放射性物質の廃棄ですら、容易ではないのであり、重大問題として取り組むべきである。

4) 太陽光発電と風力発電の出力抑制

九州電力送配電は、太陽光と風力の発電出力抑制指令を出している。石炭火力も出力抑制をすべきといった発言を行った人がいるのだが、当然石炭火力も出力抑制を行っていると私は理解している。その根拠は、電力広域的推進機関が再生エネルギー出力抑制に関する検証を実施しており、その結果報告を正しいと考えるからである。報告書は、このページ にある。

発電の出力調整のフレキシビリティーが高いのは水力である。逆に調整不可能が原子力である。火力は、機械(発電所)により異なるが、機械の性能の範囲内で調整可能である。再生可能エネルギーを割合を増加させていこうとした場合、太陽光と風力について出力抑制を実施しないと導入ができない。太陽光、風力の発電事業者が出力抑制の条件に合意して事業を実施しているはずであり、再生可能エネルギーの増加を目指すという課題を追及すべきと考える。

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2021年9月19日 (日)

新型コロナウイルスワクチンの状況

新型コロナウイルスワクチンの3回目の追加接種(ブースター接種)の方針が固まったとのニュースがあった。

日経 9月17日 3回目接種実施決定「間隔8カ月以上」 医師らに年内にも

国境を越えてやってくるウイルスとの戦いであり、グローバル視点で考えることも重要である。そこで、世界全体の地球規模の視点での分析をしてみた。

1) ワクチン接種が進んでいる国、ほとんど手つかずの国

WHOのデータを使い、2回以上のワクチン接種が完了している割合が高い国から順に書き出した。アフリカにおける接種率は低い状況である。世界全体の人口77億人の中で、未だ1回も接種を受けていない人が44億人であり、全体の約60%である。表の中で国名だけだとピンと来ない国もあり、地域も書き加えた。(表をクリックすると拡大します。)

  Coronavirus20219a_20210919151001

2) 新規感染者数の比較

新規感染者数が多い国を1位から20位迄書き出してみた。

Coronavirus20219b_20210919151001

もう少し立つと、もっと見えてきて、収束の予測がつくのかなと思うが、どうなんでしょうかね。

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2021年9月14日 (火)

自民党総裁選で思うこと

ニュースは連日、自民党総裁選のことを報道している。29日の投票日まで続き、30日には新総裁の談話を報じるのだろう。本年11月末までには実施される衆議院選挙において、自民党・公明党が過半数をとるとすれば、今回の自民党総裁選は日本の総理大臣を選ぶ選挙であり、マスコミが力を入れて報道するのは、当然と言える。

政党の選挙なのだから、選挙人は党員に限定されて当然だし、一般党員と国会議員の投票の間にウェイト差があって当然と言うか、その党が決めることだから、外部から批判できるものではない。党員数113万人だから有権者数1億人の1.1%が自民党総裁選の選挙人となり、一般党員が比例計算で383票を投じ、国会議員が同数の383票を投じる。

合理的と思えるが、一般党員を巻き込んでの政策討論会のような場は実質ないと感じる。利益誘導民主主義から抜け切れていないと思える。政治活動とは、支持者と常時政策に関して議論し、研究し、その結果の実現に尽力するものと考える。そのような政治活動をする人達が出てくれば、日本も変わるのかなと思う。

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