2019年10月15日 (火)

関西電力経営幹部金銭受領問題と原子力発電

関西電力経営幹部を含む20人が、3月死去している福井県高浜町の元助役から2006~18年に約3億2千万円相当の金品を受け取っていた。この産経記事(10月2日) によると、受領最高額は鈴木聡常務執行役員で1億2367万円、次いで豊松秀己元副社長の1億1057万円となる。明らかに、常識を越えた金額であり、通常の交友関係ではないと言える。

1) 関電で金銭等を受領したのは全て原子力関係者

贈与したのは、関西電力高浜原発(826MWx2基と870MWx2基の合計3,392MW)が存在する地元高浜町の元助役なので、その贈与理由は原子力発電所であるはず。

2) 原子力発電のコスト

原子力発電とは、金のかかる設備です。単に、存在するだけで、費用が発生するのです。発電が終了し、廃棄するのに、費用が掛かり、その廃棄物処理には、廃棄方法すら不明な部分があり、いくら発生するか分からないという厄介者であります。そんな訳の分からない費用ではあるが、財務諸表では相対的な妥当性と言わざるを得ないが、原発を保有している各社は原子力発電のコストを発表しており、次の表の通りです。

Nuclear201910a

日本全体で年間1兆4千億円という金額です。発電をしているかどうかと余り関係がなく、変動費が少なく、固定費がほとんど言う構造です。次のグラフを見てください。2014年度は、日本における原子力発電の発電量はゼロでしたが、費用は1兆5千億円以上が計上されています。

Nuclear201910b

原子力発電費用の内訳として何が計上されているかを関西電力の2018年度の資料から書いたのが次のグラフです。

Nuclear201910c

3) 原発の地元に落ちるお金

関西電力の2018年度の費用から、考えると諸税163億円のうちの固定資産税63億円、修繕費424億円のうちの地元企業分、委託費246億円のうちの地元企業分が地元に落ちるお金です。関西電力の原発は、美浜、大飯、高浜であり3箇所の合計は6,578MW。うち半分強の3,392MWが高浜町にある。高浜町の地元企業に直接・間接に流れゆくお金がいくらかは分からないが、相当の金額になると思える。そして、原子力関係の物品や人件費は、一般向けより相当単価が高いのです。危険手当的な部分もある。放射線漏れのような事故があってはならないので高品質が求められる。作業員や技術者の年間放射線被曝量の規定があるから現場就労時間に制限があること等による。しかも、上で示したように、発電しているかどうかに拘わらず、変動が少ない。

もし、地元業者がうまく電力会社を取り込むことが出来れば、安定した収入と利益が得られることとなる。食い込む先は、原発に関わる主要人物・部門で良いのです。ここに、この関電金品受領事件の一つの原因があると私は思います。

4) 電力会社(原発発電会社)の都合 

日本原電は、東京電力、関西電力のような電力会社が90%以上の株式を保有する会社であるが、それ以外は全て一部上場の株式会社である。上場している会社の義務として社会的責任もあるが、一つ明白なのは、利益を計上することがある。赤字部門があっても良いが、その場合は、その原因を説明し、黒字にする展望を示すのが経営者の義務と言える。

この株式会社の原則を原発発電部門に当てはめると、経費はほぼ一定なのだから、発電して、例え利益計上できなくとも、収益を増加させ赤字幅を減少させることである。そうなると、経営者にとって、避けるべき事態は、反対運動が起こり、発電できなくなることである。

そんな利害関係に陥った関電原子力会計の幹部と地元のボスであった高浜町の元助役だったのだろうと想像するのです。互いに、「おまえの会社には発注を止めるぞ」とか「反対運動に火を付けるぞ」と言えたとしても、言うことが出来ない関係だっただろう。

5) 今後の日本の原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組み、すなわち、組織や法の問題です。上場株式会社という制度に優れた点は多い。しかし、固定費が大半であり、運転・発電するには、余りにも多くのことが関係する。放射線漏れを起こしてはならないと要求しても、人間がすることに100%はない。しかし、100%に近づけるべく、また万一事故が起こっても被害を許容範囲に食い止めるような技術的・社会的・法的な仕組みをつくることは出来ると思う。それが、許容範囲になっているかどうかを判断する仕組みをつくることも重要である。そのようなことを考えると、やはり現状の上場株式会社による原子力発電事業は無理だと思う。

一つ思うのは、公社のような組織だろうか。但し、既存の公社の制度ではダメである。多くの専門化等が集まり、公開の場で議論をし問題点を洗い出し、修正し、仕組みを練り上げて作っていくのである。そんな、苦労をしていかないと、日本のエネルギー政策・原子力政策はできあがらないと思う。原子力政策と述べたが、その中には原子力をエネルギー供給の選択肢から外すことも含まれる。そのような検討を実施するための資金は存在するのである。何もしなくても、現状年間1兆4千億円の支出が存在する。しかも、この状態が今後とも何10年間と継続するのである、この一部から捻出すれば良く、単に支出を継続するより、効果が期待できる。

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2019年9月23日 (月)

消費税率8%の不思議

新聞雑誌は10月以降も消費税率8%が適用されます。軽減税率の適用だからです。

すなわち、消費税法別表第一が軽減税率の対象品目を定めており、1号が飲食品であり、2号は次の様になっているのです。

 一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞(一週に二回以上発行する新聞に限る。)の定期購読契約(当該新聞を購読しようとする者に対して、当該新聞を定期的に継続して供給することを約する契約をいう。)に基づく譲渡

日刊新聞であれば、対象となる。定期購読だから、駅売店での購入はダメ。なぜ活字媒体の日刊紙定期購読を税金を軽減してまで優遇するのだろうと思うのです。ネット配信は通常税率10%です。そうなると、時代逆行も甚だしいと思う。エネルギー消費や、CO2排出において、ネットの方が、優れており、これからの時代にそぐうはず。そして、記事も即効性が高く、内容も、ネットだと読み比べが楽であり、その分、内容が濃く、品質も高いと思う。部数が少ない場合でも、ネットなら事業として成立する。本当に、訴えたい正しいことは、ネットでこそ伝えられる。ブログを書いている者からすれば、新聞雑誌の消費税率8%は強者の横暴と思う。

そんなことを思っていると、次の様な記事があった。税理士ドットコムの記事です。アンケートに答えると全文が読めます。

税理ドットコム 9月22日「新聞の軽減税率適用」直近の社説で論じた新聞はゼロ 飲食料品の議論は活発なのに…

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2019年9月18日 (水)

台風15号千葉県の停電復旧

台風15号千葉県の停電復旧に関して、東京電力パワーグリッド(このブログ内では東電と略す。)は、記者会見をし、自社のNETでも配信していた。残念ながら、揚げ足を取られないようにしようと27日までの復旧を目指すという事以上の発言は聞くことが出来なかった。(参考:日経 9月17日 千葉県内の停電、なお6万戸 断水も1万戸

台風15号は9月9日朝 5時頃から7時頃に千葉県を通過し、大災害をもたらした。ところで、東電の停電軒数の発表をグラフ化すると次の様になった。

Chibablackout20199a

グラフの右軸メモリのパーセントは、千葉県の総世帯数276万世帯に対する停電軒数の割合である。(1世帯が電力供給軒数とほぼ一致するとの考え)

ニュースに接していると、東電の復旧作業は遅々として進んでいないと感じるが、グラフに書くと停電軒数は2%強まで減少しており、当初の14%以上の停電軒数から考えると随分がんばったんだとも思える。今回の千葉県の停電は、配電網の電柱倒壊や倒木の電線接触による事故が大部分と思われ、地域による差は大きい。そこで、未だ1000軒以上停電となっている市町村を表にしてみた。

Chibablackout20199b

1000軒以上の停電は14市町あった。停電軒数を合計すると57,700軒であり、復旧が残っている58,000軒の99%に該当する。となると、復旧が容易な配電線については、ほぼ復旧を終了したこととなる。冒頭に掲げたグラフを延長すれば、間もなく完全復旧になると思えるが、復旧にあたっては早期に復旧可能な部分から手を付けることとなるので、未復旧の配電線復旧は今までより時間を要するのだと思う。

完全復旧が第一であり、その後に手を付ければ良いのだが、やはり一つの県の10%以上が2日以上停電したことの原因調査とその結果報告、ならびに対策案については発表してもらいたい。電柱を含め設計風荷重の考え方に問題があったのか、電柱付近の木々の伐採や手入れに問題があったのか、工事車両の通行が困難で復旧工事が妨げられたのか、余りにも様々な要因が考えられ、一つづつ評価する必要があると思う。

例えば、このニュース(日経 9月17日 千葉停電、配備遅れた電源車 人員配置などに課題 )であるが、有料部分となるが「だが16日午後5時時点で稼働したのは、計337台のうち96台だった。」とある。記事では、配電線の復旧との関係で資格がある技術者の人員配置がうまくいっていなかったことがあげられている。電源車を運転して現地に行った人は、配電線に接続し、安全性の確保を確認し、エンジンを起動するという操作ができる資格を持った人ではなかったし、そんな人はこのような復旧作業では引っ張りだこだったでしょうね。

もう一つ気になるのはNHK千葉 9月17日 停電で電話不通 救急搬送に影響 というニュースが伝えている救急病院と救急車の電話通話がつながらなかったことがあるというケースです。災害時には固定電話、携帯電話、スマホの電話はつながらないことがあるというのは当然のこととすべき。昔のタクシー無線のような無線電話を救急病院には設置を義務つける必要があると思うのですが、現状はどうなっているのかな?

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2019年9月 9日 (月)

間もなくキャッシュレス・消費者還元事業が始まるが

消費税の引き上げは10月1日からであり、どう考えるべきか、いろいろあると思います。

1)そもそもどのようなことか

2019年10月1日から2020年6月30日までの間に、このマークCashless20199s が掲げてあるお店でキャッシュレス決済で支払いをすると5%又は2%が消費者に還元されるという制度です。「キャッシュレス決済」とは クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済など、一般的な購買に繰り返し利用できる電子的な決済手段です。5%の対象となるか2%の対象となるかは、そもそも買い物をするお店が中小規模事業者でなければならず、小売業の場合は資本金5千万円以下又は従業員50人以下となる。通常は5%が適用されるが、フランチャイズの場合は2%の適用です。例えば、コンビニのほとんどは中小規模事業者であるが、フランチャイズなので2%の適用となる。小売りの物品販売業者のみならず、レストランの飲食代やホテルでの宿泊費も対象です。また、Amazonや楽天のようなネットショップでも出店者が登録企業であれば、適用されます。

2)還元方法
「キャッシュレス決済」を提供する決済事業者によるポイント還元がほとんどだと思いますが、FamilyMartはこのように 2%即時還元と発表しており、レシートが2%減額されて発行されるようです。

3)どうなるか
やはり、キャッシュレス決済が広まると予想するのです。適用を受けようとする事業者は加盟店登録を申請し、登録されると店舗情報がスマホの地図情報にも表示される。おそらく、この情報は、還元事業が終了する2020年6月30日移行も続くと予想します。店舗同士の競争も起こるだろうし、キャッシュレス決済業者間の競争も進むと予想します。そして、この 5%又は2%の消費者還元の財資は政府補助金であり、税金です。不正がないようにと監視がされるし、されねばならない。当然、政府の監視は続くし、脱税の監視、マネーロンダリングの監視にも有効利用されるだろうと思います。

 

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2019年9月 7日 (土)

神奈川新町第1踏切事故の一論点

神奈川新町第1踏切事故による京急電鉄の復旧作業は本日午後1時13分に全線で運転を再開ができるまで進んだ。

読売 9月7日 京急、2日ぶりに運転再開…復旧終了・安全確認

トラックの運転手、本橋道雄さん(67)=千葉県成田市=が死亡、乗客ら33人が軽傷を負った大事故である。この事故について、運輸安全委員会も調査対象として取り上げており(このページ )事故調査がなされる。


Kanagawashinmachiac

大型トラックは、上の図の黄色の線の道を進んできて、赤色の踏切を右折横断し、図の右上(川崎方面)から左下(横浜方面)に走る快特電車が衝突した。トラックは最初は図の上側に左折しようとし、左折できず、右折して踏切横断をした。そもそも、黄色の線の道を走行していたこと自身が誤って入り込んだ結果であり、狭い道(幅約3m)なので直進を続け、最後に曲がりきれず京急線の線路を塞いでしまった。

黄色の線の道は、京急の線路沿いであり、京急仲木戸駅付近でトラックは迷い込んだのだと思う。Google Street Viewからであるが、次の写真がその黄色の線の道の京急仲木戸駅付近の入り口である。 駐車禁止の標識があるのみで、大型車に対する警告は見当たらない。


Kanagawashinmachiac1

但し、上の写真地点(Times駐車場の所)への進入入り口である信号機の所には、次の標識が掲げられている。すなわち、現在地と書かれている地点を右折することとなるが、道路は短くしか書かれておらず、行き止まりであることを示しているようである。


Kanagawashinmachiac2

しかし、上の信号機手前100mを右折することでも黄色の線の道の入り口にたどり着くことが出来るようである。その場合は、次の写真の京急線ガードを潜って、すぐを右折するのであるが、標識はないようである。


Kanagawashinmachiac3

長々と書いてしまったが、交通標識の不備が今回の事故の背景にあるのではないだろうか。Google MapとStreet Viewによっての調査なので、不十分な調査である。しかし、その可能性があることは指摘しておきたい。

交通標識は警察の管轄だとすれば、事故捜査も警察が行うので、交通標識の不備についての調査がおろそかになりはしないかと懸念するが、そのようなことがないように、交通標識に関しても調べて欲しい。また、大型車に関しては、狭い道路や右左折困難な交差点について警告表示を行うカーナビの装備を義務付けてはどうだろうか。勿論、時としては大型車が狭い道路や右左折困難な交差点を通行することが必要な場合もある。その場合は、助手を同席し、誘導させることを義務付けてもよいのではと思う。

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2019年8月31日 (土)

横浜市における鉄道事故から

次の様な事故があった。

日経 8月29日 横浜地下鉄、オーバーラン 回送が壁に衝突、居眠りか

引き込み線でオーバーランであったので、乗客にけがはなかった。運転士は「居眠りをしてしまった」との横浜市交通局の説明であったとのことであるが、乗客を降ろした後、折り返すために引き込み線に入る時であり、おそらく乗客を降ろした 数分後のことと思う。運転士は 緊張感から解放され、ほっとした。でも、引き込み線に車両を入れるまではと、運転をしたが最後の最後に居眠りをしてしまった。このようなことであろうか。

1) 本質的解決を

29日の横浜地下鉄引き込み線オーバーランを単純に、当該運転士の過失で片付けてはならないと思う。100人以上の人が死亡したJR西日本尼崎事故の背景には事故原因の当事者に対する不合理な制度である再教育(日勤教育)制度があった。事故があったカーブの制限速度は70km/hであったが、この速度制限ゾーンの手前は120km/hであった。事故があった電車の速度は、制限速度範囲内の116km/hであった(事故調査報告書13ページ)。すなわち、カーブの手前では制限速度範囲内で、カーブになったとたん、50km/hの速度超過となる。合理的な速度の規則をJR西日本は定めていなかった。なお、このカーブの転覆限界速度は105km/hであった。

長々と尼崎事故のことを書いてしまったが、尼崎事故の本当の原因は経営者にある。経営者は合理的な組織運営をし、働く人たちが正しく働ける環境をつくる義務がある。過去において、経営者が無能であっても、働く人たちの努力と工夫により企業は持続・発展していった。しかし、社会が複雑化すると、単純ではなくなる。現代は有能な経営者による合理的な経営が必要である。

ちなみに、JR西日本は、事故直後の発表では、尼崎事故地点の転覆限界速度を133km/hと言っていた。実際の、事故で転覆した電車の速度はそれ以下の116km/hであったし、速度超過で走行した距離も200mもなかったのである。

横浜市地下鉄問題も居眠りをしてしまった原因や因果関係を追求すべきである。運輸安全委員会の報告書を待ちたい。

2) 横浜シーサイドライン

株式会社横浜シーサイドライン は、新杉田駅構内での6月1日に発生した反対方向に進行し、線路終端部の車止めに衝突・停止し負傷者15名(うち重傷3名)を出した事故により運休している金沢シーサイドラインを8月31日から再開すると発表した。同社の発表はここ にあります。運転再開から6日間は保安要員を乗車させ、その後は新杉田駅と金沢八景駅のホームに保安要員を配置し、再開から1月後に全列車の重点点検をし、無人運転にこぎ着けるとの内容である。

事故の原因は、6月14日のこの日経記事 が報道しているように、信号回線のうちの一つ F線が切れていたことのようである。

しかし、本当に重要なことは、横浜シーサイドラインが、事故につながる可能性のあるそのような事態を認識していたのかである。すなわち、経営者も技術者も「無人運転の実施に必要な制御装置や安全装置がハード面でもソフト面でも完備されており問題ない」との認識で F線・R線すら理解していなかったのではと思う。同社の2019年3月期の営業収益は3,976百万円で営業費用3,539百万円であった。営業費のうち減価償却費が1,509百万円で42.6%を占める。諸税が182百万円であり、運送費、売上原価、一般管理費が1,847百万円である。従業員数は他社からの出向者14人 を含め119人 である。1人あたりの運送費、売上原価、一般管理費 の合計は15,500千円である。 14駅存在し、16編成(合計80両)を運行しているのであるから、無人運転による経費節減が達成されていると考える。(1989年開業から当初5年間近くはワンマン運転であった。)

日本には、同様な無人運転の新交通システムが7路線、事業者数で6事業者(数え方によっては5事業者)存在する。開業が一番新しいのが、東京都交通局の日暮里・舎人ライナーである。一番長い路線がゆりかもめの14.7km(但し、神戸新交通のポートライナー線と六甲ライナー線を合計すると15.3km)であり、それほど長くはない。路線によりシステムが微妙に異なると思う。開業時期が異なれば、新しい路線は、その時の最新技術を取り入れる。安全性を高め、コストも安くを目指すのは当然である。しかし、技術は万能では無いし、常に試行錯誤の発展途上であると言える。

私は、新交通システムを否定をするものではない。しかし、車なら大量生産なので、欠陥が発見されれば、リコールで回収される。バスも同様である。鉄道の場合は、有人運転である。無人運転の新交通システムについても、安心して利用できるように、仕組みが確立されて欲しいと考える。

なお、運輸安全委員会は横浜シーサイドラインの事故をこのページ にあるように調査中の鉄道案件としており、調査報告書が待たれる。

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2019年8月26日 (月)

健保連の言うことにゃ

次のニュースがありました。

東京新聞 8月23日 <税を追う>「かかりつけ医」制、機能せず 初診料加算 患者6割で「二重払い」

 2018年度の診療報酬改定で、かかりつけ医の初診料の「機能強化加算」がなされた。患者に対するかかりつけ医が存在し、身近にいるかかりつけ医が相談窓口になることにより健康診断・健康相談、適切な他の医療機関の紹介、介護保険への橋渡し等が合理的に運ばれることが期待できることがその理由と理解する。

記事は、「約六割が二つ以上のかかりつけ医療機関を受診し、そのたびに八百円を加算されていた」と述べており、それじゃ制度の悪用で、開業医の多くは、悪のりしているとの健保連の報告であると報じている。当該報告書は2019年8月23日、「次期診療報酬改定に向けた政策提言(政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究結果Ⅳ)」であり、このページ からダウンロード出来ます。

診療報酬を決定するにあたっては、関係者の意見をくみ取り、それなりの手続きを経て、決定されている訳だが、健保連が意見を述べることで、おもしろいと思った。日本の医療保険制度は、健康保険組合(その連合会が健保連)、健康保険組合を作っていない企業の医療保険である協会けんぽ、公務員が加入している共済組合、国民健康保険と後期高齢者医療保険がある。これらの医療保険のうち政府補助金が入っていないのは健康保険組合のみである。すなわち、政府・厚生労働省にもの申すに、補助金を受けていない健康保険組合が一番ストレートに言えると思ったのである。なお、共済組合の場合は、政府や自治体が雇用主としての半額負担は、補助金ではないが、一般民間企業とは異なるので、健康保険組合が一番自由に意見を述べることが出来ると考える。

ちなみに、日本の医療保険制度の負担と給付に関する図を掲げておく。上の図が保険料を支払負担であり、下の図が保険給付(医療費給付)である。国、都道府県、市町村は人ではないので、医療費給付を受けることはない。上と下で、負担と受給のアンバランスがあることが分かる。勿論、政策や制度であり、アンバランスが悪いと決めることは出来ない。

Medinsurance20198a

下の図は、少し表現を変えただけで、同じ内容です。

Medinsurance20198b

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2019年8月21日 (水)

このような不安をあおる記事を書いて良いのか朝日新聞

日本の医療制度に関しての無知をさらけ出しているのでしょうか。


朝日 8月19日 消費税分969億円、国立大病院が負担 経営を圧迫


国立大学の付属病院も国立病院も自治体病院も日赤や済生会や民間病院も全て同じ扱いをするのが日本の医療保険における制度です。勿論、大学は学問、研究、教育も行っており、他の医療機関と異なる側面を持つのはその通りです。しかし、「学問、研究、教育に関する収支」と「医療を提供する医療業務に関する収支」を混同してはならない。別会計で管理すべきです。ある医療機器を研究と診療と2つの目的で使用することもあるであろうが、その際は使用時間で割り振る等して合理的に管理すべきです。医学研究のための費用は、診療報酬でまかなうのではなく、研究費予算でまかなうべきです。予算が不足というなら、どうどうと国民に対して政府に対して研究費予算として要求すべきです。消費税は、他の病院も負担しているのであり、国立大病院がと言うのは、変です。診療報酬も、保険適用なら、全ての医療機関がどういつ報酬という現行制度はきわめてすっきりしています。解決方法は、保険適用外の自由診療とすることで、そうなると国立大病院の患者は随分と減少すると思うが、どうなるのだろうか?


8月19日の官報で、2019年10月1日から適用する保険診療に関する診療報酬や薬価等が発表されました。初診料の場合は2820円から2880円にと60円アップとなりました。実際の窓口支払額は、通常この30%です。保険診療報酬は、消費税非課税ですが、医療機関が支払う薬剤や医療機器・建築物等は消費税対象であり、診療報酬は標準的な消費税額を見積もって決めざるを得ないのです。どうするのが合理的なのか、一部分のみを取り出して議論するのではなく、全体を考えての合理的な議論をすべきです。

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2019年8月18日 (日)

15年間の参議院選結果を振り返る

参議院議員の任期は憲法46条により任期は6年で、3年ごとに半数を改選するので、3年に1度7月に行われる。1月ほど前の参議院選の投票日7月21から1月ほど経過したのを機会に、1月前の選挙を含む15年間6回の参議院選の結果を振り返ってみたい。なお、選挙区選挙については、複雑な要素が絡み合うので、単純に比例選挙のみを振り返ることとする。

参議院比例選挙の各党の政党別得票率の6回15年間の推移をグラフにすると次の様になった。

Sangin20198a 

 当然のことであるが、比例代表制なので得票率と比例選挙の結果の獲得議席数は一致する。グラフで言うと、2019年選挙では「NHKから国民を守る党」は1議席を獲得したが、それより投票数が少なかった「幸福実現党」他は議席は得られなかった。党派別の15年間の推移を見るために、次の折れ線グラフを作成した。

   Sangin20198e

支持者の方にはおしかりを受けるのを覚悟で、2019年選挙での立憲民主党と国民民主党は民主党として一本化し、15年間の推移が見れるようにした。このグラフを見ると2004年、2007年、2010年の時は最大勢力は民主党であったのである。また、2010年選挙ではみんなの党の獲得投票は7,943,649であり、公明党の7,7639,433より多く、自民党、民主党に次ぐ第3位の勢力であった。

このグラフを見ていると、今の政治家の悲しさを感じる所がある。すなわち、国民のことより自分の権力拡大が重要として刺激的な発言をする。年金2000万円批判なんて、よくわからない。政権交代を国民は望んでいるわけではない。国民のための政策立案であり、立法を立法府に望んでいるし、それが立法府の役割である。そう考えると、バカな議員内閣制なんてやめて、もっと良い制度を研究すべきとも思う。

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2019年8月15日 (木)

アジア太平洋戦争終結の日に思う

今年も終戦の日が来た。日本国内では、平和が続いており、喜ばしいことである。戦争を体験した人は、戦争は2度としてはならないと言う。戦争体験を次世代につないでいき、平和を持続させることの重要性が語られる。

ところで、アジア太平洋戦争開始前、日中戦争(日華事変)が始まった頃、満州国独立宣言の頃、あるいは真珠湾攻撃の報道があったとき、多くの日本の人は、どのように感じ、思っていただろうか?

福島原発事故があって原発が危険だと初めて知ったという人が多くいる。正しく知ることの重要性と難しさがある。それでも、正しく知ろうとする努力は重要である。情報を入手し、分析をする。その結果として真実が多少は見えてくる。2016年12月13日のこのブログ で「戦艦大和・武蔵の大砲は有効だったのか」と書いたことがある。私の結論は、無駄な大砲である。同じように「零戦は有効だったか」を考えても、普通に考えれば、無駄だったとなるかも知れない。何故なら、旋回性能に優れた戦闘機であったから、高度な運転技能を持った戦闘員が操縦した場合には、高性能を発揮する。しかし、バカな上層部がいれば、飛行機と操縦士を酷使して戦死させ、能力は発揮できない。1944年6月のマリアナ沖海戦で日米の大規模海戦があったが損害は日3空母沈没で、米は沈没なし。航空機の損失は日約650機、米123機。戦死者日約3000人、米109人である。船の性能、砲・機銃の性能、航空機の性能、レーダー等の探査性能、暗号解析を含む情報処理能力等あらゆる面で差がありすぎたのであるが、冷静に分析する力さえ日本の方にはなかった。マリアナ沖海戦はVT信管を使ったと聞いたこともあったが、当時はまだ普及するまでには至っていなかったようである。

マリアナ沖海戦と米軍のサイパン侵攻は同じ1944年6月であり、戦争ができる状態ではなかったと思う。多くの日本人は、事実を知らなかったと言えば、それまでであるが、ある程度推察できていた人でさえ、一撃を加えた時点での有利な講和なんて、現実とはかけ離れたことを考えていたようである。

同じような失敗をしてはならない。世界は、どのような方向に向かっているのか?グローバル化が進んだ現代において、日本に限定して考るやり方では世界の競争に取り残されるだろう。豊かな世界だろうか?強者はますます強くなるのか?そこまで考えると、幸せとは何だろう?幸せを求めるには何をすべきかが究極の課題なのかも知れない。

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2019年8月 4日 (日)

表現の不自由展

次のニュースがあった。

日経 8月3日 慰安婦少女像の展示中止 愛知の国際芸術祭

これに対して、日本ペンクラブは8月3日に次の声明を発表し、憲法21条2項が禁じている「検閲」にもつながると言っておられる。

日本ペンクラブ声明―あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の展示は続けられるべきである

なお、私は憲法21条2項もさることながら、21条1項の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」や19条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」の侵害にもなってしまうと考える。ゆゆしき事態である。

ところで、中止となったのは日経記事にあるように「平和の少女像」の展示中止なのか、それとも「表現の不自由展」なのであろうか?この8月4日の朝日新聞の記事 には、『企画展「表現の不自由展・その後」を中止すると発表した。』とある。

「表現の不自由展」とは、8月1日から10月14日まで4つの会場で開催されている「あいちトリエンナーレ2019」のうちの愛知芸術文化センターのプログラムのなかのA23が、この「表現の不自由展」である。「あいちトリエンナーレ2019」については、このページ 、「表現の不自由展」についてはこのページ に説明があります。

私は、展示中止に追い込まれたのは、日経記事のように「平和の少女像」のみと思うが、それでも脅かしにより展示中止となるのは、戦前の言論不自由の時代のことが胸中に浮かび、残念に思う次第であります。「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と書かれている憲法99条に違反している人が今回のことについては存在するとも思うのである。

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2019年7月18日 (木)

これも、やはり、朝日新聞

朝日新聞って、中国批判が好きなのかなと思う。ヘイトスピーチみたいに思える朝日新聞と感じてしまう。「(米中争覇)台湾 ソロモン諸島、染まる中国色 中国人商店ラッシュ/台湾、かすむ存在感」とのタイトルのこの7月18日の記事です。

ソロモン諸島のガダルカナにおいて中国の人たちが商店を多く開設・運営し、中国製品を販売しており、中国の世界戦略が及んでいるかのような表現がある記事です。華僑とも呼ばれる中国商人は、世界中で活躍している。世界中のどこに行っても、中国の人は住んでおり、その国や地域の人たちと協力し助け合って住んでいる。日本に横浜中華街があるが、あれは中国政府の手先だなんて誰も思っていない。朝日新聞の人は違うのかな?世界は一つ。国はあるが、人はどの国に住むのも自由である。条件は、国には主権があり、その国の法律に従う必要はある。法律に従ってビジネスをするのは正しいことである。このことを批判するのは良くない。

ソロモン諸島は、元英国領であり、ガダルカナルの戦いの結果米軍が駐留していたこともある。しかし、1978年7月に独立を遂げたのは、英国からである。確かに、ソロモン諸島が正式に外交関係を持っているのは、台湾であり、中国ではない。しかし、貿易の最大相手国は中国である。輸出の60%以上、輸入の20%以上が中国である。

ソロモン諸島の人口は、60万人。軍隊は保有しておらず、オーストラリア、英国や近隣諸国と友好関係を推進している。台湾と外交関係があるが、オーストラリア

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2019年7月15日 (月)

これも朝日新聞の誤報と思う エルサルバドル共和国 ラ・ウニオン港

誤報と思う朝日新聞の記事はこれ米中争覇)台湾 中国マネー、迫る断交ドミノ 切り崩しへ、中米の港湾にも触手

冒頭部分以外は、有料会員限定となっており、私は全文は紙で読んだ。1面からの続きだが、誤解を招く部分が多い。

1) 写真のラウニオン港は日本の援助により建設された

記事中で目に付くのが、「エルサルバドル東部のラウニオン港。立ち寄る船も少ない岸壁には、さびが目立った=ラウニオン、鵜飼啓撮影」と説明が付いている港の写真である。最初は、中国がプロジェクトの妥当性を無視して建設し、エルサルバドル国民が巨額の負債を負ってしまった案件なのかと思った。

しかし、事実は違った。日本政府が2001年に112億円の借款を与えて建設したのである(当時の円借款供与機関JBICのプレスリリースはここ にある)。2002年着手。2005年土木工事開始。2009年完成。JBICのプレスリリース には、「同国における唯一の国際貿易港であるアカフトラ港は、外海(太平洋)に面し、うねり等の自然条件により、貨物取扱量、特に迅速な荷役作業を要請されるコンテナの扱いに限界があり、同国の増加する海運貨物及び世界的な潮流である貨物のコンテナ化に対応できる施設がない状況にある。エルサルバドル政府は、かかる状況に対応するため、同国東端のフォンセカ湾にラ・ウニオン港の再建を計画、同国の開発計画上の最優先事業の一つに位置づけている。」とある。

ラ・ウニオン港の場所は、 ここ である。ラ・ウニオン港 は エルサルバドルの東の端に位置し、この港の対岸は、ホンジュラスである。ラ・ウニオン港 は、 ラ・ウニオン湾に面しており、このラ・ウニオン湾にはシラマ川、パサキナ川、エル・サウセ川、ゴサコラン川が流れ込み、多分ホンジュラスの川もラ・ウニオン湾に流入しているはずである。川から土砂が常に流れ込む場所に港を建設したのである。設計は、何と水深16mだから日本でもこれ以上深い岸壁はない。この博多港のパンフレット でさえ、水深15mと言っているのである。土砂が流れ込む港は、小さな船しか入港が無理であり、大きな船に対応するなら浚渫を常時実施するしかない。その場合は、浚渫費用と港湾の経済的利益の対比である。実に簡単な計算である。

112億円の借款供与時のJBICの2001年プレスリリースでは、問題ありと書いてあったアカフトラ港とは ここ である。現在はコンテナーが並んでいる。

参考資料としては、JICAが2016年に実施した2015 年度 外部事後評価報告書がここ にあり、また浚渫に関する2014年6月付けの報告書がこのページ からダウンロードできる。浚渫に関する報告書によれば、当然のことながら、深い水深が得られるように深く浚渫すると浚渫コストは高くなるが、経済的利益に相当する港湾の期待収益は大きくなる。ある程度の深さで妥協できるかというと、いかなる場合においても、浚渫費用の方が港湾の期待収益 より大きいと予想されている。それじゃダメジャンの典型である。放棄しかあり得ないように思うが、エルサルバドル国民には100億円以上の借金が残った。

2)中国とエルサルバドル

中国 はエルサルバドルに150億円の借款を供与するとしている(参考:ロイター記事2018年11月8日 )。このロイターの記事2019年6月28日なんかは、大統領は中国との関係確立と述べたと報じている。 中国が進出しているのは事実である。しかし、朝日新聞の記事(有料部分)には記事のタイトルにあるような港湾にも触手を伸ばしているなんて記述は、どこまでが事実か、せいぜい問い合わせを受けて検討しているという程度のように思える。ラ・ウニオン港に関しては、完成したが、オペレーションができないプロジェクトである。誰でも良いから、助けてくれと、中国関係者にエルサルバドル関係者が依頼しても何ら不思議はない。多分、中国側は、よほどの反対給付が得られない限り断るであろう。

もしかしたら、日本のラ・ウニオン港の援助こそ、日本の誰だか知らないが、多分複数なのであろうが、うまく騙されたのであろう。勇気を持って、プロジェクトを廃棄させることが、できなかった関係者である。本当は、日本の援助関係者に猛省を促し、真実や責任を追究する必要性があるように思うのだが、朝日新聞は何も述べていない。

3)朝日新聞GLOBE

朝日新聞に朝日新聞GLOBEなるのがある。ここ に朝日新聞GLOBEの「112億円の港にコンテナ1つ 失敗したエルサルバドル開発援助」と言う2018年4月17日付の記事がある。この朝日新聞GLOBEの記事には、 実情が正しく書かれている。同じ会社なのにと思うが、そんなことこそ朝日新聞なのかもと思う。

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2019年6月24日 (月)

年金のことをまじめに考える(その2)

年金について、続けて、少し追加で書きます。

1) 厚生年金の受給額予想

グラフで示すのが一番分かりやすいと思うので、グラフを作成しました。

Pension2019624

青線が、受け取り年金額(年額)の予想です。厚生年金保険料は収入額の9.15%(会社負担との合計では18.3%)なので、収入が多い人ほど多くの保険料(掛金)を支払う。その分、受け取る年金も増える。青線は、右肩上がりの直線です。

しかし、現役時代の年収額と受け取り年金額を比較すると、黄色線のように年収3百万円であった人は約40%相当の年金額であるのに対し、9百万-1千万円の年収の人は26%程度となってしまう。

世帯ベースで考えることとし、妻が3号被保険者であった場合は、世帯ベースでは妻の基礎年金が加わるので、現役時代との受け取り年金額の比較は次のグラフのようになる。

Pension2019624b

年収5百万円であった場合、48%という結果になった。世帯年金額ベースでは、年収5百万円の場合は、約240万円である。共稼ぎ世帯の場合は、報酬比例部分が更に加わるわけで、国の制度としての年金としては、十分とは言えなくとも、この程度でも許容範囲かなとも思った。

2) 非正規労働者対策

直前のブログで厚生年金に加入できていない非正規労働者問題についても触れた。国民年金の保険料は月額16,410円なので、年額では196,920円である。年間収入が2百万円の場合、9.85%に相当するわけで、厚生年金の自己負担保険料9.15%より高い。にもかかわらず、受け取る年金額は基礎年金部分だけなので、仮に年収2百万円で厚生年金に加入している人の年金受給額102万円と比べると年間38万円以上少ないこととなる。同じ負担で、受給できる額に38万円の差がある。10年で380万円であり、20年間では760万円の差である。

もし、夫婦共に非正規労働者で、2人とも厚生年金に加入できていないとすれば、世帯で受給できる年金額は156万円であり、年収2百万円で妻パートの非正規労働の場合の年金額で180万円より24万円少ないのである。しかも、支払った保険料で比べると、非正規共稼ぎの40年間に支払った保険料は1575万円になるが、厚生年金に加入できている人の支払った保険料は787万円であるから、788万円多く保険料を支払ったにもかかわらずである。世に不公平はあるが、是正すべき不公平。是正に向けて取り組むべき不公平である。

3号被保険者になれるのは、夫婦の一方が働き厚生年金に加入できている場合であり、この結果は大きな社会的不公平を生み出していると考える。一方では、年間収入を130万円以下に抑え3号被保険者となるように意識的に働いておられる方もおられる。そのような方々を見捨てることは良くないが、結果的に低賃金労働や非正規労働の増加につながっている面はあると思う。

年金制度は、政治家が足の引っ張り合いをするためにあるのではない。働く人が、生涯にわたり公正な扱いを受け、納得のゆく生活をおくれるようにあるのである。

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年金のことをまじめに考える

金融庁の「老後2000万円」報告書についても、大臣が受け取り拒否をするのは変であるとの意見も最近では出されるようになった。いずれにせよ、年金についての現状・実情を正しく理解することが出発点である。そう考え、思いつくことを書いて見る。

1) 公的年金が老後の必要経費の全てをカバーすべきか?

その人の生き方や思想・哲学の問題だろうか?何歳まで、働き、何歳からは年金や預金等の取り崩しによる収入で生活するかは、人それぞれと言える。働いても、税金と年金・健康保険の保険料で余裕が全くないというよりは、少しでも貯蓄等に回せて、老後を含め備え・蓄えを確保するのが良いと言える。どうバランスを取るかは、個人の自由であるとするなら、ある程度の年金保険料。すなわち、国民が納得できる保険料水準とすべきである。

ちなみに変な計算をすると。人生90年、100年として、23歳から70歳まで働き、70歳から20年または30年の年金を受け取るとする。利息と物価上昇がイコールとすれば、20年または30年の年金 を47年間で払うのだから、年金の額を働いていたときの50%として、年金総額は100 x 20 (or30) x 50% = 1,000 (or 1,500)となる。これを 47年間で払うとすると、21.27 (or 31.91)となる。

21.27 (or 31.91) と言う数字は、大変な金額であり、年金のことを、政治家やマスコミは好き放題に批判しているが、まじめに考えるとウーンとうなる様なことになるのである。なお、年金を払わず、貯蓄もしない人ばかり出てしまうと、高齢生活保護者となるわけで、個人の問題として片付けず、年金制度を社会的問題としても扱う必要がある。

2) 現行の保険料と年金給付

 2017年9月で料率アップはなくなり18.3%となった。1)の計算よりは、安いこととなるが、平均寿命や余命の取り方でも変わる。なお、18.3%は被保険者(個人)と雇用主(会社等)で50%づつの負担となるので、個人ベースでは9.15%である。すなわち、お得となっている。

さて年金給付額であるが、基礎年金(満額732,090円)と報酬比例年金額(加入期間の年収合計 x 0.005481)である。

ボーナス込み年収700万円で35年間が加入期間であるとすると、1626円 x 0.938 x 35年 x 12月 = 640,578円と700万円 x 35年 x 0.005481 = 1,342,845円の合計1,983,423円である。支払った保険料は、700万円 x 35年 x 18.3% (or 9.15%)なので、44,835,000円 (or 22,417,500円)である。 20年または30年の年金を受け取るとすると、39,668,460円または59,502,690円となる。ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、22.6年間年金を受け取った場合となる。

この同じ計算を年収500万円で行うと、年金額1,599,753円であり、20年または30年の年金額は31,995,060円と47,992590円となり、 ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、20.0年間となる。実は、日本の公的年金制度は、高所得者から低所得者に対して所得移動がなされ所得再配分がなされるように設計されているとも言える。

3) 年金の不公平

高所得者と低所得者は、払った年金の保険料と受け取る年金額を比較すると、高所得者が不利であると述べた。理由は、受け取るべき年金額の計算式の第1項は払った保険料額とは無関係であり、被保険者であった期間の年数のみの計算であるからである。実は、この第1項は基礎年金部分であり、国民年金部分に相当する。そして、この部分は、50%が政府(税金)負担となっている。

そこで、第1項の基礎年金部分を半額として計算するとブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、700万円の場合27.0年間で、500万円の場合25.0年間となる。下のグラフは、第1項は半額としていない場合である。

Pension2019623r

なお、もう一つ高額所得者が年金の受領において不利になっている理由がある。それは、第3号被保険者である。 ちなみに第3号被保険者とは、国民年金法第7条第1項第3号の該当者であり、「厚生年金保険の被保険者の配偶者であつて主として被保険者の収入により生計を維持するもの」となっている。年金の扱いは、国民年金被保険者と同じであり、最大年間780,100円の年金を受給できる。この財源はと言うと、基礎年金なので50%は政府(税)であり、残る50%は他の厚生年金の被保険者の負担である。いわゆる専業主婦が大部分であり、その様な場合、夫が高収入である場合が多いと言える。そうなると、高所得者の年金は低くなって当然であり、世帯単位で夫婦合算すると話は少し異なる。

きわめて、複雑であるが、独身者や共稼ぎ世帯は、特に高所得になると、不利になっていると言えるように思う。

4) 年金だけで生活できるか

収入に合わせて生活費を工夫している面があり、答えは単純ではない。3)で述べたように、高所得者の年金受取額は負担した保険料と比較すると低くなる。厚生年金の場合は、上限額が月額63万円、ボーナス最大1回150万円なので、年収1000万円以上は、払う保険料も受け取る年金額も同じとなる。計算をすると、年間255万円以上の厚生年金を受領することはできない。そうなると、金融庁報告書の平均的な場合の支出額月263,718円を12倍すると316万円となり、不足するが、妻の基礎年金78万円を足し合わせると333万円であり、世帯ベースではクリアできることとなる。

でも、年収1000万円の場合の年間支払い年金保険料は915,000円であり、相当の負担であると言える。そうなると、受け取り年金額が低いと思う人は、貯蓄等をして備える以外に方法はない。貯蓄等を考える場合に、一番有利なのは、金融庁報告書にある年間40万円までの積立投資について運用益が非課税となるNISAと非課税扱いとなっている個人型確定拠出年金iDeCoが一番候補として考えられる。ここまで来ると、金融庁の報告書は正しいとなる。

5) 日本の公的年金制度の問題点

大きな問題と思うことを2点あげておく。

一つは、非正規労働で厚生年金に加入できておらず、国民年金となっている人についてである。満額でも年額780,100円である。月額にすると65千円。農家や商店のような個人事業主なら、何歳になっても働くことができるわけで、高齢となった場合の下支えとしての国民年金で機能した。しかし、非正規労働者となると、高齢化して良い仕事を得られると不安は大きいと思う。厚生年金問題としてより、非正規低賃金労働問題として取り組むべきと考える。

もう一つは、2)の厚生年金の計算で60歳まで35年間働いたと仮定した。実は、現行の制度は、60歳以上働くと、年金が不利になる制度となっている。例えば、国民年金法昭和60年5月1日改正の附則第8条第4項により「当面の間、60歳以降に支払われた保険料は基礎年金の計算期間に算入しない」となっており、これが続いている。60歳以降の保険料は料率が同じでもは、比例部分にしか反映されない。一方、60歳で受給資格を得るが、収入に応じて減額されるので、ゼロの人も多い。支給開始年齢が65歳や70歳に改定されるときに、この不公平な扱いは解消さえると思うが、実は余り誰も知らない不公平である。

 

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