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2007年2月 7日 (水)

法律と通達

1) ブラジルに移住した被爆者に対する健康管理手当についての最高裁判決

ブラジルに移住した被爆者3人に対し、広島県は被爆者援護法に基づく健康管理手当の未受給分計約290万円の支払いをすべきとの判決が最高裁で本日ありました。

読売2月6日-最高裁、広島県側の上告棄却…在ブラジル被爆者訴訟

この記事で、”「時効の主張は特別の事情がない限り、信義則に反して許されず、手当の支給義務を免れることは出来ない」と述べ、在外被爆者については時効の適用が認められないとの初判断を示した。その上で、広島県側の上告を棄却。県に未払い分全額の支払いを命じた2審・広島高裁判決が確定した。”と書かれていますが、”日本以外に住む在外被爆者に対しては、「出国すると被爆者の地位を失う」とした1974年の旧厚生省通達に基づき、健康管理手当が支払われてこなかった。しかし、別の同種訴訟で大阪高裁が2002年12月、在外被爆者の受給資格を認めたことを受け、国は方針を転換。03年3月から支給を始めたが、過去分については、地方自治法に基づく時効を理由に5年分しか支払っていなかった。”との記載があり、この部分がこの判決の背景をよく表現しています。

この被爆者3人は、1955年-65年頃にブラジルに移住し、1991年から95年の間に日本に一時帰国し、その際、被爆者援護法等の認定・手当支給を受けたのです。しかし、ブラジルに戻った1994年-95年以降は手当を打ち切られました。3人は2002年に提訴。別の同種訴訟で大阪高裁が2002年12月、在外被爆者の受給資格を認める判決を出しました。これを受けてと思いますが、厚生労働省は2003年3月に1974年の通達を廃止し、政府は在外被爆者も手当を受けられるようにしました。従い、広島県は未払い分についての支給を行ったのですが、5年以上を経過した1997年以前の未払い分は地方自治法236条の時効により受給権が消滅したとして支払いませんでした。

私も、本件については、被爆者3人に国外にいることにより権利行使を認めず、そのことを理由に今度は時効による受給権の消滅を主張するのは、非常識であり、最高裁判決が妥当であると思いました。なお、判決は、ここにあり、その全文はここにあります。

2) 通達とは

通達とは、辞書で引くと、「その官庁が所管の機関・職員に対してする通知」と書いてありました。今回の判決文では、「通達は,行政上の取扱いの統一性を確保するために,上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準で・・・」との記載がありますが、この通り政府内部の連絡通知です。

例えば、国税庁のWebには、法令解釈通達を初め沢山の通達が出ています。国税庁レポート2006によれば、全国に524の税務署があります。税務署により、扱いが異なっては、税の公平な徴収が出来なくなってしまいます。その為に、本庁が通達を出しており、同時に納税者にも通達を公表しています。税については、税に関する法が全てを規定しているのであり、通達は内部文書ですから拘束力はありません。通達が間違っていると裁判で争うことは可能です。但し、相当の検討を重ねて出されているはずですから、裁判で勝つことは容易ではないでしょうが、個々のケースにおいての妥当性の判断はあり得ると思います。

また今回の判決文に通達について「国民に対し直接の法的効力を有するものではないとはいえ,通達に定められた事項は法令上相応の根拠を有するものであるとの推測を国民に与えるものである・・・・」とあり、この文章の前半と後半がニュアンスが異なる感があるのですが、前半部分が「有するものではない。」の断定であり、後半部分が「推測を与える。」です。

法の解釈は、最終的には国民が行うものと考えます。もっとも、強制力を持つのは、判決ですが。

3) 通達をめぐって

最近通達をめぐっての報道がありました。次の堀病院事件についての報道です。読売をあげておきます。

読売2月1日-無資格助産の院長ら11人起訴猶予へ…現場の実情考慮

「助産士の資格を持たない看護師による違法行為であるが、現場の実状を考慮して起訴猶予とした。」というのが報道の多くであったと理解します。違法行為であるのかどうかについては、通達によればであり、法はそのような細部を規定しないことを以前私も売れない経営コンサルタントのブログ-2006年8月27日-「堀病院」事件(その2)に記載しました。その中に、平成14 年11 月14 日付けの厚生労働省医政局看護課長より鹿児島県保健福祉部長宛ての回答(医政看発第1114001 号)を掲載しましたが、厚生労働省の内部の連絡文書です。内部の連絡文書に触れるから違法・合法というのは、正しい姿とは思いません。問題を正しく分析して、違法・合法を論じ、必要であれば法の改正・制定を議論すべきであるはずと思います。

4) 尾鷲総合病院の産科

尾鷲総合病院の産科については、売れない経営コンサルタントのブログ-10月13日 -尾鷲総合病院ー産婦人科継続で報告の通り、継続されると思ったのですが、実は1月27日の中日新聞ですが、2人目の産科医が辞退 尾鷲市「別の開業医と交渉」という報道がありました。どうなるか、分からないのですが、1人体勢だと昨年と同じことになり、続かないと思うのです。声を出せば、産科医が来るわけではない。お金を出しても、来て貰えないのが現状だと認識することから問題を考えるべきと思います。

産科の現状については、売れない経営コンサルタントのブログで何回も書いたように思うのです。それが我々の回りの多くのことに当てはまってしまうことを最も恐れます。だから、少なくとも現状を正しく認識していきたいと。

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