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2007年2月 1日 (木)

日興コーディアルの報告書を読んで

昨日の日興コーディアル上場廃止の可能性で、本日は報告書を読んだ感想を書くことを申し上げました。感想を書き進めます。なお、以前に売れない経営コンサルタントのブログ12月18日:日興コーディアルグループのプレスリリース12月18日:日興コーディアルとミサワホーム12月20日:日興疑惑12月27日:日興役員に対する株主代表訴訟で書いたエントリーも、この関連です。適宜ご覧になって下さい。

1) 疑惑ではなく確信犯であった

会計処理の解釈上の扱いによるEB債の評価益を取り込んだなんて単純な問題ではありませんでした。EB債発行を決定する2004年8月4日の取締役会議事録が、バックデートして作成されていたのです。EB債発行を実際に決定した日は、9月16日の夜の会議と推定できます。そして、この日に、同時にベルシステム24(以下報告書にあわせBS24と書きます。)のNPIHによるTOBも決定したのです。このことは、報告書37ページ以降の部分に書かれています。会議出席者は、山本NCC取締役兼CFO(NCC財務最高責任者です。)、平野NPI取締役会長、城戸NPI取締役社長、丹羽NPIH取締役、NPI社員5名、NCC社員2名と取締役1名でした。この結果は、9月24日のNCC経営トップが参加する経営会議で承認されました。

何故議事録バックデートを行ったかは、見せかけの利益をつくるためでした。報告書資料部分の012ページに137億円計上しなかった場合と計上した場合の2つのグラフがあります。137億円計上しなかった場合とはNPIHを連結する意味で、計上する場合とは非連結とする意味の説明があります。この137億円が計上できればNCCの業績は順調に回復傾向にあると証券市場や投資家に説明できたのです。こんなバカなことを証券を業務としているNCCがやっていいのだろうかと思います。その上で、この利益が反映された2005年3月期の決算数字を元に2005年11月に500億円の社債を発行して金を集めました。この500億円に対する1%の5億円が課徴金となりました。不二家なんて、これと比べれば生やさしいなと感じました。137億円の利益は私にとって中途半端な金額ではありません。(手がふるえてしまう。)

EB債発行とTOBを決定した理由ですが、要は「後出しじゃんけんによる利益」です。第三者公募とCSKからの購入によりNPIHはBS24の株式を取得したのですが、BS24が上場廃止になるのは2005年1月16日ですから、2004年9月は当然上場株式で市場価格が存在していました。取得価格は第三者公募が20,050円でCSKからの購入価格が27,000円であり、加重平均した購入単価は22,011円でした。9月16日の株価は25,320円でした。この差額を利益として取り込むことを考えたのですが、単純に22,011円と25,320円の差の全額をEB債の評価益とするのは無理だったのです。そこで、8月4日を使いました。この日の株価は24,480円です。それと同時に、NPIが第三者公募資金1042.6億円をNPIHに振り込んだ8月5日の前日というわけです。これで、つじつまあわせをたくらみました。既に、中央青山監査法人との接触において、利益を計上しても監査で問題とならないことの感触を得ていたのです。

その上で、更にTOBを仕掛けることにより、株価のつり上げを計ったのです。多分、この時にTOB価格28,000円も決定したのだろうと私は想像します。TOB発表は、このプレスリリース(2004年9月27日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付けの開始について )にあるように9月27日です。そして最終的には140億円の評価益を計上したのですから、9月末の株価は26,413円程度であっただろうと想定されます。9月16日の株価25,320円よりも上がっており、TOBを仕掛ける作戦にも成功しています。

マネーゲームですよね。ところで、こんなことを手掛ける人達はいくらの収入を得ているかと言えば、報告書の54ページに「本件関与者(6名)の平成17年3月期の年次賞与支給総額は3億4100万円(支給のレンジは3000万円~1億2000万円)であった。」と書いてあります。思わず、豊田商事を思い出しました。

2) 12月18日記者会見での大嘘(一担当者のミス)

当初報道されたのは証券取引等監視委員会が調べを進めていることが明らかになったとして、日経12月16日-日興が不適切な利益計上・監視委調査、課徴金も視野のようなことでした。それに対してNCCは、これのように「現時点で申し上げられることは何もございません。」といったふざけたプレスリリースを行っていました。このあたりは、12月18日:日興コーディアルグループのプレスリリースに書いた通りです。そして、12月18日の記者会見で、NPIの一担当者により書類偽造が行われていたと発表したのです。例えば、読売12月20日-日興、異議申し立て断念…監視委見解受け入れを参照下さい。

NCCは、12月18日に日興プレスリリース-内部管理体制に関する今後の対応等についてを出したのですが、12月25日になり代表執行役等の異動および特別調査委員会の設置についてを出してついに有村純一代表取締役の交代を決めました。しかし、一担当者に責任を押しつけたままであり、産経12月26日 【主張】日興首脳辞任 自らを律するに厳格たれ というような非難を受けていました。

このあたりのことは報告書第6章(81ページから)に触れられています。実は、2006年7月から証券監視委員会(SESC)の検査は開始されていたのです。そして、その結果報告は12月11日に提出されていたのです。この時、既に課徴金5億円も決定していました。勿論、1)で述べたEB債バックデートも発見されていました。12月14日NCC経営会議で財務諸表の訂正を自ら発表することと関係役員の減給そして課徴金5億円の6名による個人弁済を決定しました。ここまで決定しておきながら、12月16日は「現時点で申し上げられることは何もございません。」と白を切りました。12月18日の記者会見では、担当者に責任を押しつけることで、逃げ切ろうとしました。そして、12月25日に断念し、会社ぐるみとまで認めなかったが、会長、社長の辞任と調査委員会の設置を発表しました。

このあたりは、連結だけの問題であれば、NCCは徹底抗戦するつもりだったと報告書は書いています。最後に断念したのは、バックデートの証拠をつかまれたからです。それでも、よく嘘をつき通しましたね。

3) BS24株の駆け引きの狡さ

12月27日:日興役員に対する株主代表訴訟で列記したブレスリリースでは、BS24の第三者割り当てによる株取得が先にあり、その直後にCSKグループからの2,044,000株の取得で、この結果として71.7%の株式をNPIHが保有することとなりました。取得日で並べると、
8月5日第三者公募により5,200,000株を取得し51.5%のNPIHは株主となる。代金1042.6億円
8月11日、12日CSKより2,044,000株を取得し71.7%のNPIHは株主となる。代金551.9億円

実は、この取得であれば、CSKからの株式はTOBとするか市場を通す必要があったのです。ライブドアがニッポン放送をいきなり1/3超の株式取得で有名になりました。売った人達に村上ファンドが含まれています。このライブドアの1/3超の株式取得は東証の時間外取引を利用したのです。だから、当時としては、合法でした。しかし、このCSKからの取得は思いっきりグレイです。

実際は、8月4日の深夜にNPI/NCCとCSKが手を打ったのです。報告書の24、25ページに書いてあります。契約書を分割しました。例えば、8月5日の契約書は1,580,000株についてであり、これは第三者増資前の32.25%となります。当時、CSKは第三者公募でいきなり50%超の株主が出現するのは不当であると裁判所から差し止め仮処分を得ようとしたが負けてしまい、即時抗告等を行っていました。CSKにとっても、負けるよりは、金にすべきと判断せざるを得なくなったのです。合意の条件である取り下げをしました。(2004年8月5日-株式会社ベルシステム24に対する申立て取り下げについて)この当たりは、NPIの予想通りの展開となった訳です。前のブログに書いたようにNPIには森・濱田松本法律事務所が、アドバイスをしていたのかも知れません。報告書で、法律事務所の名前はと○○となっています。

4) EB債評価益に反対した人達

実は、NPI、NCCの内部でEB債の時価評価に反対して戦った人がおられます。最終的に、反対意見は通りませんでしたが、そのような方々がおられたことは嬉しいことです。どなたかというと、NCC監査委員会の社外取締役になっておられる渡邉淑夫氏と渡辺隆司NPI元監査役です。渡邉淑夫氏は、1990年迄国税庁におられ、退職して税理士となられ、1992年から青山学院大学の教授になられ、2002年からNCC監査役となられた方です。渡辺隆司氏は、公認会計士で、2005年までNPIの監査役をされていました。EB債の関係は、会計を知っている人なら、直感でヤバイと思う分野です。キャッシュフローを伴わない利益は、慎重になるのが通常です。だから、お二人は、直感で立ち向かって行かれたのだと思います。一方、山本NCC取締役兼CFO等は、「監査法人が良いと言っているのに、何故問題視するのか」と向かっていったのです。

面白いのは、同じ監査委員会の社外取締役でも太鼓持ちを努め、EB債の時価評価を積極推進され、しかもディスクロージャー不要論まで持ち出された方がおられます。森・濱田松本法律事務所の弁護士松本啓二氏です。弁護士って面白いですね、金を出す人の為には、懸命になって働くのでしょうか。最も、弁護士と言って、一くくりでステレオタイプに話すのが一番いけないんですけど。この報告書は4名の方が書かれましたが、そのうち2名の方は弁護士です。

一つ付け加えると、社外取締役、監査委員、監査役は多分バックデートのことまでは知らなかっただろうと思います。そんなことは、するはずがないとの前提で考えておられたと思います。中央青山も、さすがにバックデートまでは知っていなかったと思います。知っていれば、犯罪に思えます。

この項で、監査役と言ったり、監査委員会といったりややこしいのですが、NCCが2002年6月から委員会設置会社となっているためです。

最後に、明日の予告を申し上げます。「日興がベルシステム24に入っていた理由の推理」を行ってみます。実は、報告書を何度も読み返すうちに、ある影が見えてきたのです。この影を推理してみます。

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