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2007年3月26日 (月)

兵庫県が79億円の支払訴訟を受ける

県が79億円の支払訴訟を受けるというのは、金額も大きいし、ただ事ではない感じがします。次のニュースです。

日経 3月22日 三菱UFJ信託と住友信託、兵庫県を提訴
時事ニュース 3月22日 兵庫県に79億円請求=レジャー施設債務巡り-三菱UFJ信託・住友信託

時事ニュースの方が、多少は文章が長いのですが、その全文は次の通りです。

 兵庫県が県有地の土地信託で整備したレジャー施設をめぐり、借入金の損失補償を県から打ち切られ資金調達ができなくなったとして、事業を受託した三菱UFJ信託銀行と住友信託銀行が県を相手取り、総額78億7900万円の支払いを求める訴訟を神戸地裁に起こしたことが22日、分かった。バブル崩壊で赤字のレジャー施設を抱える自治体は増えているが、その債務をめぐり金融機関から提訴されるのは珍しい。

1) 土地信託とは

信託とは、委託者が自己の保有する金銭、債権、動産、不動産等の財産(信託法改正で、2008年6月頃より負債を含んだ事業も対象となります。)を、受託者に一定の目的に従って、その財産の管理・処分を委ね、管理・処分の結果としての金銭を受託者から受領するか、若しくは受領する権利(受益権)を譲渡して金銭を得る取引です。信託の受託者となれるのは、現行法上信託銀行に限られると思いました。

土地信託の場合は、土地を信託銀行に譲渡し、例えばその信託の目的が賃貸住宅による一定期間の運用であった場合は、信託銀行はその土地に賃貸住宅を建設し、賃貸家賃収入から経費、借入金返済額、利息、信託手数料等を差し引いた残額を委託者に支払います。このみずほ信託銀行のWeb Pageに土地信託の説明がありました。

いずれにしても、信託銀行は通常リスクを負いません。別の、表現をすると、信託銀行のリスクが低く限定されているから、手数料を低く押さえることが可能です。従って、例えば社債発行より、信託を利用して資金調達を行う方が、総合資金コストでは低い場合があります。このスキムの場合、資金の出し手が受益証券の保有者=受益者(購入者)であり、リスクは運用先(債務者)となりますが、受益証券を社債に置き換えても実質は変わりません。従い、証券会社と信託銀行と、どっちが安いのと言うことです。

2) 兵庫県の土地信託

報道の内容のみで、情報が限定されていますが、土地信託であること、そしてその土地に建設したのがレジャー施設であったことが分かります。当然のこととして、三菱UFJ信託銀行と住友信託銀行はリスクを取らない契約となっているはずです。損失補償を県から打ち切られとありますので、この兵庫県の土地信託については、受益証券が発行されており、受益証券の売買を可能とし流通性を持たせるために、兵庫県の損失補償がなされていたと思います。79億円はいきなりこの金額になったのではなく、長期に渡り損失が続いた結果であると思います。

何故、兵庫県は土地信託を利用したのかについて、私はレジャー施設であったことからと想像します。公的な施設であれば、県債発行による資金調達で、県が自ら行うか、公社でおこなったのではないかと思います。レジャー施設であったから、その為の借入や県債発行はしたくなかった。土地信託であれば、信託銀行が全てやってくれる。損失補填は、黒字の絵があるから問題ないと判断した。そんな、ストーリーではないかと思います。

しかし、県事業でも、公社事業でも、信託でも実質は同じです。夕張市の第三セクター等が昨年有名になりましたが、もしかすると土地信託の方が更に分かり難い姿になっているのではと思いました。土地信託であるから、特別会計にすら計上されない。

3) 統一地方選挙

兵庫県議会選挙が3月30日告示、4月8日投票の予定です。夕張市の件があった最初の統一地方選挙であり、地方財政問題は一つの選挙の争点であると私は思います。各候補は、この件について、マニフェストで或いは演説で、どのように主張されるのだろうと思います。三位一体改革は地方自治体財政に厳しい方向であり、地方財政問題は大きな争点であると思います。

なお、たまたま兵庫県が民事訴訟を受けたため、ニュースとなったのであり、水面下に沢山の同様な土地信託等があると思うと、兵庫県に限らず他の地方自治体でも同様な問題があると思います。

4) 兵庫県の情報開示

民事裁判で79億円の支払を求められる訴訟を訴えられたのですから、兵庫県としては県民に事情を説明すべきだと思って、Webを探したのですが、兵庫県の2007年3月記者発表資料を含め見つけることが出来ませんでした。

兵庫県の平成19年度予算を見ると一般会計1兆円、特別会計1.3兆円、公営企業会計0.2兆円で合計3.6兆円でした。フレキシビリティーが、どの程度あるか分からないのですが、いずれにせよ土地信託によりレジャー施設を運営していた土地は県民の土地であり、損失補償を行う財源も県民の税になるわけで、土地信託についても適切な情報開示を行い、係争が発生した際には、その係争内容を説明すべきであると思います。さもなければ、一部の関係者のみに利益誘導が行われていても分からないし、この種の情報公開が個人情報の開示となるわけではないし、民主主義の原則により公開されるべきと考えます。有権者としては、そのように方向に活動して頂ける地方議会議員を選出したいと思います。

ここまで書いて思いました。やはり、法が必要ではないかと。公務員による横領、業務上横領、収賄、背任等の罪は適用となりますが、粉飾決算、不当表示については当てはまらないのではないかと。地方自治体の会計は現金の大福帳主義で貸借対照表が基本的にはない。そもそも、粉飾決算というからには元となる正しい表示のルールがあって成立する。このあたりも良く考えてみる必要があると思いました。

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コメント

土地信託に関する事実確認で少しだけ。

土地信託ではご存じの通り、土地および建物の所有権は信託銀行になります。

また、ここがキーポイントですが、上物を建てるためには資金が必要になりますが、この調達をどうするかです。

上記の書き方ですと受益権自身が価値を持っているような書き方をされておられますので、ちょっと実状とは異なっていると思います。

土地信託では、事業を推進するために、アセットマネージャーである信託銀行(受託者)が、信託勘定自身で借り入れを起こすので、銀行勘定から信託勘定への貸出が発生するわけです。

つまり、あくまでも信託勘定は他人であることから、第三者である銀行勘定は信託受益権を担保取得しています。

ここからは推測ですが、損失補償は信託勘定の利払いを保証するためのキャッシュフロー部分と、元本部分の両方についているのではないのでしょうか。

そりゃ、キャッシュフローが回らなくなって、元本補償がなくなれば、銀行勘定は裸の与信となってしまいます。本件はそのことではないでしょうか。

投稿: ぽん | 2007年4月 2日 (月) 04時44分

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