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2007年5月 9日 (水)

ジェットコースター事故

5月5日に、大阪のエキスポランドでジェットコースターの事故があり、19歳の小河原良乃さんが死亡し、その友人の古川小百合さん(20歳)が重傷、そして11~45歳の18人が軽傷を負った、いたましい事故がありました。この事故について書いてみます。

1) ジェットコースターは乗り物ではない

5月5日の事故があって政府が出した文書はこの5月6日付け遊戯施設における事故対策について (pdf)です。この文書は国土交通省住宅局建築指導課長が出しており、文書の中で触れられている法令は建築基準法、建築基準法施行令です。例えば、スキー場のスキーリフトは、鉄道事業法の索道事業です。しかし、ジェットコースターは乗る場所と降りる場所が同じで、遊戯施設ということです。

遊戯施設でも人を乗せるのであり、人員輸送と同等の安全性が確保されていれば問題はないと思います。実態は、どうであったのでしょうか?私には、遊戯施設であるジェットコースターに関する法令が定めた安全に関する基準は緩かったのではと疑問を持ちます。

2) エキスポランドの乗り物はふじみ野市のプールと違い安全と発言した人がいました

その人は、独立行政法人日本万国博覧会記念機構(ホームページはここ)の今川理事で、昨年8月3日の財務省での独立行政法人評価委員会 第15回日本万国博覧会記念機構分科会における発言です。分科会の議事録はここにあり、今川理事の発言は続きを読むに入れておきますが、安全についての発言は次のような部分です。

エキスポランドにつきましては、動く遊具が多うございますので、それについてはマニュアルを作って、そのマニュアルを機構の方でチェックするというシステムにしております。そして、エキスポランドの方は専門の職員で毎日点検を行っておりますし、このエキスポランドを経営している会社は遊具の専門メーカーでございまして、技術者が常駐しているということで、過去、事故が起きた件はございません。

エキスポランドは民間企業であり、万博記念機構がエキスポランドに土地を賃貸してエキスポランドが遊園地を運営していると思うのですが、エキスポランドは、この案内図 (pdf)にあるように万博記念機構が保有、管理する区域の中にあります。

今川理事は、1973年大阪市立大学を卒業し大阪府に就職、昨年6月に万博記念機構の理事に就任した人です。万博記念機構は政府53%出資、大阪府47%出資の独立行政法人で、大阪万博終了の1971年9月に日本万国博覧会記念協会として設立されました。今川理事の発言を読むと無責任理事の典型みたいで、反面教師とすべきでしょうか。

3) ブレーキなしのジェットコースター

ジェットコースターとはブレーキなしの乗り物です。正確に言うと、車体にはブレーキが備わっておらず、地上からブレーキ板が出てきて車体を停止させる構造です。英語ではジェットコースターをRoller Coasterと言いますが、Wikiでを引くとこれで、詳しい説明が出ています。ジェットコースターは乗り込んだ後、チェーンで牽引され高い地点に引き上げられた後、位置エネルギーにより駆動装置なしで転がり落ちる構造で、運転員は乗車しておらず、最後に停車位置の手前から地上からのブレーキ板が作用して停車する仕組みです。(駆動装置が車体に備わっている特別なジェットコースターは別とします。)

但し、通常の車と異なるのは、左右のレールを上下と左または右からの3つの車輪で挟む構造となっています。だから、落ちない。安全と言うわけです。しかし、今回の事故のように車輪が外れれば前提が狂うわけで、「まさかのまさか」と思ってしまいます。

4) フェイル・セーフ・デザイン

世の中に絶対はなく、人間はミスを犯す可能性があることを前提にしてフェイル・セーフ・デザインを採用することは極めて重要と思います。特に、死傷事故が関係する場合は。

私は、エキスポランドのジェットコースターにおいてフェイル・セーフ・デザインは、どうなっていたのだろうと思います。

例えば、小河原良乃さんはこの5月6日の 読売新聞の記事のように、「車体が大きく傾き、レール沿いの鉄柵に頭部を打ちつけて即死」であり、この記事の写真にあるように設備点検用の通路の鉄柵に頭部を打ちつけたのです。立ち乗り式のジェットコースターであるから、万一の場合に鉄柵に頭部を打ちつける可能性を予測して設計すべきであったと思います。もし、中途で気がつけば簡単に改造ができたとも思います。

蒸気機関車が走っていた頃、機関車の始業点検は軸受け等を手で触り異常温度になっていないか、各部をハンマーでたたき異常音がしないか事故に対して万全の注意を払っていました。信頼性が高くないからこそ、日常点検やメンテナンスでカバーしたのです。フェイル・セーフ・デザインとは機械の設計のみならず点検、運転、組織等を含む総合的な設計でカバーしてよいと思います。

ふじみ野市のプール事故に対する事故調査報告書がここ(pdf)にあります。ふじみ野市大井プールの吸水口には針金で止めてあった金網しか防護品はありませんでした。もし、二重になっていれば、事故は防げたはずです。二重にする費用(後での改造を含め)は、プール新設とは比べものにならないほど安いし、安全確保には当然の投資であったと思います。事故調査報告書の35ページには、以下の記述があります。

平成14年の埼玉県(川越保健所長)からの通知による基準によれば、プールを設置する段階において、排(吸)水口は、二重構造とし、一重目として排(吸)水口は、堅固な金網や格子鉄蓋等を設けてネジ、ボルト等で固定させるとともに、二重目としてその先の配管口は金具等(吸い込み防止金具)を設置すること、また、その施設の適正な維持管理が求められている。これらの基準は法的強制力を有するものではないが、市としては施設の安全確保の見地からこの基準に従うべきである。
本件プールは、この基準の適合性からいえば、不合格となる。

5) 470m破損して走行したジェットコースター

この読売新聞 5月9日 コースター車軸折損は内側、不安定走行は470mも…府警によればジェットコースターは破損後(車軸かどうかも疑問を持つので単に破損としておきます。)470m走行したということは、全長970mですから半分以上の距離を破損して走行したのです。3)で引用したWikiにはPLCと呼ばれるコンピューター制御や一度に複数のコースターを走行させる場合の、区間ごとのブレーキ板の設置が書いてあります。

最後にくるのは、誰が安全性を評価したのか、現状でよいのかであると思います。

2007年8月3日の独立行政法人評価委員会 第15回日本万国博覧会記念機構分科会における日本万国博覧会記念機構今川理事の発言関係

橋本分科会長 ええ。ちょっと審議の中で、先日公営のプールの事故等ありましたようですが、エキスポランドの施設の安全性や非常勤職員の研修について、いろいろ質問が出ているので。

中井理事長 わかりました。安全性の問題については一番気にしているところでもございますけども、一応、事業部担当の今川理事の方から、それから、職員の数については総務を担当しています藤原理事の方から、具体的にお答え申し上げます。

橋本分科会長 簡単で。

今川理事 最初に、プール事故に伴います公園内のエキスポランドの件につきまして、簡単に御説明させてもらいますと、エキスポランドにつきましては、動く遊具が多うございますので、それについてはマニュアルを作って、そのマニュアルを機構の方でチェックするというシステムにしております。そして、エキスポランドの方は専門の職員で毎日点検を行っておりますし、このエキスポランドを経営している会社は遊具の専門メーカーでございまして、技術者が常駐しているということで、過去、事故が起きた件はございません。昨年起きましたのは、動いている遊具に安全装置が作動しまして止まったというものでございまして、事故という範疇のものではございません。それは、さらに点検して、問題ないということで遊具の動きを再開しております。 そして、我々の方は、それ以外に、エキスポランド以外に園内に遊具がございますのですけれども、これにつきましては、職員が2人1組で毎日点検しております。そして、これに当たる職員については研修にも行かせております。そして、毎月最低1回、専門業者に点検をしてもらっているという状況でございます。 それから、さっき言いそびれましたけれども、エキスポランドの方は機構の職員を1人、担当を決めまして、毎週最低2回はエキスポランドに足を運んで、その安全について向こうの職員と打ち合わせをするというような形をとっております。 今回のプール事故につきましても、すぐさま点検いたしました。また、エキスポランドにもプールがございますが、昨年できました最新のものでございまして、二重構造式になっておりまして、排水溝の取りつけ部分については問題ないことを確認しております。 また、イベント等でも非常に危険を伴うものがあるわけですけれども、それは警備体制の方のチェックということで、我々の方は警察の職員OBを採用しまして警備体制のチェックはできるようにしておりますし、それから主催者の指導をその職員が行って、当日は職員が出勤して警備体制の指導をするという形をとっております。 こういったことで、予測しがたい事故が起きますので、他に起きた事故を教訓に、再点検して万全を期してまいりたいというように考えております。 以上でございます。

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