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2007年7月15日 (日)

スティール・パートナーズに対する東京高裁の決定

東京高裁の決定文が公表された段階でエントリーを書こうと思っていたました。しかし、経済産業省の北畑隆生事務次官が13日の記者会見で、スティール・パートナーズを「濫用的買収者」と認定した東京高裁の決定を「画期的だ」と評価したと報道(日経記事 ここ)があったことから、私もまだ決定文を読んでいないのですが、ブルドックソースvsスティール・パートナーズに関する東京高裁決定に関連することと等を書くこととしました。

1) スティール・パートナーズは濫用的買収者か?

Toshiさんのブログ(7月11日 スティールは「乱用的」or「濫用的」?)や(7月14日 「濫用的買収者」って何だろう?)は東京高裁の決定文を読んだ上で書いておられるます。Toshiさんのブログによれば、東京高裁はスティール・パートナーズを濫用的買収者とし、「信義誠実の原則により・・・権利の濫用と認められる」とか「信義則上、濫用者と認められる」等の記載があるとのことです。

問題は濫用的買収者と判断したの基準ですが、決定文を読んで書いておられる他のブログを見ても明確な基準を示さなかったと私は感じています。その場合、裁判所の判断としては体を成していないと私は考えます。日本は法治国家であり、三権分立の国であると信じていました。法の解釈は政府が行うものではなく、裁判所が行うものである。裁判所は、法のどの部分の解釈により、あるいは商慣習等の慣習により判断するのであれば、それがどの様な慣習であるのかを説明した上で、決定を下すべきである。

トンデモ判決・決定ではないかと思っています。従い、決定文を読んだ上で、批判を書きたかったのですが、経産省馬鹿役人が輪を掛けたトンデモ発言をしたようで、黙ってはいられなくなった次第です。日本は、政府が法・裁判を取り仕切るような三権分立がない国家社会主義の国ではないはずです。「スティール・パートナーズが、これこれの発言をしているから従業員や取引先、消費者などとの関係を無視している。」と具体的事実をあげて発言したのなら、分かりますが、多分高裁決定のみでの発言と思うからです。

なお、東京高裁決定に関しては、NHKの報道は酷いと思いました。ろじゃあさんのブログ(7月10日 遅ればせながらブルドックの件:東京高裁抗告棄却)には、NHK速報版は「ひたすらみずからの利益のみを追求する乱用的買収者」と書いていたとのことです。修飾語がずいぶんついた上に濫用者が乱用者となっており、意味が違ってきます。

投資を含め広い意味で商取引は自由が原則です。しかし、自由のみではなく一定のルールや禁止事項があります。例えば、使用禁止食品添加物、独禁法に触れる不公正取引、ミートホープ牛肉への混入、JFE商事建材販売鋼材ニセ証明等してはならないことはたくさんあります。これらは、普通に考えれば多くの人が判断できることです。東京高裁の判断は、基準が明確になっていないように思え、基準が明確になっていないなら誰も判断ができず裁判所の独断になるからおかしいのです。

Toshiさんは、「会社法だけの問題ではなくて、民事訴訟法とか、要件事実論など、裁判制度の根幹に関わる問題点も内包している」と書いておられますが、私もそんな気がして、決定文を読まなくてはと考えています。

2) スティール・パートナーズの税金とブルドックソースの税金

一般の株主については、ブルドックソースの1株が4株に分割されたことと同じで、課税はなし。売却時に株式の売却益があれば課税と思います。(1株あたりの取得価額を購入時の1/4にします。)

スティール・パートナーズの税金はややこしいのですが、スティール・パートナーズとして投資をしているのは日本法人ではなく、非居住者もしくは外国法人であると思います。(有価証券報告書からするとGrand Caymanと思います。)そうであれば、非居住者もしくは外国法人の場合、株式売買益は、所得税法161条または法人税法138条の国内源泉所得に含まれず、課税されないと私は思います。

スティール・パートナーズは一般株主と異なり23億円の支払いをブルドックソースから受領します。この支払いは、何であるかですが、私は株主資本(資本金と剰余金)の払い戻しであると考えます。即ち、株式や新株予約権の売買ではない。

具体的には、2007年3月末のブルドックソースの株主資本は173億円ですが、このうち資本金は10億円、資本剰余金が26億円、利益剰余金が141億円です。自己株式が3億円あるため、これを減額して173億円です。スティール・パートナーズの保有株式を10.5%であるとすると資本金と資本剰余金の合計36億円の10.5%の3/4が資本金と資本剰余金の払い戻しで3億円弱が資本金と資本剰余金の払い戻しであり、払戻総額が23億円とするなら20億円が利益剰余金からの支払いであり、利益の配当と全く同じです。税法上は剰余金の配当として行われるわけではないので、「みなし」という言葉がつきますが。

20億円が見なし配当であれば、20%の4億円を税としてスティール・パートナーズは支払う(実際には源泉徴収)ことになります。一方、ブルドックソースですが、資本の払い戻しであれば、当然損金不算入です。23億円を特別損失として計上しようが関係ありません。財務諸表上どのように扱うかは、企業の考え方で異なる場合があると思います。しかし、税は不公平であってはならないのです。もし、ブルドックソースに損金算入を認めたならば株主との間で変な取引を繰り返して税金逃れをしてしまう悪徳がはびこると思います。

でも、どうしてこんな変な方法をブルドックソースの経営者は選んだのでしょうか?2/3の株主が支持してくれるなら、何も怖くなかったはずです。スティール・パートナーズのTOBなんて無視しておけば良かったのです。23億円も支払う必要は全くなかったのですから。

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