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2007年7月16日 (月)

厚生年金における配偶者

年金については、種々の話題になっていますが、こんな話はどう思われますか?

報道としては、次の3月9日の読売新聞の記事です。

読売 3月9日 近親婚の女性に遺族年金受給資格

この事件は、新聞記事だけでは、何がどうかよく分からず、やはり判決文を読む必要があります。判決文は、次です。

平成19年03月08日 事件番号平成17(行ヒ)354 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件 最高裁判所第一小法廷判決

1) 遺族厚生年金とは

厚生年金の被保険者又は被保険者であつた者の死亡当時その者によって生計を維持していた配偶者、子に支払われる厚生年金です。そして、厚生年金保険法第3条第2項には次のように規定されています。

この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

暖かい法律だと思いますし、事情のある場合は、それを汲むことも大切だと思います。

2) 本事件の経緯

判決文にあるのですが、A氏は結婚し妻に長女が生まれたが、その頃から妻は統合失調症(どのような病気か私もよく分からないのですが)となり、妻は実家に帰ってしまいました。A氏は離婚を決意し、協議を重ねたが、妻の精神状態が原因で協議も困難であり、妻の両親は離婚後に妻の妹と結婚することを望んだ。

A氏は親と同居しており、夜勤もある勤務の都合上長女の世話はA氏の両親が行っていたが、農業で多忙であり、十分な世話はできず、長女は離乳食なども余り食べることができず、栄養失調気味であり、その衣類の洗濯も十分に行われていなかった。

A氏の兄の長女が、春休み、夏休みなどの長期の休みには、A氏の両親である祖父母の手伝いをするため実家を訪れ、その際に長女のおしめを替えて洗濯するなど、長女の面倒を見た。長女も、親族の中で最もこの兄の長女になついていった。

A氏の父親は兄の長女と結婚することを提案し、兄の長女にも父親が説得し、兄の長女はA氏の長女に同情して結婚を承諾した。妻との協議離婚も成立し、兄の長女との結婚に当たっては、妻の時と同じ親族が媒酌人を務めた。

兄の長女と結婚したことについて証明願いを町長宛に提出し、証明するとの町長の記名押印を得た。A氏を世帯主とする健康保険証には、実質的に妻となった兄の長女の名前も記載され、源泉徴収票にも配偶者控除の対象として記載されていた。

二人の間には、二人の子供も生まれ、A氏の収入から生活費を支出し、事実上の妻となった兄の長女が家事を担当し、5人で円満な家族生活を送った。約42年間にわたり夫婦としての生活を送り、A氏は死亡した。葬式の際も、A氏の妻として挨拶を行い、共同生活を始めた当初から終始、事実上の妻としての役割を果たしてきた。

平成13年10月19日付けで、遺族厚生年金の裁定を請求したところ、10月31日付けで「遺族の範囲に該当しないため。(近親婚にあたり、内縁の妻として認められないため。)」との理由により不支給処分を受けた。

3) 最高裁判決

横尾和子裁判官を除く全員一致ということで、次のように述べています。どのように思われますか?

我が国では、かつて、農業後継者の確保等の要請から親族間の結婚が少なからず行われていたことは公知の事実であり、前記事実関係によれば、上告人(A氏の事実上の妻)の周囲でも、前記のような地域的特性から親族間の結婚が比較的多く行われるとともに、おじと姪との間の内縁も散見されたというのであって、そのような関係が地域社会や親族内において抵抗感なく受け容れられている例も存在したことがうかがわれるのである。このような社会的、時代的背景の下に形成された三親等の傍系血族間の内縁関係については、それが形成されるに至った経緯、周囲や地域社会の受け止め方、共同生活期間の長短、子の有無、夫婦生活の安定性等に照らし、反倫理性、反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低いと認められる場合には、上記近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという法の目的を優先させるべき特段の事情があるものというべきである。したがって、このような事情が認められる場合、その内縁関係が民法により婚姻が禁止される近親者間におけるものであるという一事をもって遺族厚生年金の受給権を否定することは許されず、上記内縁関係の当事者は法3条2項にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に該当すると解するのが相当である。

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