ブルドックソースの買収防衛策
6月29日のエントリーブルドックソースの第1戦勝利において、「(webのどこかにあれば、教えてください。)」と書きましたことから、決定文がこの裁判所のWeb (pdf file)に掲載されていることを、ろじゃあさんブログで書いておられました。まだ、私も読めておらず、とりあえずその報告です。(このところ、ブログ更新を行うことすら、なかなかできておりません。)
1) 報道・ブログ関連
本日の次の日経NBOnlineに谷川博氏の書かれた記事がありました。
NBONline 7月4日 投資の自由は、侵されないのか ブルドック対スティールの係争が投げかける問題
私もブルドックソースが上場会社でないなら、名指しで特定の株主に株式保有制限を設けることについて、何ら問題はないと思うのです。しかし、上場会社の場合は、一般投資家が自由に株式売買を行えることを会社が保証することから上場会社となっているのであり、その制限を設けることが上場会社許されるかとの疑問はぬぐい去れないものがあります。このあたりは、会社法の問題ではなく、上場基準の問題であり、東証等の証券取引所の上場基準や金融証券取引法の問題として考えるべきであろうと思いますが。
つぎに、磯崎哲也さんのisologueです。
isologue July 4, 2007 ブルドックの買収防衛策の感想 - 「番犬にならないブルドック」
磯崎さんらしい分析をされておられますが、最後に結んでおられる次の文章です。これ、その通りであると私も思います。
自己資本が厚かったり、キャッシュや遊休資産がたんまりあったりする会社ばかりが買収をかけられるのであればいいですが、誰の目にもすごい技術はあるが、キャッシュも自己資本もないような会社は、今回のブルドックのような気前のいい防衛策を導入できませんので。
ブルドックソースはスティール・パートナーズに23億円を支払います。そして、そのお金は、ブルドックソースのお金です。私が、もしブルドックソースに勤めていたとしたら、せめてその何分の一かでもボーナスとして私に払ってくれないだろうかと思ったかも知れません。
2) 勝利者は誰か?
ブルドックソースは勝利者なのでしょうか?23億円の支払いを提案したブルドックソースの経営者は、提案通りに推移しており、勝利者であるのでしょうが、従業員や株主あるいはソースの消費者等関係者にとって、この結果が良かったのかは、単純ではないと思います。
一方、スティール・パートナーズは敗者でしょうか?この読売ウィークリーにある表には、スティール・パートナーズのブルドックソースの株式取得資金は18.2億円であったと記載されています。この読売ウィークリーが書かれた2007年4月1日直前のブルドックソースの株価による時価が27.3億円でした。スティール・パートナーズは、23億円を取得するわけですが、取得した株式も保有しているわけで、仮に新株予約権の大量発行によりブルドックソース株価が権利落ちをして1/4になるとしてもスティール・パートナーズは保有株を売却すれば約8億円を得るわけです。合計31億円です。そうすると、4月1日時点と比べて4億円ほど投資利益が増加したこととなります。もし、権利落ちの幅が小さければ、その分さらに投資利益は増加します。都合、13億円以上の投資利益をスティール・パートナーズはブルドックソース株式のディールで得ることになります。
スティール・パートナーズにとっては、株式売買と買収防衛策に関する法廷闘争を持ち込み、株主総会決議の意義や、プロキシー・ファイト(株主総会委任状争奪合戦)を関係者に再認識させ、日本の証券市場をスティール・パートナーズや外資ファンドにとって投資対象として価値あるものに変身させることに少しではあるが、成功しつつあるのかも知れないと思います。
日本の証券市場の変身は、実は重要なことと思います。改めてエントリーを起こしたいと思っていますが、円キャリートレードにより現在の円安為替レートが支えられている面があります。なぜ円キャリートレードになるのかは、円金利の低さ等様々な要因がありますが、日本に投資魅力がないこともあげられます。本当に日本に投資魅力があるなら、わざわざ為替リスクのある海外に投資する必要はないのですから。日本の証券市場を魅力ある市場にすること。その上で、ルールは最も重要なものです。
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