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2008年1月30日 (水)

近江八幡市PFI病院の倒産の恐れ

前回のエントリー「自治体の保証債務」の最後にPFI病院について次に書くと言ったものですから、今回はPFI病院の倒産の恐れについて書きます。ニュースは次の朝日ですが、日経にもありました。但し、日経は既に記事が消えているので、朝日だけを掲げます。

朝日 1月20日 民間資本活用「PFI方式」の病院が経営難 滋賀

1) 倒産の恐れは本当か

近江八幡市は、近江八幡市PFI病院(近江八幡市立総合医療センター)の経営改善をはかるため、専門家や有識者等で構成されている「総合医療センターのあり方検討委員会」を昨年の12月4日にたちあげ、本年1月21日まで計3回の委員会を開催し、「総合医療センターのあり方に関する提言」(以下提言と呼びます。)が市長あてに提出され、それがWebに公開されています。ここにあります。

提言を読むと、もっと恐ろしいことが、書いてあります。即ち、PFI病院の倒産ではなく、近江八幡市が倒産(正確には、夕張市と同じように財政再生団体となる。)する可能性があるとかいてあります。

具体的には、提言の7ページの下の方です。

(何の対策も採らなければ、数年後に市は財政再生団体へ転落する恐れ)・・・・そして、平成23~25 年度にはこの資金不足額が約50~70 億円に膨らむと見込まれ、この金額の規模は近江八幡市が財政健全化法上の財政再生団体に転落する水準である。

2) 経営悪化の原因

近江八幡市民病院がPFI病院となったのは2006年10月です。PFI病院となるまでは、黒字の年もあったりで、自治体病院の中では、良い経営状態の病院であったのです。次の表を見るとよく分かりますが、平成18年度の前半が従来の市民病院で後半がPFI病院です。見事に、大赤字に転落しています。(提言20ページ、21ページ)

 単位:百万円 平成16年度決算 平成17年度決算 平成18年度決算 平成19年度予算額
医業収益 7,417 7,620 7,548 8,673
医業費用 7,247 7,418 7,780 9,795
医業損益 171 202 -232 -1,122
医業外収入 165 201 836 782
医業外費用 459 392 742 1,036
経常損益 -123 11 -138 -1,376
年度未処理欠損金 -88 11 -299 -2,658

PFIになって、なぜ大赤字になったかは、平成17年度決算と平成19年度を比べると、医業費用が23億円以上増加しています。次の表を見てください。材料費のみ減っていますが、すごいのは経費で、15億円の増加です。次は、減価償却費の8億円です。

 単位:百万円 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成17年度から平成19年度へ増加額
給与費 3,724 3,897 4,041 4,364 467
材料費 2,592 2,545 2,149 2,058 -487
経費 652 708 1,348 2,248 1,540
減価償却費 258 247 214 1,090 844
資産減耗費 3 1 8 8 7
研究研修費 18 19 20 26 6
合計 7,247 7,418 7,780 9,795 2,377

提言には、次のことが書かれています。

14ページ
総合医療センターがSPCに対して支払う対価のうち、新病院の施設整備費等の元本に係る支払金利相当額の負担が非常に重いものとなっている。その額は、PFI事業期間30 年間のトータルの施設整備費等約244 億円のうち、約99 億円が金利相当分である(元本は約145 億円)。この99 億円は、毎年数億円以上の医業外費用として病院の資金繰りに重くのしかかっている。

私が、逆算すると利子率3.75%です。但し、提言のこの文章のすぐ下に、「公的金融である地方債で借りていた場合、平成18 年度で約2%前後の金利」と書かれてあり、2%で計算すると年間1.7億円節約できます。30年間合計で50億円です。病院のような施設は、低利資金を使って、社会貢献するように建設すべきです。高利資金に絶対に手を出してはいけないにも拘わらず、禁じ手を使っています。その結果は、健康保険料を支払っている善良な人と、市民サービスが悪くなる近江八幡市民にしわ寄せが行くのです。(支払いの計算書を続きを読むに入れておきますので、興味のある人はごらんになって下さい。)

もう一つ、PFIの変なことをあげます。(アンダーラインは私が引きました。)

9ページ
病院側から委託職員側へ業務上の要望事項がある場合、病院から個々の委託業者へ直接要望することができず、一旦、委託業務を一括して契約しているSPCに対して要望を伝えなければいけない。これが病院と委託業者との直接的な委託関係であれば、病院側と委託側の現場責任者の話し合いで即解決できるという関係が一般的である。つまり総合医療センターでは病院と委託業者の間に、SPCという中間業者が介在することによって、指揮命令系統における手続きが一階層分余計に存在するということができる。

更に提言にある言葉を使って、文章を書くと、

医療現場の仕事は、机上の事務仕事と違い常に患者さんという生身の人間と相対しながらリアルタイムで進行する仕事であり、業務運営上余計な手続きが増えるだけで、現場の効率性が著しく損なわれるという特徴を持っている。また、患者さんが感情を持った生身の人間である以上、その接遇においては十人十色の臨機応変な対応が必要であり、それらに必要とされる臨機応変な対応内容をすべて契約書の文言に規定することは不可能であるとともに、受託業者側が、契約文言にないことを理由に逐一対応を拒んでいては、円滑かつ効率的な病院運営は不可能である。」となります。

こんな病院には、入院したくないと思わせるような迫力があります。 「自治体の保証債務」の場合は、コンテナターミナルです。でも、これは医療です。医療崩壊と言われる中、誰が医療崩壊を促進しているか、よく考えてみる必要があると思います。

3) 責任問題

やはり、責任問題に触れざるを得ませんが、これも、提言から抜き出します。

4ページ
しかし、どのような組織でも経営悪化の責任は、普段から経営に関する実質的な意思決定を行うことのできる経営者にあるということは明らかであり、総合医療センターにおいても経営を悪化させたことで、職員に不安を与え医療の提供に影響を与えているとすれば、この責任は第一義的にはすべて経営者にあるといえる。

経営者とは誰でしょうか?院長ですか?私は、そうは思いません。院長は、PFIにするかどうかの決定には、ほとんど口を挟まなかったと想像します。おそらく、そんな権限は与えられていなかった。マックの店長の場合は、管理職ではないとの東京地裁の判決です。院長は、管理職であったでしょう。でも、経営者では、なかった。

何も考えずにPFIを採用したと書いてある部分を紹介します。

11ページ
PFI事業計画の資金面に関し参照できる十分な資料が得られなかったことから、資金収支計画が綿密に検討されたという事実を認めることはできなかった

12ページ
近江八幡市は、企業体の経営を行う当事者としての自覚と能力を欠いた状態で、PFI方式を前提とした新病院の建設を計画・実行したため、実際の経営を行ってはじめて病院の危機的な状況に気付いたとも考えられる。一部の職員は当初から病院経営計画の妥当性に疑問を抱いていた可能性があるが、PFI推進派に対する遠慮のために言い出せなかったという状況があったということが推測される。

4) 反省点

PFI業者を高利貸しとは言えないでしょう。PFI業者は、業者自身でリスクを計り、金額を見積もったでしょうから。言えることは、近江八幡市はあるゆる選択肢を検討し、最善と思える選択をしたのか、そして、その過程は公開し、市民の誰もが意見を述べるようにしたかだと思います。提言を読んでみると、全く行われていなかったとしか、私には読み取れませんでした。

その結果が、近江八幡市の倒産とこの病院の閉鎖であったなら、最高の悲劇を見ている気がします。 他に私が知っているPFI病院として高知医療センターというのがあります。病床数648床ですから、近江八幡市立総合医療センターの病床数407床の1.6倍です。しかし、高知医療センターがSPCに支払う金額は30年間で2132億円です。単純には比較できないのですが、近江八幡市立総合医療センターのざっと10倍なのでしょうか。(2132億円はこの書類の8ページ目の「3(1)PFI事業の概要」に書いてあります。)

政府や自治体が信じられないお金の使い方をしてしまう。国民や住民が、本当はそんな政治を望んでいないのに、欺されてしまうからでしょうか。

「民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資することにかんがみ」

と始まるのが、郵政民営化法第1条です。私は、間違っていると思います。本当は、

「政府・自治体その他公的機関が実施することが望ましいものは政府・自治体その他公的機関が実施し、民間が実施することが望ましいものは民間が実施し」

が正しいと思います。病院は、民間で実施することに問題はありません。しかし、僻地の場合、高度医療の場合、民間が採算やリスクの点から取り組めない医療の場合については、政府・自治体その他公的機関が実施すべきと私は考えます。

間違っていることが書いてある郵政民営化法が成立したのは、悲しいことです。郵政民営化法も「銀行業と生命保険業は、民間事業とする。」であれば、私も賛成です。

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2008年1月28日 (月)

自治体の保証債務

次のニュースがありました。

日経 1月27日 隠れ負債、自治体に重荷・公社や三セクに対する債務保証

ということで、このニュースの中に次のような文が入っています。

・ 地方自治体が債務保証や損失補償をする、いわゆる「隠れ負債」が一部市町村で大きな負担になっている実態が明らかになった。

・ 塩漬けの土地を抱える土地開発公社向けに保証しているケースが多い。

・ 自治体が債務の肩代わりを迫られれば財政運営に支障が生じ、住民サービスの低下につながる可能性もある。

・ 青森県大鰐町で、大鰐地域総合開発など3法人に対して73億円の損失補償をしていた。バブル期のリゾート開発の失敗で金融機関から肩代わりを求められ、1997年から30年計画で返済している。

1) もしかして巧妙な債務保証ではないか

「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律」という長い名前の法律(財政援助制限法と以下略します。)があります。この第3条は次の通りです。

第3条  政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。

だから、三セクに対する債務保証は、違法であります。しかし、自治体は、保証ではないと言うようです。何故かというと、次のような文面だからであると思います。

つきましては,誠に勝手なお願いとは存じますが,同社の借入金債務に関し,川崎市は貴行に対し,ご迷惑をおかけしないよう,同社の経営に関し充分な指導・監督を行う所存でございますので,貴行のご融資に関し,何卒格別なるご高配を賜りますようお願い申し上げます。

何故、川崎市となっているかは、かわさき市民オンブズマン(ホームページはここ)が、川崎市の第三セクター「かわさき港コンテナターミナル(株)」(略称KCT)に支出した損失補償合計9億円は違法として住民訴訟を起こしていた件の判決文から取ったからです。判決文は、かわさき市民オンブズマンのWebあるいは裁判所のWebで見ることができます。

どのように、解釈しますか?必ずしも、川崎市と同文とは限りませんが、財政援助制限法の下では、総務大臣が認めていない限り、自治体の保証行為は違法であると、私は素直に解釈しますが。でも、そうなると冒頭部分の全てが崩れるように思えます。

3) KCTの判決

横浜地方裁判所2006年11月15日のKCT訴訟(事件番号:平成17(行ウ)28)の判決においては、市民オンブズマンの損害賠償請求を棄却したものの、損失補償は違法無効だとしました。

判決の関連部分を抜き出してみました。

2 争点2(本件協定の適法性等)について
(1) 「本件協定が財政援助制限法3条に違反するかどうか」について

・・・・・・財政援助制限法3条は政府又は地方公共団体が「法人の債務」について「保証契約」をすることを禁じており,・・・・本件協定は民法上の保証契約とはいえないまでもそれと同様の機能実質を有するものであって,同条による規制を潜脱するものというほかはなく,同条に反するものとして違法なものと解するのが相当である。

(2) 財政援助制限法3条に違反して締結された契約の効力について

・・・・・本件協定は私法上無効であって,本件の支出命令及び支出は,無効な支出負担行為に基づいてされたものとして違法である・・・

(3) XX市長の責任について

・・・XX市長が本件協定を有効なものと考え,これを前提とする支出命令を発したとしても,その責めに帰すことのできない,やむを得ない事情があったものと認めるのが相当であり,その点に故意,過失があったとも認められない。

(4) 本件各金融機関に対する返還請求について

ア上記のとおり,本件協定は違法,無効なものであり,これを前提とする本件損失補償金の支払は法律上の原因を欠くものである。しかし,現時点で,川崎市が本件各金融機関に対して既に支払われたこれら本件損失補償金を不当利得として返還を求め得るかということになると,この点については重大な疑義があるといわざるを得ない。・・・・・

4) 悲惨なKCTの事業内容

資本金6億円(うち川崎市出資額3.1億円)で1995年に設立され、川崎市が2006年1月に破産手続き開始の申し立てをしました。

債権集会における負債総額は68億円でした。例えば、1997年3月期の業績は年間売上5億円で、売上原価12億円、販売費及び一般管理費6億円で、営業損失13億円と聞いたら、どう思われますか?さすが三セク立派すぎます。当初借入金は9億円でしたが、たちまち膨らんでいった。10年で倒産したわけで、倒産時には借入金が54億円になっていた。金融機関は最終的には54億円のうちの当初の元本9億円について損失補填により返済を受けたと言うわけです。

思うことは、(1) 政府や自治体は営利事業を行ってはならないということと、(2) 全ての資産・負債及び収入・支出を明らかにして、公告をすること。この2つのことをしなければと思います。

判決文を読むと、以下の文章が【被告の主張】という部分に出てきますが、よくある役所の文章だと思います。これは、参考資料であって、ビジネス・ディシジョンをするための文章ではないですよ。事業をしたことがない人が、事業をすると悲惨なことになるサンプルかなとおもいました。

川崎市としては,コンテナターミナルの整備を決定するに当たって,荷主・船社のヒアリング,経済動向の予測等の様々なデータに基づき,その成立可能性について多方面からの調査・検討を実施し,これらを踏まえ,港湾法3条の3の規定に基づき,学識経験者,地元経済関係者,川崎市議会議員,港湾関係者等で構成される川崎港港湾審議会,さらには運輸大臣の諮問機関である港湾審議会の審議を経て,昭和58年8月改訂の川崎港港湾計画(乙8)において,昭和65年を目標年次として東扇島地区に公共コンテナふ頭を整備することを正式に位置付けた。

同じようなことを、PFI病院について思ったのですが、長くなったので次の機会とします。

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2008年1月24日 (木)

世界の株価

昨日は、1月22日15時32分 読売新聞 日経平均が大幅続落、終値は752円安の1万2573円のように、安値を付けましたが、本日は、次のように一旦は回復しました。

1月23日 日経 日経平均3日ぶり上昇、終値256円高の1万2829円

本日のエントリー世界の株価とは、風呂敷を広げてしまいました。

1) 各国の株価比較

日経平均、米国代表としてダウ、欧州代表としてロンドンFTSE、中国代表の上海SSE Composite Index、そしてインド代表ムンバイのBSE SENSEXの5つの12ヶ月間のチャートを掲げます。(Yahooから取りました。)

Nikkei22jan2008

Dow22jan2008_2 Ftse22jan2008

Ssec21jan2008

Bse22jan2008

やはり、日本が一番値下がり率が大きいのです。 私が、株価・為替・金利の動向という7月28日のエントリーを書いて、「サブプライムローンのニュースが出たのが丁度7月の中でした」とか言っています。この頃から、ダウは揺れ動き11月頃から下がっています。日経は、下がるところは同じですが、7月まで、ダウは上がってきていたのが、日経は水平飛行でした。そこで、それぞれの株価指数の1年前と現在(1月23日)の株価を比べてみました。下の表です。これを見たら、どうしようない日本経済。優れた中国株。おすすめのインド株と言いたくなります。

  1年前 1月23日  株価比
日経 17,500 12,829 0.733
ダウ 12,500 11,850 0.98
FTSE 6,250 5,674 0.908
上海 3,000 4,703 1.568
ムンバイ 14,000 17,594 1.257

但し、投資を考える際には、元手とした資金を考える必要があります。例えば、米ドルを借りて投資をしている場合は、米ドル建てのリターンを考えることが必要です。グローバル概念で考えれば、リターンを評価する場合には統一の基準が必要であり、株価指数を米ドルに置き直して表を作り、1年前の株価との比較を行いました。次の表です。

     1年前 1月23日   $株価比
日経 US$144.22 US$121.14 0.840
ダウ US$12,500.00 US$11,850.00 0.948
FTSE US$12,345.63 US$11,086.02 0.898
上海 US$385.60 US$648.20 1.681
ムンバイ US$315.74 US$442.84 1.403

結果としては、日本株も円高となった分だけ米ドル建て株価は上昇したことから、値下がり率は小さくなりました。しかし、依然として最も魅力のない市場です。一方、中国、インドは益々光り輝く結果となりました。日本株もかつて円高が進んだときは、米ドルで換算するとすごい上昇率でした。時には、チャートを外貨建てで見てみることをお勧めします。そうすると、外国人投資家が投資を考えるときのチャートになります。

2) 中国株、インド株はお勧めか?

私自身は中国株もインド株も持っていません。しかし、余裕があるのなら日本株以外に中国株やインド株を持っても面白いのではと思います。勿論、このブログは投資勧誘を行うブログではありませんし、ただ訳も分からずに手を出すと、投資先が倒産して紙切れリスクが発生することもあり得ますから、慎重にしてください。でも、一つは中国株やインド株を多く組み込んだ投資信託で投資をするのも面白いかも知れません。

なお、税制改正で上場株式の500万円以内の譲渡益と100万円以内の受取配当金については優遇税率10%とする税制改正が、今の通常国会の焦点の一つですが、中国株、インド株でも上場されていれば、適用させると私は解釈します。(上場株式の定義は租税特別措置法37条の11です。)受取配当金については、本国(中国、インド)における源泉税と日本の取扱者が納付する日本国内の源泉税がかかるはずですが、確定申告により現地源泉税は外国税額控除で日本源泉税は所得税額控除により税額控除が可能です。特に税で不利にならないと思いますが、詳細は証券会社に相談されるとよいと思います。

ただし、外国株式の場合は、現地証券取引所や提携先証券会社の手数料、為替売買差等々が発生し、日本株式よりも手数料や費用は大きくなるはずです。だから、証券会社によく相談して研究してください。米ドルベースで年1.6倍とか1.4倍ですから、FXなんてのより楽しみがあるかも知れません。

前のエントリーでタタ自動車を取り上げたことから、タタ自動車の株価を示します。なお、厳密には株価ではなくADR(American Depositary Receipt(米国預託証券))でありますが、価格は株価に一致していると考えて大丈夫です。従い、米ドル建てになっています。

Ttm22jan2008

3) 日本は?

最後に答えるべきは、やはり、日本はどうするかです。魅力ある市場にすること。即ち、魅力ある会社がたくさんあることが重要です。魅力ある会社を多くすれば、株価も高くなるし、雇用も増えるし、魅力ある会社で勤務することは、夢、希望、高給、好待遇・・・様々なことでよくなると思います。日本の今の経営者は魅力ある会社をつくることに熱心ではなく、自分自身が失業しない(リストラされて首を切られない)様に働いていると思える面があります。社会自身が、(全員マスコミみたいで)常に弱点ばかり探していて、弱点を叩いて楽しんでいるように思えるときがあります。悲しいことです。

例えば、買収防止策が話題となることがありますが、買収の対象となるほど会社を魅力的にすることは、すばらしいことです。でも、日経平均を見たら、買収されるわけもないのに、買収策を講じておられる、あるいは金を掛けて熱心に取り組んでおられる会社があるのではと思えます。買収防止のために、株式の持ち合いをするなんて、愚の骨頂だったりします。新株を互いに発行して持ち合う場合、資金は要しません。しかし、1株あたりの利益や資産が減少し、PERやPBRは悪くなる。配当負担も大きくなります。即ち、資金も資産も増えないのに、株数だけ増えたら、旧株主にとって良いことが何かありますか?ということです。そんな会社の株を買わないというか、外国人株主の眼からすれば、そんな経営陣のいる会社の株を買うほどの馬鹿はいないになると思います。

もっとも、会社法308条により25%以上の株を持ち合うことになると、互いに議決権を行使できなくなるから、変なことになりますが。まじめに自社の技術や人材や自社の資産を生かしていく経営をすることが、重要だと思います。

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2008年1月21日 (月)

インドのタタのナノの驚異

30万円を切る超低価格車として、タタのナノが紹介されていますが、よく考えると驚異の車ではないかと思いました。ニュースとしては、次のMSN産経ニュースをあげておきます。

MSN産経ニュース 1月14日 超低価格車戦争が幕開けへ

1) タタ自動車とは

タタ・グループとは、インドの98社の企業グループで、IT、鉄鋼、化学、自動車、エネルギー、茶、ホテル・・様々あります。そのうち27社が上場企業です。タタ自動車(Tata Motors Ltd.)も上場企業(Bombay Stock Exchange Limited (BSE) とNational Stock Exchange of India (NSE)に上場し、NYSEにADRを上場。)であり、自動車とトラック・バスを生産しています。業績は、次のグラフの通りで、右肩上がりです。円で表示していますが、全て1ルピーを2.73円で換算しました。

Tatapl

2) 自動車ナノ

10万の金額をインド、パキスタン、バングラデシュではラーク(Lakh)と呼びます。ターゲットとするには、丁度切りが良かったのだと思います。ここにタタのプレスリリースがあります。

  形式 エンジン 馬力PS 全長mm 全幅mm 全高mm
ナノ RR 2気筒623cc 33 3100 1500 1600
Maruti 800   3気筒796cc 52 3300 1410 1405
スズキ アルト FF 3気筒658cc 54 3395 1475 1500
ダイハツ ミラ FF 3気筒658cc 58 3395 1475 1530
ホンダ Life FF 3気筒658cc 52 3395 1475 1580

タタは、ナノをスズキのインド合弁会社の車マルチと比べていますが、マルチ800は800ccエンジンなので、日本の軽自動車と比べるのがわかりやすいと思います。ナノはエンジンが2気筒であり、少し馬力が小さいが実に日本の軽自動車にそっくりだと思います。

大きな、違いはナノがエンジンを後ろ置きにして、後輪駆動を採用しています。今は、電子エンジン燃料制御の時代だから、アクセルは電線に繋がっていればよい。そこらが、昔ホンダがエンジン前置き、前輪駆動なんて車を作ったときと世の中が変わっているのだと思いました。いずれにせよ、RRを採用したことで、前の足を置くあたりが広くなった。だから、全長を短くできた。多分、車体重量も軽くて済んでいるのだと思います。安全性は確保したと言っているので、衝突試験も実施したのだと思うし、排ガス規制もクリアーしているのだと思います。

ナノの写真はここにあります。それと、ナノのエアコン付き革張りシート車なんてのも価格は高くなるが作る計画があると書かれています。

3) Distributed Manufacturingとは驚きました

エアコン付き革張りシートは、ラタン・タタ氏(グループ会長)のインタビュー記事に書いてあるのですが、それよりも次のDistributed Manufacturingです。インドでかつて1車種を百万台なんて生産をしたことがない。だから、ナノを生産したい会社があれば、ナノの生産工場を建設してもらって、必要な設計情報や技術を供与する。その方が、コストも安く付くし、開発も進むのだと。

But such a figure (a million cars) has never been achieved in the country before. If it had to be done the conventional way, it would have meant investing many billions of dollars. So we looked at a new kind of distributed manufacturing, creating a low-cost, low break-even point manufacturing unit that we design and give to entrepreneurs who might like to establish a manufacturing facility. We looked at different ways of servicing the product, at the customer's location, and through a concept adopted from the insurance industry, wherein self-employed people are trained and certified by us. And we went back to innovation in design and scrupulously took, as much as we could, cost out of the product.

インド的です。インドには、インドの哲学があるのだと。果たして、成功するかどうか、分かりませんが、すごい実験だし、成功しなくても学ぶことは多すぎるだろうと思います。もしかして、今の日本企業や日本人が失ってしまったのは、そんなチャレンジ精神ではないかと思います。技術は、チャレンジによってのみ発展・進歩します。もう少ししたら、先端技術は全てインドからとなったりして。

ここまで書いて、他のところにもあったのですが、中国と比べたら、中国の二輪車や自動車は日本車のコピーを品質を無視して製造することで発展してきた。タイの自動車は、全てが外資みたいなもの。アジアで、独自に自動車を開発できる国は日本とインドなのでしょうか。タタも中国に出て行くと思います。

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2008年1月17日 (木)

揮発油税の扱い

民主が揮発油税の税率を、租税特別措置法第89条に定めた適用期限がこの3月末で満了することから、本法である揮発油税法の税率に戻そうとの動きが聞こえてきています。

日経 1月16日 民主、ガソリン価格で「値下げ隊」・議員60人が結成

数日前ですが、この朝日新聞の1月13日の記事「3月末まで成立させない」 ガソリン税で民主・山岡氏は13日のNHKの日曜討論の中での発言として、「暫定税率は廃止する方向で検討し、・・・・民主、共産、社民3党の足並みがそろう方向となった。 」と報道しています。

どちらかというと、このブログでは、政府、与党、自民・公明の政策に批判的なことを書いておりますが、揮発油税の税率は現状を維持すべきと私は考えています。その理由を以下に述べます。

1) 石油価格

まずは、原油価格の推移を表したグラフが次です。1999年1月から2007年11月までの動きです。原油価格は、OPEC Baskect Average Priceを使っています。

Crude200711

本年初めに原油が100ドルを超えたと報道がありましたが、あの価格はWTI (West Texas Intermediate)という米国テキサス州の原油のニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)での価格です。上のグラフのOPEC Baskect Average Priceの方が、日本に輸入される原油価格に近いと思います。なお、バレルと米ドルで表現しても、ピンとこないので、円貨換算してリットル表示にしたのがピンクの線です。右座標で読んでください。

これと、ガソリン価格との関係を見たのが次のグラフです。

Gasoline200711

一番上の赤の線がガソリン価格です。総務省の小売統計物価調査の東京都区部小売価格がデータの源です。ガソリン小売価格と原油価格は、ほぼ連動しています。その差額を黒の線で表しましたが、80円と100円の間にあることが分かります。この内訳は、中東から日本へのタンカー運賃、日本での貯蔵、精製、ガソリンスタンドまでの運賃とガソリンスタンドでの販売費用、そして税金です。

2) ガソリンと軽油の税金

ガソリンに課せられる揮発油税と軽油に課せられる軽油引取税に絞ることとします。揮発油税が48.6円/㍑と軽油引取税32.1円/㍑なのですが、実質としてはガソリンには5.2円/㍑の地方道路税(国税ですが、地方の道路関係に支出が限定されています。)があるので、ガソリンは実質53.8円/㍑が税金です。

ガソリンと軽油で税金の差が、21.7円/㍑ですから、これがガソリンと軽油の価格差の大部分です。

上のガソリンのグラフの差額は80円~100円ですから、このうち53.8円が税金なので、26円~46円が輸送費、精製費、販売費になります。平均を計算すると88円でした。そうなると、税を差し引いた残りは34円です。

3) この3月以降の税率は

ガソリンが揮発油税24.3円/㍑と地方道路4.4円/㍑の合計28.7円/㍑及び軽油引取税15円/㍑となります。その根拠は、「続きを読む」に関連の法律条文を記載しましたが、現在適用中の税率については「平成15年12月1日から平成20年3月31日までの間」と記載されているからです。

税金が安くなることは良いことだと単純に考えて良いのでしょうか。ガソリンの年間消費量を59百万キロリットルとし、軽油の年間消費量を41百万キロリットルとして税額を計算すると現行税率でガソリン関係は3.2兆円、軽油関係が1.3兆円の合計4.5兆円です。これが下がった税率になると、それぞれ1.7兆円と6000億円になり合計は2.3兆円ですから、2.2兆円の税収がダウンとなります。

2.2兆円の財源がなくなることは、大きいです。教育、医療、格差問題、研究開発、環境いずれをとっても重要と思うし、手が抜けないと思います。2.2兆円を道路財源として、使用することは中止して当然と思います。その場しのぎではない、解決策を作るべきだと思います。例えば、炭素税の議論が全く行われていません。ずるずると来ているだけだから、1月9日の次のグラフのように、日本の地位は落ちて行くのみという気がします。

Co24_2

それに、税率を引き下げてガソリン・軽油価格が安くなって、その恩恵は、誰の所に行くのでしょうか?下請けの運送業者にはほとんど行かないと思います。税金が下がった分、運賃を安くさせれると思います。自家用車に乗ることが少ない、ガソリンを使わない高齢者にも恩恵は行きません。公共交通機関の運賃は据え置きです。ほとんど、影響がないからです。(元々燃料費により運賃を上げていないと思います。)

高価格だから、省エネルギーが進むのであり、省エネルギーが最も重要という側面があると思います。

4) 世界の石油需給バランス

次のグラフは2006年の初めからの四半期毎の世界の原油生産と原油需要のグラフです。(データは米国Energy Information Administrationからです。)

Oilbalance20073_2

グラフの上に書いた数字は、赤で1.17%の場合は、1.17%需要が生産より大きかった。即ち、不足であった場合です。不足した場合は、在庫(Stock)からの供給となり、生産が大きければ在庫の増加になります。統計誤差も大きい場合は1%近く含まれることがあり得るので、需要の伸びも需給バランスもそれほど大きいわけではありません。少しのバランスに対して、価格は大きく動くのがマーケットです。そして、長期的には、需要も増加するし、価格も上昇すると見るのが正しいと思います。但し、現在の価格が高いか安いかは誰にも分からないのです。

これだけの需給バランスで、最初の1)に書いたような価格変動になるのです。価格は、だれも高い・安いと言えないのです。現実に、その価格で取引がされている以上は、嘘ではない実価格です。年間の取引高は全世界で300兆円です。価格は、コントロールできない。だから、価格が上がっても耐えうる体質を作ることが重要です。それは、揮発油税を下げることとは私には思えません。

続きを読む "揮発油税の扱い"

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2008年1月12日 (土)

テロ特措法の成立

12月16日 のエントリー自民・公明2つの??で、衆議院解散のリスクを冒してまで自民・公明は新テロ対策特別措置法を衆議院の2/3多数決で成立させるのだろうかと書きましたが、解散の恐れがなくなったことから11日に成立しました。読売の記事を掲げておきます。12月に、エントリーを書いたことから、又少し書いてみます。

読売 1月12日 新テロ対策特措法が成立、57年ぶりの衆院再可決

1) 新テロ対策特別措置法とSeptember 11テロ

法案はここにあり、法案通りで成立したと思います。その第1条には「平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃」との言葉が入っており、このテロリストによる攻撃とは2001年9月11日米国での同時多発テロ(Septeber 11)のことであります。失効したテロ特措法はここにありますが、法律名が「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等」で始まっています。

September 11に対する米国のアフガニスタン侵攻作戦は不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom)と呼ばれ、米軍のアフガニスタン侵攻に協力したいが、戦闘地域には入れないのでインド洋で補給活動を行うとして成立したのがテロ特措法です。しかし、September 11から6年以上が経過し、September 11についもその背景、原因、対策等をじっくり考え直す必要があるのではと感じます。

米国陸軍のOperation Enduring FreedomについてのWebがここにあります。アフガニスタン侵攻を米軍は、そう呼んでいるのです。全て、Freedomです。イラン侵攻もOperation Iraqi Freedomであります。

2) 現在のアフガニスタン

アヘンビジネスで潤っています。勿論、違法行為です。手っ取り早く、現金を手にする方法は、アヘンです。ニュースとしては、次のようなのがあります。

Herald Tribune August 5, 2007 2007 Afghan poppy harvest headed for record levels
AFPBBニュース 8月28日 アフガニスタンのアヘン生産量、前年比34%増

国連麻薬犯罪局(UNODC-United Nartions Office on Drags and Crime)のWorld Drug Report 2007にあったアヘン用芥子の栽培面積の表を掲げておきます。

Unodcopium_2 

報告書はここにあります。

全世界の95%近くのShareとはすごいですね。ビジネスにおいて、こんな独占て、本当にすごいです。海上封鎖なんて、全く関係ないと思います。そもそも、テロを軍隊では壊滅できないと思います。むしろ、警察力や、警備力の方が有効であるし、そこまで弱者を追い詰める必要はないと思います。追い詰められた弱者が最後に救済を求めるのは宗教だと思います。宗教にしか望みが見いだせず、自爆していった人間がSeptember 11の犯罪者であったのではと思います。なお、私は彼らを擁護する気はありません。多くの人の命を奪ったのですから。軍隊・軍事力で解決するとは思わないと言っているだけです。そして、軍隊・軍事力でない別の解決があるはずと言いたいのです。

この地図はNATOのWebの地図です。アフガニスタンの隣国はパキスタンだというのがよく分かります。アフガニスタンなんて国は、元々なかったのだと思います。パキスタンを含むインドを英国が植民地とし、トルクメン、ウズベク、タジクなんて所をロシアが侵攻し、英国とロシアの緩衝地帯としてアフガニスタンが生まれたのではないでしょうか。アフガンの南部とパキスタンの西北は同じ人種の人たちです。

ベナジール・ブットが選挙戦中に殺された。まだよく分かっていませんが、アフガンとパキスタンの恵まれない人たち。単に恵まれないだけではなく、隣人を武力で殺されている人たち。そんな社会の底辺の人たちが、関係しているように感じてしまいます。どうすればよいかは、難しいところですが、武力で侵攻して片付く問題ではなく、時間を掛けてゆっくりと解決する以外に方法はないように思うのですが。

3)これからの新テロ対策特別措置法

格好良い名前の不朽の自由作戦であるアフガニスタン侵攻作戦は、ブッシュとネオコンのやったことで、米国の次の大統領が誰になろうとも、国連を無視して”米国は世界の正義警察だ”、”自由の擁護”だと言って出て行かず、国連をもっと前に出して、自らは出費を少なくせざるを得ないだろうと私は思います。そこで、新テロ対策特別措置法は附則第3条に、「この法律は、施行の日から起算して一年を経過した日に、その効力を失う。」と規定されています。だから、2009年1月になれば、失効し、延長されないだろうと私は予測するのですが。

1年だけは、ブッシュに誰かが約束したから、仕方ないかと成立させたのかなと思います。

4) もう一つの?(大阪知事選)

同じ12月16日 のエントリー自民・公明2つの??で橋下とおる候補を自民・公明が推薦するかどうかの疑問を書きましたが、読売関西 1月10日 梅田、橋下、熊谷氏ら立候補のように、橋下については自民党府連推薦、公明党府本部支持ということで、党そのものは、何もしないと言うことになりました。

これって何なのでしょうと思います。あんな男を党は推薦できず。しかし、地方組織がするなら、勝手にどうぞということでしょうか?政策もなければ、政治活動もないということでしょうか?そんな政党があっても自由なのでしょう。

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2008年1月11日 (金)

追徴税の支払いは税引後利益に関係せず(フォスター電機)

「追徴税の支払いは税引後利益に関係せず」です。もしかしたら、おもしろいなと思いました。何の件かは次の朝日の記事とフォスター電機のプレスリリースをご覧下さい。

朝日 1月9日 フォスター電機18億円申告漏れ 香港子会社分申告せず
フォスター電機株式会社 1月9日 プレスリリース 本日の一部報道について

1) 本当に税引後利益に影響せずか?

”影響せず”です。昨年12月21日に平成19年4月1日から平成19年9月30日までの半期報告書をフォスター電機は、提出していますが、そのなかの当該中間期に関する連結財務諸表及び単体財務諸表は次のようになっています。(単位:百万円)なお、繰延税金資産及び負債は流動・固定合計の数字にしています。

  繰延税金資産 繰延税金負債 未払法人税等 過年度法人税等 法人税等調整額
連結貸借対照表 657 1,653 1,730
連結損益計算書 1,463 ▲798
単体貸借対照表 1,273 0 1,675
単体損益計算書 1,463 ▲1,230

プレスリリースは、「追徴税額は地方税等を含め約900 百万円と試算しており、当中間期では896 百万円を見積計上しております。」と記載していますが、上の表だけ見ると1,463百万円を予想したのかと思います。

やはり税引き後利益には、ほとんど影響がありません。何故なら、単体の方から述べますが、法人税等調整額を1,230百万円計上して、この期の法人税の負担を1,230百万円少なくしているからです。では、その心は?となりますが。それは、将来の税金の前払いとして扱っているからです。税金の前払いであるから、繰延税金資産となります。(繰延税金資産計上額1,273百万円)

すなわち、将来香港子会社のフォスターエレクトリックから親法人に配当が支払われ、配当金の見合いで親会社は利益を計上し、その時の利益に対応する法人税等であるからです。将来、親会社が利益を計上するときには、今回払った税金分が丁度税の前払いに相当するからです。香港の子会社の法人税率は低いから香港では税引後利益は大きい。しかし、日本の親会社へ配当として支払えば、日本での法人税が課される。この時の日本の法人税の納付金額は(その先の投資先の中国も含め)香港で子会社が支払った額が二重課税となるために控除されます。

これで、連結財務諸表の税引後利益もおわかり頂けたのではないかと思います。会社の利益が香港の子会社にあろうが、本社に配当として受領していようが、理論的には同額でないといけないのです。というか、最終的には子会社を持つのは、子会社の事業利益の配当を期待して投資したのですから、親会社に配当してくるはずです。その前提で連結財務諸表は作成されているからです。技術論で言えば、子会社の利益が将来の配当で親会社に移ったときに、税の納付が発生することから、未払い税金です。但し、債務の発生にはなっていないことから、会計の仕訳では(法人税等調整額/繰延税金負債)となります。従って、連結財務諸表では、未払法人税に加えて繰延税金負債も計上されています。

2) タックスヘイブン対策税制とは?

タックスヘイブン対策税制とは、租税特別措置法66条の6「内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入」のことです。税率が25%以下の国に子会社を持っていた場合、その子会社の利益を日本の親会社に配当してこないで、子会社に留保した場合に一定の留保金額(課税対象留保金額)については、親会社である日本法人の課税所得に加算して親会社の納付税額を計算する制度です。低課税国に子会社を設立して税逃れをすることを防ぐのが最大の目的と理解しています。

一方、プレスリリースは「業態が卸売業で、第三者からの仕入高が50%以上あることからタックスヘイブン対策税制の適用除外であると認識しておりました。」と述べていますが、この意味は、租税特別措置法66条の6第4項に適用しない場合の除外事業を規定しており、卸売業の場合は租税特別措置法施行令39条の17第2項において「関連者以外の者との間の取引に係る仕入取扱金額の合計額の占める割合が百分の五十を超える場合」と規定されています。従い、プレスリリースが正しいことになります。

しかし、香港子会社が中国に孫会社を持ち、一体としては製造業であると税務署は考えたのだと思います。実際、フォスター電機のビジネスレポート(第74期中間期)には次のように書かれています。(実物には赤字表示はありません。)

FOSTER ELECTRIC CO.(, HONG KONG)LTD. 豊達電機(香港)有限公司
-各種スピーカ、スピーカシステム、ヘッドホン、マイクロホン、および電子部品の製造・販売-

私も、実態を知りませんが、表面ではなく、実態を重視して税法を適用するのが正しいと思います。さもないと、税逃れがいくらでもできますから。そして税逃れは、正規に税を納付する人が困ることとなります。

3)?????

ブログに書くほどのこともないかと思ったのですが、追徴課税があっても、税引後利益は変わらずというのが、面白いと思いましたので、書いてみました。しかし、本当は租税特別措置法66条の6ではなくて、法人税法69条(外国税額の控除)があるから、香港で税を納付していなくても、日本で税の納付金額が大きくなるし、逆に外国子会社で税を納付してたら、(限度額はありますが)その額だけ日本での納付税額は少なくて済むという「外国税額の控除」の話だと思います。だから、税引後利益に変化なしと言うわけです。

そこで、もう一つ、法人税率引き下げの議論があります。日本の会社は、低課税国で事業をしようが、日本の税率が最終的には税の負担になります。従い、日本企業に国際競争力を持たせるには、日本の法人税の税率引き下げが必要だとの議論が生じています。即ち、国際的に見て米国に次いで高いのであるとの議論です。

しかし、法人税のみを取りだして議論することは、正しくなく、政府の税収全体をどうするかの議論をしなければならないと考えます。法人税を低くすると、その分、消費税の引き上げになるでしょう。一方、世界一高い米国企業は、外国に投資し、外国で事業を行うことによって利益をあげています。米国も日本も外国税額控除の制度については、ほぼ同じです。例えば、地方税も含めて税率30%と言う国があったとします。日本より、地方税の分だけ安いのであり、そこに株主が直接会社を作り、事業をすれば今でも税率30%がエンジョイできます。でも、現実には、なかなかそんなことが生じないし、そんなことをしても、経費も増えるしリスクも増えます。もし、やるのであれば、法人税ゼロの国を利用するのではと思います。だから、少々下げても意味はないと私は考えています。

日本を住みやすい、暮らしやすい、有能な人材が豊富な国にすることが、日本を競争力のある国にすることだと思います。(直前のエントリーと同じトーンとなりました。)そのために、税はあるはずです。

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2008年1月 9日 (水)

日本は”環境で世界をリード”できるか?

”環境で世界をリード”は、福田総理の年頭所感から引用した言葉です。福田総理の年頭所感はここにあります。なかほどに【環境で世界をリード】との表題があります。

年頭所感ですから、豊富を述べ、夢を述べることは重要と思います。一方で、年頭所感を聞くに当たっては、その実現性がどうか、課題や問題点はないかについても考えてみることは必要であると思い、このエントリーを書いています。

1)日本は環境で世界をリードしているのか?

年頭所感にある「日本は、環境・省エネ分野において世界の研究開発のトップを走り続け、環境にやさしい国づくりを進めてきました。」という部分ですが、格好良すぎるのではと感じました。

環境に関連して二酸化炭素(CO2)排出量について調べてみます。CO2排出量については、「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書 (Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)」が余りにも有名です。京都議定書は議定書の附属書Iの締約国("Party included in Annex I" )からのCO2排出量を1990年の5%削減にむけて2008年から2012年の期間内に達成すべく個別締約国の削減値を附属書Bに記載して、その義務を取り決めました。

次のグラフは、国際連合枠組条約事務局(United Nations Framework Convention on Climate Change : UNFCCC)の2007年10月24日付け報告書(National greenhouse gas inventory data for the period 1990–2005)からCO2排出値が大きい10ヶ国を現したものです。

(京都議定書も複雑ですね。もとの条約は「気候変動に関する国際連合枠組条約」であり、1992年5月9日に国連本部で採択され、1994年3月21に発効し、現在までに192ヶ国により批准がされています。京都議定書は、この条約に関する議定書(プロトコール)で、1997年12月11日に採択され、84ヶ国により署名されました。附属書Iの締約国として削減義務を有しているのは、国の数では48でした。京都議定書を、日本は2002年6月に、そしてロシアが2004年11月に批准をして2005年2月16日に発効しました。米国は未だに批准をしておらず、ゴアさんがノーベル賞というのは、最高の皮肉にも思えます。)

CO2排出値の報告書はここに、京都議定書は日本語訳英語版、そして条約は英語版しか見つけられませんでしたがここにあります。

Co21 

各国の棒グラフの上に書いたのは、1990年CO2排出量に対する増加比率です、ドイツは18.4%の減少であり、英国も14.8%の減少。そしてフランスも1.6%ではあるが減少です。一方、ダントツはやはり米国で16.3%も増加しており、1990年より10億トン多くなっていますから、ドイツ1国とほぼ同じ量が増加し、日本の排出量13億トンと比べても余り変わらなかったりします。減少率の義務は、ヨーロッパ諸国が8%で、日本は6%です。

なお、減少率のみを見るとロシアが28.7%減少ですから、率では大きいのです。なお、グラフには11位以下なので現れていませんが、ラトビア、ウクライナ、リトアニア、ベラルーシといった旧ソ連諸国やルーマニア、ポーランド、チェコ、ハンガリーといった東欧諸国は全てマイナスです。ソ連崩壊が1991年12月ですから、1990年というのはその前年の絶好調の時代であり、ソ連崩壊によりソ連諸国や東欧諸国は、どの国もマイナス成長を記録しました。この側面を忘れると誤解が生じます。

次に1990年の排出量を1としてグラフを書いたのが次です。

Co22 

スペインが一番上の線で、一番下がロシアです。今度は、CO2排出効率を見るために、1米ドルのGDPの生産のために何キログラムのCO2を排出したかのグラフを書きました。

Co23_2

今回は、ロシアが最高に悪くて、他の国が下の方に行ったので、ロシアを除く9ヶ国についてのグラフが次です。

Co24_2

日本は、一番下で、最高の効率であったのですが、2005年の数字ではフランスの方が小さいので効率がよいのです。産業構造や様々な要素が関係することから、これだけで論じるのは間違いですが、一つの傾向であり、一つの比較です。

あの米国でさえ、一方的右肩下がりであり、日本は1995年が底で、残念ながら1位ではなく先頭ダンゴ集団の一員です。だから、福田総理の年頭所感にある「日本が持つ世界最先端の技術を各国に広めることで世界に貢献し、大きな役割を果たすことができます。」というのが、むなしく聞こえてきます。GDPの数字は、国連統計局の数字を採用しました。Webはここです。

参考として、灯油・軽油の1リットルの燃焼でCO2発生量は約2.7kgで、ガスの場合は1立方メートルで2.3kg、石炭は1kgを燃焼して2.5kgのCO2といった感じです。

3)中国とインドの参考グラフ

中国とインドの両国は京都議定書の附属書Iの義務を負っている締約国ではありませんが、署名をした締約国です。CO2排出量からすると中国はロシアより多く、米国に次ぐ世界第2位で、インドは日本とドイツの間となる世界第5位です。中国・インドが、これからの世界では大きく関わってくると思います。中国とインドを前の前のグラフに加えたのが次です。

Co25

中国もインドも頑張っています。例えば、中国のバイオガスについてこんな文章(ブログ?)がありました。インドも、バイオマス(マスタードの軸等)を燃料とする発電があります。例えば、これです。バイオエタノールを作るよりはるかに効率的だと思います。バイオエタノールは、バイオエタノールを作るためにCO2を発生し、エネルギーも消費しますから。参考として2007年10月12日のエントリー バイオ燃料

3)日本はどうすべきか?

総理の年頭所感の基本的な部分である、日本は高い技術で生きていこうということについて、私は賛成します。但し、そのためには、世界的に通用する高い技術を持ち続けなくてならない。1米ドルのGDPの生産のためのCO2排出量のグラフを見ても、日本の技術力は、相対的には他国に追いつかれたのではと思うのです。勿論、全てではなくて、ある部分では勝っていて、別の分野では負けているという状態と思います。

恐ろしいのは、実は相対的な高い技術力がなくなってしまう恐れです。その可能性はあると思うのです。高い技術力は、人です。人材育成に、今私たちはどれだけ投資をしているのだろうかと思うからです。国立大学を独立行政法人だとか言って、教育制度を壊していやしないか?若者をワーキングプアだとか格差社会とか言って、教育するのではなく、奴隷として今の社会が扱い、結果的に未来の重要な資産を食いつぶしていないだろうか?

少子化対策とは、「生めよ増やせよ!」として、子供が生まれたらお金をあげましょうとすることではないと思います。幼児が少年、少年が青年になって、未来を切り開き、社会を作っていくそんな社会にすることだと思います。優れた人材が教育に進んで携わり、未来を作る人材が育っていかねばならないのに、社会が教師いじめをしたりしてとても悲しく思います。

ゴアさんのノーベル賞を皮肉と言いましたが、ゴアさんは立派な人だと思います。ブッシュ政権になっても、自分の持論は変えませんでした。教育とは、そのような人材を育成することでもあると思います。点取り虫の風見鶏を大量生産したら、将来は暗いと思います。

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2008年1月 1日 (火)

あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。

2008年は、どのような年になるのでしょうか。楽しいことがいっぱいでしょうか。多分、いっぱいあるのでしょうね。でも、楽しいことばかりでは、絶対ないはずで、あるいは見た目にはよく見えても、そのうちに、そうではなくなったりして。

アライグマを思い出します。アライグマなんて、昔TVアニメで見たぐらいで実物は知らないのですが、ペットとして飼っていて、そのうちに逃げ出したのか、飼育が手に負えなくなって解放したのか。やがて、野生化したアライグマが農作物を食い荒らしたり、害獣になった。

アライグマには、責任はなくて、むしろ被害者なのだろうと思います。生まれた北米の原野で、過ごしていた方が、幸せだったろうに、人間に捕まって、そのアライグマか、そのアライグマの子孫が日本に連れてこられたのだと思うからです。

本年も、できる限りブログを書いていきたいと思っています。どうか皆様よろしくお願いします。

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