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2008年1月28日 (月)

自治体の保証債務

次のニュースがありました。

日経 1月27日 隠れ負債、自治体に重荷・公社や三セクに対する債務保証

ということで、このニュースの中に次のような文が入っています。

・ 地方自治体が債務保証や損失補償をする、いわゆる「隠れ負債」が一部市町村で大きな負担になっている実態が明らかになった。

・ 塩漬けの土地を抱える土地開発公社向けに保証しているケースが多い。

・ 自治体が債務の肩代わりを迫られれば財政運営に支障が生じ、住民サービスの低下につながる可能性もある。

・ 青森県大鰐町で、大鰐地域総合開発など3法人に対して73億円の損失補償をしていた。バブル期のリゾート開発の失敗で金融機関から肩代わりを求められ、1997年から30年計画で返済している。

1) もしかして巧妙な債務保証ではないか

「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律」という長い名前の法律(財政援助制限法と以下略します。)があります。この第3条は次の通りです。

第3条  政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。

だから、三セクに対する債務保証は、違法であります。しかし、自治体は、保証ではないと言うようです。何故かというと、次のような文面だからであると思います。

つきましては,誠に勝手なお願いとは存じますが,同社の借入金債務に関し,川崎市は貴行に対し,ご迷惑をおかけしないよう,同社の経営に関し充分な指導・監督を行う所存でございますので,貴行のご融資に関し,何卒格別なるご高配を賜りますようお願い申し上げます。

何故、川崎市となっているかは、かわさき市民オンブズマン(ホームページはここ)が、川崎市の第三セクター「かわさき港コンテナターミナル(株)」(略称KCT)に支出した損失補償合計9億円は違法として住民訴訟を起こしていた件の判決文から取ったからです。判決文は、かわさき市民オンブズマンのWebあるいは裁判所のWebで見ることができます。

どのように、解釈しますか?必ずしも、川崎市と同文とは限りませんが、財政援助制限法の下では、総務大臣が認めていない限り、自治体の保証行為は違法であると、私は素直に解釈しますが。でも、そうなると冒頭部分の全てが崩れるように思えます。

3) KCTの判決

横浜地方裁判所2006年11月15日のKCT訴訟(事件番号:平成17(行ウ)28)の判決においては、市民オンブズマンの損害賠償請求を棄却したものの、損失補償は違法無効だとしました。

判決の関連部分を抜き出してみました。

2 争点2(本件協定の適法性等)について
(1) 「本件協定が財政援助制限法3条に違反するかどうか」について

・・・・・・財政援助制限法3条は政府又は地方公共団体が「法人の債務」について「保証契約」をすることを禁じており,・・・・本件協定は民法上の保証契約とはいえないまでもそれと同様の機能実質を有するものであって,同条による規制を潜脱するものというほかはなく,同条に反するものとして違法なものと解するのが相当である。

(2) 財政援助制限法3条に違反して締結された契約の効力について

・・・・・本件協定は私法上無効であって,本件の支出命令及び支出は,無効な支出負担行為に基づいてされたものとして違法である・・・

(3) XX市長の責任について

・・・XX市長が本件協定を有効なものと考え,これを前提とする支出命令を発したとしても,その責めに帰すことのできない,やむを得ない事情があったものと認めるのが相当であり,その点に故意,過失があったとも認められない。

(4) 本件各金融機関に対する返還請求について

ア上記のとおり,本件協定は違法,無効なものであり,これを前提とする本件損失補償金の支払は法律上の原因を欠くものである。しかし,現時点で,川崎市が本件各金融機関に対して既に支払われたこれら本件損失補償金を不当利得として返還を求め得るかということになると,この点については重大な疑義があるといわざるを得ない。・・・・・

4) 悲惨なKCTの事業内容

資本金6億円(うち川崎市出資額3.1億円)で1995年に設立され、川崎市が2006年1月に破産手続き開始の申し立てをしました。

債権集会における負債総額は68億円でした。例えば、1997年3月期の業績は年間売上5億円で、売上原価12億円、販売費及び一般管理費6億円で、営業損失13億円と聞いたら、どう思われますか?さすが三セク立派すぎます。当初借入金は9億円でしたが、たちまち膨らんでいった。10年で倒産したわけで、倒産時には借入金が54億円になっていた。金融機関は最終的には54億円のうちの当初の元本9億円について損失補填により返済を受けたと言うわけです。

思うことは、(1) 政府や自治体は営利事業を行ってはならないということと、(2) 全ての資産・負債及び収入・支出を明らかにして、公告をすること。この2つのことをしなければと思います。

判決文を読むと、以下の文章が【被告の主張】という部分に出てきますが、よくある役所の文章だと思います。これは、参考資料であって、ビジネス・ディシジョンをするための文章ではないですよ。事業をしたことがない人が、事業をすると悲惨なことになるサンプルかなとおもいました。

川崎市としては,コンテナターミナルの整備を決定するに当たって,荷主・船社のヒアリング,経済動向の予測等の様々なデータに基づき,その成立可能性について多方面からの調査・検討を実施し,これらを踏まえ,港湾法3条の3の規定に基づき,学識経験者,地元経済関係者,川崎市議会議員,港湾関係者等で構成される川崎港港湾審議会,さらには運輸大臣の諮問機関である港湾審議会の審議を経て,昭和58年8月改訂の川崎港港湾計画(乙8)において,昭和65年を目標年次として東扇島地区に公共コンテナふ頭を整備することを正式に位置付けた。

同じようなことを、PFI病院について思ったのですが、長くなったので次の機会とします。

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