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2008年3月14日 (金)

新東京銀行の今後

新東京銀行のことが、連日話題となっており、400億円の増資を審議する東京都議会予算特別委員会は、本日の3日目の総括質疑が開会できなかったようであります。

新東京銀行については、倒産の秒読みに入っている感もあるものですから、書いてみます。(追記、修正あり。)

1) 新東京銀行倒産の兆候

銀行の倒産という最悪の事態が新東京銀行にやってくると感じるのは、新東京銀行が3月11日に発表した新銀行東京調査委員会調査報告書(概要)を読んだからです。調査報告書(概要)ここにあります。

銀行は預金を集め、貸付を行い、その利子率の差により収益を得て、運用経費を支払い、そのうえで資本に関わる費用(株主配当金)を支払うものです。預金を踏み倒すことは、許されません。従い、貸付は回収が前提で実施されるものです。ところが、調査報告書には恐ろしいことが書かれています。

・営業担当者(契約社員)に融資実行実績に応じた成果手当を支給する一方で(最大年間200万円)、デフォルト発生を不問とした。
・平成18年1月より、融資実行後6ヶ月以内にデフォルトが発生した場合には、成果手当から控除したが、6ヶ月を超えた場合には満額支給とした。
・このような業務執行の結果、営業担当者の間にはデフォルトの発生を軽視したモラルハザードが広まった。

無茶苦茶です。良心の呵責があっても、上司から返済をうけることなんか気にせずに貸し込めと言われたら、多くの人はやっちゃいます。まして200万円の人参をぶら下げられて。

「貸倒引当が予定よりいっていない」や「リスクをとるというのは貸倒引当金をしっかり使い込むということだ」との発言を代表取締役が繰り返した。

信用第一は、金融の常識というより、ビジネスの基本です。与信できる相手であるからこそ、ビジネスをします。個人が銀行に預金をするのも、その銀行が信用できるからです。常識破りの発言を代表取締役が繰り返したなんて、私も、これが新東京銀行による発表でなかったら信じられないです。次の文章もすごいです。ガバナンス・ゼロの会社です。

・委員会設置会社においては、代表執行役と執行役の職務分掌については取締役会決議に基づき明確に定めるものとなっているが、当社においては創業期における統一的かつ効率的な業務を確保する必要があることから、代表執行役は業務全般を統轄し、また、他の執行役はその指揮監督に服することを定めた「執行役職務分掌規程」を設けていた。
・代表執行役は、その強い権限を背景に経営の意思決定や他の執行役の人事等に影響力を不適切に行使し、独善的な業務運営を展開した。
・代表執行役と意見の対立した執行役の辞任もあり、開業後僅か2年のうちに、開業時の執行役6人のうち4人までが退任した。
・その後、後任の執行役は全て代表執行役の推薦により招聘されたことから、代表執行役の独善的な体制が確立し、事実上代表執行役に反対する意見は抑え込まれた。

新銀行東京は、東京都がBNPパリバ信託銀行の全株式を2004年4月に取得し、2005年4月から業務を開始しました。最初の代表取締役はトヨタ出身の仁司泰正氏で、2007年6月からはりそな銀行(埼玉銀行→あさひ銀行の)出身の森田 徹氏で、2007年12月からは前東京都港湾局総務部長の津島隆一氏です。委員会設置会社で辣腕をふるいとは、酷いものです。他の取締役は、飾りであったのでしょうか、今後明らかになっていくと思いますが。

2) 財務諸表から見る倒産

次のグラフは2007年9月末の新東京銀行の貸借対照表です。

Photo

資本金が非常に小さいことが分かります。実は、このグラフの資本金は資本金ではなく、資本金と資本剰余金の合計額から赤字となっている利益剰余金と評価換算差額を差し引いた残額ですから純資産額です。即ち、新東京銀行は、もう体をなしていないに近いと思います。(なお、貸し倒れ引当金は、貸出金から控除せずに負債に含めて表示しました。)

参考までに、損益計算書は次の表をご覧下さい。

  平成18年3月期 平成19年3月期 平成19年9月期(6月)
資金運用収益 2,843 9,024 4,557
信託収益 8 66 76
手数料収入 507 1,783 1,161
その他収益 289 756 127
収益合計 3,648 11,631 5,923
信金調達費用 1,086 4,561 2,945
役務費用 78 126 75
その他費用 444 423 836
貸倒引当金繰入額 7,968 27,800 4,563
当期純損失 20,961 54,651 8,710

平成17年4月に開業ですから、上記が営業成績の全てです。資金運用収益より貸倒引当金繰入額の方が大きいなんて、そんな銀行見たことない。平成19年9月期は、その差が縮小しているが、適正額の貸し倒れ引当金が計上されているか不明です。最も、これが一番問題となる点であり、平成19年9月期の証書貸付残高209,655百万円に対して貸倒引当金は34,461百万円ですから16.4%です。1)に記載した無茶苦茶貸付を考えるとずっと大きいのではと思うのです。もし、20%の貸し倒れ率が妥当とすると7,548百万円追加引き当てが必要であり、30%とするなら28,513百万円追加必要となります。

400億円の増資というのは、どのような計算か不明ですが、不明な金を支出することほど、リスクがあり、怖い物はありません。

3) 新東京銀行の預金は引き上げるべきか

ここまでくると、取り付け騒ぎが心配になります。預金保険機構を調べると新銀行東京は信託銀行として記載されていました。預金者一人につき元本1,000万円までとその利息が預金保険機構により支払われます。

だから、1,000万円以上預金をしている人は、預金の引き出しを始める可能性が高いように思います。但し、一番の大口預金者は東京都だと思うのです。新銀行東京が破綻した場合の東京都の損害はこれまでに支出した資本の1000億円と預金ですから、すごい金額です。1000億円の根拠は資本金と資本剰余金の合計に東京都の出資比率84.22%を掛けました。(株主構成はここにあります。)て1000億円になるのですが、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行株式会社の東京都による買収金額にその後の東京都の出資額を合算したのが、これまでの東京都の新東京銀行にたいしてつぎ込んだお金です。(この部分、少し修正しました。)

但し、このこの平成16 年2 月23 日付け全国銀行協会の意見書からすると、当初が1000億円ですから、その後平成17年8月に180億円の増資をしていることから、東京都の出資は1000億円を上回っているのではと思います。(この部分、追記しました)

さあ、そこで問題です。東京都が損をすると言うことは、都税をつぎ込むことですから、東京都民が損をする。しかし、東京都民は株主ではないから、代表訴訟もできなければ、何もできない。自治体が銀行に対して再建のためならまだしも(それでも問題はありますが)、事業を目的として出資するという禁じ手を実施した場合の、最悪のシナリオが実現する可能性がある。

でも、それだけではない、預金保険機構の資金は、預金額に応じて銀行が積み立てたものです。最終的な資金提供者は預金者です。まじめに他の健全な銀行に預金した人のお金をさらっていくドロボウ銀行新東京銀行が実現する可能性があります。

これからは、東京都民がお金をつぎ込み、人様には迷惑を掛けてはならないと、汗水垂らして新東京銀行を再建することになるのでしょうか?東京都が預金を引き上げたら、即刻倒産でしょうし、ずるずる行けば底なし沼の地獄がある。

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