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2008年4月 6日 (日)

不思議な対応Jパワー

英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)による電源開発(J-Power)の株式買い増しについて、政府は11日に外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく審議会を開き、経済産業省はTCIによる株式買い増しの変更・中止を勧告する方向となったとのニュースがありました。

日経 4月5日 英ファンドのJパワー出資、株買い増し拒否へ――経産省

3月27日のエントリー「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で、このことについて触れた経緯があるので、少し書いてみます。

1) 外為法による審議会とは

外為法21条第1項には「外国投資家は、対内直接投資等のうち第三項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものを行おうとするときは、・・・・当該対内直接投資等について、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければならない。」と書いてあり、

第21条第5項に「財務大臣及び事業所管大臣は、・・・審査をした結果、・・・国の安全等に係る対内直接投資等に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等の届出をしたものに対し、・・・当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を勧告することができる。」となっており、そして

第21条第10項に「・・・勧告を受けたものが、・・・・当該勧告を応諾しない旨の通知をした場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、当該勧告を受けたものに対し、当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を命ずることができる。」となっています。

届出制なので、ずいぶん持って回った条文構成になっています。本来は、軍事物資の生産に関するような分野の規制のはずと私は思っています。それを、TCIのJ-Power株式取得に使うのは、無理があり、「違法でなければ何でもする。」に近いのではと思います。政府とは、一番法を遵守すべき機関であると私は思うのです。

「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で受け入れ国の基本方針というのを書きましたが、読むと見事に違反していると感じます。

2) 身勝手は自分自身を滅亡させる

「J-PowerのIPPプロジェクト一覧」というのがこのJ-PowerのWebにあります。J-Powerが国外の発電会社の49%の出資を持つことは許されて、逆に国外の投資家が10%以上を持ってはならないというのは、すごく身勝手と感じます。2008年3月時点で、出資した国外の発電所で運転中が16件、7,373MWあり、この中で米国とフィリピンの案件はJ-Powerが50%出資しています。

私は、J-Powerが国外に出て行くことに反対はありません。50%超を出資する電力案件があってもよいと思います。TCIの株式買い増しを阻止することは、J-Powerの事業を阻害することになるのではと思います。J-PowerがTCIの増配要求を拒否しました。J-Power経営者が、そう思うのであれば、その対応で構わないのであり、同様にTCIが株式の買い増しをしたいならそれで良いはず。政府が何故口を挟むのかと言いたいのです。

悪影響は、J-Powerにのみならず、国外の電気事業に投資している日本の企業の全てに広がる可能性もあるし、日本は閉鎖的とのことで日本株は、どんどん下がる。日本企業は資金を確保できず、「日落ちる国」が「ますます日落ちる国」になりそうで。かつて、ジャパン・プレミアムといって日本の銀行が欧米銀行より高い金利でないと資金調達ができなかったことを思い出します。

3) どうすべきか?

J-Powerの問題ではなく、株主の問題であり、電力に関係する国民を含めた利害関係者の問題として考えるべきでしょうね。その中で、J-Powerという会社についての問題は、次のようなことが言えると思います。

A) 地域分割の民間上場企業9電力体制における政府資金を活用し、9電力体制の利害調整妥協の産物としての会社であった。(当初は、沖縄が米国統治下であり、J-Power体制には含まれていなかったので、9電力としておきます。)

B) 大型の水力発電を保有しており、(ダムで貯水する水の権利・資産を含め)水という国民の共通資産は株主の利益のみに存在するのではない。

C) この日経 3月17日 Jパワー、大間原発5月着工にもあるように、原発を保有する会社(放射能漏れを起こす可能性がある会社)の株式の外国人株主保有に対しての日本人の抵抗があるかも知れない。(議論がされておらず、コンセンサスが取れているのかの点を含め。柏崎刈羽では、放射能と関係のない変圧器の火災でもマスコミは大騒ぎした。)

D) J-Powerが日本で保有する火力発電所は全て、石炭火力である。即ち、考え方によっては、CO2を多量に排出する石炭火力は、今後日本ではスクラップアンドビルドでないと建設できない恐れあり。不利とみるか、優位とみるか判断は分かれるが、CO2既得権を持つ貴重な資産とも考えられる。

そもそも66%の株式を保有するJ-Powerを政府が株式を手放したことが、出発点です。これがその際のJ-Powerのプレスリリースです。私は、J-Powerの株式を再び政府がTOBをして、取り戻すこと。発行済み株式数が166,569,600株ですから、現在株価3,800円を4,000円で買ったとして6600億円余り。水利権・原発権・石炭排出権込みの価格ですから、安いかも知れません。その上で、火力発電所(橘湾の海底送電線も込みでよい)の部分を海外資産とともに別会社として、それを売却すればよい。

政府として、水力発電所と原子力発電所は、重要な資産であるとして、政府が持ち続けることとなるが、そんな必要もないので、水力発電所はその電力を購入する9電力(沖縄電力には海水揚水発電所があるが、この評価は困難なので、省きます。)に発電所毎(只見系、下郷、佐久間、船明、新豊根、九頭竜系、北山系については複雑ですが)に一般電気事業者に売却する。大間は、日本原子力発電に売却する。私は、このような案が、一番すっきりすると思うのですが。

1月30日のエントリー 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れで書きましたが、「民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが・・・」との考えは、間違っています。「民間委ねるべきは、民間に委ね、政府事業として実施すべきは、政府事業として実施し・・・」が正解です。J-Power問題は、民間にゆだねておきながなら、それを正しいとして襟を正さずして、理不尽な規制を行うことするようで、「これは許されないこと。」と思います。誰にも、正義が通る正しい処置をして欲しいと思います。

一ついやなのは、経産省は私のように思っている。しかし、国交省が空港問題もあるから、許さないと頑張っている。それで、経産省に頑張らせている。

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コメント

TBありがとうございます。
要するに国家戦略というものがなく、行き当たりばったりで政策を遂行しようとするからでしょうね。
おおせのとおり、確かに外為規制とJパワーの海外投資案件は「身勝手」な面がありますね。
参考になりました。

投稿: gonchan | 2008年4月 6日 (日) 23時23分

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