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2008年5月27日 (火)

武富士の300億円に思う

東洋経済の5月23日の記事 武富士を襲う「仕組み金融取引」の衝撃(1)を見て、武富士の300億円の損失問題は、財務諸表やその監査の信頼性という大きな問題を持っているのではと思いました。

1) 武富士300億円の損失とは

2007年5月24日に300億円投資して10月経過しない2008年3月3日には300億円全額損をしてしまったというお話です。次の武富士のプレスリリースを見ると解ります。

2007.5.24 実質的ディフィーザンスの実施について
本日5月24日、弊社既発国内無担保普通社債を対象に、300億円の実質的ディフィーザンスを実施しましたのでお知らせいたします。

2008年3月3日 実質的ディフィーザンス解消のお知らせ
弊社が発行いたしました第8回国内債300億円に関しまして、メリルリンチ日本証券株式会社がアレンジャーとして組成した仕組み金融取引によって償還手当て済みであったことから偶発債務としておりましたが、当該仕組み金融取引の清算が開始されたとの通知を同社より受けました。・・・第8回国内債300億円が貸借対照表上で社債債務として再認識されます。これによる損失は上記仕組み金融取引の清算が完了するまで確定いたしませんが、最大で300億円となる可能性があります。

2) 貸借対照表には表示されなかった

注記はされましたが、投資の資産として計上されず、一方300億円の社債も抹消されました。その理由は、投資した資産を信託とし、信託収益は全て社債の利払いと償還に使われることから、実質武富士は社債の償還義務を負わないので、債務として認識する必要がなく、従い貸借対照表に表示する必要がないという考え方です。

武富士の社債金額を連結貸借対照表から時系列で追ってみると、次の通りであり、2007年9月末は300億円少ない金額です。ちなみに、この間に社債の発行・償還はありません。

2007年3月31日  158,479百万円
2007年9月30日  129,781百万円
2008年3月31日  161,083百万円

2007年9月30日の連結貸借対照表には次の注記があります。
6.偶発債務 社債の債務履行引受契約に係る偶発債務 第八回20年物無担保普通社
債30,000百万円

財務諸表からは、ハイリスクの投資が行われているとは、思えません。ちなみに、監査法人は2007年3月末まではみすず(旧中央青山)で、それ以後は新日本です。但し、新日本で監査をしている会計士は実はみすずから移った人で、同一人物と思います。

3) 実質的ディフィーザンスとデットアサンプション

武富士は実質的ディフィーザンスであると説明していました。実質的ディフィーザンスとは、信託型デットアサンプションと考えればよいと思うのですが、デットアサンプションとは債務を譲渡することです。債権の譲渡だったら、譲渡対価を受領しますが、債務なので譲渡対価を払うこととなります。例えば、金利5%で1年後に満期の債務があり、譲渡時点の市場金利が1%であったとするなら、1年後の金額105を年率1%で割り引いた(即ち1.01で割った)103.96に手数料を加えた104や105を支払えば債務を引き受けてくれる先があるかも知れません。

デットアサンプションなんて、得か損かは、考え方次第です。利子率の高い債務であれば、高いプレミアムを付けないと譲渡できません。譲渡時に、譲渡手数料として高い金額を払うが将来の利息負担はなくなることとなります。言ってみれば、期限前の債務償還を実施したことと同じ効果です。

実質的ディフィーザンスは、例えば上の例で言えば、105の国債を購入して、これを信託にして債務の利払いと償還にあてれば良いわけです。ちなみに、実質的ディフィーザンスを売り込んでいるWebがありました。この三菱UFJ信託銀行のWebです。

4) 本当にオフ・バランス・シートで良いのか

金融商品に関する会計基準が適用となります。そこで、会計基準はどう書いているかというと。

いわゆるローン・パーティシペーションやデット・アサンプションは、本会計基準における金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たさないこととなるが、当分の間、次のように取り扱うこととする。

(1) -省略-

(2)デット・アサンプションは、我が国では社債の買入償還を行うための実務手続が煩雑であることから、法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されている。したがって、改めて、オフバランスした債務の履行を求められることもあり得るが、このような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払に充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、当該社債の消滅を認識することを認めることとする。

「極めて低い場合」と書いてありますし、公認会計士協会の金融商品会計に関するQ&AのQ&A14でもダブルA格相当以上社債と言っています。ハイリスク金融商品は債務の認識が必要です。

5) 監査の信頼性

複雑な取引ではなかったと思うのです。但し、私も分かっていません。だから、申し上げたい。何故、監査法人は300億円の社債のオフ・バランスを認めたのか?説明することにより、監査の信頼性、財務諸表の信頼性が保てると思うのです。

東洋経済は一番金額が大きい会社として中部電力をあげていました。中部電力の社債の債務履行引受契約に係る偶発債務に関わる注記について私も電卓を叩いてみると699,723百万円ありました。中部電力は引受先として、メガバンクの名前ばかりが記載されていました。引受先の意味が今ひとつ分かりませんでしたが、多分問題はないのであろうと。しかし、そうなると逆に問題が生じた武富士の場合と、外部の投資家はどのようにして見分けができるのか?

このあたり、監査法人の責任は重大だなと思った次第です。

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