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2008年6月 7日 (土)

新銀行東京の倒産の可能性

新銀行東京の倒産の可能性を感じてしまいました。一番の理由は、84.22%を出資する大株主である東京都が株主責任を放棄したと感じたからです。本日の石原知事の記者会見における毎日新聞の記者からの質問に対する回答の次の部分からです。

(1000億円の減資は)まだ正式に決まったわけではなく、株主総会で報告された時に是非の意思表示をする。」

この発言は、この東京都のWeb(知事記者会見)の会見日2008/6/6の開始から8分を過ぎた頃から始まり、当該発言は終了近くの9分30秒頃です。なお、NHK首都圏ニュースも報道をしていたことから、当該部分を続きを読むに入れておきます。

減資について報じた毎日新聞の記事は次の報道です。

毎日 6月3日 新銀行東京:1016億円減資 累積赤字一掃へ、今月末総会で

減資金額がいくらであるかは、記者会見では触れられておらず、この6月2日のNikkeiNetには「累積損失と同程度の減資を提案する方針」と書かれていることから、1000億円かも知れませんが、いずれにせよ巨額の減資が株主総会で決議されることが予想されます。

1) 減資とは

資本金を減少させることです。但し、株主から払い込まれた金額の2分の1は資本準備金として計上することができる(会社法445条)ので、実際には資本金及び資本準備金の減少として決議されるはず。新銀行東京の現在の資本金は東京都の400億円の追加出資を含めて807億円であり、資本準備金が782億円で、合計1589億円です。

単純に減資を行ってもキャッシュは動きません。毎日の記事も、累積赤字一掃と言っていますし、累積損失が同額減少となる減資のはずです。この場合、新銀行東京の資産から負債を差し引いた純資産額は変わりません。その意味で、東京都を含む出資者にとって、損・得なしです。しかし、累積損失が減少することは、将来に利益を計上できた場合、累積赤字が累積黒字・繰越利益の計上時期が早まることになります。即ち、債権者の目から見ると、資本の充実がなされず、株主への配当分配が多くなる可能性があり、不況に弱いこととなります。

減資とは債権者に不利なのです。従い、減資は株主総会における2/3以上の株主の賛成(会社法309条1項9号、447条)で決議し、債権者の異議がないときに減資の効力が生じます。(会社法449条)新銀行東京の場合の債権者は預金者であるので、預金者には通知が届くと思います。そして、異議を述べれば預金が返ってくると思います。異議を述べない場合は、承認したこととなります。

減資とは、通常は信用を失うことです。株主が、赤字ではあるが、自らへの配当は早く受領すると宣言することです。従い、通常は、減資を行いません。減資をするのは、増資をして会社の信用力を高めようとする場合に、新規増資に対する株数と既存株式の数の調整を行うためです。例えば、100株発行して100億円払い込みを受けた会社が90億円損失を出して、10億円の純資産額となり、100億円追加出資を受ける場合を考えます。追加出資者が、90億円の損失分担をすることは不合理であり、既存株主への発行株式数を10株に減少させ、その上で100億円の追加出資に対して100株を発行するような場合です。実際には、会社の価値の評価が絡むので、金額がすんなりと出るわけではないが、少なくとも追加出資者の利益のことも考えないと誰も追加出資には応じないこととなります。

2) 株主東京都

上に書きましたが、東京都の出資比率は84.22%であり、2/3を超えています。新銀行東京の経営者は当然東京都と相談しています。株主総会の招集の通知は、総会の日の2週間前に発しなければならない(会社法299条)ので、未だ発送されていない可能性はありますが、新銀行東京と東京都が減資について相談し、両者合意の上で進めていると私は思います。もし、そうでないとしたら、いよいよ東京都は無責任となります。

そこで、相談し、両者合意の上で進めているなら、「株主総会で報告された時に是非の意思表示をする」は、東京都民や預金者ならびに多くの関係者をバカにした発言です。知事として現状説明の発言をすべきです。

3) 税金の軽減はないでしょう

「税金が軽減されるし」という知事の発言があります。これって本当のバカですね。資本金が小さくなると軽減される税金は東京都に支払う税金である法人事業税です。法人税を含め、国税は軽減されません。

何故事業税が軽減されるかというと、資本金1億円を超える法人の法人事業税は所得割(地方税法72の3、72の24)、付加価値割(地方税法72の14)と資本割(地方税法72の21)の3本立てになっており、資本割の事業税は標準税率が0.2%ですから、1000億の減資効果は約2億円の東京都への税金支払いが軽減されます。アホかと思います。

なお、かつて法人事業税は、所得割のみでした。しかし、石原知事が東京にある銀行には外形標準課税だといって強引に課税し、裁判で負けました。しかし、その結果、地方税法が国会で改正され、外形標準課税と称する3本立ての変な税体系となりました。

資本金が少なければ税金が安いというのは、不合理ですよ。利益が生まれれば、税を利益に応じて払うのが、ビジネスと思います。実は、3本立てにするために、資本金1億円を超える法人の所得割の税率は低くなってしまったのです。

4) 新銀行東京の今後

私は、明るくないと思います。1千万円以上の預金は、保護されないと言うリスク。一方、借入を行っており、借り換えが前提で事業計画を立てている場合、借り換えができず、新銀行東京に借入金を返済して、自らは資金繰りができなくなる事態に陥るリスクがあると思います。

どんな場合も、リスクはあるのですが、すこしでも小さくしておくことが重要と思います。

2008年6月6日NHK首都圏ニュース

“減資は再建の一里塚”

「新銀行東京」が、累積赤字を帳簿上で解消するため、資本金を取り崩して埋め合わせる「減資」を行う方針を示していることについて、東京都の石原知事は、記者会見で、「再建のための一里塚だ」と述べ、減資はやむをえないという認識を示しました。

東京都が1000億円を出資して設立した、「新銀行東京」は、3年前の開業以来、厳しい経営状況が続いていて、これまでの累積赤字は、1016億円に上っています。
新銀行では、この累積赤字を帳簿上で解消するため、資本金を取り崩して埋め合わせる「減資」を行うことを今月30日の株主総会で決める方針です。
減資が行われた場合、都が当初出資した1000億円のうち、850億円程度が棄損することが確定します。
これについて、東京都の石原知事は、6日の記者会見で、「再建のための一里塚だ。税金が軽減されるし、ぜい肉を落として身軽になり、もう一回力をつけようということだから、どこの企業でもピンチになった時にやるひとつの施策だと思う」と述べ、減資はやむをえないという認識を示しました。その上で石原知事は、「まだ正式に決まったわけではなく、株主総会で報告された時に是非の意思表示をする」と述べました。

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コメント

本件、政治的にも複雑ですよね。
金融庁検査で追加損失が出て、400億円じゃ足りないリスクもありますし、その場合、税金が早速毀損することになってしまいます。

なぜか都知事さんは「毀損は絶対ない」と検査前から豪語しています。金融大臣は足利銀で痛い目にあった栃木選出の渡辺さんですし。
過去の金融庁検査で追加損が出なかったのはほとんどないと記憶しています。

3選は失敗だったなあ。

投稿: gonchan | 2008年6月 7日 (土) 03時04分

>gonchanさん

コメントありがとうございます。今後のことは、見守るしかないと思うのですが、究極の点は「銀行を政府や自治体が保有してよいのか?」の点だと思います。

福祉関係の金融であれば、政府・自治体が関与して良いのですが、企業向けは全てビジネスであると割り切るべきと考えます。そう考えれば、企業向け金融における政府・自治体の行為は行政活動に限られるべきと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年6月 7日 (土) 10時14分

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