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2008年9月22日 (月)

朝日新聞の公貧社会 企業節税村オランダ

朝日新聞が「公貧社会 企業節税村オランダに」とのタイトルで9月20日にオランダに設立した場合の外国子会社の法人税について書いていました。9月13日に個人所得税を書いたので、法人税に関しても書いてみます。

1) 法人税とは

その前に法人とは、法人株主も存在するが、究極までさかのぼれば最終は個人になるはずです。だから、法人税ゼロで、個人で全てを課税することも可能であるし、逆の例として国営企業以外を認めず、個人は所得税ゼロにして国営企業の配当で政府支出にあてることも可能なはずです。

もう一つ、現状において国内で完結できないということがあります。例えば外資100%の企業を考えた場合、日本の人民を搾取し、日本人に物を売っておきながら、税を払わないのはけしからんとの考えも存在し得ます。一方で、企業が配当を支払った際に株主に課税する配当の源泉徴収税もあるので、(もっとも源泉徴収税は税額控除の制度もあり、複雑になっていますが)一つの税のみで議論をするより、総合的なバランスで議論をしないと誤ってしまうと思います。

日本の法人税率は約40%と言われますが、これは法人税率30%、道府県民・市町村民税率5.2%、事業税率5.6%位です。(損金算入扱いとなる事業税が所得に対して9.6%の適用となる場合)実際は、資本金1億円以上の企業は外形標準課税が適用されるので、所得に対して7.2%になっていたり、地方自治体によっては標準税率より20%高い税率を条例で決めていたりして、少し複雑です。(東京都23区の場合は、道府県民・市町村民税が都民税となります。)

2) 妥当な法人税率

外資企業とは、会社法により設立された企業ですから、内国法人です。株主の国籍による差はありません。基本的に、日本人あるは日本企業が外国に子会社を設立しても同じことが言えるのであります。税をどのようにするかは、その国の主権に係わることで、日本であれば日本国民が、その決定権を持っています。例えば、消費税を上げずに法人税をあげろというのも一つの考えであります。

一方、経済活動は国境を越え、グローバル化していることから、日本単独で考えることが適切でなくなってきています。日本の法人税率が世界的に見て高い水準にあるから、これを下げるべきであるとの主張があります。

途上国が産業誘致のために、税率を下げていている場合もあります。計画経済から市場経済への移行国で、政策的に低い税率とせざるを得なかった場合もあります。あるいは、現在の日本の法人税は法人税が高いので余裕資金が少なく、R&Dに資金を回せないといった議論については、試験研究費の法人税特別控除(租税特別措置法42の4)のように、個別の対応が良いのかも知れません。

企業が魅力を感じるのは税のみにあらず。人材やマーケット、インフラ等も重要です。幅広い視野に立った観点が需要と考えます。いずれにせよ、時間を掛けて十分に議論し、国民が納得することが必要です。消費税増税との関係も重要と思います。

3) 二重課税問題

外国での所得には課税を免除する国外所得免除方式と外国での納税額については二重課税になることから一定の条件の下に二重課税を排除する二重課税排除方式の2つの方式があります。日本は米国と同じで二重課税排除方式です。フランスは国外所得免除方式であると思いました。

実務的には、相手国毎に異なる租税条約も存在し、さらにはA国への投資に対してB国、C国と経由することもあり得るので、極めて複雑です。だから、タックスプラニングが重要となり、そのためのコンサルタントのフィーは高いです。

例えば、オランダに子会社を作り、その子会社からEUにある事業会社に投資する場合を考えると、EU内は配当源泉税がかからないはずで、オランダでは国外所得は一定条件を満たすとゼロで、日本に配当しても、その配当に対する源泉税は5%のはずです。しかし、日本に配当をしてくると、その時に配当が所得となります。日本の税の方が高ければ外国で税が安くても差額を日本で納税するので、節税にはなりません。しかし、日本に配当を持ってこずに、そのオランダ子会社から再投資をすると有利になります。

ところで、これが理由で日本の税収が少なくなっているかというと、別に少なくなっていないはずです。企業にとっては、1円でも税が少なくなるなら、そちらを選ぶからです。すなわち法人税率を多少下げても有利な税率の国に資金を止めておくことから、現状と同じで、一方全体の税収は少なくなります。

産業誘致のために当初XX年は税率を下げているような場合もあり、これを有効とするために租税条約で特別な取り決めをしている場合もあるので、非常に複雑です。更には、税制は改正が常時行われており、細部は特に頻繁に改正されることもあります。

4) 移転価格

物が国境を越えて親子会社間で動けば、親子間の価格は勝手に決めることができるのであり、当然出てくる話です。法人は親と子の国籍が違うのですから、価格の付け方で、親の国の税額と子の国の税額異なってしまいますから。私は、経済摩擦でも何でもないと思っています。

5) 朝日新聞批判

「法人減税、社会への還元カギ」と書いてあるのですが、これは変と思います。税引後利益である企業の純利益は株主に属します。社会に貢献するのであれば、寄付金として既に費用として払った部分か、あるいは納税行為としての社会への貢献。それと、企業活動そのものが社会における活動であり、有用な活動であるからこそ、その活動から収益が得られ利益が生まれているはずです。

従業員に対しては、適正な報酬を払うのが義務であり、高度な労働力や、有能な人材確保と法人税率は関係ないはずです。

法人税が減税されれば、企業はその減税分を社会貢献する(orすべし)と考えるのは、おかしいと思います。市場経済においては、利潤を最大化する行為が社会発展に繋がるようなルール・メカニズムを作り出すことが重要と考えます。

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