« レックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文 | トップページ | リーマンの連邦破産法11条申請は予想範囲内 »

2008年9月13日 (土)

朝日新聞 これはちょっと酷すぎませんか?

ネットのAsahi.comには出ていないようですが、本日の朝日新聞朝刊の1面と3面に「税から逃れるサラリーマン」という特集が出ていました。

サラリーマンに対する税が不当に高くなっているとの主張と理解しますが、トンデモ論であり、大新聞の特集とは思えないことから、ブログで私の反論を書きます。

1) マンション投資で節税が可能か

可能かどうかと言えば、節税となる場合もあるが、増税になることもあり、更には不動産価格が下落して、大損する場合もある。投資は、自由。節税目的としては、リスクが大きすぎて勧められないと思います。

マンションの賃貸所得は不動産所得で、不動産所得は、事業所得、山林所得及び譲渡所得と同様に、赤字(損失)となることがあり、所得税法69条(損益通算)により他の黒字の所得金額を赤字分で低くすることができます。しかし、不動産所得の金額は総収入金額から必要経費を控除した金額です。必要経費とは、売上原価と販売費・一般管理費で減価償却費を除き債務の確定した金額です。

朝日新聞のケースを考えると、家賃収入が2400万円とのことで、仮に価格2千万円のマンション1戸が家賃10万円(年120万円)で賃貸可能とするなら、4億円の不動産投資をしていなければならい。鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物の税法上の耐用年数は47年であり、年間償却額は850万円。投資したマンション戸数が20戸なら、管理費が全部で年間240万円。投資を全額の50%を借入金でまかなったなら、初年度は利子のみで利率年3%として年間600万円。都合差し引き310万円の黒字である。

朝日新聞は花火大会の旅費も必要経費と言っているが、所得税法45条(家事関連費等の必要経費不算入等)により必要経費とできない。また、子供2人への給与支払いが合法といっているが、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)により必要経費とはできない。57条に例外として青色申告の場合の事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例があるが、所得税法施行令165条とも照らして考える必要がある。結論としては、朝日新聞には「手伝わせた」とあり、事業に専従する親族とは言えないと私は解釈します。

310万円の黒字と計算したが、20戸も賃貸していると、賃借人とのトラブル発生の可能性もある。保守費用も積み立て時ではなく、支出時(資本的支出であれば、支出後の償却)に発生し、不動産所得が本当に赤字なら、支出がもっと多いのであり、自分の給与をつぎ込んででも補填する必要がある。借入金の借入期間は償却期間47年より短いはずであり、キャッシュフローはこれより苦しいのである。

そんな苦労をして、不動産投資をしますか?そうであるなら、マンションはもっと売れています。しかし、現実には、マンション販売会社の破綻が相次いでいます。

2) 経営コンサルタントは儲かるか?

女性経営コンサルタント(38)のことが3面に書いてあります。現実のコンサルタントは仕事が不安定で、悪いことをしなければ安定した高収入は難しいと思います。収入はともかくとして、高級車の購入、自宅の費用、海外旅行なんて法人所得の損金にはできませんよ。

法人の所得の計算は個人の場合とほぼ同じで、所得の金額の計算は法人税法22条に定められています。法人の場合は、家事関連費がありません。法人が自らの収入・収益とする益金と法人が自己のために支出する損金とにより所得が決まります。すなわち、高級車の購入、自宅の費用、海外旅行については、取締役が支払うべき支出であり、会社がそのような処理をしたとしても法人が負担すべき損金ではなく、法人税法上は取締役に対して給与を支払い、取締役が自らの給与で支出したと扱います。そして、この給与は定期同額給与のように損金としては認められません。また、所得税も課されます。

税務署に見つからなければ構わないとやっちゃうことは可能です。しかし、見つかる可能性は十分あります。何故なら、税務申告に財務諸表を添付するし、疑いを持たれれば、税務検査にやってきて、挙げ句の果てには正規の税金プラス加算税等が課されます。

3) サラリーマンから個人事業主?

私なんか絶対損だろうと思うのですが。サラリーマンだから、被雇用者の権利が様々な法律で守られています。例えば、労災もそうですし、失業保険も、また健康保険や年金も有利になっています。組合経由での権利行使や、組合を作る自由も存在する。

個人に力があり、サラリーマンでいるよりは独立した方が、収入が増加し、待遇が良くなる場合もあります。しかし、それは力のある人にだけ通用し、多くの人は、個人事業主になると言えば、会社は低賃金で解雇も自由になると喜ぶでしょうね。また、力のある人だって、将来とも現在の状態が持続するか不明な部分があります。リスクを冒しても、個人事業主として独立するかは、個人の選択です。

4) 本当に必要なこと

朝日新聞は的外れな議論をしています。私に言わせれば、「税務署はそんなに甘くはないですよ!」です。もし、朝日の記述が事実なら、「税務署よ法を正しく執行せよ!」、「法の正しい執行は、公平で皆が幸せになる社会をつくることである。」であります。考えりゃ、税務署のコンプラになってしまいました。

しかし、コンプラ議論は、税務署より朝日新聞の方が、もっと重大なようです。コンプラを呼びかけるのではなく、法律違反を奨励しているのですから。

|

« レックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文 | トップページ | リーマンの連邦破産法11条申請は予想範囲内 »

コメント

記事を読ませて頂きました。都内で学生やってる者です。

朝日の記事を読んで,少なからず行政サービスを享受してるだろうにそれを省みず過度の「節税」に励む姿に腹立たしくも思いましたが,この記事読んでコンプライアンスに問題があるということで安心しました。笑

投稿: rinsan | 2008年9月14日 (日) 21時52分

rinsan さん

コメントありがとうございます。

皆が住みやすい良い社会を作っていきたいですね。すこし角度を変えると違って見えることがある。どれが本当なのだろうかと考えること、私は大切と思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年9月14日 (日) 22時12分

朝日の記事は知りませんが、数字おかしくないですか?何か朝日の記事では他の数字が出てたのでしょうか?
2400万(家賃-850万(償却)-240万(管理費)-1200万(金利)=110万、さらに固定資産税やらなんやら払うんですよね?どこから310万の黒字って数字が出てきたんでしょう?4億を3%で借りたら金利だけで年1200万だと思いますがなぜか600万になってますし。どういう計算なんでしょうか?

投稿: ひがし | 2008年9月20日 (土) 01時40分

「ひがし」さん

「ひがし」さんの計算であっています。すなわち、2400万(家賃)-850万(償却)-240万(管理費)-1200万(金利)=110万で正しく、これから、固定資産税(1戸あたり5万以上になると思いますが)を払って、ほんの少しの赤字かも知れません。(その場合は、赤字額分を給与所得から減額でき、節税が可能です。)

キャッシュフローを考えてみます。4億円を元利込み3%金利の30年元利均等返済で借り入れることができたとすると、借入金年間返済額は2040万です。25年返済では、2300万です。年間支出は、これに管理費と固定資産税等が加わるので、2300万~2600万となるのでしょうか。

賃貸収入が2400万としても実リターン額はずっと少なくなる。余り魅力ある投資と思えないし。賃貸市場が安くなるリスクに加え、老朽化と言えないでもある程度(10年-15年)ほど経過したら他に魅力ある賃貸マンションが建設されて入居者がいなくなるリスクがあると思います。

計算間違いの指摘ありがとうございます。本文を50%の資金を年3%で借り入れた場合に、変更します。私の間違いについて、どしどし指摘下さい。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年9月20日 (土) 11時31分


日本では、自営業者は脱税免税特権貴族、サラリーマンは納税奴隷。

自営業者は生活費や私的な消費を経費に計上して脱税している。

クロヨン、トーゴーサン、不公平税制 で検索!

投稿: 労働者 | 2011年3月 5日 (土) 11時14分

3月 5日投稿の労働者さん

ひがみすぎと言うか、隣の芝生が青く見えすぎと言うか、不信感に陥りすぎると、自らを苦しめると思います。

本当に、そうなら税務署に税徴収を正しくするように運動すべきである。本文にも書きましたが、所得税法45条(家事関連費等の必要経費不算入等)もあります。税務署が厳しいと思っておられる方も現実には多いと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2011年3月 5日 (土) 21時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/200131/42463613

この記事へのトラックバック一覧です: 朝日新聞 これはちょっと酷すぎませんか?:

» 原価管理:田中雅康の原価管理 [原価管理:田中雅康の原価管理]
日本経営システム協会会長、東京理科大学名誉教授の田中雅康が原価管理について説明します。 [続きを読む]

受信: 2008年10月 5日 (日) 08時55分

« レックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文 | トップページ | リーマンの連邦破産法11条申請は予想範囲内 »