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2008年9月25日 (木)

三笠フーズ家宅捜索問題

三笠フーズのの家宅捜索を始めたとのニュースがあったので、私の頭の中の糸が完全にほぐれた状態ではありませんが、少し書いてみます。

日経 9月24日 三笠フーズを捜索 食品衛生法違反など、3府県警合同捜査本部

1) 食品衛生法違反

9月19日の事故米についての真実についてKoumeさんから次のコメントを頂きました。

ところが平成18年の、いわゆるポジティブリスト制度の施行により、残留農薬基準が設定されていないものは全て一律基準の0.01ppmが使われることになり、コメに対するメタミドホスはそれに該当します。要は0.01ppmは特に安全上の根拠など無い(超安全である)基準なのです。

というわけで、0.05ppm残留していようと安全上の問題が無いのは仰る通りなのですが、食品衛生法では安全かどうかではなく基準値を越えるか越えないかで判断されていますので、安全ではあっても食品衛生法違反には該当するはずです。

食品衛生法の、どの条項かと考えましたが、おそらく次の11条3項と思いました。

農薬、飼料に添加、混和、浸潤その他の方法によつて用いられる物及び医薬品であつて動物のために使用されることが目的とされているものの成分である物質が、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて残留する食品は、これを販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。ただし、当該物質の当該食品に残留する量の限度について第一項の食品の成分に係る規格が定められている場合については、この限りでない。(注:条文の括弧書き等を含め省略部分あります。)

11条3項の違反に関する刑事罰については、72条で2年以下の懲役または2百万円以内の罰金もしくは併科となっています。

11条3項の「人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量」は、この平成17年11月29日 厚生労働省告示第497号により、次のように発表されていました。

食品衛生法第十一条第三項の規定により人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量は、0.01ppmとする。

2) 対象業者の範囲

0.01ppm以上の問題物質が入っていることを知らないで、販売してしまった場合の、食品衛生法11条3項の適用はどうなるのでしょうか?ニュースでは、「詐欺容疑での立件も視野に実態解明を急ぐ」となっています。もし、三笠フーズが詐欺をしないで、販売していたと判明した取引があったら、その相手も当然同罪ですよね。

おそらくは、欺されてしまった善意の事業者を72条の刑事罰で起訴することはないと思います。しかし、通常よりずいぶん安い価格で、さも「訳あり品」である米として三笠フーズから持ちかけられていたら、商人として品質等について疑問を持つのが合理的であるとするような取引であれば、どうなのでしょうか?

悪魔のささやきに乗っかってしまっている業者は、三笠フーズのみに止まらない。そんな可能性があることを臭わせている気がするのですが。そうであれば、どうするべきか?三笠フーズのトカゲのしっぽ切りでよいのだろうか。消費者側が、品質と安全性に正当な対価を払っているか?

3) ミニマムアクセス米・加工米・飼料米

ここに農林水産省の本年7月31日付けの「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」があります。平成20/21年需要見通しは、831万トンとなっています。(4ページ)今回の事故米はミニマムアクセス米で、5年前に収穫された古々米でした。ミニマムアクセス米について、12ページに記載があります。平成7年4月から平成20年3月までの13年間に865万トンが輸入されたのです。年平均66万トンが輸入され、国内産米の8%位になるようです。ところで、在庫129万トンですから、カビが生える事故米は保管中に出ると思います。

ミニマムアクセス米は、援助用として輸出されている量が一番多いようですが、加工用・飼料用として国内に流通する分もあるようです。これを食料用に販売したら、どうなるのでしょうか?

そもそも食の安全とは、何でしょうか?信頼できる生産者から供給を受けた食品が安全であるにつきると思います。しかし、一方で現在は、三笠フーズ事件のように網の目のような流通経路で多くの業者に販売され、加工食品の原料もその生産者は極めて多く、広く分布している。検査の態勢なんて言っても、全量検査は無理だし、抜き取りでもある程度の安全を確保するには、費用が莫大となり、今の倍の食料価格を消費者が受け入れる等しないと難しい気がします。

事故米となっていないミニマムアクセス米を加工用(食用)ではなく、ご飯用として売ったとして、食品衛生法で罰則に問うことは難しい気がするのですが。事故米ではないから0.01ppmの問題はクリアーしており、食品衛生法11条3項には違反しない気がします。(よく分かりませんが)

農家がつくった飼料米は、どうなのでしょう。国産米です。食品衛生法11条3項では問題は生じないと思います。ブランド米のように手間暇を掛けず、収穫量を上げることを目指すでしょうから、味は2の次です。しかし、米屋がこれを分からないようにブレンドしたら、どうなるでしょうか?

更には、飼料用に遺伝子組み換えで生産するとすれと、どうなるのでしょうか?

米国から多くの飼料を日本は輸入していますが、米国ではどの程度遺伝子組み換えを使っているのでしょうか?考えれば、食品衛生法11条3項も食品に対してであり、飼料に対してでは、ないのではと思います。

考えれば、考えるほど、頭がややこしくなってきました。

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コメント

実情はどうあれ、風評被害は確実に発生しています。名古屋の老舗和菓子屋では、デパートなどから返品の山で泣く泣く廃棄処分にしています。(事故米を使った頃の和菓子は既に売り切っているはずなので、何も異常のない菓子が返品の憂き目にあっているわけです)

いとこは某病院の売店で働いていますが、そこで販売していた某フーズにも事故米が使用されていたとして、当面取り扱わないことになりました。弁当屋なんてそれほど大規模メーカーじゃありませんから、倒産することは十分あり得ます。

こんな末端メーカーに来る頃にはかなり値段が跳ね上がっていたと聞いていますから、怪しいコメと分かっていたかどうか疑問です。なのに被害は一番受けている。なんだか理不尽です。

投稿: 山口(産婦人科) | 2008年9月27日 (土) 08時32分

山口(産婦人科)さん

コメントありがとうございます。

山口(産婦人科)さんのコメントは、その通りと思います。経済的な被害・損失は、末端メーカーや販売者にしわ寄せされている金額が大きいと思います。

「食品衛生法上の基準は満たしていないが、食品安全委員会の評価基準の一日摂取許容量や急性参照用量の摂取はあり得ないと考えられ「健康上は安全である。」との宣言を、政府が行って風評被害の拡大を防止すべきと思うのです。

食品安全委員会は、食品安全基本法第22条により内閣府におかれています。一方、このブログで書いた0.01ppmは、厚生労働省が食品衛生法により出した告知です。安全についての基準は食品衛生法であり、食品安全基本法は基本方針を決める法律だから、基本法により設置された食品安全委員会は参考意見でしかない。

縦割り行政と言いたくないし、立法もややこしくしていると思えます。いずれにせよ、国民(消費者や末端メーカーや販売者を含みます。)のことを考えた行政・政治が重要ですが、この国でなされているのだろうかと疑問がわきます。

そんなことを考えていると、メラミンについても書かなくてはと、9月27日のエントリーを書いてしまいました。
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-188b.html

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年9月27日 (土) 14時27分

国産の飼料米はごく一般的に日本国内で流通している品種を使うことが多いので、DNA鑑定を含めありとあらゆる科学的鑑定をもってしても一般食用米との区別は不可能なものがあります。
が、このようなものはそもそも生産者としても買い受ける側としても「飼料米として生産する」という契約があるはずなので、付け替えは信義誠実の原則に従うことになります。要は、食品衛生法ではなくJAS法だったり詐欺の方の問題としての扱いです。

私が問題だと思うのは、三笠フーズの問題も含め、これらの事柄がほとんど「食の安全」問題になってしまうことです。本来、これらの事件は経済的な問題ではあっても安全上の問題ではありません。安全の問題というノイズのせいで、では残留農薬などの問題がまるで無い加工用米には問題が無いのかという視点は一般にはまるでありませんし、この件をある経営コンサルタント様が疑問視されるのは本当にもっともなことだと思います。

もっとも、だったら最初から飼料用米専用の品種を開発し(不味いがたくさん取れるような)、鑑定が可能な状況を用意すればいいだけだと思いますが、何故か作らせる側が「飼料用米でもコシヒカリにしろ、ちゃんと検査も受けろ」と指定してくる始末で、そのウラを読めばもちろん・・・になっています。それでも受ける農家の脇の甘さを指摘されれば、全く仰るとおりとしか言い様がありません。

ちなみに遺伝子組み換えのコメですが、高機能米(例えば、食べると花粉症が治るコメ)の分野で聞いたことはありますが、一般的な形でのGM米(グリホサート耐性など)はまだほとんど普及していませんし、日本国内でGM農産物はその他の大豆や麦なども含めて一般の生産は許されていません(研究機関で作っていることはある)。ただし世界的に見れば、トウモロコシや大豆やワタはその流通量の大部分がすでに遺伝子組み換えのものです(アメリカではそれぞれ、栽培面積の8割前後がGM)。

投稿: koume | 2008年9月29日 (月) 10時12分

koumeさん

コメント及び説明・解説ありがとうございます。三笠フーズの問題は、飼料用農産物、遺伝子組み換え農産物(GM:Genetically Modified Agriculture)について考えさせてくれる良い機会なのに、単純に食品の安全性のみで終始している。私にとってはkoumeさんのコメントを機会に考えさせられる機会でした。

農水省の2007年の農林水産物輸出入概況を見てみると、トウモロコシの輸入量が16,628千トン、輸入平均単価27円/kgで、大豆が4,161千トン、平均単価47円/kgです。米国からの輸入がそれぞれ93.4%、78.0%ですから、栽培面積の8割前後がGMであるなら、日本にもGM農産物が既に輸入され、飼料用としては流通していると考えるべきでしょうか?
2007年農林水産物輸出入概況は、http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/yusyutugai2007/yusyutugai2007.pdf で見ました。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年9月29日 (月) 17時32分

畜産家の知り合いがいないので、人づての話であることをお断りしておきます。

畜産業では、牛にGM(遺伝子組み換え)飼料を与えているという風評被害を怖がっているので、わざわざ非GMの飼料を指定して輸入しています。ただし、ご指摘のとおり非GMの穀物は非常に少なくなってきていますので、年々手に入れ難くなっており畜産農家たちは本当に困っています。GMの使用を認めてほしいという悲痛な叫びを聞くことはあります。
また、これだけGMが広まっている中で、混じりっけなしの100%非GMの品物など用意するのはきわめて難しく、数%は混入しています。日本国内の基準でも、確か混入の度合いが5%以下ならば「GM農産物は使用していません」という表示が出来たはずです。この事をもって「5%までなら混ぜてもいいというのは偽装だ」などと批判する市民団体の人もいるのですが、実際に現場ではわざと混ぜているわけではなく、どうにかして5%以下に抑えるのに四苦八苦しています。この割合はもしかしたら近年中に見直されるかもしれませんが(7%とか)、それはアメリカの陰謀だとか言う意味ではなく、それよりもGMが混ざっていない穀物などもう世の中に存在しなくなっているからなのです。

GM農産物が国内に入っているとしたら、それは飼料用ではなく、加工品として入っているものの方が多いです。GM農産物を原材料として使用することは(風評被害が怖いので)できませんが、海外ですでに製品にしてしまったものを輸入することはよくありますし、そちらの方の原料に規制は無いでしょうしね。

遺伝子組み換え作物に関しては、こちらのサイトをよく参考にしています。
http://web-mcb.agr.ehime-u.ac.jp/gmo1/

投稿: koume | 2008年9月29日 (月) 20時54分

koumeさん 飼料用穀物についても解説をありがとうございます。

米国のトウモロコシの生産量を当たってみました。
Department of Agriculture
2008年12,072,365 thousand bushels
2007年13,073,893 thousand bushels
2006年10,534,868 thousand bushels
FAO
2007年282,310,690トン
2006年267,597,970トン
2005年332,092,180トン
日本に輸入されているのは、全米生産量の5%強となるので、80%がGMであったとしても、日本にはGMは来ていないとの主張はあり得るかも知れませんね。

でも、このままでよいのかなとの疑問は、残りますよね。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年9月29日 (月) 21時56分

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