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2008年10月30日 (木)

ソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失

ソフトバンクは、29日に第2四半期の連結業績並びに平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等の発表を行いました。

ソフトバンク プレスリリース 2008年10月29日 平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等に関するお知らせ

但し、経常利益や臨時損益を含んだ純利益については、触れられておらず、プレスリリースの中では、次のように記載されています。

連結売上高は、携帯電話端末の販売手法によって大きく変動するため、業績予想の公表は困難な状況にあります。また、連結経常利益および連結当期純利益の業績予想は、当社が投資有価証券を多数保有していることや、ファンドを通じた投資を行っていることから、市場環境の影響を受けやすく、持分法投資損益および特別損益の予測がしづらいため、現時点における公表は困難な状況にあります。

しかし、今期の平成21年3月期においてデット・アサンプションに起因する750億円の損失発生の可能性が大きいと考えられることから、書いています。

1) 750億円損失の原因

平成21年3月期第2四半期連結業績として、ソフトバンクはこの決算短信を発表しました。決算短信の26ページから、連結貸借対照表の注記事項の記載があり、その2番目の項目である偶発債務として、750億円の損失発生の可能性が書いてあります。

当該部分の全文は続きを読むに入れましたが、どのような取引であったかと言うと、2010年8月と9月に満期償還となる社債に対して、期限前償還をしたいが、社債の満期日前の償還は困難であるため、金融機関と信託契約を締結し、償還資金を信託により運用し、その運用益と運用返済資金で社債が償還されるように仕組み、社債を期限前償還することと同一効果になるようにした。但し、金融機関との契約は信託契約であり、金融機関は管理者に止まり、全リスクはソフトバンクが負担する。

貸借対照表上は、社債債務は、金融機関に支払った資金で償還される予定であることから、双方とも認識せずに、注記として記述した。損失金額が750億円と想定される理由は、「デフォルトが8銘柄以上の場合は全額の75,000 百万円が減額される」と書いてあり、既に6銘柄のデフォルトが発生していることから、全部で160 銘柄の構成なので、2009年3月までに、今後2銘柄以上のデフォルトが発生する可能性が残念ながら存在すると思われるし、満期日の2010年8/9月まで無事に過ごせると思うのは楽観的すぎると感じたからです。

2008年5月27日の武富士の300億円に思うで、武富士の実質的ディフィーザンスによる300億円の損失を書きましたが、ソフトバンクの750億円損失も基本的には全く同じです。

2) 信託契約により投資した資産

投資した資産は、英国領ケイマン諸島に設立された特別目的会社(SPC)が発行した債務担保証券と書いてあり、サブプライムで有名となったCDO(Collateralized debt obligations)です。CDO自身、サブプライム・ローンとは限らず、色々な貸付金、債券がその対象となります。このNikkei Net IT Plusの記事 10月29日 ソフトバンク、営業最高益も金融不安で最大750億円の損失リスク 4―9月決算には、「アイスランドの銀行やリーマン・ブラザーズ証券など6銘柄が債務不履行(デフォルト)となっており」と記載されており、従来であれば優良投資債券が組み込まれていたのだろうと思います。アイスランドの銀行やリーマンなんて、少し前なら超優良先と皆が思っていましたから。

しかし、160 銘柄で8銘柄以上デフォルトの場合に全額減額なので、やはり大きなレバレッジが仕組まれていたと言えます。もし、レバレッジ1であれば、8/160である5%減額で済むわけですから。CDOとは、レバレッジを、好きなように組める仕組みです。デリバティブの恐ろしさを見せてくれています。現在の世界的金融不況については、改めて書きたいと思っていますが、何故米国発金融不況が生じたかは、デリバティブという金融派生商品に起因する所が大きいと思います。

3) ディスクロージャー

現時点では、デフォルトになったのは6銘柄であり、7銘柄になると損失発生の様なので、ディスクロージャーについて問題があるとは思いません。しかし、デフォルトになる可能性があるなら、引当金を計上しておく必要があり、本決算においては、引当金も問題になるであろうし株主に対する更なる説明を必要だろうと思います。2009年3月期は、デフォルトになっていなくても、引当金を計上し損失を認識することはあり得ると思います。

一方、このデット・アサンプションを実行した時期ですが、2007年3月期の貸借対照表から注記が始まっているので、2007年3月期と考えるが、ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収したのが2006年4月であり、これ以降2007年3月までのプレスリリースを見ても、このデット・アサンプションについての発表がありません。社債そのものは、1998年、2000年発行なので、ボーダフォンによる買収前のJ-フォンの時代のはずです。そうなると、ソフトバンクはデット・アサンプションが実施された状態のボーダフォン日本法人を購入したと思われます。

M&Aが行われた会社の財務諸表って難しいと思いました。一方、M&Aをする側にとっては、相手先がデリバティブ取引を持っていた場合に、そのリスクを短期間のデューデリで、どこまで分析できるのかなと思います。一見してうまく仕組まれているが、思わぬ落とし穴があったりして。

2007年3月期のソフトバンク連結貸借対照表の偶発債務に関する注記も続きを読むにおきました。

2008年10月29日発表の決算短信における連結貸借対照表の偶発債務に関する注記

ソフトバンクモバイル㈱が発行した下表の社債について、金融機関との間に締結した社債の信託型デット・アサンプション契約(債務履行引受契約)に基づき、金銭を信託拠出しオフバランス処理をしています。
当該信託は、英国領ケイマン諸島に設立された特別目的会社(SPC)が発行した債務担保証券を保有しています。
SPC は保有する社債を担保に、160 銘柄で構成されたポートフォリオの一定部分を参照するクレジット・デフォルト・スワップ契約を締結しています。
ポートフォリオを構成する銘柄が一定数以上デフォルト(契約上の信用事由、以下同じ)となった場合、SPC が発行した債務担保証券の償還額が減額されることになります(デフォルトが7銘柄の場合は45,696 百万円、8銘柄以上の場合は全額の75,000 百万円が減額されます)。
当該償還額の減額が生じた場合には、ソフトバンクモバイル㈱の社債権者に対する償還義務が存続しているため、当該減額と同額(税引前当期純利益への影響額)の損失が計上されることになります。なお、社債の償還資金に備えて㈱みずほコーポレート銀行および当社による融資枠が設定されています。
平成20 年9月30 日現在、債務担保証券のアレンジャーであるゴールドマン・サックス・インターナショナルから対象銘柄のうち2銘柄のデフォルトの通知を受けており、平成20 年10 月1日以降、同社より更に4銘柄についてデフォルトの通知を受けています。
                銘 柄                 発行日                償還日                譲渡金額
第3 回無担保普通社債 平成10 年8月19 日 平成22 年8月19 日 25,000 百万円
第5 回無担保普通社債 平成12 年8月25 日 平成22 年8月25 日 25,000
第7 回無担保普通社債 平成12 年9月22 日 平成22 年9月22 日 25,000
                                     合 計 75,000 百万円

2007年3月期の連結貸借対照表の偶発債務に関する注記

ソフトバンクモバイル㈱が過去に発行した次の社債については、金融機関との間に締結した社債の信託型デット・アサンプション(債務履行引受契約)に基づき債務を譲渡しております。なお、同社債に係る偶発債務と同契約による支払金額を相殺消去しておりますが、社債権者に対する同社の社債償還業務は社債償還時まで存続いたします。
銘 柄 譲渡金額
第1回無担保普通社債   25,000百万円
第3回無担保普通社債     25,000
第5回無担保普通社債     25,000
第7回無担保普通社債   25,000
             計  100,000百万円

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