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2008年10月11日 (土)

ニューシティ・レジデンス破綻から感じるJREITの不安

不動産投資信託(REIT)のニューシティ・レジデンス投資法人(NCR投資法人)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。

日経 10月10日 REIT初の破綻 ニューシティ、負債1123億円

10月9日発表 民事再生手続開始の申し立てに関するお知らせ

REITは、賃貸収入がその収入源の中核となっており、優良資産に投資をしていることから、安定した配当が得られ、倒産リスクは低いと見られていたと理解します。しかし、JREITは、その構造上安心できるとは限らないと思いました。

1) JREITとは?

JREITとは、「投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年6月4日法律第198号)」により設立された投資法人が不動産に投資し、その賃貸等の運用収益と、売却収益を投資主に配当します。 株式会社ではなく、株式に相当する証券は投資口と呼ばれ、株主総会に相当するのは投資主総会であり、役員は執行役員、監督役員、会計監査人です。

何故JREITが盛んになったかは、税の利点と投資口の証券市場での上場です。

2) 税の利点

投資法人の法人税ほぼ無税

次の様な条件を満たせば、投資法人は法人税をほとんど払わなくても良いのです。(多数あるので、重要と思う条件のみを記載します。)(租税特別措置法67条の15 投資法人に係る課税の特例)

・ 発行済投資口が五十人以上の者によつて所有されているもの

・ 同族会社に該当していないこと(上位3社の株主で50%以下の保有であること)

・ 他の法人の50%以上を保有する出資をしていないこと

・ 配当可能所得の金額の90%を超えて配当をしていること

上記を満たしていても、最後の条件で、例えば95%を配当していれば、5%が投資法人に残り、これについては30%の税率で1.5%の少額の法人税がかかります。

法人が投資主の場合の法人投資主への課税

投資法人から受け取る配当金は税引き前の利益ですから、単純に益金の扱いとなり、受取配当金益金不算入は適用されません。(租税特別措置法67条の15第5項)しかし、もともと受取配当金益金不算入(法人税法23条)は、25%以上の株式保有でないと50%しか益金不算入とならないのであり、税引き前利益が益金となり課税されることについて損は全くありません。

個人が投資主の場合の個人投資主への課税

上場REITは、上場株式と全く同じ扱いです。すなわち、配当についても現行では所得税7%と地方税3%の合計10%で完了です。(租税特別措置法8条の5)但し、5%以上を保有すると総合課税。

売却についても現行では所得税7%と地方税3%の合計10%で完了です。(租税特別措置法37条の11)

なお、2009年4月から、15%の所得税と5%の地方税になる予定ですが、証券税制がそもそも優遇税制であるとするなら、それ以上の優遇がJREITには存在することとなります。

3) NCR投資法人破綻の理由

多くのブログで言われているように、やはり、この2007年12月13日の資産の取得で発表している池袋徒歩2分の32階建て、総戸数404戸の大型タワーマンション277億円の取得と考えます。NCR投資法人が277億円で取得と発表し、その4ページ、19ページで、鑑定価格257億円と言っているのですから、これって正常なのかと思います。

20億円も高く買う。誰から買ったかというと、16ページに建築主池袋ティー・エム合同会社とあります。よく分かりませんが、この日経BPネットの記事によれば、このオーストラリアのMacquarieも関係しているようです。

この広告には、タワーマンションの竣工は2007年12月と書いてあります。すなわち、完成時にNCR投資法人が購入したと言うわけですが、着工したのは、2年以上前、基本構想や土地取得を初め実質プロジェクトとして動き始めたのは相当前と思います。多分、NCR投資法人が購入を約束したのは、相当前に遡るのではと想像します。すなわち、その時点で、277億円が相場であったころです。

Macquarieも、無茶苦茶なリスクをとっていないと思うのです。一方、Macquarieは誰に話をしたかですが、NCR投資法人の管理会社であるCB Richard Ellis Group, Inc. にだと思います。

CB Richard Ellis Group, Inc.は、相場を読み違えた。結果、277億円をNCR投資法人は資金調達できなかった。このように想像します。

4) JREITの構造問題

2)で書いたJREITの税の利点が崩れるとどうなるかですが、例えば、90%を超える配当を支払うキャッシュを用意できないとなると、

「投資法人は、法人税を払う → 配当額が減少する」 となりますが、更に、

法人投資主は、租税特別措置法67条の15第5項が適用されるので、税引後利益にも拘わらず益金不算入にはならない。

個人投資主は、法人税相当額の配当減少となる。

このため、JREIT投資法人は90%超を配当しようとする。NCR投資法人の場合は100%でしてた。

利益とキャッシュフローの違いは、次のように減価償却費と借入金返済額の違いです。

利益=収入 ー 費用 ー 減価償却費

キャッシュフロー=収入 ー 費用 ー 借入金返済額

減価償却は建物であれば最大は65年です。こんな長期の借入はないのであり、常に借入金返済額の方が大きく、キャッシュフローの方が利益より小さいこととなります。すなわち、利益と同額の配当を支払うためには、借入をしてくるか、新たな投資を受け入れていかねばならない。そのためには、常に新規投資を手がけて、新たな投資を呼び込んで、その投資資金を配当に回す。

90%超の配当実現のためには、ネズミ講をするしかない。もし、90%が不可能なら、法人税を支払うから、もっと惨めです。これば、JREITの構造的欠陥ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

5) 日本版不動産不況

サブプライムは対岸の火事だと思っていたら、自分の方にも負けないような火種を持っていたのではないかとの気分です。JREIT破綻は、NCR投資法人に止まらないことになります。

例えば、これですが、2008年9月17日の格付け情報です。NCR投資法人をA+としています。格付け情報が意味をなさなかったサブプライムと似ています。

私の懸念が当たっているのか、間違っているのか、しばらく様子を見てみます。

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コメント

減価償却費は非現金支出費用ではないでしょうか?
言わんとしていることを理解できなかったので、一応言ってみる。。。

投稿: Depreciation.com | 2008年10月11日 (土) 05時58分

Depreciation.com さん コメントありがとうございます。

その通りです。「減価償却費は非現金支出費用」です。一方、「借入金の借入や返済(及び新規出資や配当金)は、現金の動きが伴うものの、損益には影響しません。」

私の説明に不十分な点があるため、新エントリーで補足を続けて書くこととします。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年10月11日 (土) 10時13分

こんにちは

J-Reitの場合は投資口の償還がないので借入金は運転資金として元本返済なしでの2~3年のローンで借りていて、物件利回り-期待配当率よりも借入金金利が高ければレバレッジが効くというモデルだと思います。

そこで万が一借入金の借り換えができなくなると、その分を増資で埋めないといけなくなるわけですが、そういうときは一方で投資口価格が下落し(利回りが高騰し)ているため、時価発行すると希釈化して利回りが下がる=そんな増資は誰も引き受け手がない、ということになってしまい、返済期限に借入金を返せなくなってっしまう(のではないかと金融機関が考えなおさら融資に慎重になって・・・)という構造だと思います。

ニューシティの場合は、45億円のコミットメントライン契約
を結んでいたので
http://www.ncrinv.co.jp/ir/topwhats/2008-0418-00002.pdf
リファイナンスだけならしばらくは延命できたと思うのですが、277億円というポートフォリオの13%にもあたる巨額投資の契約を資金調達のリスクを考えずに9ヶ月も前に締結してしまったところに破綻の原因があったと思います。
(契約条項の詳細はわからないのですが、当期利益が24億円程度ですからたとえば違約金が物件価格の1割とかだとアウトですね-ここで9割以上配当という導管性要件が効いてきます)

結局、市場変動のリスクを見誤り、身の丈以上に成長を急ぎすぎたということでしょうか。

投稿: go2c | 2008年10月11日 (土) 10時59分

go2c さん いつもコメントをありがとうございます。

頂いたコメントの通りであると私も思います。補足としてエントリーを追加し、そちらで借入金の返済期間を30年と長くとって分析したのですが、30年で想定しても配当金を支払うには、新規借入と新規投資の募集が必要となりました。

REITがもてはやされたわけですが、考えてみれば、90%超の配当を実施すれば、財務体質の強化は無理であり、不動産市況や金融市場の変動に対してもろい。多くの人が未だそのことに気がついていないのではと思い、書いています。

やはりJREITは、全額投資金でまかない、借入金は運転資金の不足分のつなぎのみとしたようなスキームでないと困難なような気がしてしまいました。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年10月11日 (土) 14時54分

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