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2008年10月17日 (金)

定額減税のその先

10月16日の朝日です。

朝日 10月16日 定額減税に埋蔵金流用検討 財政投融資特会から3兆円

定額減税に向かって進んでいるようですが、小手先の対応ではない、所得税のあり方についても考え、定額減税の先についても検討すべきと思うので、書いてみます。

1) 6万5千円の定額減税

朝日の記事には、”導入に積極的な公明党は「4人家族で6万5千円以上」の実施を主張”と書いてあることから、4人家族で6万5千円減税になるとすると、税がどうなるかを計算しました。

200810

給与所得が収入の全てであり、配偶者と子供2人(うち1人は16歳以上23歳未満とする。)の4人家族を前提とし、協会けんぽ(旧政府管掌保険)と厚生年金に加盟し、生命保険料控除等による所得控除が10万円受けられるとしました。

ボーナスを含んで960万円以下の年間給与金額であれば、住民税の方が金額が大きい。定額減税を実施するとなると、所得税と住民税の双方を対象としないと、効果が薄いこととなります。ちなみに、上記の前提条件の場合では、年間給与額620万円で所得税65千円となり、620万円ないと所得税のみでは定額減税を全額取得できなくなります。住民税を減額するとなると、国税から地方自治体への税額譲与のもう一つの法律を通さねばいけないことになります。

所得金額が低いほど影響が大きいので、5百万円以下の部分についてグラフを拡大しました。

500200810

定額減税の結果、360万円以下の人は税を払わなくて済みます。(なお、厳密には、住民税の定額部分(均等割)が別途4千円程度ありますが、取り扱いが不明なので触れないでおきます。)

2) 将来の所得税の姿

定額減税を今後も有効だと継続しても、その分を国債発行でカバーしても問題解決にはならず、消費税増税をするとすれば、270万円以下の人にとっては、減税なしで消費税が増えるだけ。低所得者層に対して増税をもたらすことになると思うので、定額減税は一時的・暫定的の措置に止めるべきと思います。

抜本策としては、所得税の103万円の壁を取り払うことだと思います。103万円の根拠は給与所得控除の65万円(所得税法28条3項一号)と基礎控除38万円(所得税法86条)の合計であり、年間給与額が103万円以下だと、所得税がかからない。従い、サラリーマンの奥さんがパートで働く際には、103万円が実質的に上限金額となり、結果として低賃金労働力の供給源となっている。

その結果が、労働市場に対して低賃金労働を供給し、一般的労働市場の賃金水準を低めているだけではなく、結婚・退職した女性が通常の賃金を得ることができる職場への再就職復帰への障害にもなっている。あるいは、結婚の高年齢化や、少子化、未婚率の上昇といったことにも繋がっていると思います。

これらのことは、所得税のみがその原因ではありませんが、所得税の制度は社会の発展に寄与し、人々を幸福にする方向に動かすような構造であるべきです。しかし、日本の所得税はそうではない。日本の社会は、農民社会から、男が働き女が家事、そして現代と発展してきたが、所得税は未だに共働きを冷遇する制度になっていると考えます。(あるいは、本来は短時間少額労働者に対する優遇であるはずが、その優遇策を逆に企業が利用して変なことになっているのでしょうか?)

3) 参考例

外国では、どうなっているかと少しだけ参考例を記載します。

A 米国

独身、夫婦個別、夫婦合算、扶養義務独身の4種類で、結婚している場合は、夫婦個別か合算かを選択することが可能です。日本は、年末調整があるが、米国には年末調整がなく、納税義務者は全員が申告することになるので、夫婦合算による申告・納税が可能と言えます。所得税は累進税率ですから、2007年の税率表では夫婦個別の場合$31,850以上が25%となるのに対して、夫婦合算であれば$63,700以上になります。税の面では、夫婦合算申告が有利となります。

B フランス

米国よりもっと徹底していると言えます。所得は世帯合算で、これを係数で割り算して、その結果をその同じ係数でかけ算します。独身は係数1、結婚していれば2で、子供1人につき0.5増えます。従い、子供二人であれば、3.0です。例えば、独身では14,000ユーロ以上なら25%ですが、子供二人の場合は25%以上が適用されるのは42,000ユーロ以上となります。

財務省のWebにもこのような資料がありました。ベルギーも興味ある制度で、扶養控除が子供が増えれば一人あたりの金額が増加します。

4) 年金や健康保険

所得税のみではなく、年金と健康保険も同時に考える必要があるでしょうね。夫の扶養家族であり、103万円以下の給与収入で、1日の労働時間が一般社員の3/4以下であれば、健康保険が夫の被保険者として利用でき、年金が3号被保険者となる。従い、負担をしなくて便益が享受できる。一方、年金・健康保険が適用されると、健保と年金の合計で保険料が給与所得控除を差し引く前の給与総額の12%以上(協会けんぽの場合)負担することとなります。

働く人が意欲を持って働ける制度。働く人を応援する制度を作るべきだと思います。

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