米上院の金融安定化法案修正案可決
次の日経ニュースでは「下院は3日にも修正案を採決する予定だが、・・、法案の行方はなお予断を許さない。」と書いています。私は、修正が盛り込まれて可決すると予想します。何故なら、信用崩壊が生じると損失が大きすぎる。議員さんは、自分の仕事をアピールをしたいのが本質であり、多くの議員は賛成を条件にしての修正に動くであろうと思うからです。
関連を書き進めます。
1) 米上院投票結果 賛成74 反対25
米上院(Senate)の議員(Senator)の数は、1州から各2名がそれぞれの州議会で選出され、米国には50州あるので、総数100人です。(首都ワシントン特別区は、どこの州にも含まれず、州ではないので、上院議員の選出はできません。)
投票結果は、この米上院の投票結果を見て下さい。議員名に続く括弧は、最初が政党(R:共和党、D:民主党)で、次が選出州名の略号です。マサチュセッツ州民主党のケネディー議員が、脳腫瘍手術のために投票できなかったようです。
出席した全員が、どう投票したのですが、政党別に区分すると次の通りです。
政党 | 賛成 | 反対 | 無投票 | 合計 |
共和党 | 34 | 15 | 0 | 49 |
民主党 | 39 | 9 | 1 | 49 |
独立派 | 1 | 1 | 0 | 2 |
合計 | 74 | 25 | 1 | 100 |
ちなみに、大統領候補のオバマ氏、マケイン氏そして民主党副大統領候補のバイデン氏は全員賛成票を投じています。共和党副大統領候補のペイリン氏はアラスカ州知事であり、上院議員でないので投票していません。
この投票を見て思うのは、米国の政党には、あまり党議拘束というのはないと感じました。議員が自分の信念で行動することを良しとすることに、私は賛成します。二大政党政治を本当に実施するなら、その方が重要である。党議拘束でやるとボス政治や権力闘争が、はびこる気がします。
2) 米上院が可決した他の法律
上の日経の記事には、「税制優遇措置などを加え」とあります。このNY Timesの記事には、それ以外に預金保険の上限を10万ドルから25万ドルに引き上げ、医療保険制度の改革方針の盛り込みもあったと書かれています。他にもあると思いますし、このあたりが今後の駆け引きになると思います。
3) 信用と会計
現在の米国の金融危機の一端には、サブプライム問題があり、住宅金融を複雑に証券化したCDO(Collateral Debt Obligation)の評価額が下がったことによる損失です。一番の原因は、住宅価格が下がったことですが、そもそも高すぎたバブル状態であれば、下がって当然と言えます。単純な1対1の債権であれば、担保処分による回収額の算出も容易かも知れないが、複数対複数で混じり合ったCDOですから、その評価は相当困難であると私は考えます。
時価会計の下では、債権、債券や証券と言った金融商品は当然時価で評価しなければならない。そのため、CDOを時価評価し、時価評価に伴う評価損を認識していることによる金融危機であるから、時価評価を一時的に中止すべきであると言うのが、あり得る議論です。例えばこのブルームバーグの記事は、「米証券取引委員会(SEC)に時価会計規定を一時停止する権限を与える修正条項」とも言っています。
しかし、サブプライム問題やCDOの発達は、時価会計があるから成立したのであり、取得原価主義であれば、そもそもなかったと考えます。すなわち、取得原価主義ではなく、時価で評価されているから、価格下落も反映されるという安心感が、市場規模を拡大したと考えます。従い、時価主義の適用を一時でも停止したなら、時価を反映していない、もしかしたら価値のない債権、債券や証券に投資しているかも知れないとの不安が生じたら更に大きな信用不安を引き起こすと私は考えます。
4) SECの対応
議会の影響があってかどうか知りませんが、9月30日にSECは次の解釈指針(Clarification)を発表しました。
Clarifications on Fair Value Accounting 2008-234
ロイターと日経をあげておきます。
ロイター 10月1日 米SEC、時価会計に関するガイダンスを発表
日経 10月1日 SECとFASB、証券の時価評価を柔軟にする指針を発表
柔軟化と言うより、適切に運用するための解釈指針との言い方が、良いと思いますが。会計の数字は、ルールにより変化してしまうし、恣意的な解釈が許されても変化する。自然界に存在するルールではなく、人間が作り出したルールですから、新しい事態に対して常に対応できるように発展させて行かなくてはならない。人間が作り出したものには、欠陥があるわけで、欠陥の補正を継続することにより発展があるのだと思います。日本の現状も、同じようなものだなと感じます。
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