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2008年10月 6日 (月)

朝日新聞の公貧社会 相続税

朝日新聞が「相続税減らしに走る富裕層」と書いていましたので、引き続き相続税について書いてみます。

1) 相続税はいくらか?

とにかく相続税率をグラフにしてみました。

200810_2 

1988年(昭和63年)以後3回にわたって税率が引き下げられました。(1987年(昭和62年)以前は、更に高かった。)最高税率は、2003年から50%に引き下げられました。

グラフの左下はゼロに張り付いていますが、これは配偶者と子供2人が相続人であるとして、基礎控除5千万円と相続人1人あたりの基礎控除1千万円が適用され、基礎控除で8千万円を受けられるとしてグラフを書いたからです。(1988年等は、基礎控除の額が少し小さいので、微妙にグラフが左に寄っています。)

実際の相続税額の計算の基となる課税価格は、不動産であれば路線価格をベースに計算したりするので、時価より低くなることが多いと思うし、更に小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法69条の4)が適用され80%減額されたりするので、平均的な財産しかない人はほとんど掛かってこないか、掛かってもそれほど巨額ではありません。

従い、1億円の相続財産があり、配偶者と子供2人が相続人で、特例が全く受けられなかった場合は、相続税額の単純計算は250万円となります。しかし、配偶者が半分の5千万円を相続したとすると、配偶者に対する相続税額の軽減(相続税法19条の2)が受けられ、子供2人が各62.5万円づつ負担するのみとなります。すなわち合計125万円。

相続税は国税だけで地方税はありません。性格としては、富裕者税です。

2) 相続税の課税実態

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上の表の死亡者数は、厚生労働省の人口動態統計から、相続税のデータは国税庁の統計からです。死亡者数に対して、相続税を納付する人は、4.2%です。上の表の平均相続財産は、課税価格に平均基礎控除額を加算しただけですから、実際はもっと上です。但し、平均なので、巨額の財産を残した人もいる

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上のグラフは、課税価格で書いていることから、1億円程度を加算したのが実態であり、左の端は2億円以下1億円超という感じです。そして、1億円以下に104万件が存在するといった具合です。これを考慮して、書いたのが下のグラフです。

2008

ほとんど(95%以上)の人は、子孫に残す財産の額は1億円以下で、相続税を支払わない。やはり富裕者税ですね。

3) 相続税の性格

95%以上の人は相続財産が課税価格に達しないのですから、公正な社会を作る。すなわち、格差の固定、貧困の固定をしないことがあげられます。現在の税率は、一番上のグラフの紫線ですから、妥当と感じます。格差拡大に進んでいるようです。1億総中流も、なか悪くはなかったと思います。

所得税で課税を逃れたら、その分は、財産として残るのであり、相続税のもう一つの性格は、所得税の落ちこぼれを再補足する性格があります。

4) 朝日の記事の批判

A 高い相続税

相続税が1億5千万円とか3億円とか書いていますが、一番上のグラフを見ていただければ分かるように、5億円近い財産やグラフからはみ出た8億円近い財産を相続する場合に、該当します。朝日新聞は、庶民の感覚を失ったのかなと思いました。

B バブル時の相続税

バブルで不動産価格が上昇したときは相続税は増えました。例えば、平成3年(1991年)は4兆円近い相続税が納付されたが、2006年は1.2兆円と70%ダウンです。しかし、相続納付割合は6.8%であり、税額ほどは動いていません。平均課税価格が3.15億円でしたから、相続税対象の平均相続財産額は4億円と今より1億円高かった。これに一番上のグラフの一番高い税率である1988年以降の税率が適用でした。バブル時を比較に出しても、あまり参考にならないように思います。

C 相続税と寄附

朝日が明確に述べているわけではないが、税率を下げたら寄付金が増加することに単純には繋がらないと思います。本当に、社会のために寄附で貢献したいと思う人なら、単純に相続人に財産を残すのではなく、遺言を書いて、寄附(遺贈)をすると思います。遺贈をしたからと言って、相続人が納付する相続税が増えるわけではないですから。

もう一つは、相続人が、これほどまで自分は財産が不要だから、相続人の意志で寄附する場合ですが、寄附を行った相手が所得税において寄附金控除を受けることができる先であれば、相続税についても同じように寄付金控除が適用され、結果税率が低くなります。(租税特別措置法70条)

相続税を納付して、その上で寄附を行うことは、全くの自由です。寄付金と税を結びつける必要は必ずしもないと思います。現状でよいと思います。

5) 相続税の改正

相続税は来年3月に大幅改正がなされる予定です。と言うのは、本年5月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」という法律が制定されています。施行は10月からで、始まったばかりです。この法律の附則2条が次の条文です。附則に次に制定する法を書いているなんて、滅多にないと思います。

附則2条 政府は、平成二十年度中に、中小企業における代表者の死亡等に起因する経営の承継に伴い、その事業活動の継続に支障が生じることを防止するため、相続税の課税について必要な措置を講ずるものとする。

事業承継相続人に対する相続税が80%納税猶予となるとの案と了解します。これをするためには、現状の相続財産全額に対して計算するのではなく、相続人毎に税額を計算する必要があると話を聞きました。その結果、相続税が各個人が相続する財産価格により各人毎に計算することになると理解します。

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