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2008年10月28日 (火)

時価会計について

日経が次の10月27日の「時価会計「凍結」の意味を考える」という社説で、私の意見とはずいぶん異なることを述べられました。

日経社説 時価会計「凍結」の意味を考える(10/27)

日経ともあろう者がと思ってしまうので、少し書きます。

1) 時価とは

次の文章が、企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準の時価の定義です。

時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(市場価格)に基づく価額をいうこととした。また、デリバティブ取引等において、個々のデリバティブ取引について市場価格がない場合でも、当該デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときには、当該合理的に算定された価額は公正な評価額と認められる(第6項参照)。

なお、金融商品の種類により種々の取引形態があるが、市場には公設の取引所及びこれに類する市場の他、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる。

時価とは、公正な評価額であります。寿司屋の時価とは違います。日経は、曲解し「「活発な取引に基づかない取引価格は公正価値を表さない」として、経営者の判断を加えた理論値での評価も認めた。」としていますが、従来から認められていたとも言えます。だからこそ、10月17日の私の金融資産の時価評価に関連して2) 日本基準の現状 のなかで紹介したように、企業会計基準委員会が発表したのは「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(案)」です。会計基準の解釈・運用に係わる実務上の取り扱いに関する指針の案です。

2) 時価主義vs取得原価主義

食品の安全性に起因した様々な問題が報道されています。もし、報道されなかったら、発表されないなら、安心して食物を手にすることができません。投資先の企業が、タイムリーに重要事項を発表していくれ、会計期間毎の財務報告をしてくれるから、投資ができるのです。

考え方として、取得原価主義で貸借対照表を表示するが、時価情報と時価と原価の差額を注記する方法を採用しても、本質的な違いはないとも言えます。しかし、何故唯我独尊で世界と異なる方法を採用するのか理解に苦しみます。鎖国せよ!と言うなら別ですが、世界の中で発展していくのであれば、世界の多くの方々と共通語でコミュニケーションが取れるようにすべきです。

3) 米国における見直し

日経社説は、「米国の金融安定化法は米証券取引委員会(SEC)に時価会計凍結の権限を与えた。」と述べています。それは、事実と異なりますよと言いたい。金融安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of Act 2008)の133条がその条文です。(条文は続きを読むに入れておきます。法律全文はここにあります。)

法は、SECが見直しをすべきと言っているのですが、その見直しを実施する対象はFASB基準157番の公正な評価(Fair Value Measurements)であり、今回の対象企業は金融機関についてです。金融安定化法133条の私の理解が間違っているでしょうか?条文を読んでみてください。

なお、日本語の会計用語としての時価は、Fair Valueの意味です。Market Valueではありません。

恐ろしいのは、世界の動向を読み間違えることです。さもないと日本は奈落の底に転落する危険性があると思います。日経が社説で間違えるなど、私はトンデモナイと言いたいのですが。それとも、私の読みや理解が間違っていますか?

Emergency Economic Stabilization Act of Act 2008

SEC. 133. STUDY ON MARK-TO-MARKET ACCOUNTING.
(a) STUDY.—The Securities and Exchange Commission, in consultation with the Board and the Secretary, shall conduct a study on mark-to-market accounting standards as provided in Statement Number 157 of the Financial Accounting Standards Board, as such standards are applicable to financial institutions, including depository institutions. Such a study shall consider at a minimum—
(1) the effects of such accounting standards on a financial institution’s balance sheet;
(2) the impacts of such accounting on bank failures in 2008;
(3) the impact of such standards on the quality of financial information available to investors;
(4) the process used by the Financial Accounting Standards Board in developing accounting standards;
(5) the advisability and feasibility of modifications to such standards; and
(6) alternative accounting standards to those provided in such Statement Number 157.
(b) REPORT.—The Securities and Exchange Commission shall submit to Congress a report of such study before the end of the 90-day period beginning on the date of the enactment of this Act containing the findings and determinations of the Commission,
including such administrative and legislative recommendations as the Commission determines appropriate.

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