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2008年11月24日 (月)

立正大学の148億円損失について

駒澤大の154億円損失については、11月19日の駒澤大学154億円損失に思うで書きましたが、立正大148億円損失の報道もありました。

時事通信 11月20日 資産運用で148億円含み損=9月末、大学に金融危機の影響-立正大
共同47ニュース 11月21日 立正大も含み損148億円 「学校経営には影響なし」

駒澤大と立正大の損失の大きさの差は6億円と5%もなく、似通っていると思います。そこで、共通点と相違点を比べ、この問題について考えてみます。

1) 確定と未確定

駒澤大は、10月末に損失となっているデリバティブ関連の契約を解約し、損切りをして154億円の損失を確定しました。一方、立正大は次の11月21日の発表(最新情報)の通り、評価損失であり、長期保有を基本としていると述べておられ、現在も保有しています。

立正大 最新情報 11月21日 立正大学の資産運用に関する報道記事について

すなわち、駒澤大は損失確定です。立正大については、損失とはならず、予定通りの運用収益を得ることができる可能性もあるが、逆に損失が更に拡大する懸念もあります。

2) スワップと仕組債

駒澤大の投資は、「金利スワップ」と「通貨スワップ」でした。立正大の投資について、時事通信の記事は、次のように書いています。

資産運用を野村証券や大和証券SMBCなど国内4社に委託している。運用資産は、国債、地方債、社債や投資信託のほか、豪ドルを組み込んだ仕組み債。これらの含み損は、今年3月末時点で約96億円だったが、足元の金融市場混乱や円高が直撃して拡大した。一般的には、仕組み債は、各種有価証券や不動産などの資産を組み合わせて組成する複雑な金融商品。

仕組債も、表面的には利回りの高い債券の様に思えるが、本質はデリバティブです。例えば、豪ドルの仕組債を考えると次の通りです。

1.豪ドルと円の交換レートに関して円のコールオプションを売る。
例えば、A$=100円のときに、A$=90円の円コールオプションを売る。コールオプションの料金は例えば、1A$につき、5円。

2.為替が円高/豪ドル安となり、90円以下になれば、円コールオプションを買った人は、100円につき、90円で割り算した豪ドルを渡せばよいのだから、オプションを実行する。結果は、90円以下にはならないという保証を5円で購入したことと同じである。

3.為替が円高/豪ドル安となり、90円以上であれば、円コールオプションを買った人は、オプションを実行せずに、その時のマーケット・レートで円を購入する。オプションを購入していなかった時と比べ、5円の費用が余分に発生しているが、90円以下にならない保証の対価として見合えば問題はない。

4.上記1.の取引と同時に、円建ての仕組債を発行する。仕組債の金利は、「通常の金利+オプションの価格ー手数料」とし、「万一、豪ドルが債券満期時においてA$=90円以下である場合には、A$相当の円貨で償還する。」との特約を付ける。オプション対価が上乗せされるから、満期が1年であれば、5%近い金利が上乗せとなる。

「A$=90円以下なんてなりませんよ!」と言って、債券を販売すれば、大変です。次のチャートがYahooの豪ドルと円の過去1年の交換レートです。現時点では、60円を少し切ったところ故、上で書いた90円のオプションが絡んでいれば、40円の損失ですが、オプション料の5円がカバーされて、35円の損失となります。

Ayenrate20081124

仕組債もデリバティブ組み込み商品であり、本質的には金融派生商品です。

3) ディスクロージャー

駒澤大も立正大も財務諸表を公表しています。しかし、財務諸表の公表が、ディスクロージャーに問題なしを意味せず、注記表を初め、必要事項の説明が実施されないといけません。ちなみに、立正大の2008年3月末の貸借対照表を見ると、有価証券が552億円であり、そのうち満期保有目的の債券が537億円です。この満期保有目的の債券の2008年3月末時点での時価評価額が440億円ですから、97億円評価損がありました。一般の債券も金利が上昇すると評価額が下がるが、18%も下がるのは仕組債の保有があると考えられます。

学校法人は、上場株式会社とは異なるので、同一基準での財務諸表の作成やディスクロージャーが適切とは考えませんが、11月21日の最新情報公表(プレスリリース)はやはりディスクロージャーの範囲が少なすぎると私は感じます。また、立正大学平成19年度事業報告書にも「資金調達の状況」はありますが、「資金運用の状況」はありません。(借入金は4億円しかないのですが。)

立正大は、独立監査人として新日本有限責任監査法人の名前があります。財務諸表の監査をされていると理解します。2009年3月末の財務諸表がどのようになっているか、興味あるところです。

4) ガバナンス

駒澤大のところで書いたように、学校法人のガバナンスが、私立学校(学校法人)の多くに共通する問題と思います。ガバナンスは学校法人・自らが、そのルールを打ち出していくべきと考えます。問題が発生し、世間が騒ぎ、政府・文部科学省が介入権を持つようになるというのは、避けるべきと考えます。

大学は、学問の自由やその権利を守るべきです。そのためには、多くの人々の支持を受けることが必要であり、問題が発生しない仕組みを自らが作り上げていくことが重要と考えます。

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