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2008年11月13日 (木)

二階経産省の聞き逃せない発言

次のニュースです。

産経MSN 11月13日 二階経産相も失言で、発言撤回

発言内容は、「二階経産相は搬送拒否の問題に触れ、「医者のモラルの問題だ。相当の決意を持ってなったのだろうから、忙しいだの、人が足りないだのということは言い訳に過ぎない」と、発言した。」と記事にあります。

そこで、発言そのものを探すとTBSのニュースにありました。次の11月10日17:35のニュースです。なお、Web魚拓も見つかりましたので、リンク切れの時は、Web魚拓(動画なし)をクリック下さい。

TBS 11月10日 妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え
TBS 11月10日 妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え(Web魚拓)

発言撤回で許される発言ではないような酷すぎる発言と思うことから、書いてみます。

1) 産科医の現状

墨東病院での妊婦受け入れ困難による悲しい事件については、10月24日の都立墨東病院における妊婦死亡で書いたように、都立墨東病院の産科医不足があります。

関連する事項を、私なりに整理してみると、次のようになります。(もし、医師の方が見られて、間違いがあれば、指摘下さい。)

a. 健康な人でも、突然体調が悪くなることがある。(例えば、脳卒中・・・・)

b. 周産期の妊婦の体調が突然急変することはある。(周産期とは、妊娠22週から生後満7日未満までの期間です。)

c. 周産期妊婦は、1人の生命ではなく2人の生命である。2人共助けるよう尽力するのが医療である。

d. 周産期妊婦の手術が必要であったり等した場合には、先ずは胎児の帝王切開による出産を実施するのが通常である。例えば、妊婦への麻酔・投薬等が胎児に対して悪影響を及ぼす可能性もあり得る。

e. 妊娠満期の40週より早い37週未満で生まれた新生児を未熟児と言いますが、周産期妊婦の体調急変は37週未満で起こることがあります。例え、満期40週での出産であっても、妊婦が重体であった場合は、新生児集中治療室(NICU)がある医療施設での出産が望ましい。

f. 体調急変した妊婦の出産は、産科医のみで対応できず。小児科医、妊婦の病気の科の医師(脳外科等)も同時に共同して対応する必要があり、更に妊婦用のICUが必要なこともある。

この辺りで、要求が過度になりそうな気もします。現実には実際に起こった時に医師がどう判断するかですから、一般論のみで議論すると間違う可能性があると思います。しかし、周産期妊婦の急変があったら、対応が大変なことは理解できます。

昔は、どうであったかと言うと、母子共に命を亡くすことがありました。厚生労働省の統計に人口動態統計というのがあります。この統計における周産期死亡率の推移は次のグラフの通りで、2007年の死亡率は1000の出産に対して3.0でした。ところが、今から20年前の1988年は、その倍以上の6.5であったのです。私は、医師の方々の尽力を高く評価します。

2007

2) 医師の超過勤務

医師の超過勤務について東洋経済On Line 11月11日が、取り上げていました。墨東病院の産科医の11月の勤務時間についてYoshanのブログ 新小児科医のつぶやきが分析しておられます。Yoshanさんの分析によれば、11月は330時間とかの勤務です。11月は祝日が2日と土日が10日あるので、普通の人は18日間の勤務で、1日8時間労働とすると144時間です。従い、330時間労働とは、キチガイ的労働をされています。

しかも、都立の病院の医師の賃金は、民間病院と比べれば、嫌になるほど安いみたいです。勤務医が、駅のそばのビルで開業医となり、夜間勤務をせず、土日は休むという生活にあこがれるのがよく解かります。勿論、開業のために、借金をすることとなり、患者が来なければ、収入はなく、リスクがあります。それでも、夢のない勤務医より、人間的生活がしたくなるのではと想像します。

そんな状態に医師を追い込んでいることは、社会にとってマイナスだけです。医師が不足しているから、医学部の定員を増加しても、それだけでは解決になりません。医師並びに医療従事者の方々に、喜びや誇りを持って働いていただけるようにすることは、重要と思います。

3) 不適切発言

私からすれば、二階俊博の発言は、トンデモの見本であり、兵庫県知事の方がよっぽで可愛いです。他人の苦しみや努力を理解できない人は、議員になるべきではないと思います。

救急搬送に関してITが機能していないとの話がありますが、これもお門違いと私は思います。1)のaからfに書いたようなことをITで伝えるより医師が電話で説明する方が、患者の状態を正確に伝えることが可能であり、効果的で適切な判断が下せると思います。ITであれば、情報は限られ、刻々と変化する患者の状態と受け入れ側の状態を反映できないのですから。医療崩壊をITの問題だとする姿勢は本質を見誤ると思います。

墨東病院の報道には、週刊文春の取材が関係している可能性を書きましたが、週刊文春の11月20日号は「妊婦たらい回し事件」最終結論 石原都知事は妊婦と遺族に謝罪せよ!となっています。読んでいませんが、東京都の責任を書いていると想像します。

調布市の飯野病院からの妊婦を杏林大病院が受け入れられないことがありました。産経MSN 11月5日 【妊婦重体】「緊急性は低いと判断した」 杏林大病院が会見 多摩地区も、以前から医療提供が困難な地域になっており、起こるべして起こった事態です。この妊婦を受け入れたのが、産経の記事にもありますが、墨東病院です。調布から墨田区まで結構距離があります。医療関係者は、このように協力して、医療を提供してくれています。しかし、この件で、NHKはケシカランと思います。ニュースでは、墨東病院のことを、「別の病院」と言っていました。世論操作をする報道はケシカランと思います。

最後に、二階発言に対して行った全国医師連盟の文書がここにあります。

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コメント

 二階経済産業相の「医師のモラル」発言に腹を立てていました。迅速に抗議を行った全国医師連盟、周産期医療の崩壊をくい止める会代表佐藤章氏などの活動が実を結んだことは嬉しい限りです。
 事の顛末が分かりやすくまとめられていたので、ブログで紹介させていただきました。これからもよろしくお願いいたします。

投稿: zundamoon07 | 2008年11月14日 (金) 18時25分

zundamoon07さん コメントありがとうございます。

医療の実態を国民の多くの方が、認識できずにいるのは、悲しいことですが、政治家が勉強をしていないということに腹立たしく思います。「医師のモラル」という発言であったので、医師の方々に余りにも失礼と思い書いてしまいました。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年11月14日 (金) 18時50分

はじめまして。
まったくおっしゃる通り、これは実に軽々しいトンデモ発言だと思います。
一人の死という重い事実があるのですから、実際の状況をきちんと踏まえて発言いただきたいものです。
私は医者でも何でもありませんが、こんな風なテキトー発言によって医者が非難されるなんて、どんな医者だって患者を死なせたくて医者になったわけではなかろうに、と感じて悲しくなります。

投稿: みっこ | 2008年11月15日 (土) 00時33分

美容外科・皮膚科・眼科・企業勤務保健師と何ら変わらない仕事志望の女医の増加。実際にモラルのない医者が増加しているのも事実ではあります。

投稿: でも・・・ | 2008年11月17日 (月) 15時30分

でも・・・サン

コメントありがとうございます。問題ある医師がおられるのも事実です。どんな職業でも、悪徳とまで行かなくとも、問題あり位の程度の方は、おられますね。

しかし、医師としての義務を果たそうと熱心に取り組んでおられる多くの医師の方々もおられ、私が知っている中にその様な方もおられます。

今や多くの方々は、医師不足の問題あるいは医療全般に関して問題が生じつつあると認識しつつあると思います。医療を受ける側からすると、安心して医療を受けられないことは問題である。本エントリーで書いたように医師は超過勤務で医療の現場で苦労されていると私は認識しています。問題は、超過勤務のみならず、他にもあり、課題は多いと思います。

ところで、本エントリーの趣旨は、医療問題の解決には議員や(例え厚労省でなくとも)大臣が率先して、取り組むべきと考えるが、それにあたり、重大な認識不足があるというのは、問題が大きいと思ったことです。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年11月17日 (月) 18時24分

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