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2008年12月19日 (金)

高知医療センターPFIでも問題浮上

近江八幡市の病院PFI解約について、12月15日のエントリーで書きましたが、高知県・高知市共同事業の病院PFIである高知医療センター(ホームページはここ)でも問題が発生しています。

高知新聞 12月02日 高知医療センター 本年度末7億6000万円不足

高知新聞 12月04日 高知医療センター 127億円借り換え検討

12月2日の記事では、2009年3月末で7億6千万円の資金が不足するとなっていました。12月4日の記事は、金利の低い地方債に借り換える方針を決め年間5億円の軽減を見込むとなっています。やはりPFIなので高くついている。そこで、PFIを解約して、違約金を払わざるを得ないが、資金コストの安い地方債に切り替えるということで、近江八幡市とほぼ同じパターンです。もう少し、中を覗いてみます。

1) 高知医療センターのPFI事業

高知市には、高知県立中央病院と高知市立市民病院があったのですが、この2つの病院を統合して新たな病院として高知医療センターが作られました。高知医療センターの病院事業を実施している事業者は、地方公営企業法に基づき高知県と高知市が組織している高知県・高知市病院企業団です。(企業団規約はここにあります。)

病院事業者は高知県・高知市病院企業団(以下企業団とする。)ですが、病院の箱物(建物)はオリックスが出資した高知医療ピーエフアイ株式会社(以下SPCとする。)からのファイナンス・リースとなっており、更に医療の範囲外となるビル管理、施設管理、清掃、給食、検体検査、看護補助、そしてITシステム等がSPCから企業団に提供され、リース対価とサービス対価が企業団からSPCに支払われる契約が締結されています。この契約は長期契約であり、ITシステムを除く部分が30年契約で対価が2,132億円。ITシステムが8年間で46億円です。

思想としては、医療ライセンスが不要で民でできるものは全て民に一括で投げて、医療ライセンスが必要な医療事業部分は県と市が組織している企業団が実施するスキームです。相乗効果で良くなると期待したのでしょうが、絵に描いた餅を実践したのだと思います。餅の絵は、正しいフィージビリティースタディーをしなくても描けますから。悲しいのは、絵に描いた餅で、税の無駄使いをされている県民・市民です。国庫補助金も出ていれば、日本人全員が無駄使いにつきあったことになります。

2) 高知医療センターの平成19年度決算

高知医療センターの平成19年度決算がWebで公開されており、ここにあります。損益計算書を図示したのが、次です。

H19pl

支出が収入より大きいことが分かります。収入の紫部分が構成団体負担金となっていますが、県と市の救急医療負担金(5.4億円)、割愛職員退職給与金(4.8億円)等であり、リンク先の損益計算書に記載されています。支出の中で、経費、減価償却費、支払利息等がPFIのSPCへの支払いに相当すると思います。

次が、貸借対照表で、平成19年3月末も比較のために表示しました。

20083bs

赤の部分が累積赤字で、自己資本と資本剰余金を減額せずに表示したので、資産サイドの一番上に記載しました。平成20年3月末と19年3月末を比べると、累積赤字が大きくなっているのが分かります。20年3月末の累積赤字は58.1億円で、19年3月末の39.2億円より18.9億円増加しました。結果、20年3月末において、自己資本と資本剰余金の合計から累積赤字を差し引くと21億円です。公企業会計では、企業債も借入資本として資本に算入するようですが、民間企業ベースでは、丁度1年を経過後は債務超過すなわち、実質破産状態に陥ります。

PFIによる資金調達部分は長期未払金と未払金の多くの部分と思うのですが、貸借対照表を眺めると、せいぜい138億円あるいはPFI契約保証金を足しても150億円程度であり、全体の総資産に対しては40%足らずです。高知新聞の記事では、127億円となっており、PFIよる資産リース部分は127億円だと思います。そうすると年間5億円の節減は4%弱金利節約と思います。病院のような公共施設で、通常より4%も高い資金コストによる調達を行っているのは、おかしかったと思います。

3) PFI解約の可能性

近江八幡市のPFI病院と同じで、高知医療センターPFIも早く解除すべきと思います。継続することは、年間5億円の無駄使いを継続することです。違約金ですが、相手がオリックスなので、うまく交渉すれば違約金を下げるられる可能性があると思うのです。12月13日のオリックスの懸念で、オリックスの資金調達コストが上昇していることを書きました。13.125%は、もしかしたら年率ではなく、5年間に対してかも知れませんが、仮に5年間であったとしても年間2.625%です。オリックスは、資金調達に苦労しているはずで、金融のプロがうまく交渉すれば、オリックスにも利益をもたらす形で、低い違約金で解除できる可能性があると思います。

病院をPFIにしてしまった結果、給食も検体検査も看護補助もすべてSPCが1社で提供することになり、合理化できた部分はあるかも知れないが、独占で競争がなくなったのです。そして、フレキシビリティーに欠けているはずです。付随サービス部分についても、見直しを計り、最も合理的な契約に変更すべきと思います。そう考えると、病院PFIとは、良い所が一つもないように思えます。

私もPFIが全てダメだと言うのではなく、場合によっては、うまくいくこともあり得るはずです。例えば、ある企業が効率の高いゴミ発電を開発した。自治体がゴミを収集するので、ゴミをその業者に渡す。業者は、ゴミを燃して発電して、灰処理をする。業者は従来のゴミ処理費用より少し安い価格でゴミ処理を請け負い、発電した電力料金も収入とする。但し、設備の建設、運転を含め、事業リスクは業者がとる。このような、自治体がリスクを負えない事業で、民間が自己の経験や企業力でリスクを負って、利益を生み出せる分野がPFI事業の分野だと思います。

「民にできることは民に」ではなく「事業は、最適な仕組みを構築して」であります。

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コメント

 ご無沙汰しております。本年もよろしくお願いします。えと、高知の件、いろいろと詳しい分析とかわからず、非常に参考になりました。今後ともよろしくお願いします。今回の記事、リンクさせていただきました。

投稿: skyteam | 2009年1月22日 (木) 02時32分

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