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2008年12月26日 (金)

税制改革中期プログラムを考える

政府は、12月24日の閣議で”持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」”(以下、税制改革中期プログラムと呼ぶ)を決定しました。

閣議決定された税制改革中期プログラムはここにあり、日経のニュースは次でした。

日経 12月24日 消費税上げ「11年度から」 税制改革の中期プログラムを閣議決定

中期展望については、やはり基本的な部分の見直しも重要であります。報道では、日経のみならず、消費税増税のみがハイライトされすぎており、もう少し税体系を含めて考えるべきと思うことから、以下書き進めます。

1) 平成21年度予算

平成21年度予算も12月24日の閣議で政府案が決定されました。

日経 12月24日 09年度予算案を閣議決定 一般歳出、過去最大の51兆円

予算フレームは、ここにあり、次の表の通りです。(四捨五入による端数の過不足あり。)

平成21年度予算    (単位:兆円)
歳出 歳入 歳入前年度 増減
一般歳出 51.7 租税及び印紙収入 46.1 53.6 -7.5
地方交付税交付金等 16.6 その他収入 9.2 4.2 5.0
国債費 20.2 公債金 33.3 25.3 7.9
歳出合計 88.5 歳入合計 88.5 83.1 5.5

歳出が5.5兆円増加し、税収が7.5兆円減少するが、これを特別会計からの繰入4.2兆円実施し、その上で国債による資金調達を7.9兆円増加するという一般予算です。なお、前年度歳入の53.6兆円は当初予算であり、補正後の税収予想は46.4兆円であり、今回の政府予算案とほぼ同じです。ちなみに差はこの表にありますが、21年度予算と20年度補正との差で大きいのは、揮発油税の一般財源化により7710億円増を見込むが、法人税の減少を6150億円予想しています。

多分不況により、法人税の歳入落ち込み幅は更に大きくなると私は予想します。

2) 主要税

税収46.1兆円の内訳は、この表にあり、次の通り所得税、法人税、消費税の3税で78.6%を占めます。

  税額(兆円)   割合
所得税 15.57 33.8%
法人税 10.54 22.9%
相続税 1.52 3.3%
消費税 10.13 22.0%
酒税 1.42 3.1%
たばこ税 0.84 1.8%
揮発油税 2.63 5.7%
その他の税 2.46 5.3%
印紙収入 0.99 2.1%
合計 46.10 100.0%
所得税のうち源泉徴収分は12.7兆円、確定申告分は2.9兆円です。

但し、所得税、法人税、消費税は、実は本質に大きな差はないとも言えます。法人は事業活動における中間的な存在であり、最終的には個人に何らかの形で帰属すると考えることができるからです。消費税は、基本的には所得税の変形として個人が間接税として負担する所得税であるとも言えます。

3) 所得税

税制改革中期プログラムでは、次のように述べています。

個人所得課税については、格差の是正や所得再分配機能の回復の観点から、各種控除や税率構造を見直す。最高税率や給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除の検討を含む歳出面も合わせた総合的取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討する。金融所
得課税の一体化を更に推進する。

高所得者の税負担を引き上げと中低所得者世帯の負担の軽減があり得ると私は読みました。なお、所得税については、消費税や社会保険料負担と同時に考えた方がよいと思います。

4) 消費税

消費税が何故所得税と同じ個人の負担かというと、所得税法の構造として5条で個人事業者と法人は消費税を納付する義務があると規定されていますが、同時に30条で「事業者が国内で行う課税仕入れに係わる消費税額を、課税標準に対する消費税額から控除する。」と定められており、更に52条、53条により控除する金額の方が大きければ、超過額の還付を受けられます。言わば、事業者は政府に成り代わって販売先より消費税を徴収し、税務署に納付する役割をしているようなものです。そして、支払った消費税は控除(又は還付)されるのですから、工場等の設備投資で多額の消費税の支払いがあっても、精算することにより企業負担にはなりません。(厳密には、課税売上割合が95%未満でありば、企業負担は存在するが、最終的には売値に転嫁しているとも言えます。)

一方、消費税と所得税を比較した場合、所得税は累進税率構造や所得控除等があるので、所得再配分の機能を果たせるし、住宅所得特別控除のように、景気対策等政策手段としても使えフレキシビリティーが高いと言えます。基本的には、消費税よりも所得税が優れているというのが古典的な理論であったのですが。最近は、どうも・・と言う具合です。しかし、決定するのは、国民です。お上でも政治家でもないのであり、税は国民が負担するのであり、国民が決定すべきです。

更に参考資料を国税庁の統計情報から作成しました。このWebあたりから入手したものです。

民間給与実態調査結果から作成した年間給与水準(ボーナス・残業込み)のグラフです。なお、民間給与の調査であるので、公務員は対象となっていません。

H19

男と女でピークが異なっており、女の場合は100万円から200万円の人が一番多く、男では300万から400万円と400万円から500万円がほぼ同じで、この辺りが一番人数が多い。なお、グラフ上では1000万円から1500万円の部分に小さなピークがありますが、これは区分した幅が1000万円以下では100万円であったのが、1000万円を超えてから500万円刻みになっているからで、実際にはなだらかな減少カーブと思ってください。

次が、給与水準と各給与水準の人が納付している税額を表示した円グラフです。

H19_2

900万円から1000万円の部分をピンク色にしましたが、1000万円以下は人数では94.9%です。1000万円以上の人は人数では5.1%ですが、税額では46.6%です。

給与所得なので給与所得控除が適用されるのですが、とりあえず給与金額別の負担率を見るために、税額を単純に給与総額で割り算したパーセンテージが次のグラフです。

H19_3

800万円以下は5%にもならないのですが、これは給与所得控除と扶養控除等の所得控除があるからです。但し、地方税及び厚生年金保険料や健康保険料が強制的に天引きされるのですから、各個人が実際に負担として感じるのは、このグラフの税率ではありません。地方税は10%一律で、厚生年金保険料7.675%、健康保険料(協会けんぽの場合)4.1%です。従い、上の税率グラフに20%程度負担率が増加するような具合と思います。

保険料は保険なので高所得になっても一定額で所得比例ではなく定額となります。一方、健康保険が国民保険になると所得が低い場合に、負担増になると思います。

非常にやっかいで複雑ですが、所得税のみで論じてしまうと、低所得者は税の負担が低すぎるといった類の話になる恐れがあります。変な逆説を言えば、「低賃金労働者がいるから、高所得者が高所得を享受できる。」みたいな部分もあると思います。次のような報道もありますが、一つの方法と思います。

日経 12月25日 基礎年金の財源、全額税方式に 自民・民主の議員7人が改革案

次に各給与水準別に人数が増加しているのか減少しているのかを見てみます。男、女、男女合計の3種類のグラフを掲げます。

H19_4

H19_5

H19_6

赤線の100万円~200万円のクラスが男女とも増加しています。格差拡大は、低所得者層の増加により生じているような気がします。各給与水準クラスの人数分布推移を男女別に表したのが次のグラフです。

H19

H19_2

男女で分布が異なっており、女性の場合は、低いクラスが多い。多分、パートで働いて、且つ所得金額を自ら制限しておられる方も多いのではと思います。給与所得の場合は、103万円の壁(給与所得控除65万円と基礎控除38万円の合計)や130万円の壁(夫の健康保険・社会保険の3号被保険者になる生計維持基準)があり、バカなことになっていると思います。

既得権益を保護しすぎると全体が不幸になる危険性があると思います。男女関係なく働き、各人が自己の能力を発揮できる社会にしないと、人口減少の日本に明るい未来が開けない気がします。

なお、税制改革中期プログラムでは、消費税について次のように述べています。

消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額がいわゆる確立・制度化された年金、医療及び介護の社会保障給付と少子化対策に充てられることを予算・決算において明確化した上で、消費税の税率を検討する。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等総合的な取組みを行うことにより低所得者の配慮について検討する。

5) 法人税

税制改革中期プログラムの文章は次です。

法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベースの拡大とともに、法人実効税率の引下げを検討する。

「社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意」なんて、これでは消費税増税して法人税を安くするみたいで、企業は良いでしょうが、日本国民はこれでOKなの?と思います。

次に、国際的な税率比較ですが、この財務省の比較によれば日本と米国はほぼ同じで高いのです。米国と同じであれば、良いのでは思うのですが。それと、実効税率は40.69%で正しいのかと思います。即ち、次の式で計算すると確かに40.69%となるのですが、例えばトヨタの2008年3月期の連結損益計算書は、税引前利益2兆4372億円に対して法人税等の負担は9115億円です。これからすると37.4%です。研究開発費の法人税の特別控除の適用があったりするからと思いますが、各種の優遇策と企業が政府及び地方自治体から受けているサービスも合わせて考えないといけないと思います。

実効税率=(法人税率30% x (1 + 地方税率20.7%) + 事業税率7.56%)/(1 + 事業税率7.56%)

法人税についての議論で、「税率が高すぎると外国に逃げてしまう。」との主張があります。そこで思い浮かぶのが、Ikeaという家具屋さんです。北欧スウェーデンの家具として売っていますので、本社はスウェーデンと思っておられる方が多いのではと思います。しかし、本社はオランダなのです。多分、その理由は税務対策、節税にあると思います。

その様なことが、例えば、トヨタで可能でしょうか?Ikeaは、非上場会社です。だから、そんな大胆な戦略も可能ですが、トヨタ本社はオランダになりましたなんて言ったら、日本ではたちまちホンダに負けてしまったりして。そう言えば、経済財政諮問会議でトヨタ出身の方が法人税率の引き下げを言っておられたように思いました。

仮に外国に逃げたとして日本で納付する法人税が減るのでしょうか?原則変わらないはずです。日本法人であれば、全世界所得が課税所得となるが、持ち株会社を外国に移せば、海外生産の所得は日本の法人税は課せられません。しかし、日本法人又は日本法人の子会社・孫会社である故に、日本の法人税がかかる場合は、外国税額控除の適用となります。これ以上は、どちらの税率がどうとか細かい議論になるし、更には本当に節税を計る場合は、租税条約の抜け穴の利用やタックスヘブンの利用をするので、猛烈に複雑となります。

税は日銀の金利ではないので、下げた場合の恐ろしさは奈落の底的な感じがあると私は思います。いずれにせよ、税の中期政策は国民にとって重要な課題です。

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コメント

>所得税のみで論じてしまうと、低所得者は税の負担が
>低すぎるといった類の話になる恐れがあります。

「低所得者は税の負担が低すぎる」という話になっても一向に問題ないと私は考えるのですが、いかがでしょうか。

基礎年金の財源の全額税方式は、筋が悪いと思います。厚生年金の企業負担分はどのようになるのでしょうか。日経新聞が報道している以上、企業の年金負担の軽減を意図しているように思います。

投稿: しま | 2008年12月26日 (金) 22時53分

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