GDPから見る日本経済
内閣府が5月20日に、2009年第1四半期のGDP速報値を発表し、実質GDPの前期(2008年第4四半期)比で、年率換算マイナス15.2%であり、予想より大きかったと話題になっています。
日経 5月20日 GDPマイナス15.2% 1―3月実質年率、戦後最大の減少
1) 民間企業の設備投資の落ち込みが最大の理由
前期比と言った変化ではなく、過去からの推移を見て見るべく、1994年からの15年間にわたる四半期GDPの推移をグラフにしました。なお、季節調整をした数字であり、年GDPに換算してあります。
次のグラフが、名目GDPではなく、実質GDPで表したグラフです。(名目GDPと実質GDPの差は、GDP Deflatorのかけ算ですから、総合物価調整をしたのが、実質GDPと考えて下さい。)
2008年第2四半期から急降下カーブで下がっています。GDPの主要内訳として、民間最終消費支出、民間企業設備支出、政府最終消費支出、公的固定資本形成支出、純輸出(輸出-輸入)も表示しました。最近の急降下の主要因は、民間企業設備支出と純輸出であることが分かります。
実質GDPの前四半期からの変化額を2006年以降について、表したグラフが次です。
民間企業設備支出と純輸出の落ち込みが2008年半ばより大きかったことが分かります。そうなると、余りにも当たり前でありすぎて、あわてることなどなく、これまでの取り組みをしっかり続ければよいと思いました。
2) 米国との比較
日本のみの経済状態で考えるより、広く考える必要があります。そこで、同じようなグラフを米国について作成しました。
日本より落ち込みが小さいようです。比較のために、1999年第1四半期を1.0として重ね合わせたグラフを書きました。
このグラフを見ると、米国が景気が良かったように見えます。しかし、GDPは人口が多ければ、比例して多くなると考えるべきなので、一人あたりの実質GDPとして同様にグラフを書きました。
カーブが異なってきました。実質は、日本の方が良かったのです。但し、生活実感としては、決して楽ではなかった。そこで、今度は、個人消費支出の一人あたりのカーブを、このグラフに追加しました。
一人あたりの個人消費を比べると、米国の方が、日本より良かったことになりました。
3) 日本の景気を良くするためには賃上を目指せ
冒頭から2番目のグラフのように、日本経済は、輸出が支え、輸出増による民間の設備投資の伸びに依存した部分が大きかったのです。一方で、個人にはお金は回らず、非正規雇用の拡大もあり、直ぐ上のグラフのように、個人消費は低迷を続けました。なお念のため、米国個人消費には、住宅支出は含まれていないので、サブプライムのバブルは入っていないことを申し添えます。
今や、労働組合は正規雇用者の保護に役立つ程度で、労働市場の健全発展や個人消費拡大には余り期待できないと思います。上のグラフが、それを証明しているような気がします。
現状の日本経済については、輸出減少による民間設備投資の沈滞であり、悲観する必要は何もないと思います。今回のGDPマイナス15.2%を受けて、賃金値下げによる労働者への負担を行うと、真っ暗闇に突入していきそうです。むしろ、雇用を守るのは当然のことで、労働賃金上昇を目指して、創意工夫をしていくべきと考えます。なお、発展のためには、リストラが必要です。日本語で、リストラと言うと、マイナスイメージがありますが、プラスのリストラをすべきです。雇用調整があり得るかも知れないが、雇用保険の適用拡大等を実施して、夢のある日本を作っていくべきと思います。
| 固定リンク
コメント