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2009年5月23日 (土)

裁判員制度

5月21日から裁判員の参加する刑事裁判に関する法律が施行となり、裁判員制度が始まりました。

平成21年5月21日,裁判員制度が始まりました

実際に裁判員制度による裁判が始まるのは、この日経記事 5月22日のように7月下旬と予想されますが、これを機会に裁判員制度について、私が感じていることを書いてみます。

1) 法は国民にあり

法は国民のために存在する。嘗て、法は専制君主が、統治する為に存在した。立派な専制君主が存在すれば、理想の社会が実現する。しかし、専制君主制を否定し、市民が統治する社会が支持されて、現在の社会が作られてきた。

法の執行に関しても同じで、国民・市民の手に司法があるべきと考えます。すべてを国民がするのではなく、国民が選んだ専門家である裁判官に委ねる方法もある。裁判員制度とは、裁判官とともに一般国民が裁判に参加する参審制である。現憲法は、明治憲法と異なり国民が参加する陪審制、参審制を認めており、憲法前文からすれば、積極的に国民の参加が推進されるべきと考えます。

憲法
第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

前文
・・・・ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。・・・・

明治憲法には、次のように、裁判官ノ裁判とした第24条と裁判官についての第58条があり、裁判官による裁判が前提となっていました。

明治憲法
第24条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ

第58条 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
2 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
3 懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

なお、明治憲法下においても、大正12年(1921年)に陪審法が制定され、昭和3年(1928年)から陪審法が停止されるに昭和18年(1943年)までの15年間484件の陪審制裁判がありました。現在の憲法施行から60年以上も経過しているのですから、国民の司法参加はもっと早く取り組むべきであったと思います。

ただし、戦前の陪審制では、次の陪審法第95条もあり、裁判官は答申を採用せず審理のやり直しを命じることができた制度でした。

陪審法第95条 裁判所陪審ノ答申ヲ不当ト認ムルトキハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス決定ヲ以テ事件ヲ更ニ他ノ陪審ノ評議ニ付スルコトヲ得

2) 裁判員制度の発展に向けて

今回始まった裁判員制度に問題がないわけではない。多くの問題点を抱え、批判もあります。例えば、このネットワーカー弁護士の独り言 裁判員制度の制度設計の誤りについて改めて考えるも、色々述べておられる。そもそも、法律の制定からして2004年4月2日の衆議院法務委員会で法律案の趣旨説明が始まり、衆議院の可決が4月23日で、参議院を通過したのが5月21日でしたから、随分と早い国会審議でした。

その以前の1999年7月から2001年6月まで内閣に設けられていた司法制度改革審議会に「国民の司法参加」についてという一つのテーマが含まれており、そこで審議もされていました。その最終報告書である司法制度改革審議会意見書 平成13年6月12日IV 国民的基盤の確立 第1 国民的基盤の確立(国民の司法参加)を読んでも、次のように述べているが、今回始まった裁判員制度の具体的な事項まで深くは触れられていません。

刑事訴訟手続において、広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度を導入すべきである。

国民が参加するにも拘わらず、国民不在で決定されてきた部分があると思う。陪審制、参審制は、その国の歴史と密接な関係があるので、今回のような経過でやむを得なかったとも思える。しかし、今後、このままで良いはずがなく、国民の手によって積極的に発展させることが重要と考えます。つまりは、改良すべき部分は、改良すべきと考えます。

私は、次の裁判員の参加する刑事裁判に関する規則第7条の日当は、安すぎると思います。

第七条 裁判員等の日当は、出頭又は職務及びそれらのための旅行(以下「出頭等」という。)に必要な日数に応じて支給する。
2 日当の額は、裁判員及び補充裁判員については一日当たり一万円以内において、裁判員等選任手続の期日に出頭した選任予定裁判員及び裁判員候補者については一日当たり八千円以内において、それぞれ裁判所が定める。

裁判官の報酬の日割り額より高くて良いと思います。裁判員は、日常の仕事を犠牲にして参加するのですから。

私にとって、今回の法律条文で好きでないのは、第6条の「法令の適用」が裁判官と裁判員の合議で、「法令の解釈に係る判断」が裁判官の合議と定めている部分です。解釈無くして適用できず。また、解釈に係る判断とは何か?解釈に判断があるのか?この辺り、理解に苦しみます。素直に、自分の良心に従って、解釈して、適用するのが正当だと思います。人の解釈を使いたくはありません。

適用する事件は、重大な刑事事件を対象としていますが、市民・国民の参加が望まれる事件が本当の姿だと思います。事実判断が市民・国民が参加して改善されると期待できるのだろうか?別の方面に、市民・国民が参加する方がよい事件が多くあると思います。消費者行政のような事件については、どうでしょうか?

発展、改良をするには、参加した裁判員が、裁判後に多くを語る必要がある。黙っていては、発展しない。第70条の評議の秘密もあります。但し、この最高裁判所のQA 具体的にはどのような秘密をもらしてはいけないのですか(守秘義務の対象)の冒頭にも、「法廷で見聞きしたことであれば基本的に話しても大丈夫です」とあるように公開・公表されていることについては、話をしても問題はないし、自分の感想を述べることは自由です。私は、裁判員制度がよりよい制度として改良・発展を加えていく目的であれば、守秘義務に関わることに触れずに意見を述べることが可能です。

評議の秘密
第七十条  構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数(以下「評議の秘密」という。)については、これを漏らしてはならない。
2 前項の場合を除き、構成裁判官のみが行う評議については、裁判所法第七十五条第二項後段の規定に従う。

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