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2009年5月20日 (水)

漢検(財団法人)のガバナンス

財団法人日本漢字能力検定協会の前理事長大久保昇容疑者とその長男の前副理事長大久保浩容疑者が背任容疑で逮捕されました。

日経 5月20日 漢検前理事長ら逮捕 親族取引巡り背任容疑、2億6000万円損害

2億6千万円は、巨額です。記事の中に、「親族企業との不透明取引や多額の利益を上げていたことが発覚してから4カ月」とありますが、内部の関係者は実質知っており、半ば公然の秘密のような状態ではなかったかと想像します。

この事件は、理事長と理事が結託して、財団法人を私物化して、食い物にした事件であろうと思います。

財団法人日本漢字能力検定協会(以下「漢検」とします。)の19年度収支計算書20年度収支予算を見ると、役員人件費支出は793万円や2750万円になっています。現在の役員名簿では、理事6名、幹事2名、評議員13名の合計21名です。おそらく、常勤は2名のみで、他の役員は非常勤で、実質仕事をしていなかったと思います。実態は、逮捕された2人が甘い汁を吸うために、安い報酬を押しつけ、外部役員が業務を執行することを防いだのだろうと思います。

非常勤で、実質仕事をしていなければ、責任は問われないかは、次の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の第111条です。

役員等の一般社団法人に対する損害賠償責任
第百十一条  理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 理事が第八十四条第一項の規定に違反して同項第一号の取引をしたときは、当該取引によって理事又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
 第八十四条第一項第二号又は第三号の取引によって一般社団法人に損害が生じたときは、次に掲げる理事は、その任務を怠ったものと推定する。
一  第八十四条第一項の理事
二  一般社団法人が当該取引をすることを決定した理事
三  当該取引に関する理事会の承認の決議に賛成した理事

84条は、次の「競業及び利益相反取引の制限」であり、まさに今回の行為です。

第八十四条  理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一  理事が自己又は第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二  理事が自己又は第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。
三  一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

今回の漢検の問題は、ガバナンスの問題です。公益法人制度改革3法は、2006年に成立し、2008年12月から施行された結果、民法適用時代のガバナンスより強化されました。

公益法人制度改革には関係なく、本来安易に理事や役員を引き受けてはならないのです。引き受けたなら、全力で業務執行にあたるべきであり、漢検のような社会的な影響が大きな財団法人の理事であれば、なおさらです。

なお、漢検が理事長の親族企業との不透明取引を決定した理事会の時期は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行前であったかも知れません。しかし、民法44条もあり、同じく損害賠償の責めを負うと考えます。

漢検は未だ公益財団法人の認定を受けておらず、2013年11月までの移行期間の猶予がある特例財団法人と理解します。今回の漢検の事件は、従来の財団法人や社団法人のガバナンスが問題含みであることを物語っていると思います。勿論、立派にやっておられる特例財団法人・特例社団法人も多いと思いますし、今は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律も適用されています。関係者の方は、ガバナンスをもう一度見直していただきたい。役員としての執行に自信がなければ辞退すべきです。一方、全力で尽くすことを望むが、そのための正当な報酬を望んでおられる方は、要求すべきと思います。

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