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2009年6月 2日 (火)

GMの連邦破産法11条申請に思う

ついにGMが連邦破産法11条の申請をNY時間6月1日午前8時に提出しました。

Washington Post June 1, 2009 GM Files for Bankruptcy Protection
日経 6月1日 GM、破産法適用を正式に申請

前日の政府発表を受けての記事を2つ紹介しておきます。

日経 5月31日 米加政府、GMに3.8兆円追加支援 米政府が「破産法」正式発表
WSJ June 1, 2009 New Era in Autos as GM Set for Bankruptcy

予想通りとも言えるのですが、数年前だったら全く考えられなかったことです。私自身、ファニーメイとフレディマックに関連して米国自動車ビッグスリーのことで、資本主義と社会主義を書いたのが昨年9月9日でした。資本主義と社会主義の観点での、私の勝手なつぶやきを書きます。

1) 残るフォードはどうなるか

クライスラーが連邦破産法11条を申請したのが、一月前の4月30日でした。そこで、政府支援なしで頑張っているフォードですが、2009年1月-3月の第1四半期の業績は、次であり、大赤字、かつ債務超過です。

Ford Motor連結損益計算書
2009年第1四半期(単位:百万米ドル)
自動車売上 21,368
金融収益 3,410
収益合計 24,778
自動車売上原価 21,662
金融コスト、一般管理費 6,065
売上原価及び一般管理費 27,727
営業外収益費用 1,329
税引前四半期利益 ▲1,620
法人税等 ▲204
当四半期純利益 ▲1,416
少数株主損益 11
Ford Motor純利益 ▲1,427
出所:2009年5月8日SEC提出フォーム10-Q

Ford Motor連結貸借対照表
2009年3月31日(単位:百万米ドル)
現金・現金同等物 21,093 買掛金 12,882
売却可能有価証券 20,363 未払費用・前受収益 54,429
金融債権 84,008 借入金及び社債 145,586
有形固定資産等 23,779 その他負債 6,714
その他資産 77,670 負債の部合計 219,611
資産の部合計 203,134 資本金 24
資本剰余金 10,985
その他包括利益累計 10,624
自己株式 180
出所:2009年5月8日SEC提出
フォーム10-Q
利益剰余金 17,782
Ford Motor株主資本 ▲17,577
少数株主持分 1,100
純資産の部合計 ▲16,477
負債及び純資産合計 203,134

自力で頑張るには、苦しすぎる内容だと思います。一方で、GMやクライスラーが政府の支援を受けるわけで、競争がどうなるかの点があると思います。即ち、国営GMやクライスラーより、民営フォードは民間経営による競争力を発揮して、勝ち残るのかであります。勿論、将来のことは分かりませんが、フォードも何時政府に鳴きに行ってもおかしくないのであり、その時は政府も支援せざるを得ない状態であると思います。

資本主義のような社会主義のような不思議な状態と思います。

2) UAW、年金、医療保険問題

12月18日のブログ自動車産業の今後で、”ビッグスリーについて「労働者1人当たりに1時間平均73ドルのコスト」で、「日系メーカーの場合は1人1時間当たり労働コストは平均49ドル」という情報があります。”と書きました。

日経の3月9日の記事フォードとUAW、賃下げなど正式合意 GMとの交渉に影響もには、「ビッグスリー(米自動車大手3社)の現役従業員の労務費(手当含む)は時給換算で日本メーカーより10ドル程度高いとされる。」との文章があります。

いずれにせよ、ビッグスリーの人件費が高いのは事実であり、その原因はUAWが高い賃金を要求したからかとも言えるのですが、結果として高いコストになってしまう年金や医療保険をUAWは要求せざるを得なかった面があると考えます。政府の年金制度や医療保険が薄い場合は、労働者・組合員が安心して働けるようにするには、雇用主に応分の対応を求めざるを得なくなる。

ニクソン以来小さな政府を掲げ、民間活力を掲げ、社会保障を政府の制度から、民間の制度に移行させてきた。公的医療保険がなければ、退職者医療保険を整備せざるを得ない。民間医療保険は、治療方法を保険会社が保険契約の内容に応じて、決定するのですから、合理的であり、モンスター・ペイシェントは生まれてこないと言えるのですが、一方で、金が医療を決定する全てとなる世界です。保険会社は利益を追求せざるを得ないのであり、弱肉強食の世界が生まれてきます。

決して、保険会社が悪いのではないのです。小さな政府にして、政府の仕事を解放していまったことが問題だと思います。何を、どの部分を政府に残し、どの部分を民間の利益追求・競争市場に委ねるかは、個々の問題ですが、少なくとも「民にできることは、民がする。」は、大間違いです。その結果が、米国自動車産業問題の一つの原因になっていると私は思います。

3) 将来

米国自動車産業はどうなるのだろうか。少なくとも、米国が当分の間車社会であり続けることには、間違いがない。しかし、誰が車を供給するかは、ホンダ、トヨタの2社が一番可能性がありそうな気がするのです。理由は、世界でまともにハイブリッドカーを生産している会社だから。即ち、そのような開発力を持っているからです。

あるコンセプトの製品を作ろうとすると、相当な開発力が必要と思います。莫大な研究開発費を投入し、しかも成功させる力が必要ですから。多分、多くは失敗するのでしょうが、失敗を乗り越えての成功ですから、相当の金食い虫と思います。

国営となってしまったGM、クライスラーには難しいだろうし、フォードも生き続けるのが精一杯で、研究開発までは手が回らないはず。本当にホンダ・トヨタが米国や世界で大躍進となるかどうかは、分かりませんが、可能性はあるだろうと思うのです。

そこで、ホンダ・トヨタがいる日本の将来ですが、明るくあり続けるとは限らないのです。年金・医療保険を考えれば、将来は暗い可能性があります。「税金を高くすると、高額納税者が外国に逃げていって、日本の税収が減る。」とのバカなことを言う人がいます。外国に逃げていっても構いません。日本国内に所得の源泉があれば、日本での課税が可能です。本当に逃げていったら困るのは、頭脳です。もし、技術者や医師や高度技能者等、その人がいたら多くの貢献をする人達が日本から逃げていったら日本の将来は暗いのです。

年金や医療保険の制度が崩れてきたら、そんな国から、そのような人達は簡単に出て行きます。外国でだって高給で仕事に就ける人達だからです。住みよい社会を作ることが非常に重要なことと思います。ビッグスリーが、このような事態になった最大の原因が社会保障制度を小さくしすぎてしまった米国社会にあるのではないかと思ったことから書きました。

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コメント

■米GM、連邦破産法11条適用を申請―ドラッカーの教えに背いたGMの運命はすでに数十年前から定まっていた?
こんにちは。GMの破綻に関して、最近いろいろと報道されていると思いますが、私はその根はすでに60年以上もまえからあったのだと思います。一言で言ってしまえば「おごり高ぶり」です。まさにGMは、、「おごり高ぶり」は、人であっても、企業であってもその成長を阻む最大の要因であることを示す格好の事例になってしまったと思います。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年6月 2日 (火) 10時12分

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