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2009年6月 5日 (金)

GM、Ford、ToyotaとHondaの財務諸表の比較

GMの事業は、今後2月から3月の間で更生計画が承認され、更生計画に基づく会社更生が実施されると予想されます。更生計画により、GMの事業を引き継ぐ新GMの資本構成は、米連邦政府が大株主で、次の様になる予定ですが、新社会主義の会社というのが適切かも知れません。

米国政府(US Treasury)       60.8%
カナダ政府とオンタリオ州政府  11.7%
New VEBA(新労働組合)      17.5%
その他債権者            10%

(注)VEBAとは、Voluntary Employees' Beneficiary Associationの略で、従業員が組成する労働組合のような組織ですが、同時に健康保険組合の性格も持つような組織と理解します。

米国とカナダの政府が72.5%でUAWを加えると90%ですから、21世紀の社会主義の実験みたいです。成功して、新GMが上場し、政府がIPO利益を取れれば、国民の税負担が少なくなるわけで、皆Happyです。一方、経営に行き詰まれば、大変です。オバマ政権の最重要事項となるでしょう。実際、経営は政策ではないですから。演説して、票を得ることより難しい部分があります。

新GMの経営を占うには、時期尚早であり、Chapter11申請前の、財務諸表を使い、GM、フォード、トヨタ、ホンダを比較してみたいと思います。

1) 近年の業績

次のグラフは、2005年から2008年までの4年間の各社売上高と純利益の推移を表しています。なお、トヨタとホンダの2008年は2009年3月期の数字であり、決算短信からの数字です。比較のために、米ドルで表示しています。又、全て連結財務諸表からの数字です。

4carcompanies2008

少し、違ったグラフにしてみました。このグラフで総コストは、売上高から(特別損益を除く)税引前利益を差し引いた金額としています。

4carcompanies2008a

上のグラフで、破線が売上高と総コストが同額になるポイントです。従い、破線より左上に来れば、利益であり、右下に来れば損失です。トヨタの2008年は赤字ですが、それ以外は日本の2社は健全ラインにあります。なお、数字を記入したテーブルも次に掲げておきます。

上段:売上高
下段:純利益
単位:百万ドル
2005 2006 2007 2008
GM 193,050 204,467 179,984 148,979
▲10,417 ▲1,978 ▲38,732 ▲30,860
Ford 176,835 160,065 172,455 146,277
1,440 ▲12,613 ▲2,723 ▲14,672
Toyota 210,369 239,481 262,394 205,296
13,722 16,440 17,146 ▲4,369
Honda 99,080 110,871 119,801 100,112
5,970 5,923 5,989 1,370

2) 貸借対照表

貸借対照表で見ると、実態がよく解ります。GMとFordの2008年12月末とToyotaとHondaの2009年3月末の連結貸借対照表を図示します

4carcompanies2008b

黄色の部分が純資産ですが、左にある場合は、純資産ではなく、債務超過額となります。GMは、すごいですね。資産が91,047百万ドルに対して、負債が177,201百万ドルです。会社とは、こうなってでも存続できることを証明してくれているのでしょうか?倒産させることができない会社は、強いのです。

この4年間で、どう推移してきたかが次のグラフです。

4carcompanies2008c

2005年末においては、GMもFordも純資産額がほぼゼロであったのですが、GMは2007年、2008年と大きく損失を増加させて、債務超過額を増大させていきました。次のグラフがGMの2005年末から2008年末にかけての貸借対照表です。2006年に資産・負債が急激に小さくなっているのは、自動車ローン会社GMACの51%持ち分をFundに売却し、連結子会社から49%保有の持分法適用関連会社にしたためです。

4carcompanies2008d

自動車会社4社の純資産額(債務超過額)の総資産に対する比率は次の通りで、GMの場合は、債務超過額があっという間に膨らんでいきました。

4carcompanies2008e

4社の純損失額を資産総額の比で見た、各年のReturn on Assets(マイナスであるLoss on Assets)のグラフを書くと次のようになりました。

4carcompanies2008f

売上高に対する利益率(損失率)でグラフを書く次の様になります。自動車産業も、恐ろしい産業です。

4carcompanies2008g

3) 退職給付と退職者給付

退職給付関係を比較してみます。なお、ToyotaもHondaも連結財務諸表は米国基準を採用しており、GM、Fordとの比較がそのまま可能なのですが、退職給付会計の基準が日本基準と少し異なっています。米国基準においては、包括利益(Comprehensive Income)の概念が採用されており、純資産に「その他の包括利益(Other Comprehensive Income)」の区分があります。未認識過去勤務債務は、日本基準であれば、認識せずに注書きですが、米国基準では日本の退職給付引当金に相当する未払退職・年金費用に含めて計上するが、当期損益には含めず、直接に「その他の包括利益」に算入します。

次の表は、4社の退職給付関連の金額を示しています。退職給付債務の金額では、売上が一番大きいToyotaがGMの1/10近くです。その他の包括利益の中に計上されている金額は4社すべて損失であり、将来費用として認識することになりますが、その金額もGMが一番大きいのです。ToyotaとHondaを退職給付関連を比較すると、売上高は倍半分ですが、退職給付関連の金額はほぼ同じでした。退職給付制度の違いもあり、調べていないので何とも言えないのですが、会社の差は大きいようです。

自動車会社4社の退職給付関連の金額(単位:百万ドル)
GM
2008年12月
Ford
2008年12月
Toyota
2008年3月
Honda
2008年3月
退職給付関連期末債務予測額(Benefit obligation) 161,020 83,808 16,899 16,086
年金資産期末公正価値(Fair value of plan assets) 102,600 55,649 12,796 11,539
未払退職給付未払額(退職給付引当金)(Noncurrent liability recognized) 54,097 28,228 6,311 5,392
退職給付等費用期中認識額(Pension & OPEB expenses) 2,747 ▲808 960 693
包括利益・損失に計上されている退職給付費用累計額(Amounts recognized in accumulated other comprehensive income) 39,638 9,947 2,058 3,716

上記の退職給付未払額と退職給付費用をパーセントで表示したのが、次の表です。退職給付未払額とは、日本基準における(未認識過去勤務債務と未認識数理計算上の差異を含んだ)退職給付引当金に相当します。別の表現で言えば、外部の年金基金に対する積立てが終了していない部分の金額です。やはり、4社の比較ではGMが最大です。UAWがGMの主要債権者であることが納得できます。

Fordの退職給付費用がマイナスの費用(利益)になっているのは、退職者医療保険か何かの制度見直しにより、その債務計上(引当金の様な感じ)していた部分を2008年に減額したことにより、利益を認識したからです。但し、全体の総合ポジションは退職給付未払額であり、全体像を見失ってはいけません。

ToyotaとHondaについても、米国を含む全世界の合計数字ですが、GMやFordに比較すると数字が小さい。この一つの理由として、日本ポーションが大きいことがあり、公的年金制度により退職給付未払額が小さくて済ますことが出来て、企業の負担を低く抑えられていることがあると考えます。

GM Ford Toyota Honda
退職給付未払額/総負債 30.5% 12.0% 3.3% 6.9%
退職給付費用/売上高 1.8% -0.6% 0.5% 0.7%

4) 感想

GMって大変ですね。魅力ある車を開発していけるか、どうかが一番のポイントかもと思います。魅力ある車を生産し、ユーザーのサポートが得られ、多くの雇用機会を作っていれば、赤字かどうかなんて2の次なのだろうと思います。そうでないと、生き残れない気がします。でも、他の方法もあるかも知れませんね。いずれにせよ、今後が楽しみです。

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