« 愛のないNHKニュース | トップページ | 日本航空と全日空の比較 »

2009年6月29日 (月)

インサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しました

エコカー減税とエコカー補助金により、落ち込んでいる新車販売も、エコカーについては販売増は期待できると自動車メーカー各社は懸命にエコカーの販売に力を入れていると思います。ちなみに、次の表が2009年5月と5月までの自動車販売台数であり、昨年より落ち込んでいます。

新車販売台数(2009年5月実績)    自販連・全軽自協・輸入組合調べ
ブランド 2009年5月販売台数 本年累計
(a)
前年累計
(b)
増加率
(a)/(b)
乗用車 トラック・バス 合計
ダイハツ 32,718 8,990 41,708 259,747 289,853 -10.4%
日 野 0 1,134 1,134 9,865 18,221 -45.9%
ホンダ 35,700 1,830 37,530 230,975 276,920 -16.6%
いすゞ 1 1,855 1,856 14,203 26,813 -47.0%
レクサス 1,815 0 1,815 7,444 12,788 -41.8%
マツダ 10,523 2,122 12,645 78,076 115,726 -32.5%
三 菱 6,457 2,749 9,206 64,047 91,513 -30.0%
三菱ふそう 0 1,246 1,246 9,564 16,305 -41.3%
日 産 32,189 5,673 37,862 243,733 328,704 -25.9%
日産ディーゼル 0 324 324 2,253 5,303 -57.5%
スバル 6,987 3,809 10,796 69,701 94,877 -26.5%
スズキ 34,307 9,340 43,647 277,468 305,619 -9.2%
トヨタ 72,277 8,226 80,503 472,773 667,938 -29.2%
外国車 11,621 150 11,771 64,604 88,599 -27.1%
合計 244,595 47,448 292,043 1,804,453 2,339,179 -22.9%

1) 比較するエコカー

エコカーで比較するなら、インサイトプリウスを外すことはできず、そして2009年7月下旬から売り出す三菱i-MiEVを対象に加えました。日産も、減税・補助金対象となる車があると宣伝しており、その中でティーダを加えました。次の表が、カタログ等のデータから抽出した比較表です。(三菱i-MiEVは、軽自動車アイを電気自動車に変更しているので、他の3車種との同一ベースでの比較とはならないのですが、電気自動車ということで対象にしています。)

車種 INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
タイプ G L 15M
メーカ希望小売価格
(消費税込み)円
1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
10.15モード燃料消費 30km/L 38km/L 20km/L 125Wh/km
全長 mm 4,390 4,460 4,250 3,395
全幅 mm 1,695 1,745 1,695 1,475
全高 mm 1,425 1,490 1,535 1,610
ホイールベース mm 2,550 2,700 2,600 2,550
最小回転半径 m 5.0 5.2 5.2 4.5
車両重量 kg 1,190 1,350 1,150 1,100
室内 長 mm 1,935 1,905 2,035 1,790
幅 mm 1,430 1,470 1,390 1,270
高 mm 1,150 1,225 1,240 1,250
電池 容量(kWh) 5.75 6.5 N/A 16
タイプ ニッケル水素電池 ニッケル水素電池 リチウムイオン電池
電圧 (V) 100 650 330
モーター(最高出力kW) 10 60 47

価格については、電気自動車i-MiEVが他の車の倍以上であること以外は、こんなものかなと感じる感覚です。大きさはi-MiEVを除いて、ほぼ同じです。なお、i-MiEVは乗車定員4名です。

2) コスト比較

エコカーと言っているのですから、燃費等を含んで比較しなくてはなりません。次の表が、上記のメーカ希望小売価格にガソリン代を1リットル150円であるとして仮定して、10万キロメートル走った場合の、購入費と燃料費を計算した結果です。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV i-MiEV
の前提
想定走行距離 100,000 100,000 100,000 100,000
10.15モード燃料消費 30 38 20 125 Wh/km
10万km燃料消費量 4,000 3,158 6,000 15,000 kWh
ガソリン150円/リットル 600,000 473,684 900,000 300,000 20円/kWh
購入費 1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
合計 2,490,000 2,523,684 2,574,750 4,899,000

10万kmの実際走行に要する燃料消費は、10.15モードの20%増と仮定しました。i-MiEVは、ガソリンを消費しないことから、電力料金を20円/kWhとし、同じように20%のマージンを加えました。

結果は、INSIGHTとPRIUSがほぼ横並びです。そこで、今度はガソリン価格を100円から200円の範囲でグラフを書いてみました。

Insightprius20096

INSIGHTとPRIUSの線が交差するのは、1リットル190円です。ホンダvsトヨタのおもしろさを感じます。10年間の平均ですから、190円は高いかも知れないし、利息を考慮した時間価値を考えるとホンダがより有利。しかし、トヨタは、負けまいとPRIUSを最大限値下げして対抗していると思います。このグラフの比較で言えば、日常的に車を使い10万キロ以上走行するのであれば、PRIUSが有利で、土日のみの使用であれば、INSIGHTが有利かと思います。

3) メンテナンスを含んだコスト

ハイブリッドカーは、自分でメンテナンスはおろか、通常の自動車修理工場でもメンテナンス不可能と思います。1)に書いた表でPRIUSとINSIGHTを比べると、電池容量、電圧、モーター出力全てPRIUSが大きい値です。(電圧は、i-MiEVより高い。)通常の車の修理工場ではメンテナンスができず、メーカ指定・適合店でないとメンテナンスが無理だから、HiTech製品につきものの現象です。そうなると、INSIGHTとPRIUSのメンテナンスについては、価格や条件は同じかも知れませんが、可能性としては、PRIUSの方がHiTechだから、少しメンテナンスも高くつくかも知れません。

HondaファンはINSIGHT、ToyotaファンはPRIUSを選ぶのが間違いないでしょう。そうでない人は、色々悩んで考える。いずれにせよ、購入の際に、納得するまで、質問するのがよいと思います。現状では、納期が長くて、嫌なことを言うやつには、売ってくれないなんて変な気を回す必要はないはずです。

4) CO2排出・環境評価

10万km走行するとして、走行時に排出するCO2を計算しました。計算は、ガソリン発熱量34.6MJ/l、ガソリン炭素排出係数18.3tC/TJ、CO2換算44/12としました。

なお、製造時にCO2の排出はあり、さらには鉄板等の材料製造時のCO2,鉄鉱石や石炭の採掘・運搬に関わるCO2排出等を含んだLife Cycle Assessmentが必要です。そこで、PRIUSの環境仕様というページにCO2 LCA評価という絵があり、これをにらんでPRIUSの製造に係わるCO2排出量を3,000kgとしました。大雑把ではありますが、製造に係わるCO2は車体重量に比例するとして、INSIGHT、TIIDA、i-MiEVの製造時CO2を計算しました。結果は次の表の通りです。

なお、i-MiEVの走行時CO2排出量は、東京電力の販売電力kWhあたりのCO2排出量425kg/MWhを使いました。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
走行時CO2排出量(kg) 9,287 7,332 13,930 6,375
製造時CO2排出量(kg) 2,644 3,000 2,556 2,444
合計(kg) 11,931 10,332 16,486 8,819

またしても、INSIGHTとPRIUSの激しい競争です。一見、i-MiEVが低そうですが、i-MiEVは1回の充電で160kmの走行距離であり、これを伸ばすには電池を大きくする必要がある。そうなると、重くなる。価格が上がると同時に、燃費も悪くなる。更に言えば、石炭で発電をしたならば、INSIGHTやPRIUSに負けるのみならず、TIIDAとも良い勝負になってしまいます。

数字を使わずに感覚で考えてしまう場合の環境問題の恐ろしさです。電気自動車は排ガスを出さないから、クリーン。しかし、その電気は、どうやって作ったの?です。同様な、説明がこの環境省のWebにある低排出ガス車の開発 (トヨタ自動車)にありました。20ページですが、燃料電池車は燃料製造時のCO2排出量が多いため、ハイブリッドカーよりもCO2排出量はLife Cycle Assessmentをすると多くなるとあります。

イメージで、環境を考えると誤ります。環境は数字を使って考えないといけません。

5) エコカー減税とエコカー補助金

どうでも良い話かも知れませんが、エコカー減税とエコカー補助金の法的根拠について触れておきます。エコカー減税は、本年3月31日公布の地方税法改正(法律第9号)の第12条の2の2(自動車取得税の減税)と同日の3月31日公布法律第11号の中の租税特別措置法第90条の12(自動車重量税の免税等)によるものです。全額免税となるのは、電気自動車、ハイブリッドカー、CNG車、高性能ディーゼル車です。ガソリン車は、燃費性能により75%免税又は50%免税あるいは適用が受けられないかです。

エコカー補助金は、5月29日に成立した平成21年度補正予算による環境対応車普及促進事業費 357,216百万円です。その内容は、この経産省、国交省の説明にあります。ハイブリッドであるかどうかは関係なく、燃費基準達成車には補助金が出ます。最も大きな補助金を受けられるのは、大型トラック・バスで90万円(中古からの乗り換えの場合は180万円)です。

自動車取得税と自動車重量税の免税あるいは軽減が受けられるのは、乗用車のみならず基準を満たせば、トラック・バスも可能です。

ちなみに、2007年度の温室効果ガスの排出量確定値が2009年4月30日に発表されました。温室効果ガスの総排出量は1,374百万トン。うち非エネルギー起源を含めCO2が1,304百万トン。運輸部門のCO2排出量が249百万トンです。このうち乗用車が126百万トンで、貨物車が90百万トンです。合計で、日本全体のCO2排出量の16%強となります。ここをねらい打ちでしょうか?

中には年間10万km以上走行するトラックもあるわけで、リッターあたり4kmの燃料消費率を5kmに伸ばすことができれば、年間5,000リットルの節約となります。金額では年約50万円。CO2で年約13トンの節約です。だから、積極的に免税、税軽減、補助金を推進すべきだと言えます。問題は、財源です。今は、一般財源を使っており、継続するには、私は、炭素税を他の省エネ・低炭素政策財源用も含めて導入すればよいと思っています。かつては、石油業界は炭素税に真っ向から反対していました。しかし、現在は、そんな強い反対はできない。昭和シェル石油は、このように太陽電池をやっていますし。どの企業も、既得権益を守るより、新しい世界にどう立ち向かうかがより重要な時代です。

ところで電気自動車の場合、ガソリン税と軽油取引税を現状では払わずに済みます。電気自動車が多くなってくると、道路予算の財源はどこからもってくるのでしょうか?

6) これから

これからも未だ開発が進むと思いますが、ToyotaとHondaはすごい会社であり、F1レースを日本でしているような気がしました。i-MiEVの車体重量は、1100kgですから、軽4輪「i」の900kgと比較すると200kg重くなっています。エンジンが電気モーターに置き換わり、電池が搭載された結果ですが、電池の開発とブレーキ作動時の発電をしてのエネルギー回収を含む電気関係のコントロールがハイブリッドカーと電気自動車のキイポイントだと思います。

ハイブリッドカーは、現状では日本生産でしか対応できない。海外生産をする場合、Hondaの方が、HiTechを押さえている分だけ、有利ではないかと思うのです。いずれにせよ、米国メーカはハイブリッドカーを生産できない。ヨーロッパメーカもディーゼルに力を入れていた分だけ、対応が遅れている。当面世界でToyotaとHondaの2社独占が続くのではないか。多分、HiTechの度合いが少し低いHondaの方が、海外生産も台数増産も対応が容易である気がします。

ハイブリッドカーになると下請け企業も変わってくる。現在、PRIUSの電池はパナソニックでINSIGHTが三洋電機。双方ともニッケル水素電池。車メーカか電池・電気制御メーカか、どちらの技術力が高いかによっても、主導権は異なってきて、これからの絵は微妙に変わる。ハイブリッドカー、電気自動車、水素燃料電池車がこれからどのような戦いになっていくのだろうか。最も、電池素材となる希少金属の問題もあり、その点では俄然中国有利になったりして。

2)に掲げたグラフにおいて、ハイブリッドが有利ですが、比較しているTIIDAは非常に良い燃費の車なのです。グラフは、税優遇や補助金を計算に入れていない比較ですから、ハイブリッドカー恐ろしきやです。先進国間の貿易で、車に関税・非関税障壁は存在しないし、エコカーですから、皆賛成する。内燃機関と電動機の2つのエンジンを持ち、その上に燃料タンクと電池を持つ2重投資の見本みたいに思えたハイブリッドカーでした。今では、こんな姿になっているのですから、これから先はいよいよ分からないかも知れませんが。

|

« 愛のないNHKニュース | トップページ | 日本航空と全日空の比較 »

コメント

以前から言われている事ですが、10.15モード燃費は、実力燃費とかなり乖離しています。

実力燃費に関しては、下記サイトが参考になります。
http://response.jp/e-nenpi/rank.html

一般参加者が満タン法により燃費を申告・管理するサイトによる集計結果なので、データの信頼性は高いと思います(燃費を管理しようとするドライバーなら、ただ漫然と運転しているドライバーよりもアクセルワークに気を付けている=燃費が良い、と言えるのではないでしょうか)。

このサイトの燃費ランキングを見ると、プリウスの乖離度合いは非常に大きいです。
私は以前から、国産車は10.15モード燃費の7~8割程度を実力燃費と見るのが妥当だと思っていましたが、プリウス(今度の3代目)は6割程度しかありません。(クルマのサイズからすれば、実力燃費も非常に良いのですが・・)
経済性やCO2削減効果を検討するにあたっては、一考する要素だと思います。

投稿: くるまファン | 2009年7月 4日 (土) 19時13分

くるまファン さん

コメントありがとうございます。

書いてあったサイトを訪れました。私は、実際走行燃費を20%増として計算したのですが、プリウスは、どうやらもっと燃費が悪いかも知れませんね。

それと、5万km位走って燃費が悪くなってきたら、どうなるのでしょうね。ハイブリッドカーの場合、電池の性能や制御系統の不具合により、急に燃費が悪くなることもありうると思うのです。でも、ディーラーに持って行っても、ディーラー自身も簡単に対応できなかったりして。おそらく、そのようなリスクも覚悟して、「プリウスに乗っているんだ。」、「インサイトに乗っているんだ。」を楽しみ、満足するのが大事じゃないかと思います。

それからすると、Hondaは良いですね。ハイブリッドをあきらめがつく程度の価格にして、Toyotaをリードしてくれましたから。

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年7月 4日 (土) 22時58分

一代目のプリウスは電池交換が必要になるケースがあったそうですが、二代目では改善された見たいです。現在は、駆動用バッテリーは5年10万キロ保証らしいので、自家用使用では問題ない様です。
メンテナンスは、ご近所の整備工場では無理でしょうが、ディーラーの工場で出来るはずです。(メンテナンスといっても部品交換するだけだし・・)

ところで、エコカーは見た目が大事だと思います。普通のガソリン車をハイブリッドに改造した車種が幾つももあります(シビック、エスティマ、ハリアー、クラウンなど)が、よほどのマニアでなければ見分けがつきません。プリウスの成功は、誰が見ても一目瞭然な点が大きいハズです。

投稿: くるまファン | 2009年7月 5日 (日) 23時00分

くるまファン さん

何度もコメントをありがとうございます。

ハイブリッドカーの電池も、パソコン電池のように発火したりする危険性はないのか。おそらく、メーカは試験をして、対策をしていると思います。

ハイブリッドカーも多くの人が実際に乗って、その経験からでないと本当の評価はできないと思います。でも、高級車より安くなったのですから、良いことだと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年7月 6日 (月) 00時21分

ハイブリッド車の技術では、確かにトヨタとホンダが国際的にも抜きん出ているのは事実です。

しかし、欧米や中国、インドなどの動きを見ていると、ゲームのルールが変わる(というか、変えられる)可能性が高いように感じています。

つまり、日本勢の圧倒的に有利なハイブリッド車はできるだけ早くスルーして、EVやPHVに移行するという流れです。

PHVでもプリウスのように効率が良い反面、非常に複雑な設計のものではなく、GM「ボルト」のように、ほとんどEVのクルマに発電機を載せて、さらにプラグを付けてコンセントや充電スタンドで充電ができるようにすればPHVの一丁上がりになるので、これなら中国のメーカーでも比較的早く作れるようになると見ています。
バフェットが投資したBYDなどがその好例と言えるでしょう。

燃料電池車については、車両の製造コストとインフラ整備(水素ステーション?)の面で本当に実用化されるとしても、それは相当先になると見ています。

ガソリンやメタノールを車両側で改質して水素を取り出せる形の燃料電池車をどこかが出してくれば話は別ですが・・・FCXクラリティのように純粋に水素を供給する形だと実用化は相当厳しいと考えます。ホンダがFCXを米国で出しているのは、カリフォルニア州のZEV規制をクリアして従来車やHVを継続して売るためですし。(だから、日本ではFCXを真面目に売っていない。)

国際的な視点で見れば、当面のエコカーの本命はやはり、EVとガソリン車ベースのPHVになるのではないでしょうか。

投稿: テクニカルマーケティング研究会 | 2009年12月28日 (月) 01時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/200131/45492775

この記事へのトラックバック一覧です: インサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しました:

« 愛のないNHKニュース | トップページ | 日本航空と全日空の比較 »