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2009年7月12日 (日)

太陽光発電による電気料金の値上がり

こんなタイトルで書き始めると驚かれるかも知れません。次のニュースです。

日経 7月9日 太陽光発電、電力買い取り価格を2倍に 経産省小委が初会合

太陽光発電を高く買うための、財源をどうするかというと、電気料金の値上げです。検討されている案は、普通の家庭で、月に100円、年1,200円です。そこまでして、太陽光を普及させる必要があるのか、国民的な合意が形成されているのか等を書いてみます。なお、毎日新聞のWeb記事には、値上げ部分も書かれているので、毎日の記事も掲げておきます。

毎日 7月10日 太陽光発電:余剰電力買い取り義務化、年内に--経産省

1) 経済産業省総合資源エネルギー調査会買い取り制度小委員会

経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が買い取り制度小委員会を発足させることを、5月25日の委員会で決定し、その第1回の買い取り制度小委員会が7月9日に開催されました。その結果開催された小委員会討議についての報道です。議事録は、未だWebにないのですが、情報を総合すれば、ほぼ全容は掴めます。(なお、開催通知はここにあります。設置に関するメモはここ

例えば、次の発言が5月25日開催の総合資源エネルギー調査会における伊藤委員(電機事業連合)の発言です。

伊藤委員
系統対策に関して、現時点の技術においては、4月に麻生総理の演説でも述べられた「2020年に太陽光発電20倍」という大量の太陽光発電を系統側に受け入れることは不可能。日射量や気温の変化等の条件を加味しながら全国の様々な条件にてデータを収集し分析を行う必要がある。コスト面、時間の面でも時間がかかる。
負担と水準について、数十円~100円程度とはあくまで標準世帯の価格であるがどうしてもその値が一人歩きをしてしまっている。家庭用のみでなく、産業用、公共用の負担分についてもしっかり計算をすべき。国がしっかり説明責任を果たすべき。

様々な課題があるのは確かで、国民的コンセンサスを得ないと大変です。政治家に決着させようとすると、政府負担=税金投入から増税になります。税で払っても負担方法の1種なので、同じかも知れませんが、競争原理や経済合理性が働かなくなって国民負担が増加することになりかねません。

2) 総論賛成・各論反対

CO2削減については、総論では多くの賛成があるものの、具体策になると、他の更に効果的な方法があり、自分・自社はやれることを精一杯努力しているとの議論になります。私は、公平にするために、炭素税を課して、炭素税の財源で、CO2削減の様々な政策を実施すべきとの意見です。

太陽光発電買取制度についても、貧困層の犠牲・負担による富裕層優遇になる恐れもあります。即ち、自宅の屋根に太陽光発電を設置して高値電力販売が可能なのは、1戸建てに住む富裕層であり、アパート暮らし・マンション暮らしの貧困層は電気料金値上げで生活が苦しくなると言う考え方です。

7月10日のエントリー 原油価格の安定化(か?)で、原油を初め鉱物資源は有限であると書きました。一方、太陽は人類より長く存在し、その利用に価値があるのは確かです。一方、現在太陽光エネルギーを全く利用していないのかと言うと、水力が利用できるのは、太陽が地球に降雨をもたらしていることからであり、風力も同じです。植物は、光合成により太陽のエネルギーで空気中のCO2を有機物に変化させているのであり、バイオマスの利用と言っても実はそのエネルギーは太陽から来ています。だから、太陽熱・エネルギーの利用とは、太陽電池に限らないのです。本当に何が良いのだと言うことを研究すべきと考えます。そのためには、多くのことを試すべきと考えます。

3) 太陽光発電計画

麻生総理が4月9日に行った日本記者クラブでの「新たな成長に向けて」というスピーチがあります。その中で、麻生総理が次の発言をしています。

《(1)太陽光世界一プラン》
 その第一として、最も力点を置きたいプロジェクトの一つが、太陽光世界一プランであります。太陽光発電の規模を、2020年までに今より20倍にします。

今現在いくらあり、どうなるの?でありますが、ここに、経済産業省資源エネルギー庁の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成19年度の施行状況について」というNews Releaseがあり、2008年3月末で太陽光発電は合計1,432,407kWとなっており、平成19年度の太陽光発電から電力会社等に販売された電力量は660,625,835kWhです。平成19年度の年間設備増加量が202,698kWでしたから現在は1,700MW程度でしょうか?麻生総理は、これを34,000MWにすると言ったのです。同じ率で電力供給が増加する場合は、13,000GWh以上になるし、公共施設に設置した場合は、電力消費をはるかに超えて発電する設備となる可能性もあり、15,000GWh位になるかも知れません。

日本は、現在いくら発電して、いくら消費してるかは、次の表を参照下さい。(資源エネルギー庁の統計から作成しました。)

   平成20年度 日本の電力供給と需要バランス (単位:GWh)
単位:GWh 10電力 卸電力 自家発等 合計
水力 56,135 19,224 7,243 82,602
火力 486,884 102,709 167,474 757,067
原子力 235,161 10,446 0 245,607
新エネルギー 5 0 2,843 2,849
合計 778,185 132,379 177,560 1,088,124
他社購入/(▲)卸販売 167,621 ▲113,891 ▲47,686 6,043
揚水発電電力消費 ▲7,766 ▲1,279 0 ▲9,045
自家消費 0 5,097 102,510 107,607
家庭向け等 285,283 0 5 285,288
事務所・小規模工場 46,756 0 1 46,757
6kV以上の自由化電力 556,895 12,115 26,875 595,884
販売電力合計 888,935 12,115 26,880 927,929
電力消費量合計 888,935 17,211 129,390 1,035,536

もし、15,000GWhを現在より24円/kWh高く買うとして、それを1,000,000GWhの消費で平均分担するならば、0.36円/kWhとなります。しかし、そんな単純な計算でよいかというと、電力安定供給の投資が追加で必要なので、相当に大変な計算(シミュレーション)が必要です。例えば、上の表の10電力と卸電力の設備の合計は、233,623MWです。これで、揚水発電の電力消費を差し引いても901,520GWh年間電力供給を行っています。勿論、太陽光の場合は、家庭内で消費した後の電力なので、家庭内消費を加える必要がありますが、それでも35,000GWh程度です。同じ新エネルギー・再生可能エネルギーでも、風力発電やバイオマス発電は、それぞれ設備1,816MWと1,924MWに対して、発電量は2,744GWhと3,165GWhです。一方、太陽光は34,000MWで、15,000GWhですから、とても効率の悪い発電です。

何故かというと、太陽がある時だけの発電だからです。「雨が降れば、お休みで!」という歌の通りで、また夜もお休みします。そういう太陽光発電の休憩時バックアップが必要なのです。バックアップは無料ではありません。例えば、家庭に太陽光発電を設置しても、電力会社から供給を受けるための電線は必要です。

4) 太陽光発電メーカ

3.5kWの住宅用太陽光発電設備を設置するとして、現在新築で185万円、既築設置で225万円程度のようです。(参考資料)太陽電池メーカには、どのような会社があるかですが、ロイター 6月29日 太陽電池の国内特需で日本メーカーに復権の機運は多少日本メーカに気を使った書き方かと思いますが、この記事にあるように、独Q-Cells SE、米 First Solar, Inc.、中国Suntech Power Holdings Co, Ltdが1位から3位までです。例えば、中国Suntech Powerは江蘇省無錫市にあり、2001年に設立、2002年に事業開始した会社です。業績は下のグラフのように、右肩上がりの高成長です。ニューヨーク証券市場に上場し今や世界企業で、資金調達でも、問題はないはずです。

Suntech_power20097

世界不況克服に向けて日本から世界の太陽電池メーカへの事業促進策です。世界中のメーカが競争してくれないと、価格は下がりませんから、世界メーカの競争が日本で生じることは歓迎すべきです。さもないと、日本メーカも日本でしか通用しない田舎会社となり、GMの後を追いかけることになると思います。

なお、設置を計画されておられる方は、メンテナンスのことは、十分納得するまで業者と打ち合わせして下さい。素人には、メンテナンス不可能です。例えば、太陽電池で発電するのは、直流です。それを回路で交流に変換します。3.5kWの出力は、火災を発生させるに十分ですし、点検のために屋根に上るのさえ、普通は無理です。50年間無償修理を約束させ、支払いは50年分割払い、メンテナンス不履行時支払い相殺可能とか交渉しますか?多分、業者は受けないでしょうね。しかし、そのぐらい真剣な検討をすべきと思います。

5) CO2削減は容易ではない

書いてきたように、CO2削減は容易ではありません。地道な努力が必要です。

一つの、例として太陽光発電に類似した設備に家庭用燃料電池エネファームとか称するのがあり、補助金も出るようです。燃料電池だから、CO2は出ないと勘違いをされておられる方もいると思います。しかし、燃料に都市ガスを使用するのですから、CO2を排出します。都市ガスの主成分はメタンCH4であり、Cが存在します。燃料電池としては、CO2を発生しないものの、水を加えてH2を製造し、化学式で書けば次の反応です。きちんとCO2を排出します。

CH4 + 2H2O → 4H2 + CO2

ちなみに、1立方メートルの都市ガスで、2.2kg強のCO2をエネファームは排出します。そのまま、都市ガスを燃焼する場合と全く同じです。そんな話、聞いたことないって!イエ、パナソニックのWebにも次の説明があります。

水蒸気改質法で水素を取り出す場合、炭素を含んだ化石資源からの改質であるため、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が発生します。一酸化炭素(CO)は燃料電池の化学反応に悪影響がありますので、水を加えた変性反応や、酸素を加える浄化反応などで、二酸化炭素(CO2)に換えます。

エネファームと太陽電池の双方を設置すると、家庭で必要とする電力をはるかに上回る電力が発電できる。エネファームは、46円/kWhの対象ではない。そこで、家庭内の部分は、エネファームで発電し、太陽光発電部分を全量46円/kWhで売ろうという不逞の輩がいるようです。相当な悪人で、エネファームでさえ、何らCO2の発生を少なくする設備でないにも、拘わらずその上を行くのです。

エネファームは、発電だけをとれば、発電効率33%とディーゼル発電よりも、はるかに発電効率が悪く、CO2大量発生設備です。何故、エコになるかというと、温水を作るから、温水と発電を合算すれば熱効率が上昇し総合効率で計算してエコとなります。但し、好きな時に温水が作られるのではなく、発電時のみです。温水なので、貯蔵が可能というわけです。エネファームの場合は、1日10kWh発電するとして、1日350リットル程度の温水が生産される。タンク容量が200リットルとかですから、毎日350リットル不必要であろうが、温水をせっせと使いまくる生活になります。夏は温水が余り、冬は温水が足りないということもあり得ます。所詮ガス代を払うのですから、温水は不要でも使わにゃ損となるかも知れません。考え方次第ですが、どちらにせよ、エネファームと太陽電池と双方設置のキチガイ沙汰は防止するようにせねばなりません。

ちなみに、資源エネルギー調査会新エネルギー部会の議事録等もそのような事態は防ぐ方向になっています。なお、太陽光発電促進のための、電気料金値上げについて、その方向ではありますが、値上げ幅を含め、例えば、自家発電・自家消費のユーザーにも負担させるのか、6kV以上の自由化電力についてどうするか等、様々な部分が未だ決まっていません。しかし、多くの人が感心を持つべきだし、うまい話ばかり聞かされていたが、実は全員に負担がくると驚かれる方もいると思うので、少し長くなりましたが本エントリーを書きました。

今度の政権は、まじめに炭素税導入をしてくれないかな。そうすると、こんなゆがんだストーリーから少し楽になれるかも知れないのに。

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