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2009年7月 6日 (月)

アマゾンの税金

ネット本屋のアマゾンは、米国の会社であることは知っていましたが、日本で本屋商売をしているのは、子会社の日本法人と思っていましたが、米国法人が直接日本で本屋を開いていたのですね。知りませんでした。

朝日 7月5日 アマゾンに140億円追徴 国税局「日本にも本社機能」

思いつくことを書いてみます。

1) 課税の根拠

日本の出版社が出している本を日本人に売った場合、通常であれば利益(所得)の源泉は日本にあり、日本で税金を払わなくてはならないと考えるべき気がします。しかし、税は気分ではなく、税法に従い、課税されるのであり、税法を調べる必要があります。ところで、アマゾンは、米国ワシントン州シアトルに本社を置くNASDAQ上場(略称AMZN)のAmazon.com Inc.であり、であり、日本の本屋商売は、この会社の在米国子会社がしていると理解します。

朝日の記事には、「日本の顧客との商品契約はこの米関連会社と結ぶ形で、売り上げも米側が得ていた。」とあり、在米国子会社が日本で本屋商売をしている形を採っているようです。この場合は、日米租税条約が関係するのであり、日米租税条約の第7条第1項が次のようになっています。

第七条
 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる

恒久的施設という言葉が使われており、日米租税条約の第5条で定義がなされており、第5条第4項には、次のように書かれています。

 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まないものとする。
(a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c)以後省略

即ち、倉庫は恒久的施設ではないとされています。

但し、そんな単純な問題ではないはずで、多分日本にあるアマゾンの倉庫を保有しているのは、日本のアマゾン子会社か、あるいは保有しておらず、貸倉庫を利用しているとしても、そこに発注しているのは日本の子会社と思います。

ところで、消費税はどうしているのでしょうね?消費税法第4条は、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」であり、事業者の定義は第2条1項四号で、単に「個人事業者及び法人」となっているだけですから、外国法人も納税義務があり、納税していると思いますが。

2) 報道は「今分かった。」 しかし、アマゾンは、1月30日に発表

Amazon.com Inc.は、NASDAQ上場ですから、日本の有価証券報告書に相当するForm 10-K (Annual Report)を発表しています。2008年については、2009年1月30日に出していますが、その73ページ(Note 12—INCOME TAXES )に、次の記載があります。

In addition, in 2007, Japanese tax authorities assessed income tax, including penalties and interest, of approximately $119 million against one of our U.S. subsidiaries for the years 2003 through 2005. We believe that these claims are without merit and are disputing the assessment. Further proceedings on the assessment will be stayed during negotiations between U.S. and Japanese authorities over the double taxation issues the assessment raises, and we have provided bank guarantees to suspend enforcement of the assessment. We also may be subject to income tax examination by Japanese tax authorities for 2006 through 2008.

119百万米ドルですから、140億円になんとなく見合うのではと思います。アマゾンは、銀行保証を差し入れたとありますから、正攻法で交渉しているのだと思います。最も、それは当然のことであります。何故なら、日本で納税する場合は、米国で外国税額控除が取れるからです。米国で外国税額控除を受けるためには、誠意を持って交渉することです。

3) 日米交渉

二重課税防止の観点なしで解決はできず、政府間の真摯な交渉は重要と思います。そもそも、日米租税条約が作られた時代には、Webがなかった。改定交渉でも、その解決策が示されないと条約文章に盛り込むのは、困難と思います。

ネットビジネスの場合、クレジットカードで直接外国企業に支払うことが簡単にできてしまう。購入した物は、日本国内でのみ移動することがある。同様なケースが他にもあると思います。2)で掲げたアマゾンのForm 10Kの税金の部分の直前の文章には、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ及び英国における税務調査は終了していないと書かれています。これらの国々では、何がどう問題になっているのか分かりませんが、同様の背景があるのでしょうか。

どう考えるかですが、アマゾンに感謝すればよいのではと思いました。相手の外国会社がケイマン島の会社であった場合、租税条約の適用はないのですが、同種問題があった場合の扱いについて、私も自信がありません。アマゾンであるから、逃げたりはしない。従い、ネットビジネスに対する最適な課税の方法を作り上げる良い機会と思います。

もし、ケイマン島のような法人課税の低税率あるいは無税国を経由して合法的な税逃れができるのであれば、問題は相当深刻です。国税局さん頑張ってください。

なお、この問題を、日本の法人税率が高いから生じたと間違いをしてはなりません。

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コメント

>なお、この問題を、日本の法人税率が高いから生じたと間違いをしてはなりません。

すみません、そこのところを詳しくお教え願います。

投稿: NSR初心者 | 2009年7月 6日 (月) 23時59分

NSR初心者さんコメントありがとうございます。

日本の法人税率が高いとの議論があります。高いか、安いか、適当かについては延々と続くので、この場では避けます。

このアマゾンの税については、アマゾンは日本において事業開始以前から、Tax Planningを行って、用意周到に準備をしていたと思うし、日本の税務署の指摘も、想定の範囲内であったと思います。

そこで、日本の法人税税率が現状より低かった場合に、どうしたかですが、おそらく今と同じと思います。Taxは、ビジネスのOne of Themであり、多くの場合、ビジネスの全体像の方が重要です。1円の利益のケースと10円の利益でリスク9円のケースは、見合うかも知れないが、利益を確実に生める方を取るのが通常です。もし、15円の利益でリスク10円なら違いますが。しかし、現実には、そんなうまい話は、ないはずです。

Amazon.com Inc.の本社はWashington州と書きましたが、登記上はDelaware州です。州税の安さでDelaware州としているはずですが、US Federal Governmentの権利とStateの主権が絡むと思うのですが、私もよく分かっていません。日本の場合でも、企業誘致に、地方が固定資産軽減策と言った誘致政策を行うようなものでしょが、全地方自治体が同じことをすれば、全自治体が倒産するのでは?

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年7月 7日 (火) 12時20分

ご解説ありがとうございました。
ビジネスの本質の問題ですね。

投稿: NSR初心者 | 2009年7月10日 (金) 01時03分

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