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2009年7月17日 (金)

臓器移植法の改正が公布されました

臓器移植法の改正が公布されました。(官報 7月17日)施行は2010年7月17日からです。私のエントリーに対して、主婦さん他から幾つかコメントを頂いたこともあり、改めて、書きます。

1) 改正内容

主要な改正条文は、次の第6条第1項であります。

第6条 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。
 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

ご安心して下さい。「脳死を人の死とする。」とは、どこにも書かれていません。各個人の意思は、最も尊重されるべきです。法文になくても、生きている人の死を尊重することは、憲法11条の基本的人権の尊重に他ならないし、他の憲法の条文においても同様のことが謳われれていると考えます。

2) 虐待を受けた児童に関する配慮(附則5)

附則5において、「虐待を受けた児童からの臓器提供防止のための対応する方策検討や措置」に関しての政府の義務を記載しています。虐待が疑われた場合は、いかなる時であり、それを解明せねばならない。臓器移植法が改正されたから、児童虐待が酷くなるとは考えませんが、逆に少なくなるとも思いません。しかし、臓器移植法改正を機に、対策を検討し、講じるのは良いことと思います。

3) 子供の脳死

今までの脳死判定基準を子供に対しても、そのままで適用するのかについては、検討をすれば良いと考えます。今回改正の対象となっていない6条4項に「臓器の摘出に係る第二項の判定は、・・・二人以上の医師・・・の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。」となっており、厚生労働省令に脳死の判断基準が委ねられています。

当然のこととして、子供に対する脳死判断基準について、1年間検討がなされると思います。

親は、臓器提供を拒否できるのです。自分の子供は、「誰が何と言おうと脳死ではない。脳死判定を受けたが、やはり拒否します。」は、ありと考えます。人の死を他人に強制することは、絶対あってはならないと考えます。

4) 今回改正の問題点第6条の2

報道も、ほとんど触れてなかったし、焦点が別の所にそれる可能性があるので、私もあえてブログで触れなかったのが、6条の2 親族への優先提供の意思表示です。脳死は、滅多になるものではなく、まして事前に脳死になることを予測するのは不可能です。脳死殺人が行われたら大変ですが、親族のためにある一人の臓器提供が軽率に要請される危険性も孕んでいます。

勿論、心臓死による角膜移植もあるので、「自分が死んだら、私の角膜をXXさんに」と遺言で臓器提供をすることも可能となり、故人の遺志が死後も尊重されることになり、良い面もあります。

今回も改正対象ではなく、そのままですが、第2条4項の「移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない。」の公平原則に少し条文が加わりました。 この6条の2は、6月後の2009年1月17日からの施行です。様子を見ていきましょう。

5) クラスター爆弾禁止

本日公布された法律に「クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」があります。クラスター弾等禁止条約批准に伴う国内法の制定で、本ブログに書くのは備忘録でありますが、次の日経記事には「同爆弾を大量に保有する米国や中国、ロシアは条約に参加しない意向を表明している。」とあり、平和国家日本として、世界をリードしていって欲しいと思います。

日経 6月10日 参院、クラスター爆弾禁止条約を承認 8年以内の廃棄が義務に

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コメント

臨床的脳死と判定されても、法的脳死判定を2回受けなければ成りませんから、法的脳死判定を拒否すれば、法的には脳死は存在しません、また、2回目の判定でも拒否できます。 

実際は、法的脳死判定に家族が同意された時点で、コーディネーターが呼ばれ、主治医を離れます。

また異常死体の場合は医師法21条、検視も必要です。 検視が終わりませんと、提供は不可能です。

日本法医学会の「異常死ガイドライン」

<1>外因による死亡(加療の有無、加療の期間を問わない)
1)不慮の事故
2)自殺
3)他殺
4)不慮の事故、他殺、自殺のいずれであるか不詳のもの
<2>外因による障害の続発症、あるいは後遺症による死亡
<3>上記の<1>、<2>の疑いがあるもの
<4>医療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いのあるもの
<5>死因が明らかでない死亡
A)死体として発見された場合
B)一見健康に生活していた人の予期しない急死
C)初診患者が受診後ごく短時間で死亡した場合(DOAなど)
D)医療機関への受診歴があっても、その疾病により死亡したとは判断できない場合
E)その他、死因が不明の場合。病死か外因子か不明の場合

 実質運用は、家族の承諾の無い場合は法的脳死判定は出来ません。

人の死は脳死と脳死は人の死はまったく別なのですが。この辺も混乱しているようです。 法的脳死判定が行われない限り法的な脳死の死体は存在しない事です。

竹内基準の判定の6歳以下除外と15歳以下に関しては、小児科学会の見解を待つしかございません。 個人的には6歳以下は除外に同意です。 

投稿: omizo | 2009年7月18日 (土) 10時57分

訂正
下記誤り
実際は、法的脳死判定に家族が同意された時点で、コーディネーターが呼ばれ、主治医を離れます。

訂正
実際は、臨床脳死判定に家族が同意された時点で、コーディネーターが呼ばれ、主治医を離れます。それ以後に、法的脳死判定への手続きとなります。

投稿: omizo | 2009年7月18日 (土) 12時36分

 第六条第二項中「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」を削り、「もの」を「者」に改め、同条第三項を次のように改める。

現法

2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。

改正文は。
2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

 改正法だけ見て、上記の解釈だけだ、一人歩きしているだけです。ここだけ見れば、脳死は人の死、一律に認めたような感にも思えますが、

3 臓器の摘出に係る前項の判定は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、行うことができる。

 一 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。

 二 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。

法的脳死判定が行われない限り、脳死は無い事になります。

ドナーカードなどが遺言書としても、死亡が確認されたあとなら、死体の処理は遺言できますが、コレコレ、こんな時は、死んだ事にしてくれ、なんて、出来るわけがございません。法的死亡診断が必要となり、法的脳死判定も含まれるわけです、本来は医師が判定するものですが、脳死判定は、家族の承諾を必要としています。 実際は本人の遺言(ドナーカードなど)だけで、出来ないのです。

投稿: omizo | 2009年7月18日 (土) 13時14分

omizo さん

コメントをありがとうございます。

「6条2項の解釈だけだ、一人歩きしているだけです。」が理由であれば、スッキリします。その場合、実際の条文は「前項に規定する」であるので、6条1項から読まないと意味が通じないはずで、どうして、そんな浅い読み方が、広まるのか不思議であり、私は6月23日のエントリーを書いた次第です。
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-a26c.html

一番罪深いのはマスコミであると思っています。国会でも慎重論を唱える議員がいるのは、理解できます。しかし、マスコミの言っているとおりだとすると、A案に反対した議員の論点が不明になってしまうのです。

まさか、議員が改正条文を読まずして、反対するとは思えない。

マスコミが、別の重要な件でも、誤解を生じる報道、ピンぼけ報道をしてしまう恐れありと感じると、恐ろしくなります。

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年7月19日 (日) 12時03分

今回の法案提出騒動は、救急の医療現場の脳神経外科、脳神経内科、救急医療医関係者からは、非難の声が上がっておりますのも確かです。 すべてに混乱をもたらした事で、現場は疲労困憊にあるようです、 詳細はもうし上げられませんが、ある脳神経外科医は、激怒しておりました(言葉を選んでも放送禁止になりそうです)。 現行法であっても、それほど変わらない法案を、根回しなしに早急に提出し成立させる必要があるのか?。

 増えない原因は、別にあるからですし、その事を12年も野ざらしにして、ハイお願いします。の丸投げで・・・・。
 とのことです。  

何も根回しなしに、6歳以下も脳死判定が可能との誤解を与える言い方して。などなど。 

投稿: omizo | 2009年7月19日 (日) 13時50分

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