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2009年7月 9日 (木)

JR福知山線脱線事故で山崎正夫社長起訴

JR福知山線脱線事故で、神戸地検は8日、JR西日本の山崎正夫社長を起訴というニュースがありました。2008年9月19日に兵庫県警による書類送検に関してこのJR尼崎事故を書きました。今回は、この書類送検を受けた神戸地検による起訴であることから、書きます。ニュースとしては朝日をあげておきます。

朝日 7月8日 JR西社長を在宅起訴 宝塚線事故「安全対策怠る」

1) 起訴は妥協?

そんな印象を持ちました。警察が神戸地検に書類送検したのは、死亡した運転士を含め10人です。何故、現社長(実際には昨日まで)で当時常務取締役鉄道本部長であった山崎氏のみを起訴したのか、妥協と思いたくなってしまいます。

尼崎事故は、2008年9月19日のエントリーで書いたように、JR西日本の会社組織の問題が引き起こしたと思います。乗客の安全よりも乗客に対する表面的な満足度の提供を会社として重視してしまったのです。

600mカーブを304mカーブへと付け替えたのは、1997年3月に開業する大阪府、大阪市、兵庫県、尼崎市、JR西日本、関西電力等が出資する第三セクターの関西高速鉄道株式会社の大阪東西線へJR福知山線の電車を乗り入れ、更には神戸方面から来た電車と方向を同じにして尼崎駅での乗り換えを便利にするためです。この対応に、間違いはありません。その結果、安全対策の強化が必要であれば、必要な安全対策を適切に講じたかです。

私も、安全対策は不十分であったと考えます。しかし、刑法の業務上過失致死傷に該当する行為と認定できるかについて、疑問に思うのです。そして現在生きている他の8人は、何故起訴しなかったのかです。私は、会社組織の問題、すなわち組織犯罪と考えることから、もし一人とするなら当時の社長山崎正夫氏が起訴されるべきと思います。

勿論、私は、山崎正夫氏が刑事罰に該当すると言っているのではありません。誰も刑事罰に問うべきではないと考えます。但し、JR西日本が、この事故を起こした原因者であり、責任者です。従い、JR西日本は十分な賠償を遺族や怪我をされた人々にすべきです。そして、安全な鉄道をJR西日本として作り上げると同時に、事故から学んだ教訓を他のJR鉄道会社のみならず、私鉄を初め世界中の鉄道会社に伝えるべきです。会社のみならず書類送検された9人は、無報酬ボランティアとなっても、鉄道の安全のために尽くすべきであると考えます。

多分検察は、「人が死んでいるのに、誰も起訴されないのはおかしい。」との世間様の声を考えて、現社長を生け贄にすると言う妥協をしたのかと勘繰りたくなります。

2) 304mカーブと600mカーブ

上の朝日の記事が、「カーブの付け替えで時速120キロから70キロに急減速しなければならなくなり」と書いていることから、グラフを作りました。

Jrwamagasaki20096

上のグラフにおいて、緑線が600mカーブの時のカーブの外向きに発生する横Gです。青線が304mカーブの場合です。304mカーブとした結果、横Gは約2倍になりました。そして、転倒する危険性のある赤線と110km/hあたりで交わることとなりました。600mカーブの緑線であれば、交わることはなかったのです。(赤線はカント(カーブの左右のレール高さの差)を現在と同じ97mmとしており、600mカーブの時には、50mm程度のカントであった可能性もありますが、その場合でも0.05G程度の影響であり、120km/hで転倒危険範囲には入りません。)

このような技術的な分析の結果を踏まえて、神戸地検は鉄道本部長であった山崎氏を刑事罰で起訴をした推測します。しかし、上のグラフは素人の私でさえ作れたのです。多くの鉄道専門技術者がいるJR西日本にとっては、赤ん坊の手とあそぶようなものであったと思います。JR西日本には、カーブの半径に対して最高速度を規定する社内規則があったのです。だから、本部長が、このカーブは制限何キロメートルと決める必要はなかったのです。むしろ、社内規則を違反してまでダイヤ回復を運転士に強要してしまう社内体質にこそ問題があったと思います。

2008年9月19日のエントリーの(2)で書きましたが、違反をしなければ実現不可能な列車ダイヤがJR西日本には存在したのです。ミスを犯して、ダイヤ作成者が、そんな計画を作ってしまうことはあり得ます。しかし、ミスをチェックする人と組織が存在しなくてはならないし、ミスの修正がなされる組織でなければなりません。仮に、誰も気がつかなくとも、実際に列車を運転する運転士・車掌は気がついていたはずと思います。可能性としては、運転士・車掌は気づいていても、奴隷制度であり、懲罰的な日勤教育(再教育)が待っているから不正を正すように動かない。

3) 本当に必要なこと

本当に必要なことは、安全な鉄道をつくることと思います。事故から教訓を学んで将来に役立てることができなければいけない。

神戸地検がATSを設置していないことが原因と主張したとしても、それは検察としての一見解に過ぎません。JR西日本の組織的な欠陥により発生したところが大きいと書きました。組織の欠陥が関係する場合、その欠陥を浮かび上がらせるためには、幹部を初めJR西日本の方々が真摯に事故を見直すことが必要と思います。

事故が起こると誰が悪い、誰の責任だと考えがちですが、組織的な欠陥が絡む場合には、事故原因が明確にならない可能性があり、更には原因を間違えて特定してしまううことさえあり得ると思います。2008年9月19日のエントリーは、航空・鉄道事故調査委員会の調査報告書を読んで書きました。様々な角度からの分析がなされています。しかし、JR西日本の組織に、どう欠陥が存在したかについては、余り書かれていません。航空・鉄道事故調査委員会としての限界と思います。

そのような限界を乗り越えて、教訓を導き出せるのは、JR西日本であると考えます。そのためには、起訴された山崎氏を初めJR西日本の方々の協力が必要です。それは、同時に自らと組織について十分に問いたださねばならない。そして、そのことこそ、尼崎事故の本当の反省であり、人としての生きる姿と思います。しかし、刑事罰に問われるなら、鉄道の将来の安全より、自分の身が大事となります。神戸地検も、私が書いているこのような意見があることを承知して起訴をしたと思います。刑事罰よりも事故防止の方が、重要であることが社会的に認識されることが重要と思います。日本では、その様な法を作るしか解決がないのでしょうか。

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コメント

山崎氏だけが起訴されたのは、納得できません。管理人様と同じく、事故の根本原因は「社内体質」にこそあったと思うので、そういう意味からも、最低限、事故当時の社長が起訴されるべきだと思います。どんな組織でもそうですが、営業部門と管理部門のバランスこそが大事です。事故当時、JR西日本は「営業」部門が突出していたものと思います。それはまさしく社長の責任でしょう。それなのに、「(安全)管理部門」のみの責任とし、しかも事故時ではない、何年も遡って、大過去時点で管理部門責任者であった山崎氏の責任のみを追及するとは。万歩譲ってその事故分析が正しかったとしても、やはりその大過去時点の社長こそが一義的には責任主体であると考えます。私も、何人かのうちの一人に山崎氏が入っているのなら、妥当だとは思いますが。

現在、マスコミを使った様々な印象操作(チョロQで買収工作していた、等)により、真の問題の所在を見えなくしようとしているようですが、逆に事故調や神戸地検のこの事件処理の奇妙さというか、ある種の胡散臭さをますます強く感じるばかりです。

投稿: 一市民 | 2009年10月15日 (木) 12時37分

一市民さん コメントありがとうございます。

私が、JR福知山線脱線事故について、最近の報道は、ATSの設置にのみ偏っている気がします。新型ATSの設置がされなかったのは何故なのか、JR西日本全体の計画における重要性の判断や、旧型ATSの使用を継続する場合の対策が、あったはずで、全てを総合して判断すべきと考えます。

取締役会はじめ、JR民営化に伴い、安全性が損なわれていたのではないか等を含め全体を見通した検証こそが将来の事故防止になると考えます。航空・鉄道事故調査委員会の調査は、一つの報告書であり、さらに視点を拡大した検証が必要であり、JR西日本には、そのような調査をして欲しいと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年10月15日 (木) 13時13分

はじめまして
福知山線脱線事故の映像ををニュースで見たとき
最初に何処の国???
と思いました。これほどの大きな事故
そして会社の態度
二度と起こさないと反省の言葉を述べたところで
何も伝わってこない
この様な悲劇な事故は二度と見たくない
と、願うばかりです

投稿: 西の政所 | 2009年12月29日 (火) 14時22分

西の政所さん コメントありがとうございます。

私の2008年9月12日のブログも読んで頂けましたか?次のURLですが、最後の「5)真の事故原因」の箇所に経営責任を重点に書いたつもりです。JRが転覆限界速度と発表した133km/hより遅い116km/hで進入して事故が起こったのです。安全に関する意識がなかったのは、運転士ではなく、経営者だったのです。

山一野澤社長の最後の記者会見「社員は悪くありません。」が、すっきりしますね。

http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/jr-d266.html

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年12月29日 (火) 17時30分

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