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2009年8月23日 (日)

大蘇ダムの漏水問題

ダムから水が漏れる。正確には、ダム湖からの水漏れであり、ダムから水が漏れるなら、ダム欠陥工事です。でも、多くの人は、ただ事ではないと考えると思います。しかし、考えようによれば、地表は水が漏れて当たり前で、水が漏れなければ、地下水は干上がります。従い、漏水も程度問題でありますが、タイトルにあげた大蘇ダムについての概況として次の大分合同新聞の記事を掲げます。

大分合同新聞 4月17日 たまらぬ水、あふれる怒り 大蘇ダム問題 

どう考えるかですが、ややこしさを理解するために少し新聞記事を掲げます。

7月29日 朝日 鳩山代表、熊本で大蘇ダム中止を示唆 「ムダなダム」
毎日(熊本) 7月31日 大蘇ダム:「計画通りの水確保」 九州農政局、秋に方針 /熊本

直ぐ前のダムの議論で、評価の必要性を書きましたが、大蘇ダムについての評価を私もできていないので、何も言えません。どのようなダムであるかについて私が調べたことを書いてみます。

1) 大蘇ダムの場所

大蘇ダムの場所は、熊本県阿蘇郡産山村なのです。大蘇ダムは、灌漑用水の取水を目的としたダムですが、灌漑用水を利用しようとする農地の大半は、竹田市荻町を初め大分県なのです。九州で、熊本県は、有明海に面しており、大分県は豊後水道に面しています。しかし、阿蘇山の近くは分水嶺が県境ではなく、少し熊本県に入っていることからのややこしさもあります。

下に、大蘇ダムを中心位置のYahoo地図を掲げます。大蘇ダムの南東が竹田市荻町になりますので、興味ある方は地図を動かして確認してみてください。JR肥後線に豊後萩という駅がありますが、その一帯です。

2) 竹田市荻町

竹田市荻町をYahoo航空写真で豊後萩駅を中心位置として、出しておきます。航空写真だと、農地であるか、山林であるかの見分けが簡単で、竹田市荻町には農地が多いことが分かります。

竹田市荻町の農地への農業用水の供給をどうしているかですが、荻柏原土地改良区(ホームページ)という土地改良法に基づく法人があり、竹田市荻町の南西にある大谷ダムの水を配分しておられます。荻柏原土地改良区のホームページを読むと、高原の農地の開発、水確保の歴史が書かれています。

3) ダム水漏れの状況

一番解りやすいのが、荻柏原土地改良区のWebに水土里ネット広報があり、その平成20年3月31日発行(No. 43)に次のグラフがありました。平成18年や平成19年は8月は400万トン以上貯水され、総貯水量430万トンのダムですから、ほぼ満水なのです。しかし、3月末に向けて貯水量が直線的に減少して、7月初めまでは実質ゼロ状態というわけです。

Midorinet

そこで、これでは、水田米作の水としては役に立たないとなります。一方、農水省の言い分ですが、実はWebから大蘇ダムやこの事業の名称である大野川上流かんがい排水事業の関連の情報が消滅してしまっているのです。その中で、見つけ出したのが、この九州農政局国営事業再評価第三者委員会(第2回) 議事録平成21年6月19日です。

水土里ネット広報とほぼ同じことが書かれていますが、「計画受益面積2,158ha のうち1,360ha を若干超えるぐらいに対しては10 年に1回程度の渇水時に対しても用水を安定的に供給できる見通しである。」となっています。

上のグラフが正しいとすると、農水省の説明が、甘すぎるように思えるのですが。

4) 感想

結論は書けないので、感想を書きます。大蘇ダムの漏水は初めから予想されていたはずです。火山中腹の土質は、水を通しやすい。荻柏原土地改良区の広報に書いてありますが、大野ダムも随分漏水するのです。ダム流入量0.35m3/秒で漏水量0.15m3/秒の記載は、40%以上の漏水となります。

漏水を見込んで、大蘇ダムの貯水容量等を決定しなければいけないのを、軽率でありすぎたのではと思います。このあたりの資料は全て存在するはずなので、検証可能なはずです。

それと、農業に関する基本プランは、どうであったのかと思います。米と野菜等の農地区分は、どうあるべきなのか、そのような基本案があってしかるべきだろうと思います。

政府は書面での約束はしていないでしょうが、荻柏原土地改良区の人達を含め大蘇ダムから農業用水供給を受けたいと思う人達に対して、約束に近い期待を与えていたのではと思います。そうであれば、責任論ではなく、契約の履行義務として、政府は水を供給するか、金銭で賠償するかの義務があると私は思います。

大蘇ダムが不要か必要か、何も解りません。代替案すら知識がありませんし。リスクについて適切な対処をしなかったと思います。食糧自給を唱えるなら、農業用水の確保は、極めて重要な課題であると確信します。

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コメント

大蘇ダムについて

そもそも大蘇川に年を通じダムを満たすだけのじゅうぶんな水量はあるのでしょうか。

1)大蘇ダムから水源地と思われる立山牧野、宮坂尾篭牧野まで5、6kmしかありません。ダムから5kmの地点は沼地で、そこを「やまなみハイウェイ」が走っており、このあたりの丘は一面草地です。

2)ダムから3kmあたりで谷が深くなり、斜面は自然林です。その自然林も、谷の中だけで、谷から出ると草地です。

3)大蘇川の北に玉来川があります。源流近くには有名な水源池がいくつかあります。とはいえこちらも大きなダムを満たす水量があるようには思えません。

4)この玉来川と大蘇川を合わせればいくぶんなりとも水量は確保できましょうが、梅雨と台風の両時期の大雨がなければ足りないように思われます。

5)さらには、ダム上流地域、大蘇川域がとくに降雨量が多いスポットであるとも聞いていません。

このようにダムの上流の様子を見てみますと、とてもあの巨大な「水がめ」を満たすような川の水量は見込めないと考えるのが普通だと考えます。

以上、久住高原、瀬の本高原、産山村、波野高原などをデジカメでの写真撮りに出かけた者が得た印象です。

投稿: 池のカモ | 2013年5月24日 (金) 20時40分

池のカモ さん

コメントをありがとうございます。

池のカモさんの文章からして、割合最近現地を実際に訪れたのだと思いました。

大蘇川の水量について、調べていませんが、おそらくダムに貯水するに適当な河川水の年間流量は従来からあったと思うのです。それさえ、していなかったら、無駄な事業であり、徹底的に糾弾されるべきと考えます。

但し、そもそも竹田市荻町近辺では農業用水を取得するにして河川水の流量は少なく、農業増産のためには更なる灌漑用水が必要であるという状況であったはずですし、雨量や河川水の流量は今も変化はないはずです。従い、池のカモさんがご覧になった現状は過去も同じだと思います。

私は税金を使って実施する工事・事業も失敗があることは、ある程度の確率でヤムを得ないと考えます。しかし、その結果や評価やデータはオープンに開示すべきであり、闇に葬ることをしてはならないと考えます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2013年5月24日 (金) 21時06分

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