石原都知事の八ッ場ダム発言
次のニュースがありました。
日経 9月5日 石原都知事「八ツ場ダム、中止なら分担金の返還請求」
1) 実際の発言
東京都の場合、東京都のWebに記者会見の内容が出ており、確認することができます。知事記者会見のWebはここであり、9月4日の会見が、該当するものです。(このエントリーを書いている時は、未だテキスト版は発表されておらず、録画映像のみですが、初めから10分を過ぎたありからです。)
9月4日の会見で、知事は冒頭に「私から今日は申し上げることはございません。質問があったらどうぞ」と述べ、記者からの質問に答えたのみです。従い、新たな東京都の見解を伝えたのではなく、記者からの質問があったので、従来からの意見を述べたと理解します。即ち、議会にも諮っていないし、下手なことを言うと揚げ足を取られるし。
また、この日の会見は、IOCの評価報告書が出てきたことに関連しての、東京オリンピックに関する質問とその発言がほとんどでした。
会見の内容は、東京都のWebの前に、MSN産経ニュースが会見の詳報を伝えており、このページの次の2から6が詳報です。ちなみに、八ッ場ダム関係は、5と6です。
2) 分担金の返還請求
MSN産経ニュース詳報の5にありますが、次の発言です。
「東京だって分担金を出資してきたんですよ。これは国のせいで中止になったら、当然、返還請求しますからね。」
実は、他の新聞報道は、刺激的な表現で457億円を請求すると読めるような報道もありました。(記事の表題ではなく、その部分を引用していることから刺激的でありすぎ、ニュアンスは、リンク先の記事を読んでください。)
読売 支払い済みの費用負担分約457億円について国に返還を求める考えを明らかにした。
朝日 既に457億円を支出した。建設中止の場合、「支出した全額の返還を求める」(都都市整備局)という。
毎日 「国の意思で(工事が)中止になったら当然、(負担金を)返還請求する」と話した。都はダム建設事業の負担金として08年度までに457億円を支出している。
457億円の根拠は、私なりに思うのは、次の共同の記事配信です。
共同 都によると、八ツ場ダム事業の都の負担分は総額635億円で、既に457億円を支払っている。
3) 実際の東京都の負担金
八ッ場ダムに関して嫌なのは、不透明会計なのです。8月25日の八ッ場ダムを考えるの中で平成20年9月12日国土交通省告示第1121号の「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」を紹介し、河川法による負担が2509億円で、その2/3が政府で1/3が関係する都道府県と書きました。川辺川ダムの場合は、洪水緩和が全てなので、河川法のみの建設になると思うのですが、川辺川ダム砂防事務所のWebによれば、熊本県の負担は22%で、さらにこの負担額の80%が地方交付税でまかなわれ、最終的な熊本県の負担額は4.4%(116億円)になるのです。
川辺川ダムの比率が八ッ場ダムに適用してよいか分かりませんが、4.4%とし、その中での東京都分担を22%とすると1%にもならず、25億円です。これに、水道関連の都道府県分担金を加える必要がありますが、水道関連に様々な地方交付税があることから、実際の都道府県の負担額は小さくなります。
こうなってくると民主党の肩を持ちたくなります。各種の地方交付税も当初はそれなりの理由があり、導入されてきたが、この仕組みの見直をしないと、無駄な公共事業が蔓延してしまうと危機感を持ちます。是非、国民の前に、正しい会計報告を含むプロジェクト報告をして欲しいと思います。
4) 水に関する知事発言
水リスクを低くするために八ッ場ダムが必要であると石原知事は述べました。しかし、会見の中では、数字等は全く出しておらず、観念的であります。記者会見においては、それでも良いので、Webにおいてでも、東京都民には水需要とその供給見通し等を公表すべきですし、地方交付税も関係するので国民にもそうすべきです。
東京都の場合は、利根川以外に、多摩川から取水しており、小河内ダム(貯水容量185,400千m3)あり、西武球場近くの村山貯水池・山口貯水池(両方合計で貯水容量34,350千m3)も多摩川からの水です。私たちは、大ダムが完成する前から、水を利用していました。ダムは、大雨が降った時の水を貯蔵して、渇水になった時に、放流され、その水を利用することとなります。従って、ダムの水供給に関する評価も、ダムにより違いはあるが、多くの場合、重要性は渇水時対策であり、洪水緩和と似通った面があります。
利根川にしても、矢木沢ダムや奈良俣ダムがある利根川本流、下久保ダムがある神流川、草木ダムがある渡良瀬川が同時に全て渇水になるとは思わないのです。また、海水淡水化により飲料水を作ることも可能であり、渇水対策として、何が最も有効かは十分検討すべきと思います。
5) 工事が進んでいるから中止できないか
分かりません。そのことも検討事項に入ります。ダムの場合、最初に水没地の道路を付け替え、移転のための居住環境の整備をすることとなります。着工したから、中止が意味ないとすれば、中止は全く不可能となります。
自公政権であったなら、既成事実を積み重ねていくだけであったのであり、民主政権は中止が意味ないことかも含め、正当な検討をすべきと思います。そして、民主党は、今名前があがっているダムの見直しに止まらず、国民の為の大型公共工事の国民が参加しての進め方の樹立を目指して欲しいと思います。
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コメント
群馬県知事 「地元住民や関係市町村、一都五県の意見を聞くことなく建設中止したことは言語道断で極めて遺憾。」
埼玉県知事 「民主党の公約そのものがルールを無視したもの。」
東京都知事 「基本的に建設反対に反対。7割もできているプロジェクトをやめる意味は、理解できない。」
立地予定の群馬県を除く周辺の1都4県の知事は、中止の際には支出済みの負担金約1500億円の返還を求めることで一致した。
治水の必要性は、河川の流域に住んでおらず、浸水被害を経験したことのない鳩山由紀夫には実感はないはず。
後始末をどうするのか、例えば、既にできている高さ約100mの巨大な複数の橋脚は、撤去するのか放置するのか具体策を示さなければならない。
投稿: 在日民主党 | 2009年9月19日 (土) 18時24分
在日民主党さん
コメントありがとうございます。
私は、ダム問題については、オープンに事実を公表して、国民の前で、議論をする必要があると思います。例えば、在日民主党さんが、触れられた点でも。
1)東京都や他の関東の都道府県の知事が言っている自分の都や県が出した金は、返してもらうについて。
もし、支出したのであれば、都税、県税であり、都民、県民に、どの予算で、どのような効果を期待して、幾ら出したか説明すべきと思います。さもなければ、過去の支出は、無駄な支出と判断されても、仕方ありません。
2)治水効果について
大雨の対策として、利根川と別の川を結ぶ地下水路が建設されたり、地下の大貯水槽が建設されたりしています。ダムより、そのような施設が効果があると判断しているのではないか?いずれにせよ、治水とは、ダム一つで、Manageできるものではなく、総合的な対策です。総合的な対策でダムを論じないと間違います。
3)既にできている高さ約100mの巨大な複数の橋脚については、民主党が頑張って中止をしても、これらの橋脚を使った道路は、完成させると私は思っています。既に、鉄道トンネルも完成していると思います。ダム本体は、未着工です。ダム工事の恐ろしい点は、水没地対策を最初にせねばならず、その名目はダム工事とは、別の名目で支出されているかも知れないことと思います。
いずれにせよ、国民が知らないうちに、巨額の支出をして、今更中止できないというのは、悲しいことです。公共工事は必要ですが、どの工事に、幾ら支出するのか、支出済みは幾らか、又その分担は等の会計報告が国民になされていないことは、ケシカランと思います。(私は、Webで探せませんでした。)
民主党に望むことは、情報開示がなされるシステムを作って欲しいことです。
投稿: ある経営コンサルタント | 2009年9月19日 (土) 20時55分