吉本興業TOBのエンターテーメント
お笑いの吉本興業のTOBをクオンタム・エンターテイメント株式会社(資本金150万円)が、9月11日に発表し、同時に吉本興業も賛同を発表していました。
1) TOBの実態
最大37,485,962株~最小26,240,174株を1,350円で購入するので、506億円~354億円のTOBの規模ですが、これを資本金150万円の会社により実施するので、いかにも吉本興業的であり、裏があるように思えます。
TOB成立の場合には、クオンタム・エンターテイメントの資本金は増資され、次の会社の出資が合意されています。
株式会社フジ・メディア・ホールディングス | 30億円 |
日本テレビ放送網株式会社 | 20億円 |
株式会社TBSテレビ | 20億円 |
株式会社テレビ朝日 | 20億円 |
大成土地株式会社 | 20億円 |
京楽産業株式会社 | 20億円 |
ソフトバンク株式会社 | 15億円 |
株式会社テレビ東京 | 10億円 |
株式会社電通 | 10億円 |
株式会社フェイス | 10億円 |
ヤフー株式会社 | 5億円 |
大成建設株式会社 | 5億円 |
岩井証券株式会社 | 5億円 |
合計 | 190億円 |
クオンタム・エンターテイメントは、日経記事にもあるように、ソニーの元最高顧問出井伸之氏が社長です。但し、TOBが成立しても吉本興業の現大﨑洋他の経営陣は引き続き、取締役として留任することが合意されています。
TOB資金が506億円~354億円故、最大316億円が不足しますが、これについては三井住友銀行、住友信託銀行及びみずほ銀行から極度貸付限度額合計300億円の融資を受ける予定となっています。
誰が主役であるのか、糸を引いているのか、分かりつらいTOBです。なお、TOBに対して賛同する吉本興業の発表はここにあり、クオンタム・エンターテイメントのTOB発表も添付されています。
2) TOB反対株主
最初は、時事通信の記事を掲げます。
時事ドットコム 10月19日 吉本興業TOB中止求め提訴=「少数株主の権利侵害」-大阪地裁
TOBに反対する株主がここにホームページを立ち上げられ、ホームからたどっていくと、その内容は実に面白いのです。
例えば、次の文章も。
吉本興業株式会社は、関西から笑いの文化を生み出した企業であり、上場後、これらの笑いの文化が好きな庶民達によって育ってきた企業である。その笑いの文化を愛し育ててきた多数の個人株主から、その株主の地位を、大手メジャーのテレビ会社やファンドに言わば「身売り」するのが、今回の「TOB」の姿である。 |
通常だとTOB価格の妥当性が争点となるのでしょうが、それのみならず、TOB後に、全部取得条件付種類株式とし、少数株主の持ち株数では、普通株式が交付されないように、2/3以上の多数決株主総会特別決議で少数株主を排除することが、権利の濫用であるとの点も、裁判所の見解が聞きたい。会社法で出てきた考え方であり、是非争って欲しいと私は思います。
被告らが共謀してなそうとしている「全部取得条項付種類株式」制度を用いて株主総会の特別決議により株主権を多数決によりはく奪することは、この制度が予定している目的に反し、それを濫用して違法に株主権の侵害をなす行為である。 |
300億円の買収ローンにしても、吉本興業の負債になるのであり、その問題点について述べているのも、面白いと思いました。(300億円は、クオンタム・エンターテイメントが借入れるのであり、吉本興業ではないが、吉本興業が100%子会社となれば、連結で考えれば、同じ。しかも、クオンタム・エンターテイメントの発表には、合併するとあるので、頭の体操をさせてくれます。)
金融機関等の買収ローン総額300億円についても、これがLBOとして買付者の100%子会社となり、合併した後、被告吉本が返済する額となる(手持ち資金が豊富なため短期間で返済できる)。被告吉本が300億円を支払って非上場になって資本構成を変え、新たな株主(メディア、キャリア等の投資家)との繋がりを持つためのコスト、資本支出として、合理性のある額なのか。 |
3) TOB期日
TOBの期間は、10月29日までです。どうなっていくのか吉本興業のエンターテーメントを見てみたいと思います。
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