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2010年2月28日 (日)

法人税率

2月19日に内部留保課税を書き、合理性のない税であると批判しましたが、次の古川元久副大臣の発言も、問題を含んでいると思います。

日経 2月27日 法人税下げ目指す 内閣府副大臣「成長促す税制に」

法人税について、考えてみます。

1) 現行の税率

法人税率は30%と頭に浮かびますが、企業の所得に対して課税されるのは、他に法人住民税(都道府県税と市町村民税)および法人事業税(都道府県税)があり、合算して考えるべきです。企業にすれば、日本政府に対して納付するのも、地方自治対政府に対して納付するのも同じです。次に、これらの税の概要を一覧表にしました。なお、平成20年10月1日以後開始する事業年度から地方法人特別税が創設され、地方法人特別税を適用した一覧表ですが、複雑怪奇な税体系と思います。(書ききれない部分も、多く、本当に複雑です。)

Tax20102a

法人税率を30%とし、外形標準課税適用外であった場合で、第1年度に100の税引前利益があった場合の、第5年度までの税額のシミュレーションをしてみました。第2年度以後も利益を計上することとしますが、第1年度の利益100に関する税のみを考えるため、この部分のみを抜き出した形です。赤字になっているのは、事業税(および地方法人特別税)が納付時に法人税の所得計算において損金扱いとなるからです。

Tax20102b

第6年度以降も続くのですが、金額影響は小さくなるので、5年間でシミュレーションを終わります。結果、合計した税率(実効税率)は、40.9%であり、うち法人税が27.4%であり、地方自治体に納付するのが13.5%です。

2) 現在の問題点

法人税率を下げると、法人県民市民税が法人税額を課税標準としていることから、同時に下がります。従い、法人税を25%と5%下げれば、全体で5.35%下がります。しかし、地方自治体は、反対するか、税収補填を要求すると思います。

外形標準課税は、都道府県から見れば、税収安定の為に、維持したい。しかし、企業からすれば、赤字、あるいは利益減少となった場合、税額が利益に比例しないから、税負担が厳しいのです。

日本政府は一つですが、都道府県は47あり、市町村は沢山あります。企業が、事業所、事務所、社宅等を多く持っていれば、関係する全ての地方自治体に申告書を提出し、納税します。地方税にも電子申告制度があり、多少は楽になったものの、大変です。自治体により税率が違ったりするし、人数で比例配分したりして、楽ではありません。

3) 税の簡素化・地方税の廃止

複雑化を進めるのではなく、税の簡素化を推進すべきです。例えば、地方税が必要ですか?直ちに、廃止することは困難でしょうが、廃止をし、政府が地方自治体に税を配分することにすればよいと思います。消費税は、消費税4%と地方消費税1%の合計5%です。しかし、この申告と納付は、税務署一本で済むのです。

1)に書いた複雑な税は、過去の遺産と思います。地方税を直ちに廃止できずとも、税務署が法人税に関するワンストップサービス窓口となるか、歳入庁を創設すれば、それだけでも楽になります。

4) 合理的な税制

医療保険に少し書きましたが、税の負担を増加しないと制度維持が困難と予想されます。基礎年金についても、税負担の増加が必要と思えます。

そして何より、800兆円の将来の国債返済に増税は避けられません。そんな状態で、安易に法人税を下げることは、悪魔のバラマキ政策と思います。

成長に即した税というなら、外形標準課税を直ちに中止すべきです。事業税資本割は、企業の人頭税であり、付加価値割は、利益に給与、支払利子、支払賃借料を加算した金額を課税標準とするので、利益を計上しても、従業員の給与アップに向かわせるインセンティブが全く働きません。内部留保や株主配当を増加させることが、悪いことではありませんが、その場合には、しかるべき税を納付し、従業員に対し相応の給与・ボーナスを支払うという方向に向かわせる税が、合理的な、成長戦略にふさわしい税だと考えます。

利益に比例する法人税が望ましく、その上で、政策的に発展を支援する地域や部門についての優遇税率や税額控除を実施する租税特別措置で適当であると私は思います。措置法42条の4の試験研究を行つた場合の法人税額の特別控除なんてのも、企業の成長を支援するのに役立っていると感じます。

日本から優秀な人材が消えていった時こそ、恐るべき事態である。企業は優秀な人材を必要とします。日本の税が少しくらい高くても、それに見合う優秀な人材を日本で雇用できるなら、法人税の高い分は、企業にとっては、コスト以上の収益が得られればよいので、歓迎します。そんな日本を目指していくべきと思います。

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2010年2月25日 (木)

地方自治体の無駄使い

民主党は、地方主権なることばを、よく使っています。しかし、単純にそれが、よいとは言えず、むしろ無駄使いは、地方自治体の方が、多い気もします。地方自治体の会計が適正に報告され、監査制度も充実すべきと考えます。市民のより身近にある存在であり、会計記録や支払の対象となった物品・工事・サービスならびに、業者選定の理由を、市民自らが調査できるようにすることが可能とすることを検討すべきと考えます。

無駄使いと思った事件を書いてみます。

1) 東京オリンピック招致活動

日経 2月25日 東京五輪招致、赤字6.9億円 電通への未払い金、「借金」にが報道しているように、特定非営利活動法人東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が招致活動報告書を発表し、ここからDownloadできます。

収支は、概要版13ペ-ジ、全体版426ペ-ジ(詳細は、全体版の第9章 招致推進活動経費の内訳)にありますが、収入は東京都一般財源75.0億円、東京都補助金25.0億円、寄付金35.9億円、協賛金5.7億円と電通からの借入金6.9億円で合計148.5億円で、支出も同額の148.5億円となっています。会計が、招致本部と招致委員会に分割されていますが、(分割されている理由の説明を私は発見できませんでした。)支出は、立候補ファイルの策定等が21.1億円、国際招致活動44.6億円、招致気運の盛り上げ・広報等83.8億円となっています。

これらのお金を誰に支払ったかですが、次の昨年10月19日の共同47ニュースをご覧下さい。

共同47ニュース 2009年10月19日 東京五輪招致、随意契約が突出 都側が電通に53億円発注

次のように書いてあります。オリンピック招致は、税金ではなく全て寄付金あるいはボランティア活動が主体で実施すべきと考えます。そうすれば、企業・個人が無償あるいは低額の報酬で、立候補ファイルの策定に関する作業をしたり、国際招致活動もできたし、招致気運の盛り上げなんて、ボランティアが絶好と思います。電通に53億円特命で発注なんてことはなかったと思います。

2016年夏季五輪の開催を目指した東京都と招致委員会(会長、石原慎太郎知事)が、150億円の招致活動費の3分の1を超える約53億円について電通と委託契約を結び、その100%近くが入札なしの随意契約だったことが19日、都議会決算特別委員会で明らかになった。

どうですか?私は、東京都のすごい無駄使いであったと思います。もし、このお金を、保育園等に使っていたなら・・・・。なお、共同47ニュースの情報源は、2009年10月19日の東京都各会計決算特別委員会第1分科会ですが、東京都のWebでは、まだ議事録が公開されていません。議事録の公開に何故こんなに時間を要するのかと思うと同時に、支出先の記載がない収支報告書では、役に立たないと思いました。

活動主体をNPO法人とし、そこにはおざなりの会計報告をさせ、自治体の税金はNPO法人に支出して、会計を誤魔かす手段とされたら、たまったものではない。

2) 神戸市208億円の無駄使い

次の朝日の記事です。

朝日 2月24日 幻の巨大地下ホール計画、神戸市の含み損208億円

神戸市がバブル期に六甲山の地下に巨大な音楽ホールの建設を計画し、阪神大震災後の財政難で凍結した後、市土地開発公社が先行取得していた土地を市議会に報告せずに総額220億円で購入していたことが明らかになった。「塩漬け土地」の評価額は12億円に下落。208億円余りの税金がムダになった。

市の○○公社なんて、議会の承認もなく、金銭の支出ができたりして、しかも一般の企業会計や監査の適用外だから、固定資産の減損会計も適用されない。恐ろしい世界です。

しかし、神戸市職員の関係者は知っていたはずです。それを、市民を裏切る形で、内部で隠し通していたと思います。自治体では、ガバナンスが働かない一つのサンプルでしょうか?

3) 八ッ場ダムは談合工事

次の朝日の記事です。

朝日(群馬) 2月25日 八ツ場ダム 「談合の疑い」国交省調査へ

八ツ場ダム(長野原町)に関連した国と県の発注工事で、過去8年に実施された入札の7割が95%以上の高値落札だったことが分かり、前原誠司国土交通相は24日、「極めて異常で、客観的にみれば談合が行われていたと疑われる状況だと思う」と述べ、今後、実態を調査する方針を明らかにした。

国と県と書いてあるので、地方自治体のみならず国交省も含まれますが、実態調査の報告書が待たれます。何故無駄なダムが建設されるのかの一つの理由が分かります。同時に、ダムの必要性について、根拠ある数字を示しての理性ある議論がなされない理由もここにある気がします。

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2010年2月22日 (月)

裁判の公開

2月19日の「あらたにす」に、田中早苗さんが、「足利事件」再審のテレビ中継をを書いておられ、思いました。日本の裁判は公開されていなかったと。傍聴は、できるが、何故テレビ中継はダメなのか?それだけではない。新聞でもTVでも、法廷における様子は、静止画でもなく、わざわざ画家が描いた絵を使っている。本当にバカな国のバカ法廷だなと思います。

今や、国会も本会議や委員会がインターネット中継や中継録画で見ることができ、ついこの前は、事業仕分けなるものが、インターネット中継で見ることができました。憲法82条は、次のように書いてあります。

憲法第82条
① 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
② 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

私は、憲法82条を、裁判の公開を求めており、特別な場合を除き、インターネット中継をすべきと解釈します。

何故、TV中継すら許していないかというと、裁判所が自分で決めた、規則を盾に頑張り、憲法解釈も裁判所だから、文句あるかという高慢ちきに思えます。例えば、次の刑事訴訟規則215条です。

刑事訴訟規則第215条 公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

そして、さすがマスゴミであります。これに反対するどころか、法廷内カメラ取材の標準的な運用基準というのをマスゴミ自信が作り、「撮影は、裁判官の入廷開始時からとし、裁判官全員の着席後開廷宣告前の間の二分以内とする。」とか書いてあり、バカもいい所です。

健全な日本を作る気がない人達が、大勢いるマスゴミの世界。法と裁判は、社会の貴重なインフラであり、人々がそれを育て、発展させることにより、よりよい社会をつくりあげていくことができるのです。

<追記> 足利事件は、冤罪に関する裁判です。菅谷さんは、冤罪で無期懲役の判決が下された。批判されるべきは検察のみではない。最高裁も無期懲役の判断を下した。憲法82条2項の国民の権利が問題となつてゐる事件に該当すると、私は考えます。裁判で、真実が全て明らかになるわけではないが、憲法の「公開しなければならない。」を充分考慮するなら、裁判のTV中継またはインターネット中継をすべきだと思います。

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2010年2月20日 (土)

医療保険3:医療、医療費、医療保険を考える(その9)

2月17日に高齢化に伴う、医療保険の収支のシミュレーションをすると予告しました。その結果です。

1) 前提

前提を長々と書くと読むのに嫌気がさしてしまうので、大枠について述べると、

A) 人口は、1月26日の医療費の将来予測-医療、医療費、医療保険を考える(その4)で紹介した国立社会保障・人口問題研究所の人口予測(出生中位(死亡中位)推計)を使う。

B) 年齢別一人当たり医療費は、現在と同額とする。(インフレ・デフレなし)

C) 現在の医療保険制度が存続するとして、保険料の値上がり等を見る。

2) 人口

75歳以上を後期高齢者、65歳から74歳を前期高齢者として、人口分布を書くと次のようになりました。既に、日本は人口減少のフェーズに入っています。

20102medinsurances1

後期高齢者が増加し、65歳未満の若い層が減少します。結果、働く人が、老人を支える負担が大きくなります。老人も働いて、自らを支える社会に転換していく必要性を感じますが、一方で、老人に働く場を提供する必要があります。しかし、若者が、フリーターや派遣、低い就職内定率なんて暗い世の中を見ると、考えていることと現実のギャップがありすぎるようです。

3) 後期高齢者の医療費

後期高齢者は、2)のグラフのように、急激に増加していきますが、後期高齢者の医療費総額と、負担割合を、現在と同様の、患者自己(高額医療費を除き)負担10%、医療保険負担90%としました。そして、この医療保険を、後期高齢者医療保険料10%、国庫40%、県と市が各5%、他の医療保険が40%支援とした場合のグラフが次です。

20102medinsurances2

急激な増加中であり、しかも巨額です。2月16日の医療保険1に書いたように、後期高齢者の保険給付が一人当たり年間717,544円であり、医療費では800,000円ほどになるからです。

4) 医療保険の給付費予想

医療保険の給付費予想を描いたのが、次のグラフです。2025年頃になると、後期高齢者が保険給付の半分以上を使います。

20102medinsurances3

5) 保険料と国庫負担・県市町村負担

現在の負担している割合を変えないとして、それぞれの負担額を描いたのが次のグラフです。

20102medinsurances4

上のグラフの保険料負担を一人当たりの保険料として描いたのが次のグラフです。

20102medinsurances5

保険料の値上がりで嫌になりそうです。

6) 国庫負担の増額案

保険料を今以上に上げられないとすれば、国庫負担の増額しかないはずです。増税になるわけで、幾ら増税が必要かを算出しました。

20102medinsurances6

保険料を据え置いても、人口の減少があるので、保険料収入が減少し、それをカバーするための国庫補助金も増加します。2025年で、今より5兆円の税金追加投入が必要です。現在の消費税率4%で、10兆円の税収なので、消費税率で2%です。

基礎年金対策もあるので、消費税率が15%や20%となる世の中が近いように思います。こんなことを言うと嫌がられるのでしょうね。しかし、検討をしないと、制度崩壊が起こり、もっと悲惨なことになると思います。高所得者の所得税率もあげないと、保険料では限界があると思います。

7) 小さな政府案

危険とは思いますが、国庫負担・自治体負担を現在の水準に据え置いて、保険給付の増額を全て保険料でまかなうとした場合の計算をしました。

20102medinsurances7

破線は、5)のグラフと同じで、現在の負担割合を継続した場合です。小さな政府案でも、現在の国庫負担は据え置いたのであり、保険の種類による差は継続しています。何が、公平であるかは、様々な意見があると思います。

重要なことは、「負担する人間が馬鹿を見る。」とか「不公平に感じ、払いたくないと思う。」と言ったような状態を作らないことと思います。その意味で、増税を行って、国民が安心して、楽しく暮らしていける国を作るべきと私は思います。

次回は、色々なことを述べてみたいと思います。

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2010年2月19日 (金)

内部留保課税

ブログその他でも、話題になっていますが、不思議な税を考え出すものだと思っていました。

読売 2月19日 首相、内部留保課税に慎重…経済界に配慮か

内部留保とは、企業が稼ぎ出した利益を、株主に配当せずに、企業内部に止めておく、即ち留保しておく部分です。利益とは、企業が資本を使って、それを元に借入等も行い、設備投資をし、人も雇い、企業活動を行って得た結果として増加した純資産です。

純資産の増加額=利益であり、基本的には、益金から損金を控除した企業の課税所得額から税を払った後の金額と同じで、税引後利益です。税を払った後の、利益なら、株主に配当しようが、株主の承認を得て企業内部に留保しようが、企業と株主の企業自治の問題であり、この関係に政府や債権者が立ち入ることは、行き過ぎであると考えます。

企業が、弱者を押さえつけ、従業員に正当な給与・ボーナスを支払わずに、利益を計上し、巨額の内部留保を蓄積しているケースは、あると思います。しかし、それは留保金課税で解決するのではなく、公正な取引と必要な労働者保護を推進し、企業の脱税を許さず、法人税率が低すぎるなら、現行の30%から上げることです。

政府は、中小法人の税率を18%(現行22%)に引き下平成21年度税制改正案を出しています。しかし、これは行き過ぎと思います。多くの中小企業は、法人税が払えるように利益を計上できる状態、従業員にもう少し給与を払える状態になることを望んでいます。税率を18%への変更は、現在利益を出している法人を助けるだけです。

ところで、鳩山首相が共産党志位委員長と会談して税について話をしたというニュースは次の日経では、内部留保課税は3番目になっています。

日経 2月17日 所得税の最高税率引き上げ検討、首相 証券優遇税制見直しも

(1)所得税の最高税率引き上げと(2)証券優遇税制の見直しについては、よく分かるのです。

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ハーフパイプの笑顔

オリンピック女子ハーフパイプは、オーストラリアのトラさんが、金メダルを獲得しました。

The Sydeney Morning Herald Feb 19 Torah Bright takes home gold in Vancouver

TVで中継を少し見ました。競技を終わった後の選手の笑顔が、素晴らしいと思いました。ハイライトでは、写らないと思いますが、選手が滑り終わって、しかも最終の着地に失敗したりして、予選通過も望めない。そんなときに、自分の点数の発表を待っている。どきどきするでしょうね。

多くの選手は、そんなとき実に明るい笑顔で待っていました。カメラに向かって、手を振ったり、ほほえんでポーズしたり。

あんな笑顔でほほえまれたら、楽しくなりました。「夢の多い明日がある。」と、そんな気持ちにさせてくれました。ありがとう。皆もがんばってね!

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2010年2月17日 (水)

医療保険2:医療、医療費、医療保険を考える(その8)

医療保険(健康保険)の続きです。

1) 保険料と保険給付金のバランス

2008年度の医療費は34.1兆円であったのですが、このうち生活保護費等の公費で支払われたのが、1.6兆円で、残額の32.5兆円が医療保険給付と患者負担金です。医療保険の保険料と給付費の関係を図で示したのが、次です。

20102medinsurance4

上の横棒が保険料で、下の横棒が医療費の支払いです。同じ色にしてあり、下の給付費より、上の保険料が大きいのは協会けんぽ、健保組合と共済組合です。一方、保険料に対して給付費の方が大きいのが、国民健康保険(国保)と後期高齢者医療です。(船員保険については、保険料総額が366億円であり、グラフでは判別できなくなりました。)

2) 保険料、国庫・地方自治体補助金、保険者間の拠出・分担

保険料、国庫・地方自治体補助金、保険者間の拠出・分担を表にしてみました。

20102medinsurance5

表の上側が収入で、下側が支出です。管理費等を含め28.4兆円の支出に対して、収入が27.9兆円です。収入のうち保険料が17.6兆円で、10.3兆円が国庫や地方自治体からの補助金です。下側の支出で、国保と後期高齢者の部分でマイナスの赤字になっている箇所がありますが、支出ではなく、他の医療保険から支援を受けている金額です。

これをグラフにしたのが、次です。

20102medinsurance6

各保険の、左が収入で、右が支出です。健保組合、共済組合は左が全て赤なので、収入は全て保険料です。協会けんぽには、少し国庫負担が入っています。右の支出では、グリーンの部分が保険給付費で、ゼロから上の部分です。ゼロから下に伸びているのは、収入の中から国保と後期高齢者医療に支援金・分担金として支払っている金額です。

協会けんぽ、健保組合、共済組合は、国保と後期高齢者医療制度を支えるために、ゼロから下に伸びている部分があります。(省略しましたが、船員保険も同様です。)国保は、ゼロから下に高齢者支援金が伸びてはいるものの、それ以上の金額の国庫負担を得ています。後期高齢者医療は、他の国庫や他の保険から援助を受けるだけです。

3) 国保

国民健康保険は、補助金や他の保険からの援助を受けて、恵まれていると考えてしまいますが、問題含みです。次のグラフは、国保の保険料滞納世帯の割合を示しています。

20102medinsurance7

国保の保険料の滞納が何故それほど多いのかは、低所得者層が国保の被保険者に多いことが関係していると思います。次のグラフは、国保の被保険者世帯の所得分布です。200万円以下の所得世帯が74%です。健保組合の被保険者平均595万円や協会けんぽの387万円より、低いのです。なお、この分布は、平成2007年度であり、後期高齢者も含んだ分布図であることから、2008年度は少し変化すると思います。

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日本の医療保険には、医療保険の側面以外に、福祉制度の側面を持っており、それが保険料や補助金並びに保険制度間の支援金・分担金の支払にもなっています。福祉制度の側面を持っていても、よいと考えます。しかし、支援金・分担金が大きくなりすぎると、保険制度間の不満となります。例えば、ここに平成21年度健康保険組合全国大会の決議がありますが、健保組合は税負担の拡大を求めています。

現在、格差拡大、特に貧困層の拡大が言われていますが、非正規雇用で健康保険は国保に加入せざるを得ない人も増加していると思います。企業にすれば、正規雇用の場合は、健康保険料と年金の掛け金の半分を企業が負担せざるを得ません。非正規雇用や派遣の形をとって、健康保険料や年金掛け金の負担を逃れようとすれば、医療保険全体の財政は更に悪化します。制度自身が、そのような格差拡大・貧困拡大にインセンティブをつけてはいけないと考えます。制度は、万人に公平であり、仕組み自体の中に、社会正義に向かうように設計されていなければならないと考えます。

ところで、悪化が進みます。何故なら、高齢化構造が更に進むからです。鳩山総理は、子供手当ばかり言っておられるようですが、医療保険にも手を付けないと日本の医療保険制度が崩壊する恐れさえあると思います。次回は、高齢化に伴う、医療保険の収支をシミュレーションします。

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2010年2月16日 (火)

医療保険1:医療、医療費、医療保険を考える(その7)

今回は、医療保険(健康保険)について、考えてみたいと思います。

1) 国民皆保険

日本の医療保険は、国民健康保険法が1958年に全面改正され、国民皆保険制度となり、1961年4月から施行されました。国民健康保険法の第5条及び第6条は、次の定めとなっています。

(被保険者)
第5条
 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。

(適用除外)
第6条
 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、市町村が行う国民健康保険の被保険者としない。

「区域内に住所を有する者」なので、国籍を問わず、市町村に登録している人全員が国民皆保険の対象であり、保険料納付の義務を有すると共に、医療保険を利用して、医療を受けることができます。

そして、日本では全ての医療保険について、保険給付金の支払いが同じであり、対象となる治療はどの保険でも同じであるばかりではなく、治療費や薬代も、同じです。保険給付支払の条件を、政府が決定する仕組みを採用しています。市場競争の民間医療保険とする場合は、様々な保険があり得るので、同じ病気であっても、加入している保険により、治療方法が異なってくることもあります。高い保険料の医療保険に入っていれば、高額の治療を受けられたりします。

国内の住民は、何らかの公的医療保険に加入し、治療については、医療保険を使って、必要と考えられる医療を受けることができる制度です。保険加入は義務ですが、治療に関して公的保険の治療方法以外の選択をすることは、個人の自由に属することです。しかし、その場合、公的な医療保険の保険金の支払を受けられず、全額自己負担となります。

2) 保険料と給付費

国民健康保険法第6条の適用除外の各号には、(1) 健康保険法の健保組合と協会けんぽ、(2) 船員保険法の船員保険、(3) 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法と私立学校教職員共済法の共済制度、(4) 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による被保険者、(5) 生活保護世帯および(6) その他特別に厚生労働省令で定めるものが書いてあります。従い、これらの制度が、日本の医療保険制度の全てであり、保険の保険料と保険給付費について記載したのが次の表です。

後期高齢者医療制度が2008年4月から始まりました。従い、2007年度以前のデータではなく、2008年度の表としましたが、2008年度は確定した決算が発表されておらず、厚生労働省の各種資料から、作成しました。推定した部分もあります。

20102medinsurance1

一人当たり、給付費は多少のばらつきはあるものの、後期高齢者医療と市町村国保を除いて、それほど大きな差はありません。理由は、一人当たり医療費が1月26日の記事のグラフのように年齢による差が大きいからです。後期高齢者の一人当たり給付費は717,544円であり、リタイアした人も含まれる市町村国保が228,249円でした。

3) 健保組合と協会けんぽ

国民健康保険と後期高齢者医療を除いては、雇用主(共済の場合は、政府等)が存在するので、保険料は50%分が雇用主負担となり、個人負担は一人当たり保険料と書いた金額の半分です。

健保組合と協会けんぽの保険料を比較したのが次の表です。企業規模が大きくない場合(企業単独の場合は、700人以上が必要)は、健保組合を結成できず、またメリットが生まれず、旧政府管掌健保である協会けんぽの医療保険になります。傾向としては、企業規模が小さく、給料・賃金も健保組合を結成できている大企業と比べると低い。このため、保険料をパーセントとして捕らえると高くなります。その状態を示したのが、次の表であり、一人当たりの平均標準報酬額は協会けんぽの被保険者は387万円で、健保組合の平均595万円の65%でした。

20102medinsurance2

なお、2)の表は扶養家族・被扶養者を含んだ保険の加入者で一人当たりの数字も計算しましたが、協会けんぽと健保組合の比較表は、扶養家族・被扶養者を含まない働いている人数・被保険者数で計算しています。

保険料収入は、保険給付および管理運営費に加え後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、退職者給付拠出金にも支出され、協会けんぽは保険料率が高くても、一人当たり保険収入が低くなり、健康保険法第153条の国庫補助金が拠出されています。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の財務諸表はこのページからDownload可能であり、第1期(2008年10月1日から2009年3月31日までの6月)は、次のようになっています。(介護保険も含んでいます。)

20102medinsurance3

協会けんぽの収支も、収入は保険料と国庫補助金で未だ単純ですが、支出には保険給付以外に支援金や拠出金がならんでおり、複雑です。これを分析しないと、日本の医療保険の検討をしたことにならず、次回に分析いたします。

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2010年2月10日 (水)

小糸工業の不正

ホンダはエアバッグ不具合に関するリコール(日経 2月10日ニュース)を発表しましたが、すさまじいのは、小糸工業です。

日経 2月8日 小糸工業、航空機座席の記録改ざんなど 国交省が業務改善勧告

小糸工業の親会社(50%株式保有)は、小糸製作所であり、小糸製作所の20%の株式を保有しているのは、トヨタ自動車です。またしても、トヨタかと思いました。

悪質だと思ったのは、次の国土交通省の発表を読んだ時です。

国土交通省 報道発表 平成22年2月8日 小糸工業(株)に対する業務改善勧告等について

・ 適正な手続きによらない座席の設計変更
・ 座席の製造過程における検査記録等の改ざん・ねつ造
・ 仕様承認を受けるための試験における不正及び試験結果の改ざん・ねつ造

検査記録や試験結果の改ざん・ねつ造なんて、メーカーとして絶対あってはならないことと考えます。

法で定められた検査の記録の改ざん・ねつ造をすることは、コンプラ以下の問題だと思います。

発見されたのは、国土交通省の発表に「昨年6月及び7月に相次いで小糸工業の不正に関する情報提供があったことを受けて」とあることから、内部告発があったのだと思います。

小糸工業の発表は、ここにあるのですが、なかなか接続が困難です。「受注量が急激に増加した中、開発遅れによる納期の逼迫があったこと、またコンプライアンス意識の欠如があったことが考えられますが、詳しくは更に調査を行い解明してまいります。」と書いてありました。随分悠長だなと思いました。

トヨタ関連企業だからとの偏見を持って見てしまうからでしょうか?内部告発がなければ、ずっと隠し通したのだと思います。

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2010年2月 8日 (月)

トヨタはどうなる

トヨタはどうなるのかと思う最近です。プリウスのリコールについては、Web上で発表は見あたりませんが、リコールを実施するようですね。

NY Times February 7 Toyota Is Expected to Add 2010 Prius to Recalls

日経 2月7日 トヨタ、「SAI」とレクサス「HS250h」もリコールへ

日経の記事には、次のようにあり、顧客無視もここまで来れば、倒産に至るのではと思ってしましいます。

車両そのものに欠陥はないとの見解を打ち出していたが、・・・・顧客の不安解消を優先してリコールに踏み切る。

トヨタは、嘗てカンバン方式や改善で有名になり、日本の製造業のトップであったのですが、今やコントロールの切れた会社でしかないのかと思います。

トヨタに関しては、悪いニュースが続いていますが、次の日経Tech-Onの記事には、トヨタが採用していた同じ米国CTS社製アクセルペダルをホンダ、日産自動車、三菱自動車も採用しているが、ホンダ、日産自動車、三菱自動車には問題なく、トヨタのみ問題ありと書いてあります。

トヨタがリコールしたCTS社のアクセルペダル、ホンダ含めて3社が採用するも不具合なしと表明

CSRと言う言葉がありますが、企業がボランティア活動をすることではありません。企業は、その企業活動を通じて、社会に貢献することこそ最も重要です。最近のトヨタを見ていると、市場を無視して唯我独尊・裸の王様になっているような気がします。市場とは、ユーザーであり、部品メーカー、仕入れ先、社員その他です。自社の設計能力すら分かっていなかったのでしょうか?

転落は早いですね。どうなるのか、挽回劇も見たいので、辛口に書いてみました。

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2010年2月 7日 (日)

土建政治を支持する朝日新聞

私は、土木工事や公共工事を悪だとは、考えていません。社会の役に立つ土木工事や公共工事は存在します。データに基づく設計を行い、正当な評価を実施して、実行すべきであると考えます。朝日新聞の次の社説を読むと、そのような評価もなく、感覚的に賛否を論じていると考えます。

朝日社説 老朽ダム撤去―「荒瀬」をモデルにしたい

正しくない論点を、指摘します。

1) 役に立っている

「荒瀬ダムは1955年、球磨川中流に発電専用として完成した。当時は県内の総需要量の16%を供給したが、その後の発電方式の多様化で現在は1%に満たない。」

とありますが、発電量が減少しているのではなく、電力需要が増加したのです。1955年度の日本の電力発電量(発電端)は、日本統計年鑑によれば65,241GWhでした。資源エネルギー庁の電力調査統計では、この数字が2008年度は1,146,269GWhです。17.5倍に需要が増加したことを置き去りにして、評価することは、間違いです。16%が1%になるのは、当然です。

今も、荒瀬ダム・藤本発電所は、年間74,667,000kWhの発電をしていると理解します。現在の需要規模でも25,000世帯の消費電力量に匹敵します。太陽光発電であれば、20,000戸分です。

荒瀬ダム撤去は安易すぎないかで書きましたが、水力発電について、正しい評価が必要です。

全体に占める割合が小さくなっても、重要な役割を果たしている場合があります。全体に占める割合は単なる一要素であり、それを重要事項として扱って個別の評価をすることには、反対します。

2) ダムや湖のメンテナンス

「ダム湖には汚泥がたまり、悪臭や赤潮などが目立ってきた」とは、何を物語っているのでしょうか?水力発電は、自然との調和の中で、成立します。荒瀬ダムは、土砂の堆積が予定されていたダムです。土砂の堆積により、水流が停滞し、汚泥・悪臭・赤潮といった問題が発生したのだろうと想像します。

ダムやダム湖も、メンテナンスが必要です。水の流れに、問題が生じれば、浚渫したり、上流からの流出物を取り除いたり、様々なメンテナンスが必要です。メンテナンスが不十分でなかったか、検証する必要があります。例えば、電気収入は県庁の収入予算となり、メンテナンス費用は過去の実績を基に、少額しか割り当てられず、メンテナンスは常に先送りになっていたことはなかっただろうかと思います。92億円あれば、相当な自然保護が可能だと思います。

3) 魚の遡上

「アユなどの遡上(そじょう)も妨げている」と書いてあります。しかし、荒瀬ダムには、1999年に魚が遡上するための魚道が設置されています。魚道があるから大丈夫とは言いません。魚道を評価することが必要であると言いたいのです。

魚道が期待通りに機能を発揮するかどうかは、運用を通して評価します。必要な改良・改善をすべきです。荒瀬ダムがあることにより川の水面は、ダムの上流が約15mかさ上げとなっています。魚道を通って、アユなどの遡上があるのか、十分であるのか、その情報の方が重要です。他の、ダムの対策にも適用可能であるし、我々が自然と共存するために必要な情報です。

5)に瀬戸石ダムを書きましたが、瀬戸石ダムにも魚道があります。そして、国土交通省九州整備局のWebに球磨川の魚道の説明があり、「これらの魚道に併設された観察施設では魚道をのぼる生き物たちを実際に見ることができる。(入場無料)」と書いてあります。朝日の社説と差を感じます。

4) 水利権

「来月末で失効する水利権の再取得に必要な地元の同意は、漁協の反対などで得られる見通しがたたなくなった」とあります。水利権とは、何でしょう?河川法第2条2項において「河川の流水は、私権の目的となることができない。」と定められており、私もこれに賛成です。

河川やその流水は、流域に住む全ての人々が公平に恩恵を受けるべきものです。地元の漁協の為に存在するのでないし、地元の漁協が不利益を受けるべきものでもありません。利害が正当に調整される必要があります。利害が調整できない。従い、ダムは撤去というのが、許されるのでしょうか?そのために、92億円が支出され、CO2の発生は増加し、電気料金が高くなる。

不幸な政治により、巨大な無駄が発生する。正当な評価をしていなかったからでしょうが、正当な評価をすることは、政府・地方自治体の大きな役割です。

5) 瀬戸石ダム

荒瀬ダムから約9km上流に瀬戸石ダムがあります。同じ、球磨川で、ダムの高さもほとんど同じで川幅が狭いぶんだけ少し、ダムの長さが短く139.35mです。運転開始は1958年なので、荒瀬ダムの3年後と、時期もそう違いません。事業者は、熊本県ではなく、電源開発です。話題になっていないので、瀬戸石ダムは、撤去なんてことにはならないと思います。

荒瀬ダムと瀬戸石ダムの違いは何でしょうか?事業者が、異なるからメンテナンスのやり方が違ったのでしょうか?

ダムには限らないが、訳も分からずに、これが正義だとすることに、大きな危険性を感じます。

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2010年2月 5日 (金)

荒瀬ダム撤去は安易すぎないか

荒瀬ダム撤去のニュースがありました。昨年8月25日に大蘇ダムの漏水問題、8月25日に八ッ場ダムを考える、9月3日に川辺川ダムを書いたこともあり、荒瀬ダムについて今回書いてみます。先ずは、朝日の報道です。

朝日 2月3日 熊本県知事、荒瀬ダム撤去を発表 12年度から工事

熊本県知事の発言は次の所にあります。

荒瀬ダムの今後の対応について(H22.2.3:熊本県知事発言)

荒瀬ダムは、効果が期待できない八ッ場ダムとは異なり、発電という役割を果たしているダムであると言うこともできます。安易な撤去決定と思える点があることから、書いてみます。

1) 荒瀬ダムの場所

Yahoo地図を掲げます。

地図の下側に荒瀬ダムがあり、川の流れは下(南)から上(北)です。丁度、荒瀬ダムの下流で川が蛇行しており、鉄道(JR肥薩線)の藤本トンネルがありますが、このトンネルの右にある青い点線が荒瀬ダムの水を熊本県営藤本発電所に水を流す導水トンネルです。地図で藤本と書いた場所に藤本発電所があります。ダムから藤本発電所に水をショートカットして流している形ですが、本当は、ショートカットできる位置に建設すると建設費も安く、メンテナンスも容易なので、そのような地点をダムと発電所の建設地点として選んだ結果です。

八ッ場ダムや同じ球磨川の上流に位置する川辺川ダムとの比較を掲げておきます。

荒瀬ダム 八ッ場ダム 川辺川ダム
堤高 25.0m 116.0m 107.5m
堤頂長 210.8m 190.8m 283m
流域面積 1,721.1km2 707.9km2 470km2
湛水面積 120ha 304ha 391ha
総貯水容量 10,137千m3 107,500千m3 133,000千m3
有効貯水容量 2,400千m3 90,000千m3 106,000千m3
水没戸数 なし 340戸 403戸
水没農地面積 なし 48ha 66ha
事業費

29億円
(ダム本体4億円)

4,600億円 2,650億円

ダムは、川幅一杯に建設するので、荒瀬ダムも堤頂長は210.8mあるが、高さは25mの小さなダムです。この熊本県企業局のWebにある写真のようなダムであり、大型の堰といった感じです。

2) 荒瀬ダムの役割

荒瀬ダムは、藤本発電所の為に、昭和29年(1954年)に作られました。年間発電量として水量により変化しますが、期待量は74,667,000kWhです。CO2を発生しない、環境に優しい、クリーンエネルギーです。もし、一般家庭設置の太陽光と同じ46円/kWhで電力販売ができれば、年間34億円の収入が得られます。九州電力のCO2排出係数はクレジット適用前が374g/kWh、クレジット適用後で348g/kWhです。従い、クレジット適用前を使用すると28,000トンのCO2削減となります。

但し、74,667,000kWhを石炭火力でまかなったとすると、61,000トンのCO2に相当します。九州電力は、2008年度のCO2排出量を3,210万トンと発表しており、藤本発電所がなくなれば、CO2発生量が増加します。

もし、一般家庭設置の太陽光発電設備を設置する場合は、74,667,000kWh発電するためには、3.5kWの設備を20,000戸分設置することになり、設備投資金額としては360億円という巨額投資になります。しかも、製造、建設、運転のいずれにおいても、水力の方が、CO2発生量は小さく環境に有利で、コストも低い。風力の場合は、高さ100mの2,000kW風力を設置するとして、15-20基設置する必要があります。場所だけでも、大変です。環境や電力系統の周波数への影響もあり得ます。

3) 荒瀬ダムの撤去理由

冒頭に知事の発言をあげましたが、「深刻な財政危機にある本県の現状においては、荒瀬ダムを存続させることが最適の選択であると判断いたしました。」とあり、74,667,000kWhの発電は、重油を燃料として発電した場合には、約15,000klを要するのであり、7億円程度でになるでしょうか、莫大な金額で、その通りです。しかし、続いて「長年にわたり、荒瀬ダムの影響で苦しんでこられた地元坂本町の方々のことです。ダム存廃について再考したこの期間に、荒瀬ダムの電気事業は、地元の方々の痛みの上に成り立っていたことを、私も、また多くの県民も知るところとなりました。」が具体性に欠けています。

地元への配慮をしてこなかった。その結果、対立を生んだと思えます。1)の表に書きましたが、総貯水量10,137千m3に対して有効貯水量2,400千m3で設計されたダムであり、ほとんどが土砂で堆積する予定で建設されたのです。建設した1954年頃は、それでよかったのでしょうが、時がたつにつれて、適切な配慮が必要だったはずです。

環境に優しい設備も、メンテナンスをおろそかにすれば、悪影響も生まれます。但し、ダムを撤去しても元には戻りません。悪くなる可能性もあります。

川がそのままダム湖になっている構造なので、その面でも、よいダムです。発電に貢献しており、役に立たない八ッ場ダムとは全く違います。でも、やはり八ッ場ダムと同じでしょうか?地元は、札束と土建工事が欲しいだけ。八ッ場ダムのTVニュースは、そればかりです。下流の都県知事も札束目指して圧力を掛けているようです。荒瀬ダムも、朝日のニュースには、撤去費用総額92億円と書いてあり、これを目指して土建屋さんが指をくわえているのが、浮かんできます。もしかしたら、それ以上の金額になる金山でしょうか?

そう言えば、荒瀬ダムの撤去が出たのは、川辺川ダムの反対運動を押さえるために、荒瀬ダムを撤去することで黙らせようと画策したと聞いたことがあります。

土建業者の利権で、無駄なダムを造り、有効なダムを撤去し、人々は不幸になる。そんな構造から、抜け出すためには、数字を使った正確な議論をすべきです。感情論で議論をして、人々を不幸にし、貧しくすることは避けるべきと考えます。

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2010年2月 3日 (水)

プリウスの欠陥

プリウスにも欠陥があるのでしょうか?

日経 2月3日 プリウスのブレーキ不具合、米で苦情100件 国内でも14件

これほど、大々的に報道されるとトヨタも沈黙はできないと思いますが、私がトヨタのWebを見た限りでは未だ会社として発表はなく、MSN産経 2月3日 トヨタ、プリウス苦情に「現時点でのコメント控える」という報道もあります。2月3日 時事ドットコム 「プリウス」ブレーキに苦情=日米で112件-国交省、トヨタに調査指示によれば、事故は昨年7月に千葉県松戸市の国道で起こったとあります。

1) 欠陥の内容

欠陥の可能性があるとすれば、電子制御関係だと思います。ハイブリッドは、ブレーキのエネルギーを電気として取りだし、電池に充電するようにしています。そのため、良好な燃料消費になっています。車のブレーキは、従来からのエンジンブレーキと機械的にブレーキパッドを押しつける方法が、確立された方法です。しかし、これでは、ブレーキのエネルギーを熱に変換するだけであり、電気に変換し充電して、再び動力に利用できるなら、併用でもエコ性能は高まります。

しかし、口や文章で述べるのと、実際にメカや電子・電気でやるのとは、わけが違い、運転者が意識せずとも、安全性を損なうことなく、最高のエコになるように電子制御が働くように設計されています。この電子制御関係のどこかに欠陥がある。もしくは、欠陥が入り込む可能性を持っているのではと思います。

2) インサイト

インサイトが抜き去っていくのでしょうか?ホンダとトヨタはF1を撤退したが、F1よりおもしろい興味あるレースです。トヨタは、インサイトを意識して、3代目プリウスを出した。価格も販売時期も完全に競争状態であった。開発に手抜きをしたかどうか、これから分かるかも知れないからおもしろい。ブレーキについても、電気回収を大きくすればするほど、エコにはなるが、制御が複雑になり、コストアップにもなる。どこで、手を打つかは、自動車メーカーの戦略である。

トヨタ欠陥問題とは、何なのだろうかと思います。トヨタの大規模リコール(米国で230万台、欧州?台)の発表がここにありますが、「アクセルペダル内部のフリクションレバー部」とは、何でしょうか?英語の発表では、”what is known as a friction device”となっています。アクセルを踏んだ時のバネの戻りを摩擦で調節して、運転にほどよい感覚にするための調整部品でしょうか?アクセルの戻りに関係する部品であれば、自動車の運転の安全性に極めて重要な部品です。

ここまで考えるとインサイトに周回遅れにさせられるのかなと思ってしまいました。あるいは、抜き去られる前に、何かあるのでしょうか?ちなみにプリウスは、現在注文しても6月以降の工場出荷と発表されています。(平成22年1月27日(水)以降のご注文分は平成22年6月中旬以降の工場出荷予定となります。

3) 今後

トヨタが今回のプリウス欠陥をどう生かせるかだと思います。もし、1)で書いたような電子制御関係の欠陥であるなら、EVにも共通します。うまく対処すれば、EVを含め、今後トヨタが有利に自動車メーカーとしてビジネスを展開できると思います。

エコの最先端を求めた結果であり、エコの最先端で未だ他のメーカーが経験していない分野において生じた問題であれば、その経験を生かして今後有利になれる可能性がある。

自動車メーカーレースも面白いと思います。

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2010年2月 2日 (火)

明石歩道橋事故に思う

神戸第2検察審査会の1月27日の決議を受けて、兵庫県警の元副署長を起訴し、検事役を務める指定弁護士の候補として兵庫県弁護士会が弁護士3人を神戸地裁に推薦したとのニュースがありました。

読売関西 2月2日 検事役3弁護士を推薦…歩道橋事故「強制起訴」で弁護士会

この件に関するマスコミ報道は、次の読売社説のように、市民感覚の刑事裁判への反映が行われることであり、歓迎すべきとの意見が多いと思います。しかし、私には、釈然としないところがあります。

読売社説 初の強制起訴 1月29日 法曹三者の責任はより重く

1) 警察の役割

警察とは、何でしょうか?怪しい者を捕らえて冤罪者をつくる機関であってはならないし、行き過ぎると、言論・思想統制の暗い社会になります。現行犯や捜査令状なしで、強制的に国民の活動に関与してよいとは思いません。

明石歩道橋事故の主催者は、警察ではありません。参加人員を予測し、安全を確保し、対策を講じるのは主催者です。犯罪があった場合、それを取り締まるのが警察です。

例えば、集会を開催するのに、警察の関与があってよいでしょうか?警察に事故の責任を負わせるなら、逆に警察の命令に従うことを承諾することになると思います。集会や催し物の主催者が、参加者の安全を確保するのが本当であり、警察は補助者である。警察とは、どうあるべきかの大前提はどうなっているのだろうと思います。

2) 主催者

明石歩道橋事故の花火大会は、「第32回明石市民夏まつり」のなかの行事として実施され、主催者は、明石市、明石商工会議所、明石観光協会等12団体からなる明石市民夏まつり実行委員会であったのです。

主催者は、組織も責任体制も明確でなかった寄り合い所帯であったと思うのです。それまで、31回開催して大きな事故もなかったから、明石市地方自治体も問題意識を持っていなかっただろうし、中止なんて全く考えてもいなかったと思います。

危険性があるにも拘わらず、無責任体制で取り組んでいることが、身の回りにないか、考える必要があると思います。

この明石市のWebpageから、歩道橋事故の事故報告書がDownloadできます。花火大会に終結する群衆が15万人と予想されるにも拘わらず、1時間当たり7200人の通行量で設計された歩道橋を参加者の主要経路として考えていました。事故が起こった海側の階段の下には露店も出ており、そのために混雑が更に悪化したのですが、露店の出店を決めたのも主催者です。

3) 裁判

民事は、9遺族について、明石市、兵庫県(県警)、警備会社が568百万円の賠償をすることで2005年6月28日の神戸地裁判決で終わっています。(11人の死亡事故であったのですが、2人がどうなっているのか分かりませんでした。)

刑事では、明石市職員3名、県警1名、警備会社1名の計5名が起訴されました。1月27日の読売新聞 明石歩道橋事故で元副署長起訴へ…検察審が議決によれば、明石市の3人は禁固2年6月、執行猶予5年の有罪が確定しており、県警1名と警備会社1名の2人は、上告して争っていると報道されています。

多分、今回の元副署長についても長い裁判が続くのだろうと思います。

4) 検察審査会の判断

検察の判断が正しいとは限らない。同じように、検察審査会の判断も正しいとは限らない。よくない仮定ですが、足利事件について、当時菅家さんを起訴していなかったなら、検察審査会はどう反応したのだろうと思います。

現実に、検察が不起訴の決定をした結果、検察審査会が不起訴の不相当を議決し、その結果、20数年もの長期の裁判となり、無罪が確定したのが、甲山事件です。検察審査会の不当な決議により人生を失ってしまった人もおられるのです。(20数年の裁判で、差し戻しはあったものの、一度も有罪判決はなかったのです。)

検察審査会って何なのだろうかと思います。人を刑事罰で起訴をすることの重みは、相当のものであります。

明石歩道橋事故は、歓迎すべきとは、とても思えず、無責任体制が原因と思える嫌な事件です。そして、それが今も続いている懸念がするものですから。

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2010年2月 1日 (月)

菅直人さん突っ込みが足りません

次の記事を思いました。菅直人さん突っ込みが足りません

日経 2月1日 11年度の社会保障財源、6兆円不足 菅財務相「特会を徹底見直し」

1月16日に医療費の将来予測を書き、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計を基に将来の医療費を予想しました。この記事の記憶が残った状態で、「全閣僚が問題意識を共有して、自分の足元の特別会計などを徹底的に見直す」なんてことは、甘くって、国民を欺く行為だと思ってしまったのです。

1) 5年後の医療費は自然増で5%アップ

2008年度の医療費は、34.1兆円でした。私の1月16日の予想数字は、2010年度35.3兆円、2015年度37.1兆円でした。従い、5年間で1.8兆円(5%)の増加です。34.1兆円の負担は、個人から医療機関や薬局への直接支払いが4.8兆円で、全額公費負担が2.3兆円、そして医療保険が27.0兆円です。

5年間で1.8兆円(5%)の増加は、現在の年齢階層別の一人当たり医療費が変わらないとした前提で計算しているので、それ以上に増加する可能性の方が大きいと思います。2008年度の要素費用表示の国民所得は351.5億円でした。1月5日の日本経済の成長戦略に書きましたが、国民所得は1990年から水平又は下降です。従い大変なのです。

医療は、公共工事とは異なり、中止、凍結、繰延はあり得ません。多分、医療保険料の増加を国民が泣く泣く受けることになると思います。

2) 高齢者増加の影響

現在団塊の世代が60歳です。5年後には、65歳になり、多くの人はリタイヤすると思います。次の表は、医療費の将来予測で使用した国立社会保障・人口問題研究所の出生中位(死亡中位)人口推計の2010年と2015年について、25歳から59歳を年金支払世代とし65歳以上を年金受取世代として、その比率((a) / (c))を計算した表です。25歳から65歳を年金支払世代とした場合も計算しました。65歳以上の人口は増加し、一方で65歳未満の人口は減少する恐ろしい世界です。

2010年 2015年
(a) 25-59歳人口 58,534千人 56,235千人
(b) 25-64歳人口 68,529千人 64,634千人
(c) 65歳以上の人口 29,412千人 33,781千人
(a) / (c) 1.99 1.66
(b) / (c) 2.33 1.91

2010年において25歳から59歳の世代が65歳以上の世代を1.99人なので2人で1人を支えているとすると、それが5年後の2015年には1.66人で1人を支えるので、支える方の負担は1.2倍になります。25歳から64歳歳の世代が支えるとしても、1.22倍です。負担構造を変えて、25歳から59歳の世代が支えていた部分を、年齢層の拡大を行い、25歳から64歳の世代が支えるとしても、1.04倍になるのです。

団塊の世代をこき使って、65歳まで働いて頂くとして、仕事と仕事に対する支払は社会が確保する必要があります。実際に、団塊の世代のほとんどの方は、働く意欲を持っておられます。しかし、若者にさえ仕事は少ないのであり、あっても高い支払を得られないし、65歳以上の人達を支えるほど分担できないのが実状です。

年金は、受領する側になると負担しなくなるので、5年後には年金の負担が20%増加するのです。医療保険は、年金受領者も負担するが、給与収入より年金では受取額が小さくなるので、保険料負担額も高齢者が少額となる分、若い世代の負担が増加します。

3) 中長期将来設計

中長期将来設計ができていない。その結果が、菅直人さんの突っ込みの足りなさになっていると思います。今に始まったわけではなく、小渕政権時代の公共事業無限拡大と大幅減税の頃も全く将来像がなく、小泉政権も小渕政権の公共事業拡大路線を批判し、民活路線に転換を図ったが、具体的な将来像が示されたわけではありません。今、団塊の世代が60歳を超えつつあり、危険信号が点灯していると認識します。

それにも拘わらず、特別会計の徹底的見直しなんて、のんびりしたことを言っていたのでは、小渕政権や小泉政権と何ら変わりはないと思います。増税案の作成に直ちにかかるべきです。さもなければ、健康保険料や年金掛け金の大幅増加になります。結果は、格差拡大、貧困層の拡大、制度の破綻になると思います。税は負担能力に応じて徴収します。保険料や掛け金は払わない人に対して、無保険や年金減額・無年金と言ったペナルティーを課すことになり、それが制度破綻に繋がり、社会にとって悪い方向に向かいます。

民主党よ、増税案を立案下さい。結論までは無理でも、案を展開して、参議院選を戦うのです。さもなければ、日本沈没になる気がします。

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日米比較:医療、医療費、医療保険を考える(その6)

医療は、国により制度が異なり、その背景には社会的な考え方、過去の歴史により決まってくることが多く、また医療インフラが現実に提供可能な医療を決定するのであり、比較は容易ではありません。また、他国の医療に関して、それほど多くの知識を私も持っているわけではありません。しかし、比較自身が無意味とは言えず、私なりに比較を試み、その上で、多くの方々からご意見やご批判をいただければと思います。

1) 米国と日本の2007年一人当たり医療費

日本については、厚生労働省の資料です。米国は、Department of Health & Human Servicesが連邦政府の医療関係の行政部門であり、Centers for Medicare & Medicaid ServicesのNational Health Expediture DataからDownloadしました。

次の表が、日本と米国の2007年の一人当たり医療費の比較です。

Health20101jus1

統計項目の取り方に差があるため、米国の医療費についても、そのままの言葉で記載してあります。米国の統計項目の概要解説は、ここにあります。参考として、色分けして、且つ1ドル=100円で換算して、比較グラフとしたのが次です。

Health20101jus2

日米の差は、感覚からすれば倍半分という感じに思えます。

2) 過去からの推移

同じ内訳での1980年からの日米両国の一人当たり医療費の推移は次でした。

Health20101jus3

Health20101jus4

日本は、1980年に対して2007年が2.5倍強であるのに対して、米国は7倍以上ですから増加割合がまるで違います。但し、為替レートは1980年頃には220円/US$程度であったので、為替換算をすると米国は半分になります。それでも、日本の方が医療費の増加を抑えていると言えます。勿論、妥当な金額の水準は幾らかは、別途検討すべきです。

3) 医療保険

医療費は医療保険(日本では健康保険と呼んでいます。)と自己負担、そして生活保護の場合の公費負担や例えば公害認定病の公費負担があります。日米の制度を比べるにも、困難があり、米国で65歳以上はMedicareによる医療保険でカバーされていると了解しますが、相当複雑に思えます。(Wikiはここにあります。)2007年の医療費がどの保険から支出されたかのグラフを作成しました。なお、日本の場合、それぞれの保険に対して政府や地方自治体の負担金や補助金が支出され、更に保険制度の間で、拠出金として負担している金額が存在したり、相当複雑です。

Health20101jus5_3   

日本の場合も、後期高齢者医療制度による支払金額が大きいのが分かります。後期高齢者医療制度の患者負担(の保険料も自己負担も)は、小さいのであり、制度維持が困難と予想される悪い制度と思います。日本の健康保険について次回に考えてみたいと思います。

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