医療保険1:医療、医療費、医療保険を考える(その7)
今回は、医療保険(健康保険)について、考えてみたいと思います。
1) 国民皆保険
日本の医療保険は、国民健康保険法が1958年に全面改正され、国民皆保険制度となり、1961年4月から施行されました。国民健康保険法の第5条及び第6条は、次の定めとなっています。
(被保険者) 第5条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。 (適用除外) 第6条 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、市町村が行う国民健康保険の被保険者としない。 |
「区域内に住所を有する者」なので、国籍を問わず、市町村に登録している人全員が国民皆保険の対象であり、保険料納付の義務を有すると共に、医療保険を利用して、医療を受けることができます。
そして、日本では全ての医療保険について、保険給付金の支払いが同じであり、対象となる治療はどの保険でも同じであるばかりではなく、治療費や薬代も、同じです。保険給付支払の条件を、政府が決定する仕組みを採用しています。市場競争の民間医療保険とする場合は、様々な保険があり得るので、同じ病気であっても、加入している保険により、治療方法が異なってくることもあります。高い保険料の医療保険に入っていれば、高額の治療を受けられたりします。
国内の住民は、何らかの公的医療保険に加入し、治療については、医療保険を使って、必要と考えられる医療を受けることができる制度です。保険加入は義務ですが、治療に関して公的保険の治療方法以外の選択をすることは、個人の自由に属することです。しかし、その場合、公的な医療保険の保険金の支払を受けられず、全額自己負担となります。
2) 保険料と給付費
国民健康保険法第6条の適用除外の各号には、(1) 健康保険法の健保組合と協会けんぽ、(2) 船員保険法の船員保険、(3) 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法と私立学校教職員共済法の共済制度、(4) 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による被保険者、(5) 生活保護世帯および(6) その他特別に厚生労働省令で定めるものが書いてあります。従い、これらの制度が、日本の医療保険制度の全てであり、保険の保険料と保険給付費について記載したのが次の表です。
後期高齢者医療制度が2008年4月から始まりました。従い、2007年度以前のデータではなく、2008年度の表としましたが、2008年度は確定した決算が発表されておらず、厚生労働省の各種資料から、作成しました。推定した部分もあります。
一人当たり、給付費は多少のばらつきはあるものの、後期高齢者医療と市町村国保を除いて、それほど大きな差はありません。理由は、一人当たり医療費が1月26日の記事のグラフのように年齢による差が大きいからです。後期高齢者の一人当たり給付費は717,544円であり、リタイアした人も含まれる市町村国保が228,249円でした。
3) 健保組合と協会けんぽ
国民健康保険と後期高齢者医療を除いては、雇用主(共済の場合は、政府等)が存在するので、保険料は50%分が雇用主負担となり、個人負担は一人当たり保険料と書いた金額の半分です。
健保組合と協会けんぽの保険料を比較したのが次の表です。企業規模が大きくない場合(企業単独の場合は、700人以上が必要)は、健保組合を結成できず、またメリットが生まれず、旧政府管掌健保である協会けんぽの医療保険になります。傾向としては、企業規模が小さく、給料・賃金も健保組合を結成できている大企業と比べると低い。このため、保険料をパーセントとして捕らえると高くなります。その状態を示したのが、次の表であり、一人当たりの平均標準報酬額は協会けんぽの被保険者は387万円で、健保組合の平均595万円の65%でした。
なお、2)の表は扶養家族・被扶養者を含んだ保険の加入者で一人当たりの数字も計算しましたが、協会けんぽと健保組合の比較表は、扶養家族・被扶養者を含まない働いている人数・被保険者数で計算しています。
保険料収入は、保険給付および管理運営費に加え後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、退職者給付拠出金にも支出され、協会けんぽは保険料率が高くても、一人当たり保険収入が低くなり、健康保険法第153条の国庫補助金が拠出されています。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の財務諸表はこのページからDownload可能であり、第1期(2008年10月1日から2009年3月31日までの6月)は、次のようになっています。(介護保険も含んでいます。)
協会けんぽの収支も、収入は保険料と国庫補助金で未だ単純ですが、支出には保険給付以外に支援金や拠出金がならんでおり、複雑です。これを分析しないと、日本の医療保険の検討をしたことにならず、次回に分析いたします。
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