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2010年2月17日 (水)

医療保険2:医療、医療費、医療保険を考える(その8)

医療保険(健康保険)の続きです。

1) 保険料と保険給付金のバランス

2008年度の医療費は34.1兆円であったのですが、このうち生活保護費等の公費で支払われたのが、1.6兆円で、残額の32.5兆円が医療保険給付と患者負担金です。医療保険の保険料と給付費の関係を図で示したのが、次です。

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上の横棒が保険料で、下の横棒が医療費の支払いです。同じ色にしてあり、下の給付費より、上の保険料が大きいのは協会けんぽ、健保組合と共済組合です。一方、保険料に対して給付費の方が大きいのが、国民健康保険(国保)と後期高齢者医療です。(船員保険については、保険料総額が366億円であり、グラフでは判別できなくなりました。)

2) 保険料、国庫・地方自治体補助金、保険者間の拠出・分担

保険料、国庫・地方自治体補助金、保険者間の拠出・分担を表にしてみました。

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表の上側が収入で、下側が支出です。管理費等を含め28.4兆円の支出に対して、収入が27.9兆円です。収入のうち保険料が17.6兆円で、10.3兆円が国庫や地方自治体からの補助金です。下側の支出で、国保と後期高齢者の部分でマイナスの赤字になっている箇所がありますが、支出ではなく、他の医療保険から支援を受けている金額です。

これをグラフにしたのが、次です。

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各保険の、左が収入で、右が支出です。健保組合、共済組合は左が全て赤なので、収入は全て保険料です。協会けんぽには、少し国庫負担が入っています。右の支出では、グリーンの部分が保険給付費で、ゼロから上の部分です。ゼロから下に伸びているのは、収入の中から国保と後期高齢者医療に支援金・分担金として支払っている金額です。

協会けんぽ、健保組合、共済組合は、国保と後期高齢者医療制度を支えるために、ゼロから下に伸びている部分があります。(省略しましたが、船員保険も同様です。)国保は、ゼロから下に高齢者支援金が伸びてはいるものの、それ以上の金額の国庫負担を得ています。後期高齢者医療は、他の国庫や他の保険から援助を受けるだけです。

3) 国保

国民健康保険は、補助金や他の保険からの援助を受けて、恵まれていると考えてしまいますが、問題含みです。次のグラフは、国保の保険料滞納世帯の割合を示しています。

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国保の保険料の滞納が何故それほど多いのかは、低所得者層が国保の被保険者に多いことが関係していると思います。次のグラフは、国保の被保険者世帯の所得分布です。200万円以下の所得世帯が74%です。健保組合の被保険者平均595万円や協会けんぽの387万円より、低いのです。なお、この分布は、平成2007年度であり、後期高齢者も含んだ分布図であることから、2008年度は少し変化すると思います。

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日本の医療保険には、医療保険の側面以外に、福祉制度の側面を持っており、それが保険料や補助金並びに保険制度間の支援金・分担金の支払にもなっています。福祉制度の側面を持っていても、よいと考えます。しかし、支援金・分担金が大きくなりすぎると、保険制度間の不満となります。例えば、ここに平成21年度健康保険組合全国大会の決議がありますが、健保組合は税負担の拡大を求めています。

現在、格差拡大、特に貧困層の拡大が言われていますが、非正規雇用で健康保険は国保に加入せざるを得ない人も増加していると思います。企業にすれば、正規雇用の場合は、健康保険料と年金の掛け金の半分を企業が負担せざるを得ません。非正規雇用や派遣の形をとって、健康保険料や年金掛け金の負担を逃れようとすれば、医療保険全体の財政は更に悪化します。制度自身が、そのような格差拡大・貧困拡大にインセンティブをつけてはいけないと考えます。制度は、万人に公平であり、仕組み自体の中に、社会正義に向かうように設計されていなければならないと考えます。

ところで、悪化が進みます。何故なら、高齢化構造が更に進むからです。鳩山総理は、子供手当ばかり言っておられるようですが、医療保険にも手を付けないと日本の医療保険制度が崩壊する恐れさえあると思います。次回は、高齢化に伴う、医療保険の収支をシミュレーションします。

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