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2010年3月17日 (水)

企業健保の保険料率上げ:医療、医療費、医療保険を考える(その10)

次のニュースがありました。

日経 3月16日 企業健保、保険料率上げ 日産やイオン、高齢者医療が重荷

記事は、「日産の健康保険組合は3月分から料率を7.28%から8.02%に引き上げ、イオン健康保険組合も8.4%から8.8%への引き上げ」と報じています。また、NEC、大日本印刷など、他の大手企業でも09年度に続き、料率引き上げに動く健保が目立つと述べています。

1) 健康保険組合

健康保険組合とは、健康保険法の下で、常時700人以上の従業員がいる企業、または同種・同業の複数の企業で3000人以上の従業員がいる事業所において、事業主の申請によって厚生労働大臣の認可を得て健康保険組合を設立されます。2009年7月1日現在で健保組合数は1484ありました。

健康保険法には、もう一つ政府により出資された全国健康保険協会(協会けんぽ)があります。当然のことですが、健康保険組合の方が、例えば、保険料率を自主的に決定できたり、付加給付のメニューを追加したりして、自由度が少し高くなると言えます。企業により、保険料率に違いがあります。

協会けんぽの平成22年度の保険料率は、ここにあり、平均9.34%です。協会けんぽの保険料率より高い料率適用となる健保組合は、解散に向かうことになります。(1年前のニュースですが、2009年3月27日 健保8組合が解散 保険料率高でメリット薄れ

2) 保険料率の将来予想

民主党は、後期高齢者医療制度の廃止と医療保険の統合を掲げており、次のグラフは、現状を維持した場合の、将来の保険料率の予想です。実線と破線の2種類のグラフがありますが、実線は国庫補助金、都道府県・市町村負担金が現状の金額で維持された場合の保険料率です。破線は、医療費総額の増加に伴い、保険料の増加と同率で、税負担も増加した場合です。

20103medinsurance1

このグラフは、一人当たりの医療費増加はないものと仮定しています。但し、医療費総額は、増加するとしました。一人当たりの医療費増加がないにも拘わらず、医療費総額が増加する理由は、高齢者の増加です。即ち、年齢層別の医療費を現状維持で考えたからです。

上のグラフの保険料率は、雇用者負担額との合計なので、実際の個人負担は、原則この2分の1です。企業から見れば、従業員に支払うのも、健保組合に支払うのも、人件費としては全て合算した金額です。企業にとってコスト増であり、そのカバーのために給与を抑えようとするか、派遣・非正規に向かうかも知れません。

3) 後期高齢者保険

2)のグラフにおいて、年齢層別の医療費を現状維持で考えたことは、別の言い方をすれば、上のグラフの保険料率の増加は、被保険者の医療費の増加ではなく、高齢者の人数が増加したことに伴う、増加です。次のグラフは、2)のグラフの茶破線の健保組合保険料率の内訳を示したものです。

20103medinsurance2

収入は増加しない。健康保険料が、外部の人である後期高齢者のために増加する。そんな状態になると勤労意欲すらなくしてしまうのではと危惧します。

後期高齢者医療制度は、導入された際に、高齢者から負担増に対して反対がありました。しかし、負担者が大きいのは、健保組合、共済組合や協会けんぽの被保険者です。

4) 将来の方向

健康保険の料率は、税金のように給与所得控除や基礎控除等の所得控除がなく、給与金額にかけ算をするので、負担を重く感じます。しかも、後期高齢者の医療の為に、負担増となります。健康保険制度を統合して、保険料と税負担を合理的に設計し直さないと破綻する危険性を感じます。

増税せざるを得ないと思います。公平な増税をしないと支持されない。そのために、絶対必要なことは、番号制の導入です。番号制がないから、3)のグラフのように、勤労者に全ての負担が回る。還付金付き消費税のような還付金制度を導入するなら、番号制にしないと公平が保てないはずです。朝日 3月16日 「共通番号制」賛否割れる 朝日新聞世論調査は朝日の世論調査結果として「職業別では事務・技術職層と製造・サービス従事者層で賛成が多め、自営業者層と農林漁業者層で反対が多めだった。」と述べています。勤労者に負担を押しつけることでは、解決しないはずです。

番号制において、プライバシーが保護できないというのは、変な話です。欠陥法律を作ることを前提としているか、現在に満足しているように思えます。

米国では、最終的にどのようになるかまだ不明ですが、米議会で医療保険改革法案が審議・採決されようとしています。それでも、米国の問題として残るのは、医療費の多さです。2月1日の日米比較:医療、医療費、医療保険を考える(その6)で書きましたが、米国の一人当たり2007年医療費は7,416ドルですから90円で換算して、667千円なので、日本の267千円の2.5倍です。日本が、現状の医療費水準を維持することが容易ではなく、上のグラフより更に増加するのは、ほぼ確実と思いますが、米国ほどは高額にしないように、対処しないといけないと思います。

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コメント

米国は、自由診療の国ですし。ほとんどが、民間健康保険会社でもありますから。

 近いのはフランスかな。 ゆるやかなGP制度と、無過失保障がセットでは、ありますが。

http://e-public.nttdata.co.jp/f/repo/606_e0902/e0902.aspx

GDPの10%をしめますし。

 それからくらべれば、日本の医療費は安すぎるともいえますが。 高額療養費支給制度というのも、ございませんし。

 企業が持たないのは、その通りですし。

投稿: omizo | 2010年3月17日 (水) 10時24分

omizoさん
コメントありがとうございます。私も、詳細を調べることができていませんが、米国でも65歳以上は連邦政府の Department of Health and Human Services がやっているMedicareの医療保険があり、低所得者はMedicaidにより医療保険が適用されると理解します。

国民の知らないうちに決まっていって、後から知らされる。後期高齢者医療制度なんて、その典型と思いました。法律が国会を通った後で、国民に対しての情報発信が十分でなかったなんて言ったりして。今回の健保組合の保険料アップも、後期高齢者医療制度が、その原因と考えられます。それを明確にしないといけないと思います。税金であれ、保険料であれ、医療機関への直接の支払であれ、本当は財布は同じです。国民を交えて議論をして欲しいと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2010年3月17日 (水) 20時58分

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