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2010年3月 1日 (月)

独立行政法人の国債保有

朝日新聞が、独立行政法人による国債の保有について、批判をしていました。(朝日2月28日 21独法、国費で国債3000億円購入 余剰資産が原資 

確かに、政府子会社に相当する独立行政法人が出資者である政府の債券である国債を保有することは、変な形ではあるが、一時的な保有としては、許されるはずであり、朝日の記事のようなAll or Nothingで、「ケシカラン」と騒ぎ立てるべきではなく、個別の内容を調査して、批判すべきと考えます。例えば、朝日の記事は「朝日新聞は、すべての独法98法人の2009年3月期の決算書をもとに、国債の保有額や購入原資を調査した。」と言っていますが、単に集計しただけで、分析をしていないし、データも集計結果も開示せずに、もの申すとは行き過ぎです。

そこで、朝日の批判の妥当性について、3006億円のうち60%に相当する1793億円を保有している住宅金融支援機構について、調査しました。以下、その結果です。

1) 住宅金融支援機構

住宅金融支援機構は、独立行政法人住宅金融支援機構法により2007年4月に設立され、次の業務を行っています。設立と同時に、住宅金融公庫は解散され、その権利・義務は住宅金融支援機構が承継しました。

① 証券化支援業務(日本版住宅MBS (Morgage Backed Security)の発行等)
② 融資業務 (災害復興住宅融資、財形住宅資金貸付等)
③ 住宅融資保険業務
④ その他(旧住宅金融公庫の住宅貸し付けの管理を含む。)

①の証券化支援業務の2008年度実績は31,613戸・6848億円で、民間金融機関が貸付をした住宅貸付を支援機構が買取し、この住宅貸付債権を下に信用リスクは支援機構が負担する仕組みで貸付債権担保債券(MBS)を発行するスキムです。MBSは、支援機構が貸付者となる住宅貸付や旧住宅金融公庫の分についても利用しています。MBSや一般担保債券を発行することにより、政府財投資金からの脱却を計り、民間金融機関や投資資金を利用し、互いの利点を出し合った日本の住宅資金金融を良い形のPublic-Private-Partnershipで推進することを目指していると理解します。

2) 貸借対照表

2009年3月末の貸借対照表を次のグラフに表しました。

20102

資産の大部分は住宅貸付金と買取債権(証券化支援業務で発生)です。住宅貸付金には、旧住宅金融公庫の貸付による残高と住宅金融支援機構が貸し付けた残高がありますが、ほとんどが旧住宅金融公庫から引き継いだ貸付金です。上の貸借対照表に証券課支援勘定と既往債権管理勘定を、参考までに付け加えたのが次の図です。

20102b_2 

各勘定別(セグメント別)の数字の貸借対照表も掲げておきます。(クリックすると拡大されます。)

20102c

3) 国債保有

政府が出資をしている独立行政法人が、国債を保有することは変則的です。しかし、住宅金融支援機構が住宅金融業務を実施するに当たり、信用リスクを負担したり、MBSを発行し、信用格付けも得ているのであるから、業務に必要な手元資金を確保することは、必要であり、それを換金容易で信用力の高い金融資産で保有していることは当然と考えます。そのような金融資産の一部に国債が含まれていても合理的であれば問題はないと考えます。

住宅金融支援機構が2009年3月31日において保有する国債は、朝日が報道しているように、1793億円です。しかし、総資産が4兆238億円であることから0.4%です。保有している有価証券でみても、合計5190億円であり、民間企業が発行している社債を2793億円保有しており、社債の方が金額は大きいのです。一方、国債の購入原資を考えても、財政投融資借入、旧簡易生命資金、政府保証債券による資金が入っている既往債権管理勘定では、国債を保有していません。

証券化支援業務で住宅貸付金を購入し、これを下にMBSを発行するが、信用リスクが残っている。もし、貸付金の返済がなければ、MBSを保有している投資家に対して住宅金融支援機構が自らの資金でMBSを期日通りに償還する必要がある。そのための資金の一部を国債で保有していても何ら問題はなく、これをリスクの高い株式等で保有していれば問題であると考えます。

なお、住宅金融支援機構は、2009年3月31日において未処理損失5642億円抱えています。このうち5381億円が旧住宅金融公庫の住宅貸付に関わる既往債権管理勘定における未処理損失です。2)の貸借対照表では、利益剰余金が1777億円のマイナス残高となっていますが、5381億円との差は、団信特約料長期安定化積立金3279億円等があるためです。いずれにせよ、剰余金はマイナスの状態です。従い、利益を政府に戻さず、国債で運用しているというのには該当しません。

住宅金融公庫は、日本に一定品質の住宅を普及させるのに貢献したと思います。住宅金融公庫の融資が受けられることから、個人の住宅取得が容易になったし、融資を受けるためには、容積率、建坪率、都市計画との整合性、建築基準法検査合格等が必要であり、不適切な開発を防止したと思います。また、阪神大震災復旧住宅への融資のような災害融資は、将来も独立行政法人や政府機関による金融制度が必要であり、住宅金融支援機構の役割は重要と考えます。

すくなくとも私が調査した範囲では、住宅金融支援機構の国債保有に問題点は発見できませんでした。蛇足かもしれませんが、住宅金融支援機構は、役員である理事・監事の報酬額について個人毎に金額を情報開示しておられました。1億円以上の開示でも、反対論がある世界とは異なっていました。

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