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2010年3月21日 (日)

医療保険について誤解を生む読売新聞: 医療、医療費、医療保険を考える(その11)

「医療、医療費、医療保険を考える」のシリーズを書いていると、どうしても、触れておかないとと思ってしまったのが、次の記事です。

読売 3月20日 がん治療費、年平均133万円…7割が負担感

1) 高額医療費の保険請求

通常は医療費の30%が自己負担であり、70%が保険から医療機関や薬局に直接支払われます(後期高齢者は10%負担、90%保険)。しかし、一定額を超えると、超えた超過額は、申請により患者に支払われます。従い、一定額以上の自己負担は、一時立て替えになりますが、実質負担はありません。

そこで、この一定額とはいくらかですが、所得や年齢により差があります。そして、一定額には、差額ベッド料は含まないが、介護保険の自己負担額を含みます。次の平成21年8月掲載の政府広報オンラインをご覧下さい。

政府広報オンライン 医療費・介護費の自己負担を軽減します。「高額医療・高額介護合算療養費制度」

夫婦ともに75歳以上の2人世帯の場合は、高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は年間56万円です。(市町村民税非課税であれば31万円で、現役並み所得者の場合は67万円)

但し、ここに書いた金額は合算の場合であり、医療費のみの場合は、一定額(自己負担額)は低くなります。また、一定額はこのWebの説明のように月額で決まっているので、高額医療費の請求は月額で超過すると請求し、支払を受けることができます。ここに書いた金額は上限であり、実際にはもっと少額となることもあると理解下さい。

2) 実態

実は、1)の高額医療費の保険請求をご存じない方も多いのではと思います。多くの方は、医療費が高額となり、問い合わせをして、制度があることを知ることになる。健康であれば、医療保険なんて気にしません。

もしかしたら、3月17日の企業健保の保険料率上げ:医療、医療費、医療保険を考える(その10)は、高額医療費が給付されていない状態であり、申請が制度通りになされると保険料は更に高くなるのでしょうか?実態は、私も分かっていませんが、保険事業者が各人毎の医療費額を把握しているので、申請がない場合は、申請を勧めるとと思うのですが。

あるいは、医療費自己負担限度額は年間56万円の人が、133万円負担しているというのは、差額ベッド料に77万円支払っているのでしょうか?記事の中に、健康食品などにと書いてありますが、健康食品に77万円支払っているのかなと思います。

日本の医療保険は、強制保険であるが故に、効果が不確実である治療には保険が適用されません。もし全てを認めるなら、保険料は無限に高くなります。一方で、有効な治療については、積極的に保険適用を認めることとしています。ガンに有効な健康食品があるなら、医薬品としての手続きを踏んで、有効性が確認できれば、保険対象とすることが可能です。

3) 読売記事の弊害

直前の大淀病院事件の請求棄却判決を読むで書いた、「インターネット(や毎日新聞等)の掲載だからといって、閲覧者が信頼性の低い情報として受け取るとは限らない--。」のように読売新聞を読んで、誤解する人も出てくると思います。

報道するなら、高額医療・高額介護費用の保険請求制度を伝え、かつ健康食品についても正しく伝えるべきと考えます。

また、損保や生保の医療保険がありますが、これらは所得保障保険と考えるべきと思います。従い、年金生活者であれば、不要であり、保険に入らずに、その保険料を入院時の差額ベッド料その他雑費にとっておいた方が賢いと思います。なお、患者の希望がない場合に、病院が差額ベッド料を徴収することは禁じられています。

読売の記事は、情報源としてあるNPO法人の名前をあげていますが、そのことにより読売の責任が軽くなることではないと考えます。政府や自治体、独立行政法人による発表であれば、単純に扱うことも構いませんが、このNPO法人のようなXXX機構なんて、あたかも独立行政法人のような名前を付けているNPO法人を、私は好きではありません。

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コメント

>読売の記事は、情報源としてあるNPO法人の名前をあげていますが、そのことにより読売の責任が軽くなることではないと考えます。

昔、読売の記者に同じ内容の抗議をしたら、『自分の発言ではないから責任は無い』と言い放ちました。

情報を吟味できる能力がないものが、更に情報に疎い人達に情報を流すことは、情報公害だと私には思えます。
それは啓蒙ではなく、不必要な不安感を高める煽動だと思います

投稿: Med_Law | 2010年3月22日 (月) 19時46分

医療費負担はいろいろと問題ありますね~

投稿: 医師 | 2010年3月22日 (月) 20時56分

Med_Law さん 医師さん
コメントありがとうございます。

Med_Law さん
他人の発言を伝えても良いが、それが全てではないことを言うべきと考えます。私も、「医療、医療費、医療保険を考える」をその11まで書いてきていますから、これは誤解を生じさせると判断が可能ですが、一般の読者の方は、誤解をされる、あるいは少なくとも「高額医療費の保険請求」を読売新聞が伝えないことから、そんな制度がないと誤解を生むのであれば、社会悪に近くなる気がします。

医師さん
制度は複雑すぎると思います。複雑でも、国民がその内容をよく知っており運用上も保険料負担も問題がなければ、それでも良いと思います。しかし、このまま放置すると、悪い方向に向かう気がするので、嫌です。

投稿: ある経営コンサルタント | 2010年3月22日 (月) 21時42分

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