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2011年2月19日 (土)

武富士元会長長男への贈与税課税認められず

最高裁の判断に驚きがありましたが、判決文を読んで、考えてしまいました。

日経 2月18日 武富士元専務への課税取り消し 2000億円還付へ 最高裁判決

その最高裁判決は、既に裁判所のWebに出ています。

平成23年02月18日 最高裁判所第二小法廷 贈与税決定処分取消等請求事件 (判決文

なお、判決文に須藤正彦裁判官の補足意見があり(10ページからです)、この補足意見がこの判決に関して多くを語っていると思います。私も、このブログの続きを読むに文章をコピーしておきます。

1) 事実関係

武富士創業者、武井保雄氏は、オランダに非公開有限責任会社を設立し、この会社に武井保雄氏とその妻が保有する武富士株式15,698,800株を譲渡した。やり方としては、現物出資を下のだと思います。なお、15,698,800株は、2000年3月末時点での発行済み株式(自己株式を調整後)11.6%に相当しました。

オランダ非公開有限責任会社への15,698,800株式譲渡(現物出資?)が行われたのは、1998年3月23日であり、翌1999年12月27日に武井保雄夫妻はオランダ非公開有限責任会社の出資口800口のうち720口を長男に贈与した。15,698,800株の90%に相当し、当時の株価で1653億円強と推定されます。

課税関係では、武井保雄夫妻からオランダ非公開有限責任会社への譲渡は、現物出資であれば、資本の払込であり、課税の対象とはなりません。オランダでの課税関係は不明ですが、オランダを選んだ理由は、非課税になると考えたからのはずです。なお、武富士が配当をした場合には、(日本とオランダとの租税条約を調べていませんが)日本において源泉徴収されるのみで、オランダでは課税されず、利益がそのままオランダに残るし、これを長男に払ったとしても、香港に住んでいれば、日本でも課税されず、香港の課税のみ(こちらもほぼないはずと思います。)。仮に、この長男が日本に銀行口座を保有しており、そこに配当が支払われても、日本で課税されない可能性もあります。(オランダ法人からの配当金[国外源泉所得]を非居住者が受領しても所得税の対象にならないと考えます。)但し、後述する所得税の実質課税が適用され、日本の納税義務が発生する可能性もあります。

2) 贈与税の課税関係

現在の相続税法第1条の4と、贈与があった当時の相当する第1条の2を対比して掲げます。(なお、判決文で1条の2と述べているのは、当時の1条の2です。)

2011

日本に住んでいれば、それが国外財産であれ贈与税の対象でした。また、国外に住んでいても、日本の財産の贈与を受ければ、贈与税の対象でした。この件の場合、武富士株という日本に存在する株式を保有していたのは、オランダ非公開有限責任会社であり、このオランダ会社の持ち分が贈与されたのであり、国外財産の贈与であったのです。

国外財産が、日本に住んでいない人に、贈与がなされたのです。

現行相続税法では、日本国籍があれば、贈与をする側も受ける側も、5年を超えて日本に住んでいない時に、日本での贈与税の課税がなくなります。

贈与税の趣旨は、外国に住んでいれば、その国で贈与税が課税されるとの考え方で、日本法も日本に住む外国人に対して贈与税は課税されます。

3) 本件での贈与税課税

この贈与に関して、杉並税務署が2005年3月2日付けで、1157億0290万1700円の贈与税と173億5543万5000円の無申告加算税の賦課決定処分をしました。当時の贈与税の最高税率は70%であったので、1653億円に対して、この税額になりました。その結果、裁判で争われたのです。

実質的には、武富士株が贈与されたにも拘わらず、名義上のオランダ非公開有限責任会社の持ち分が贈与された。国外財産か国内財産かについては、基本的には争われていません。何故なら、相続税法10条1項8号(当時は、1項6号と思います。)で明確であったからです。(・・・・財産の所在については、当該各号に規定する場所による。・・・・・当該社債若しくは株式の発行法人、当該出資のされている法人又は当該有価証券に係る政令で定める法人の本店又は主たる事務所の所在・・・・・

問題となったのは、長男が日本に住所を有するか、どうかの点です。この点を最高裁は「通算約3年半にわたる赴任期間である本件期間中,その約3分の2の日数を2年単位(合計4年)で賃借した本件香港居宅に滞在して過ごした」ということ等を考え、「香港居宅は生活の本拠たる実体を有していたものというべきであり,本件杉並居宅が生活の本拠たる実体を有していたということはできない」とし、贈与税の納税義務を負わないと判断したのです。

但し、贈与税回避スキームを用い、当時の抜け道をついていることは、最高裁も認識しています。例えば、補足意見の次の記述です。

本件贈与税回避スキームを用い,オランダ法人を器とし,同スキームが成るまでに暫定的に住所を香港に移しておくという人為的な組合せを実施すれば課税されないというのは,親子間での財産支配の無償の移転という意味において両者で経済的実質に有意な差異がないと思われることに照らすと,著しい不公平感を免れない。

長男は、香港に住んでいると言っても、上場会社武富士の取締役であり、しかも、香港へ出国する1年前には武富士の取締役営業統轄本部長に就任し、香港滞在期間中に、常務取締役、専務取締役と昇進したのです。「それで、香港在住はないだろう。」と思ってしまいます。

4) 実質課税

財産家の親子であったから、そんなことができたので、庶民から見れば、嘘みたいな話です。課税について、条文の解釈は、文字の解釈ではなく、本質論や経済実態を重視して課税すべきであるとの考え方があります。私は、米国は、そのような考え方が強いと思っています。日本では、須藤裁判官の補足意見にもあるように、租税法律主義が厳格に守られるべきとの考え方があります。ちなみに、憲法第30条は次の通りです。

第三十条  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

お上の言うことには従えと、税を取り立てた時代が過去にあったと思います。納税者の権利は重要です。一方、経済が複雑化し、ネットを初め、通信や国・国境が過去と随分異なってきており、ズルを許すのは、政府が税法改正に取り組んでいないからだと、政府を悪者にするだけで解決にならない気がします。租税回避スキームが使われても、実質課税をするのが原則であると、法の上でも明確にすることが重要だと私は思います。

ところで、所得税法や法人税法には、実質課税の原則が条文にあります。また、法人税法には、132条の同族会社等の行為又は計算の否認があったりします。当時の相続税法第1条の2が実質改正されたのは、2000年の租税特別措置法の改正により現行の第1条の4に実質的になりました。オランダ法人の持ち分譲渡は1999年12月27日であったので、当時の大蔵省も素早い対応をしたと思います。

所得税法
(実質所得者課税の原則)
第十二条  資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

法人税法
(実質所得者課税の原則)
第十一条  資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

5) 蛇足

長男が、どのよにして1300億円強の納税資金を用意したかですが、おそらく武富士株を売却したのではと思います。一気にではなく、融資も受けつつ市場を見ながら売却したのだろうと。もし、そのまま保有していれば、武富士は2000年9月に会社更生手続き開始の申立をしました。株式の価値は今やゼロになっています。納税資金を作るために売却し、それを法により還付加算金が通常の利息より高く受けられ、よい資産運用ができた結果となりました。

今後、どうなるのか、私にも分かりませんが、租税の不公平はよくないことです。租税の不公平をなくす条文を付け加えていき、改正をしていく必要性を感じます。税法解釈にあったても、従来既得権益の不侵害がともすれば重要視されてきた気がします。税の不公平になるかどうかも、一つの大きな解釈上のポイントであってよいように私は思います。

                   須藤正彦裁判官の補足意見

(判決文においてAは、武富士創業者元会長武井保雄氏です。)

裁判官須藤正彦の補足意見は,次のとおりである。

私は法廷意見に賛成するものであるが,原審が指摘している贈与税回避の観点を踏まえつつ,上告人の住所の所在について,以下のとおり補足しておきたい。

(1) 原審の確定した事実によれば,Aは,大手の消費者金融業を営む会社で内国法人たる本件会社の創業者で,かつ代表取締役であった。オランダ王国における非公開有限責任会社であるD社(以下「オランダ法人」という。)の総出資口数は800口であり,それは相続税法の施行地外にある財産(以下「国外財産」という。)であるところ(相続税法10条1項8号参照),A及びその妻B(以下,AとBとを併せて「Aら」という。)は,そのすべてを所有していた。Aらは,相続税法の施行地にある財産(以下「国内財産」という。)たる本件会社発行の株式(以下「本件会社株式」という。)を所有していたが,その1569万8800株をオランダ法人に譲渡し,同譲渡に係る株式はその総資産中約84.2%を占めていた。本件贈与は,法形式上は,Aらが,外国法人たるオランダ法人の総出資口数中その9割に当たる720口を上告人に無償で譲渡する贈与契約であるが,以上の事実からすれば,その実質は,要するに,オランダ法人を介在させて,国内財産たる本件会社株式の支配を,Aらが,その子である上告人に無償で移転したという至って単純な図式のものである。

(2) 一般に,親が子に財産の支配を無償で移転するための方法として世で行われている法形式としては,親が生前に行うものであれば,贈与契約であり,親の死亡によるのであれば相続である。その場合,贈与税又は相続税が課され得る。本件は,Aらの生前における本件会社株式の支配の移転であるところ,もともと日本国籍を有するAらと上告人は,国内に長らく居住し,かつ,支配の移転の対象たる本件会社株式も純然たる内国法人の株式であるから,その支配の移転も,人為的な方策を講じないままでの本件会社株式自体の贈与契約の締結によって行われる(そして贈与税が課される)ことが直截的で自然の成り行きであるといえよう。

(3) しかるところ,贈与契約については,本件贈与時の法(平成15年法律第8号による改正前の相続税法)によれば,財産取得時に受贈者の住所が国内にあるときは無制限納税義務者として,また,住所が国内にないときは取得財産が国内財産である場合に制限納税義務者として,贈与税の納税義務を負うとされていた(法1条の2第1号,2号)。そうすると,財産の贈与において,法では,受贈者の住所と贈与の対象たる財産がともに国外にあるときは,無制限納税義務者,制限納税義務者のいずれにも該当せず,贈与税が課税されないということになる。したがって,本件においても,対象たる本件会社株式を国外財産に転化することと受贈者たる上告人の住所を国外とさせることとの組合せを経た上で贈与契約がなされれば,贈与税の課税要件は満たされず,自然の成り行きでの贈与契約であれば課されるはずの贈与税の負担が回避され,ひいては,相続税の負担も回避され,結局,親子間の無償かつ無税での財産の支配の移転が実現することになるわけである。

(4) そして,現に,本件では,上告人が香港に出国し,その香港での滞在期間中に,本件会社株式をAらが支配するオランダ法人へ移転するという方法によって,これを国外財産に転化させたといえるものであるから,これは贈与税(ひいては相続税)の負担を回避するためになされたことが認められるのである。原判決は,上告人は,「贈与税回避を可能にする状況を整えるために香港に出国するものであることを認識し」たと認定するが,それは以上の趣旨において理解されるのである(ここで,オランダ法人は,本件会社株式の保有以外に事業活動を行うことが全くうかがわれないという意味でいわば「器」として用いられていると認められるのであるが,このように,オランダ法人を「器」として介在させる法形式と上告人の国外住所とを組み合わせることは,通常,相続税法や課税実務が想定しているものとはいい難い組合せであったといえるところ,それは,贈与税の負担を回避するための密接で不可欠な関係にある要素の組合せであるので,以下では,便宜上,こ
の本件での組合せの仕組みを「本件贈与税回避スキーム」という。)。本件では,この本件贈与税回避スキームの下での上告人の住所の所在が問題となっているわけであるが,この点については次のように考えられる。

(1) 上告人は,出国時から平成11年12月27日付けの本件贈与時までの約2年半及びそれに引き続き業務を放棄するまでの約1年間を香港に滞在して過ごした。本件会社では,香港を拠点とする海外事業が目指されたところ,もともとの本業である消費者金融業の方は早々に断念され,いわゆるベンチャーキャピタル業務を中心とする投資業務の展開が企図され,上告人は,それに関する情報収集,調査などのため面談業務等に従事したとされている。だが,このベンチャーキャピタル業務等の投資業務そのものは,現地の投資関係業者との間での投資事業組合を組成してのものであったにしても,投資者側には,経済,金融,会計,法律等の分野での高度の知識,技術や経験を有する相当数の専門家が必要とされるといわれているのであって,国外での案件であるからにはなおさらそのようにいえると思われる。ところが,上告人には,香港への出国前に本業の消費者金融業務とは別にこの方面で実務経験を重ねていた形跡もないし,この方面に精通する専門家が香港への出国に際して随行し,あるいは,その後に参加したような事実はおよそうかがわれない。雇った者も初めはなく,その後も1名前後を採用したにすぎず,その状態は終始変わらないままであったから,そのことからすると,結局,本件会社にとって香港でのベンチャーキャピタル業務などの投資業務は必ずしも重点を置かれていなかったとみられ,しかも,20件ほどの投資検討案件中投資の実行がされた6件ほどの案件は全てAの個別的了承の下に行われたものであることからすると,上告人が取締役に就任した本件各現地法人も,その執務場所とされた簡素ともいえる事務所も,単なる連絡事務所以上の機能を果たすものではなかったとさえみられる。その一方において,上告人は,約3年半の香港滞在期間中,国内でも,毎月1回の取締役会の多くに加え,少なくとも合計19回の営業幹部会,3回の全国支店長会議のほか,新入社員研修会,その他格付会社との面談,アナリストやファンドマネージャー向け説明会に,それぞれ出席した。上告人は,香港へ出国するより1年前には本件会社の取締役営業統轄本部長に就任し,香港滞在期間中に,「常務取締役」,「専務取締役」と昇進した。元来,株式会社の取締役という地位は,その任務の遂行に当たって,会社に対し,善管注意義務,忠実義務を負うなど重大な職責であるが,本件会社は,東京証券取引所の第1部に上場する公開会社でもあるから,取締役の地位の実質的重みは,多くの利害関係者(ステークホールダー)と関
わるなど小規模閉鎖会社のそれとは比較にならぬほどの大きなものである。特に,上告人は,Aらの子として,内外ともに本件会社の後継経営者に擬せられていたから,その取締役として取締役会に出席し,重要な意思決定に参画するなどのことは,とりわけ重大な意味があったといえる。したがって,上告人の意識や責任感の中で国内での滞在の占める比重は極めて大きく,少なくとも仕事の面からすれば,いわば軸足のうちの相当部分はなお国内にあったことがうかがわれるのである。確かに,上告人の香港滞在につき,期間2年のサービスアパートメント(本件香港居宅)の賃貸借契約が締結され,それが更改されているが,そのような長い期間の居室賃貸借契約も,例えば,国外の長期プロジェクト業務のため,海外事業担当取締役の1回当たりのやや長期にわたる多数回反覆の出張時の確かな寝泊まりの場所の確保のために,ホテル代わりにそれがなされるようなこともあり得,上告人も,本件会社の国外業務プロジェクトのため頻繁に日本に帰国しつつ長期出張をしたという構図のようにも見られ得ないわけではない。実際,上告人は帰国の際は,東京都杉並区所在の本件杉並居宅に起居し,特別な用事がない限り朝夕の食事は同所でとっていた。そして本件杉並居宅中約42平方メートルが,上告人専用の居室となっていたのである。そうすると,上告人の香港滞在期間中,その生活の本拠は,客観
的にみて,香港にあったということ自体はそのとおりであるが,ただ,上記の点に着目してみると,香港のみがそうであったのか,東京にもなお生活の本拠があったのではないかとの疑問も生じてくるのである。

(2) ところで,相続税法において,自然人の「住所」については,その概念について一般的な定義付けがなされているわけでもないし,所得税法3条,所得税法施行令14条,15条などのような何らかの特則も置かれていない。国税通則法にも規定がない。そうすると,相続税法上の「住所」は,同法固有の「住所」概念として構成されるべきではなく,民法の借用概念としての意味とならざるを得ない。
結局,民法(平成16年法律第147号による改正前のもの)21条(現行22条)によるべきことになり,したがって,住所とは,反対の解釈をすべき特段の事由がない以上,客観的に生活の本拠たる実体を具備している一定の場所ということになる。租税回避の目的があるからといって,客観的な生活の実体は消滅するものではないから,それによって住所が別異に決定付けられるものではない。本件では,住所を客観的な生活の本拠とは別異に解釈すべき特段の事由は認められないところ,本件贈与当時,上告人の生活の本拠が香港にあったことは否定し得ないから,当然,上告人の住所が香港であったということも正しいわけである。
もっとも,更にいえば,民法上の住所概念を前提にしても,疑問が残らないわけではない。通信手段,交通手段が著しく発達した今日においては,国内と国外とのそれぞれに客観的な生活の本拠が認められる場合もあり得ると思われる。本件の場合も,上告人の上記に述べた国内での生活ぶりからすれば,上告人の客観的な生活の本拠は,香港のほかに,いまだ国内にもあったように見えなくもないからである。とはいうものの,これまでの判例上,民法上の住所は単一であるとされている。しかも,住所が複数あり得るとの考え方は一般的に熟しているとまではいえないから,住所を東京と香港とに一つずつ有するとの解釈は採り得ない。結局,香港か東京かのいずれか一つに住所を決定せざるを得ないのである。そうすると,本件では,上記の生活ぶりであるとはいえ,香港での滞在日数が国内でのそれの約2.5倍に及んでいること,現地において本件会社又は本件各現地法人の業務として,香港又はその周辺地域の関係者と面談等の業務にそれなりに従事したことなど,法廷意見の挙示する諸要素が最重視されるべきであって,その点からすると,上告人の香港での生活は,本件贈与税回避スキームが成るまでの寓居であるといえるにしても,仮装のものとまではいえないし,東京よりも香港の方が客観的な生活の本拠たる実体をより一層備えていたといわざるを得ないのである。してみると,上告人の住所は香港であった(つまり,国内にはなかった)とすることはやむを得ないというべきである。

既に述べたように,本件贈与の実質は,日本国籍かつ国内住所を有するAらが,内国法人たる本件会社の株式の支配を,日本国籍を有し,かつ国内に住所を有していたが暫定的に国外に滞在した上告人に,無償で移転したという図式のものである。一般的な法形式で直截に本件会社株式を贈与すれば課税されるのに,本件贈与税回避スキームを用い,オランダ法人を器とし,同スキームが成るまでに暫定的に住所を香港に移しておくという人為的な組合せを実施すれば課税されないというのは,親子間での財産支配の無償の移転という意味において両者で経済的実質に有意な差異がないと思われることに照らすと,著しい不公平感を免れない。国外に暫定的に滞在しただけといってよい日本国籍の上告人は,無償で1653億円もの莫大な経済的価値を親から承継し,しかもその経済的価値は実質的に本件会社の国内での無数の消費者を相手方とする金銭消費貸借契約上の利息収入によって稼得した巨額な富の化体したものともいえるから,最適な担税力が備わっているということもでき,我が国における富の再分配などの要請の観点からしても,なおさらその感を深くする。一般的な法感情の観点から結論だけをみる限りでは,違和感も生じないではない。しかし,そうであるからといって,個別否認規定がないにもかかわらず,この租税回避スキームを否認することには,やはり大きな困難を覚えざるを得
ない。けだし,憲法30条は,国民は法律の定めるところによってのみ納税の義務を負うと規定し,同法84条は,課税の要件は法律に定められなければならないことを規定する。納税は国民に義務を課するものであるところからして,この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず,これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるのである。明確な根拠が認められないのに,安易に拡張解釈,類推解釈,権利濫用法理の適用などの特別の法解釈や特別の事実認定を行って,租税回避の否認をして課税することは許されないというべきである。そして,厳格な法条の解釈が求められる以上,解釈論にはおのずから限界があり,法解釈によっては不当な結論が不可避であるならば,立法によって解決を図るのが筋であって(現に,その後,平成12年の租税特別措置法の改正によって立法で決着が付けられた。),裁判所としては,立法の領域にまで踏み込むことはできない。後年の新たな立法を遡及して適用して不利な義務を課すことも許されない。結局,租税法律主義という憲法上の要請の下,法廷意見の結論は,一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感も生じないではないけれども,やむを得ないところである。

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コメント

そもそもなぜ相続税があるのか。
二重課税では?
すべての税金を払った後、資産として残った
ものまで、またむしりとるのか?

投稿: ptはすてきだ | 2011年7月13日 (水) 16時21分

ptはすてきだ サン

私が、言うのも変ですが、相続税がある理由は、大きくは2つあると思います。
1)税補足のキャッチアップ
所得税等をうまく逃れて蓄財しても、最終的には相続税で補足するという考え方です。あるいは、脱税して逃げ通して時効になったとしても、最後に相続税は待っている形です。脱税は、まじめに税を払っている人が、馬鹿を見るのであり、許してはならないと思います。
2)公平スタート
結果の不公平は、仕方のない部分があるとして、スタートから不公平があるのはよくない。相続財産とは、自分の努力なしで入手する財産ですから、ある程度は認めても、巨額の相続には相続税を課すべきであると考えられる。実際に、相続税の非課税額は、結構大きいですから、相続税を支払わなくてもいけないような金額の財産を持っている人は、死亡者の5%にも満たないのです。

投稿: ある経営コンサルタント | 2011年7月14日 (木) 14時49分

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