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2011年3月15日 (火)

計画停電の改善必要

本日の計画停電は、一部の地域での夕刻1時間半程度の停電で終わったようである。

日経 3月14日 東電が初の計画停電 第5グループの一部、1時間半

これで終わらず、明日以降も計画停電を実施する可能性があるとのこと。

日経 3月14日 15日も計画停電、5グループに分け実施 東電発表 それぞれ最大3時間

一方で、改善の余地は多いと思う。

1) 電車には電力供給を

電車を止めるのは、良くない。1編成800kW程度と思う。100編成を走らせると、80,000kWとなるが、全ての編成が同時に電力を消費するわけではなく、1/5とすると16,000kWである。それでも100編成で、列車間隔を2kmとして、複線だから2で割って、25kmはカバーできる。この計算が、どれほど的を得ているか不明であるが、その10倍の1000編成走らせるとすると160MW(16万kW)となる。

電車を運休させることは、社会や経済に対するマイナスは非常に大きい。万一、供給力が不足すると判断しても、電車には電力供給を確保すべきと考える。多分、東京電力が発表した計画停電の1グループの需要は5,000MW(500万kW)以上あると思うので、そのなかの10%の停電で、電車は相当走らせることができると思う。

JR東日本は、多くの電車を運休した。ところで、JR東日本には、自前の発電所が1,104MW(川崎火力655MWと信濃川水力449MW)ある。現在最大出力で稼働可能か、また信濃川の水量の情報も持っていないが、JR東日本の特に首都圏地域は東京電力の電力供給とは、ある程度無関係に、電車を走らすことが可能な地域であるはず。JR東日本は、14日の運休について説明をすべきと考える。安易な運休は避けるべきである。

2) それ以外のインフラにも電力を

病院や診療所という医療機関には、電力供給を継続すべきである。ほとんどの診療所には非常用発電機はないが、電力が必要な医療機器は設置されていることが多い。現在の医療は電力に依存している部分が大きいのであり、ある意味ライフラインである。その他、道路の信号機にも電力供給は継続すべきであり、市町村役所・役場にも供給をすべきと考える。

地域・住所で画一的に停電をすることは、止めるべきである。他の供給は停止しても、インフラの電力供給を継続することが可能と考える。こまめに6kV中圧線で操作すれば可能なはず。3月14日の一部地域への電力供給停止には、東京電力3月13日15時発表のプレスリリースにあった地震により停止中変電所の那珂変電所、新茂木変電所、常磐変電所と水戸北部変電所が関係している可能性があり、6kV中圧線対応は取れなかったかも知れない。一方、多くの地域では、少し離れれば、停電時間が異なる別の計画停電グループになっていた。これは、中圧線で操作するか、もう一つ高い電圧で操作するかのどちらかと想像する。社会と人々のことを考えれば、社会と人々のことを考えた停電をすべきである。

3) 大口電力需要家

過去の電力需給が逼迫した夏期シーズンでは、大口電力需要家の需要調整をしていた。今回時間がなかったこともあるであろうが、大口需要家の協力を呼びかけるべきである思う。自家発余剰電力の買取での供給力が増加の期待量は不明であるが、そのようなことも含め過去に実施した需要調整も検討すべきである。(こんなニュース日経 3月14日 三菱重工、自家発電力を東電に売電検討もあった。)

4) 情報開示

情報が開示されていないと思う。例えば、3月14日の需要カーブと供給力は、どうであったのか?勿論、14日の停電が送変電系統の制約が原因であったのであれば、単純にカーブを見ると停電は不要と判断してしまう。しかし、それは、適切な注釈を付け、説明すれば良いのであり、停電という不利益を与えるからには、同時に必要な情報開示がされるべきである。(この発表を見ると、10時、16時、18・19時の3ポイントの需要については、なされている。)

実は、情報開示に反対しているのは、東京電力なのか、政府なのか、双方なのか、それさえ分からない。最も、一番分からない部分であるが。

例を示すと、停止中変電所が述べられている同じ東京電力3月13日15時発表のプレスリリースに、地震で停止中の火力発電設備が書いてある。広野火力発電所2、4号機、常陸那珂火力発電所1号機、鹿島火力発電所2、3、5、6号機、大井火力発電所2号機と東扇島火力発電所1号機である。では、他の発電機は運転可能な状態であるのか、定期点検等で停止中か不明である。他社の発電所についても、日本原子力発電の東海2号や常磐共同火力の勿来発電所、相馬火力の新地発電所は地震により運転停止中と理解するが、全体像がよく分からない。需要が減少する春を迎えて、定期点検のために停止を計画している火力発電所も多いと思うが、停電をするには、適切な情報開示は欠かせない。

3月14日の計画停電を発表したこのプレスリリースに書いてあるのは、次のことである。

<参考>
○3月13日の需給予測
 需要想定  3,700万kW(18時~19時)
 供給力   3,700万kW

○3月14日の需給予測
 需要想定  4,100万kW(18時~19時)
 供給力   3,100万kW

14日は月曜であり、13日の日曜より400万kW需要増を予測するのは理解できるとして、供給力が600万kW減少するのは、何故か?説明が、全くない。6,000MWとは、やはり大きな数字である。3月13日15時には、「大井火力発電所3号機は復旧済み)」とも書いてあり、徐々に供給力も回復していくと思っていた。ところが、停電発表では、減少する。

なお、3月15日は、次の予測となっており、供給力は2000MW増加したが、13日の37,000MWには至らず。

○3月15日の需給予測
   需要想定  3,700万kW(18時~19時)
   供給力      3,300万kW

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コメント

600万Kwは、揚水発電所の発電能力と推測されます。
当初(3/13~14)は、日中の発電不足を揚水発電所のフル稼働で補っていましたが、3/14以後は上部貯水池の水がカラになって、揚水発電所が次々に発電出来なくなって来ました。
本来ならば、揚水発電所は深夜の余剰電力を使って、発電機をポンプとして運転して、下部貯水池の水を上部貯水池に汲み上げて発電能力を取り戻すのですが、15日以後はしんやの電力需要でさえ余裕が無く、上部貯水池への汲み上げがままなりません。

投稿: 法務業の末席 | 2011年3月18日 (金) 09時30分

法務業の末席 さま

コメントをありがとうございます。揚水発電は、発電に際して最も使いやすい設備であるので、そんなことをしていないと私は思っています。当然のこととして、上池の水を落として発電する時には、下池からのポンプ運転の動力も考えるので、翌日の運転予想を考慮に入れるので、バカな運転をしないと思いますが。いずれにせよ、情報公開がないので、断言できませんが。

できれば、新らしいエントリーで水力発電を少し書いてみます。読んでみて下さい。

投稿: ある経営コンサルタント | 2011年3月18日 (金) 12時56分

>バカな運転をしないと思いますが。

そのバカな運転を東電は実際にやったのです。
(以下の報道参照)
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東日本大震災:東電、「輪番停電」実施へ 戦後混乱期以来
毎日新聞 2011年3月13日 11時00分
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110313k0000e040029000c.html
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(以下は一部抜粋引用)
 14日は、既に停止している原子力、火力発電所に加え、夜間電力でくみ上げた水で発電する「揚水式」水力発電所用の水を使い果たすとみられる。その結果、供給能力が13日より500万キロワット少ない3100万キロワットに減少する。これに対し、電力需要は、平日で企業活動が活発化することにより、最大4100万キロワットに達しそうで、1000万キロワットの供給不足となる見通しという。
(引用ここまで)

投稿: 法務業の末席 | 2011年3月18日 (金) 20時14分

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