震災復興ファンドの提案
震災復興ファンドの創設を思いついたので、書いてみます。
1) 震災復興ファンド
震災被害を受けられた方々を支援するファンドです。寄附金ではなく、貸付金とし、金利もお支払いいただき、元本も返済願う消費者金融の一種です。地方自治体等からの支援はあるが、生活費の支えとして、あるいは一時的なつなぎのための資金が必要なかたもおられると思います。貸付は、原則個人むけの融資とし、無担保で、返済期間は、借入人の状態に応じて、決定する。貸付審査が、最大の問題であると思うが、借入人・個人が信頼できるか、どうかで全てを判断する。
イメージとしては、マイクロクレジットの日本版です。復興支援をしておられ、寄附金や義援金を集め、それを必要な相手先に対して寄附をしたり、あるいは自分たちの活動費に充てているNPO法人等が、義援金のみならず復興ファンドへの出資を募るのです。ファンドの運営者としてそのNPO法人自身がなるのか、あるいは別に共同でファンドを立ち上げることも可能と思います。そして貸付業務及び審査は、そのファンド運営者が承認可能な、支援NPO等で頑張っておられる方が実施する。
貸付は無担保ではあるが、本当に必要なお金の場合は、返済されると思うし、万一の場合には生命保険による回収もありうると思う。ビジネスとして成立するかの問題については、ファンドへの出資者が、通常の出資ではなく、被災地で困った人への貸付であり、元本保証はなく、リターンが不明であることを納得していれば、成立可能と思う。また、ファンド運用費用は最低限で済むと思う。但し、出資者に対しては、会計報告をすることを義務とし、月次で簡略版、四半期でそれなりの財務諸表と活動報告、年次では詳細報告をする。更には、どのような相手に対して貸付を行ったかも、個人名をどうするかは別にして、何人に一人幾らで、その目的等詳細な情報を、出資者はパスワードを入れればWebで見れるようにすることも考えてよいのではと思う。
政府の復興支援や様々な義援金はあるが、それに加えて、このようなファンドがあれば復興の手助けになると思う。
2) 問題点
法的な関係が、気になります。2006年12月に公布された改正貸金業法の規制の対象になると思う。過剰借入・多重債務者保護を目的として制定されたことから、貸金業者に該当する場合は、純資産額規制、取扱主任制度、指定信用情報機関制度他が適用され、随分厳しくなり、NPO法人が設立したファンドでは、個人向けの貸付は困難な気がする。
私も、貸金業法の専門家ではないので、本当にダメなのか、あるいは一定の条件下であれば可能か、確信は持てないものの、困難が伴うことは予想される。何故なら、NPO法人に許されるなら、NPO法人そのものは簡単に設立可能であり、悪徳業者・悪貨が高利貸しとして参入すると思うからである。2006年12月の改正貸金業法は何であったかに戻ってしまう。
例えば、生協がローンをすることが認められているが、借入人は組合に限られ、信用生協の場合は、岩手県消費者信用生活協同組合のように、活動が県内という制限を受け、県外の人は組合員になれず、出資も借入もできない。
ところが、2010年6月に改正貸金業法の総量規制等が適用されることになり、借入の手続きに年収証明が必要になったり、金額制限があったりで、フレキシビリティーがなくなった。クレジットカードを物品購入でなく、ローンで利用しようとしても、大変なこともある。そのような状態で、震災の結果、ヤミ金融が手を伸ばしたら、被害者が出る気がする。
法律が、こうだからではなく、震災被害者救援をより効果的に進めるための金融制度を、検討してみてよいと考える。
3) 野村證券、大和総研
復興ファンドと称して、野村が東日本復興支援債券ファンド1105というファンド(投資信託)の募集を始めた。(ここ)信託報酬が、年0.43575%で、償還5.2年、AA格付、利回り0.83%ということで、手元に入ってくる利子は、税引後で年0.3154%である。信託報酬の中から、年0.2%程度をNPO法人等に寄附をするという投資信託である。
資金使途は、復興支援のための国債購入30%、地方債5.2%、被災企業の社債等63.5%というが、しっくりと来ない面がある。即ち、AA格付けを維持するためと理解するが、相手先の候補に、新日鐵、トヨタ、日立、丸紅・・・と書いてある。わざわざ支援などせずとも、資金調達に支障がない会社である。結局は、 年0.43575の信託報酬が欲しいから、NPO法人等に0.2%寄附するとしている様にさえ思える。
大和総研は、ファンド(基金)創設の提案です。(ここからダウンロードできます。)私のファンド案と異なるのは、法的には問題がない仕組みで、相手先の主体は地方自治体です。但し、返済キャッシュフローが見込める貸付としており、おもしろいアイデアと思いました。即ち、単純に政府が国債を発行し、その資金を地方自治体に貸し付けるやり方では、有効性に問題が残る可能性がある。一方、このような民間資金のファンドを作れば、償還の可能性についての審査は厳しくなるのであり、効果が期待できると思う。必要な額の資金調達を確実にするために政府保証は付ける。
但し、私が思うには、政府に口を出させないようにすることが重要である。ファンド管理委員会を作り、政府委員が入ってもよいが、公正・公平な運用ができ、与信審査も合理的に実施できるような体制作りが重要と思う。即ち、政府が国債を発行し、手がける復興支援があってよいのであり、逆にキャッシュフローを生まないが重要な復興支出も沢山ある。全てが、政府でなく、民間資金と投資リターンがうまく結びついたファンドによる復興も検討されるべきと考える。
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コメント
復興にファンド すこし違うような気がする。ファンドせずとも直融資(寄付)させる方が利口。ファンドは今回の件には不向き。手口はいつも一緒。復興できんなら返済せずとも良いと言うの寄付にして他を排除して募集する方が良い。下記の養殖組合が集めれたのも反対給付は求めてない。ファンドの手数料稼ぎに終わる。ビジネスにするな。させるな。今日TVで見ました。番組で奨励するようなことを無責任に言っているのを見て本当にいい加減なTV会社だと思う。復興ビジネス戦後の闇金と一緒。ええい加減にせよ。
投稿: おおたく もとおき | 2011年6月13日 (月) 19時04分
おおたく もとおき サン
ファンドには、ピンからキリと言うべきか、何でも可能的な面があり、ファンドに対する批判や誤解も多いと思います。悪用されることもあり得るし、一般の人が近寄りがたい面があるのも確かと思います。
しかし、一方で、寄附という名目で金を集め、実際の使途は違うという団体もいると思います。勿論、犯罪ですが、ファンドでも、集めた資金をファンドの目的外や条件外で支出すれば犯罪です。
私は、慈善ファンドと言うべきか、支援ファンドというべきか、そのようなファンドがあっていよいと思うし、そのようなファンド創設を目指すNPOがあって良いのだと思います。但し、本文に書いたように、貸金業法や金融商品取引法等の規制があり、そう簡単ではないし、また規制を外すことにより悪徳ファンドが生まれるかも知れないという面があります。
投稿: ある経営コンサルタント | 2011年6月14日 (火) 18時17分