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2011年5月17日 (火)

福島第一原子力発電所1号基炉心溶融に思う

福島第一原子力発電所1号基については、早い段階で炉心溶融があったとのニュースがありました。

日経 5月16日 福島第1原発1号機、16時間後に燃料棒の大半溶融

これについて、思うことを書きます。

1) 東京電力発表

東京電力の発表は、ここにあり、その添付資料はここにあります。

炉心溶融については、添付資料の2ページ目に原子炉水位(m)というグラフと炉心最高温度(℃)というグラフがあり、これが分かりやすかった。炉心最高温度は3月11日18:00までは300℃程度に保たれていた。しかし、その直後から温度が急上昇を始め、2時間後の20:00頃に2900℃近くになっている。これを原子炉水位と重ねて見ると、18:00に水位ゼロとなり、燃料頂部まで水位が下がり、20:00の前には燃料下部も水面の上に出てしまった。燃料の周囲は、水ではなく、水蒸気になったはず。

では、炉心溶融についてはというと、東京電力添付資料の3ページ目にあり、19:30頃から燃料の損傷が始まり、19:50には損傷部分の方が多く、翌日12日6:00にはかなりの燃料が溶融していた。そして、12日6:50には、完全に溶融して炉心の定位置にはなかった。

15:30の津波到達後も、少しの間は持ちこたえたが、17:00頃からは、冷却機能を失い、悪い状態に陥っていったようです。

なお、東京電力は、炉心溶融やMelt Downという言葉は使用しておらず、燃料溶融と言っています。炉心溶融と言う場合に、その定義が明確でなく、注意する必要があると思うし、炉心溶融には幅広い意味があると思う。しかし、燃料が操荷されている場所は、まさしく炉心であり、燃料が溶融していることを炉心溶融と呼んでも不都合はないと考え、炉心溶融と呼ぶこととする。

2) 炉心溶融の熱源

東京電力添付資料には、スクラムという言葉が出てくる。スクラムとは原子炉の緊急停止です(参考)。原子炉とは、ウラン235の核分裂によるエネルギーを熱として回収する設備です。スクラムとは、核分裂を停止させることです。スクラムの結果、福島第一原子力発電所1号基は、核分裂が止まった。炉心溶融の熱の発生源は、核分裂そのものではなく、核分裂の結果としての生成物の熱崩壊です(参考)。

原子炉停止後の熱崩壊による熱量が、どれくらいか調べてみると、一つにはこの小出裕章Webに原子炉崩壊熱のグラフがありました。Wigner-Weiの式は、正しくないとの説もあるが、この原子力安全委員会の資料に非常用炉心冷却系の性能評価指針があり、8ページ目の図5のカーブとほぼ一致し、むしろWigner-Weiの式の方がシビアーと思える。そこで、福島第一原子力発電所1、2、3号基の原子炉の発熱量を表にしてみた。また、対数目盛とパーセントのグラフになっているので、1号基についてMWthと時間のグラフも書いてみた。

Fukushimareactorth2011 Fukushimareactor1th2011

崩壊熱は、核分裂エネルギーと比較すると、小さく、そして時間が経過すると発熱量は下がっていく。津波が来た時には、運転時の1%-2%レベルの20MW-30MWまで下がっていたはずである。なお、通常呼んでいるのは、原子炉電気出力MWeであり、原子炉としての熱エネルギーはMWthとしてあらわされ、電気出力の約3倍である。

但し、20MW-30MWの崩壊熱は、無視できるほど小さくはなく、重油換算で1時間に2KL-3KL燃焼する時に発生する熱量である。1号基の定格蒸気発生量は時間2500トン近くあるはずなので、1%レベルの発熱量でも定格圧力下では25トンの水を蒸気に変化させるエネルギーである。原子炉圧力容器の内径を4.7mとすると1mの水面変化が17.3トンに相当する。20MWの崩壊熱で1時間に1.4m程水位を低下させることとなる。

崩壊熱でも、水位を核燃料の下部より下に下げてしまうことが理解できる。一方、炉心冷却の重要性が覗える。なお、現在の崩壊熱の熱量は5MW以下のはずであり、大きな問題はないと私は考える。

3) 電源喪失

電源喪失により福島第一原子力発電所は、炉心冷却の方法を失った。津波で配管が損傷する、あるいは地震で損傷した機器があるかも知れず、報告書を待つこととなるが、電源損失は大きな要素であったはず。

電源損失について非常用ディーゼル発電機が言われているが、福島第一原子力発電所は東京電力新福島変電所と500kVの6回線と66kV2回線があり、更に66kVは新福島変電所の前に東北電力大熊変電所と冨岡変電所につながっていると理解する。これら全ての送電線が地震で使用不可能になったのか、その情報が公開されていないと思う。変電所の安全装置が働いて、地震直後に通電できなくなったことは想像がつく。しかし、設備に被害がなければ直ちに再通電可能である。現実に、多くの東京電力需用者には、停電することなく、電力供給が継続されたのであるから。

今回の津波は、想定を超える津波であり、大丈夫と言われた防潮堤も壊れている。しかし、原子力発電所は、更に上の安全性を考慮して設計されていたのであり、他の設備と同じ設計想定や基準で考えるべきではない。

今回の事故の原因を究明して欲しい。それは、東京電力の人達の使命であると思う。そうしないと、東京電力による人災論が支持を受けてしまう。仮に、人災であるなら、誰のどの組織の人災であるのかを追求して欲しい。勿論、人災が理由である必要はなく、どのようなことが想定外であり、人間の知恵を超える物であったのかと言うことでも良い。

4) 菅政権

変な動きばかり目につく内閣ですが、次のニュースが改めて、気になります。

ニュースポストセブン 3月20日

この中の次の部分です。

経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官が、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と記者会見で明らかにした。ところが、菅首相は審議官の“更迭”を命じた。
「菅首相と枝野官房長官は、中村審議官が国民に不安を与えたと問題視し、もう会見させるなといってきた」(経産省幹部)

この報道以上には知りませんが、本当であるなら、独裁よりも酷いと思います。自分の都合の良いように、真実を曲げることは、権力者として絶対に許せない。

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